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奥原 朝之さんのレビュー一覧

投稿者:奥原 朝之

105 件中 1 件~ 15 件を表示

八甲田山死の彷徨 改版

2002/06/25 13:03

指揮官の責任の重さ

14人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 映画化もされた有名な話である。
 本書を読んでない方または映画を見ていない方でも、八甲田山における陸軍の雪中行軍遭難事故を知っている方は多いだろう。しかし本書を読んでいない方の中で、遭難せずに無事帰還した部隊もあることを知っている方がどのぐらいいるだろうか。
 本書では雪中行軍に成功した部隊と失敗した部隊とを対比することでどこに遭難の原因があったのかを克明に浮かび上がらせている。

 またこの時には日本最低温度記録を打ち立てるほどの寒気団が日本列島を襲うなどの不運も重なり被害を大きくした。この時に記録された最低温度は未だに破られていない。

 成功した部隊は地元民を案内役に仕立て方角を見失わない様にし、遂行人員も厳選して小隊編成で行った。それにもまして計画を立案した大尉自ら指揮権を誰にも渡さないことを上官に認めさせたことが大きいだろう。
 これに対して遭難した部隊は一個小隊で行うはずが、何時の間にか総員210名という一個大隊並みの編制になり、しかも指揮権を持っているはずの大尉がうやむやのうちにオブザーバーであったはずの少佐に指揮権を握られてしまったことが起こるべくして起きた事故へと変化させてしまった。

 指揮系統の乱れ、行軍中の小田原評定など、なんとも御粗末な行軍である。明らかに雪の恐ろしさをなめてかかっている。助かった十数名も五体満足なものはおらず皆凍傷によって指や下肢の切断などの後遺症を残した。

 陸軍は太平洋戦争末期に精神論で戦争を乗り切ろうとしたりするなど、近代化には程遠い軍隊であったことを暴露しているが、実は日露戦争以前からそうであったことが本書で明らかにされる。日露戦争を目前にして、訓練の名の下に行われた人体実験。旅順を攻略するとき以上に人的被害を出したとされている。

 最後に師団長の言葉が紹介されている。『遭難した青森五連隊、無事帰還した弘前三十一連隊のどちらが勝負に勝って負けたのか。どちらも勝ったのだ。青森五連隊のおかげで、これまで申請しても認められなかった冬期装備が認められたのだ。』非常にナンセンスな言葉である。冬期装備を確保するために約200名の命が必要だったのだろうか。読了後は深い虚無感に誘われた。

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黒い家

2002/07/31 18:24

怖いの一言に尽きる

13人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 怖い。とっても怖かった。なによりも保険金のために両腕を切り落とすシーンが一番ぞっとした。指でなくて腕ですよ。腕。もうコップも持てないんですよ。こんな人間が本当にいるのか?と思ったら、実は存在するらしい。

 著者が保険会社勤務経験者のためにモラルハザードの背景とその実態がわかりやすく描かれている。中には保険金欲しさに指や腕を切り落とす人間が実際にいるのだ。しかも病院もがグルになって。中には借金を返済するためにやる者もいるらしい。

 しかし同じ指でも親指と小指とでは保険金に大きな差がある。小指程度であれば実生活に大きな不便は無いが、親指になると物を持つ時に苦労するので、親指の喪失に対する保険金支払額は大きい。

 本作品が刊行されてからモラルハザードをネタにした漫画や小説が数多く刊行されているが、本作品をこえる物はまだお目にかかっていない。

 読み進めていくと後半であっと驚くどんでん返しがある。これまた怖い。
 非常に怖いです。怖いの一言に尽きます。生きている人間が題材なので、実際に起こりうる話ですから。怖がりの人は読まない方が良いかも知れませんね。でも文句無しのお勧めです。

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聖の青春

2002/06/25 11:54

生きている証を勝負に見出した男の物語

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 幼い頃に腎ネフローゼを患って以来常に病気と対峙し、若干29歳という若さでこの世を去った棋士、村山聖の生涯を綴った物語である。コミック『聖(さとし)』を併せて読むと良い。本書にはないエピソードも幾つか挿入されている。

 自分の命が長くないことを幼くして悟った聖は将棋という世界に自分の生きている証を見出した。『名人になるんじゃ』という、その思いだけが彼を生かしていたのかも知れない。将棋界で頂点に立つことが自分の生の証だと信じていたのだろう。

 二十歳になったときに師匠の森に『先生、僕二十歳になりました』と話しかける場面がある。『二十歳になれると思ってませんでした』という言葉が後に続く。その時には『そうか』と受け流した森だが、村山が立ち去った後で『良かったなぁ、村山君』とぽつりとつぶやく場面がある。村山聖は常に死を意識していたのである。それを知った師匠はきっと胸が締付けられる思いだったに違いない。

 体さえ丈夫であれば名人になれたであろう村山聖。晩年は羽生も勝てなかったという。名人であった谷川ですら村山には連敗を喫している。体さえ丈夫であれば、と思わない読者はいないだろう。本人も20歳前後の頃にはそう思ったことがあるらしい。しかし無い物ねだりをしてもどうにもならない。これが僕なのだとあの若さで悟っている。なんて悲しくも力強い言葉なのだろうか。

 しかし遂にA級に昇級しながらも名人へは届かなかった。羽生を苦しめた唯一の棋士といっても過言ではない村山聖。なんて運命とは皮肉なのだろうか。羽生を凌駕する力をもちながら一冠も為し得なかった棋士、村山聖。なんて運命とは残酷なのだろうか。

 これほどまでに自分を常に完全燃焼させている人物を私は知らない。お涙頂戴の話は基本的に好きではないのだが、これにはまいった。泣かずにいられない。

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沈黙のファイル 「瀬島竜三」とは何だったのか

2002/06/18 23:51

教科書に載らない戦後日本

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 大日本帝国陸軍参謀の最終経歴で敗戦を迎えた瀬島隆三の戦中から戦後、現在までを事細かに取材したルポルタージュ。

 瀬島隆三は戦後シベリアに抑留され、帰国してからは数年の浪人の後に伊藤忠商事に入社する。
 伊藤忠商事での瀬島の仕事は陸軍参謀時代に培われた人脈を駆使した戦後補償ビジネスの開拓であった。

 日本の戦後補償は東南アジア諸国全域にまたがり、非常に大きな金額が動く。基本的には各国の基盤整備のために日本がお金を出すのである。構図としては現在のいわゆるヒモ付きODAである。例えば日本政府が東南アジア諸国政府に補償金を支払い、東南アジア諸国政府が基盤整備のための工事を日本の会社に依頼するといった形を取る。

 特に戦後補償から現在の政府開発援助(ODA)に至るまで、インドネシアに対して日本政府が投じた金は他の東南アジア諸国よりも断トツに多い。それはなぜか?
 昭和30年代までは中堅商事会社であった伊藤忠商事がわずか10年程度で大手商事会社の仲間入りを果たしている。それが出来たのはなぜか?
 伊藤忠商事が兵器産業に参入できたのはなぜか?
 東ティモールの独立運動に対して日本政府は一切関与しようとしなかったのはなぜか? それらの解は本書に詳しい。

 本書は、決して教科書には載らないであろう、闇の奥に眠っている戦後日本史を描いた傑作である。
 ドラマ仕立てで瀬島隆三の足跡を追いたい人は、不毛地帯(全四巻、山崎豊子著、新潮文庫)を手に取ってみるといいだろう。

 瀬島隆三を主人公に据えてはいるが、私には暗闇に紛れた戦後日本史を語るために担ぎ出された狂言回しのような気がしてならない。本当の黒幕は決して表には出てこないものだと思うからである。そういう意味では瀬島隆三も誰かの手足だったのかもしれないというのが読了後の率直な感想である。

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神々の山嶺 下

2002/06/17 18:03

ひりひりするような緊張感を求めて

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 上巻では羽生丈二という男の歴史を掘り下げて描き、また羽生丈二の過去を追うことで、深町は自分自身の内面をも掘り下げていった。深町は羽生のこれまでの人生を通して自分の人生を省みたのだ。それは山に魅せられた者同士、ある意味必然性を持った出会いだったのかもしれない。

 次第に深町は羽生に触発され、自らの山への思いを新たにする。平凡な日常では生きていけない、ひりひりするような緊張感が無くては生きていけない。マロリーのカメラなんてもうどうでもいい。自分のために羽生を追いかけて写真に撮るのだ。と心に決める。

 羽生は交通事故の後遺症のために他人に対して劣等感を持つようになり、それを払拭することが山へ入るきっかけであった。
 誰もやったことの無い登攀、名前を売ることが自分自身の生きている証を立てるが如く、困難なルートをわざわざ選び登攀する羽生。それが羽生の生きている証だったのだ。羽生もまたひりひりするような緊張感の中でしか生きられない男であった。

 下巻では、羽生は登攀人生の総仕上げとして、誰も為し得ていないエベレスト南西壁無酸素単独登頂に挑戦する。羽生に触発され、誰のためでもない自分のために羽生を追いかけて写真に収めることを決意する深町。

 後半は圧巻である。裏切りもどんでん返しも何の仕掛けも無い。羽生の登攀は成功するのか。深町はどこまで羽生に追いすがるのか。それだけを単純に丁寧に描いていくその筆致は読み手の魂を揺さ振るほどに力強い。

 ただただ山への熱い思いだけで生きている男の熱いドラマである。不覚にも後半では泣いてしまった。
 山登りに人生を投げ打つ人の気持ちが少しだけ理解できるような気がした。そんな作品である。

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ザ・ゴール 企業の究極の目的とは何か

2002/03/05 02:07

今更の感はあるがお勧め

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書を読んでみると、製造業に携わる人の殆どの人達の目にはそんなに目新しい事は書いていないと写るかもしれない。確かにそうだと思う。

 では、なぜ本書の評価が高いのか? それはあまりにも当たり前のことを書いてあるからだと思う。当たり前のことを書いてあるだけじゃないか、と吐き捨てる人もいるかもしれない。しかし、当たり前のことだからこそ意識の奥底に残しておかなければならない事なのだと思う。

 私は本書は教科書だと思う。製造業における基本的事項を小説タッチで書いてあるだけで、品質管理や工程管理に応用できるヒント、と言うよりはそのもの、が色々とちりばめられている。

 視点を変えることで見方が変わるのは当然なのだが、人間というものは誰しも多角的に事象を観察しろと言っても視点を変えているようで変えていない。自戒を込めて言うが自覚していない人が殆どだろう。

 特に文中にある『局所的な最適解が決して全体的な最適解にはつながらない(文中での正確な表現は異なる)』という箇所ではコロンブスの卵のような衝撃を感じた。まさに言われてみればなのである。そういう意味で本書は教科書なのだ。

 このように、誰もがちょっと考えれば(視点を変えて考えれば)理解できるようなことなのだが理解出来ていない事柄は案外多いのかもしれない。

 当たり前のことを何を今さら、と言って本書を投げ出さないで欲しい。特に製造業では新入社員の教育資料としては良い入門書になると思うし、個人的には数年後にまた読み返してみたいと思う本である。

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ホワイトアウト

2002/07/31 16:40

文句無しの五つ星

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 これは文句無しの五つ星。異論のある人はいないだろう。

 映像化を意識して書いた作品と著者が別の場所で述べているように、ロングショットで撮影すると映えるようなシーンや、息も吐かせまいとする連続した危機。あぁ、一度手にするともう眠れない。

 水力発電所(正確には下流域に住む住民)を人質に取ったテロリストと、発電所に勤務する一人の男の戦いを描いた作品。もう何度も絶体絶命になるわ、何度もこれはどうやって逃げるのかとドキドキさせるシーンは満載。
 無茶な脱出シーンもあったが、あれはご愛敬として差し引いても文句無しの出来栄え。
 伏線の張り方も良いです。驚きの連続。

 映画よりも原作の方が数段面白い。真保裕一の作品はこれを読まずして何を読むというぐらいの出来。まぁ間違いなく真保裕一の代表作でしょう。文句無しのお勧め。

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ブラックライト 上

2002/06/25 18:46

アールの真実が明らかになる

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ボブ・リー・スワガーシリーズの第三弾。
 本作品でボブの父親、アール・リー・スワガーの死因が明らかにされる。

 タイトルである『ブラックライト』の意味は本書を読むと分かる。ここでネタバラシしてしまうと興ざめであろうから触れないで置く。ヒントとして言えることは、『ブラックライト』がある軍事機密に関するコードネームであるということだ。
 そのブラックライトの端緒をアールが覗いてしまったが為に始まる物語である。

 この話は前作ダーティホワイトボーイズと密接に関連しており、また伏線となっているのでまだ前作を読まれていない方は前作を読んでからにして欲しい。

 過去を探られたくない見えない敵の容赦無い攻撃がボブを襲う。それを次々に撃退していくボブ。父の死因を明らかにすべくボブが縦横無尽に動きまくり、銃を撃ちまくるという極上エンターテイメントである。

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神々の山嶺 上

2002/06/17 11:50

そこに山があるから

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 エベレスト登山史上最大の謎はイギリス隊のマロリーが登頂したかどうか(以下、マロリーの謎と記す)らしい。その当時はエベレスト登頂に成功したものはまだいなかったために、マロリーが登頂していれば世界初の快挙だったのだが、マロリーは帰ってこなかった。

 マロリーはカメラを携えて登頂したという記録が残っている。そのカメラが見つかればマロリーの謎が解明されると山登りに興味のある人間のほとんどが思っているらしい。らしいというのは私自身が山登りをしないし、大して興味も持っていないためで、マロリーという人物、マロリーが登頂に成功したかどうかという謎すら本書を読んで初めて知ったからである。

 しかしカメラはまだみつかっていない。作者はマロリーの謎とマロリーのカメラを出発点として、不器用な男の物語を見事に描いている。

 最初はマロリーのカメラに収められているであろうフィルムをめぐって、マロリーの謎を解明していく話かと思ったがそうではない。マロリーの話しは単なる味付けであり、出発点である。

 生くるに不器用な男、羽生丈二。純粋であるが仲間から孤立していく男、羽生丈二。不器用であるが故に生きる目的を山にしか見出せなかった男、羽生丈二。
 そんな男をまっすぐに見据えて、深町というカメラマンの目を通して描いた、不器用な男の生き様を描いたドラマである。

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もしも月がなかったら

2002/04/04 11:38

想像力を豊かにしてくれる思考実験

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 中高生に是非とも読んでいただきたい一冊である。

 「もしも月がなかったら」にはじまる10通りの思考実験が行われている。科学において思考実験は基本中の基本である。簡単に実験検証できる場合には、自らの思考実験の正しさが実証できる。この事は人を科学の道へと誘惑するに違いない。

 学生の理系離れが言われてから久しいが、文系へと進んだ人でもこの本を読むと、『もし中学生の頃にこの本と出会っていたら』と考える人は多いのではないだろうか。

 読み進めながら著者と同時進行で一緒に思考実験をしてみよう。最初は頭の中で想像できないかもしれない。しかし傍らにノートを置いて鉛筆片手に、想像できないところは絵に描いて理解を進めてみよう。慣れてくると描かずとも頭の中で想像できるようになるはずだ。自分の描いた絵を見ながら頭の中で生物が環境に順応して進化した様を想像してみよう。次第に没頭していくだろう。

 このような思考実験は理系の人達だけに必要なものではない。あらゆる問題に応用できる。『もし〜だったら』と考え、その結末を想像するような人が増えると、大袈裟かもしれないが、人類社会の豊かな未来が開けるような気がする。

 文系、理系問わずお勧めの逸品である。

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家栽の人(ビッグコミックスワイド) 7巻セット

2002/07/31 22:28

異色の裁判所物語

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 時代の先取りなのだろうか。初出時には今ほど凶悪な少年犯罪はなかったように思う。現在は十年前に比べて明らかに少年による凶悪犯罪は増加しているだろう。その少年犯罪を裁く家庭裁判所を舞台にして、桑田判事を中心に家裁調査官や他の判事が触法少年にどのように接していくのかを描いている。

 優しく接するばかりが能ではなく、厳しく罰すべきときもあるのだと判事は言う。こんな大人が少なくなったのだろうか。甘やかすだけ、厳しくするだけの大人が増えているのかも知れない。

 桑田判事は花好きで、物語の中で花や木を引き合い出して少年たちの胸のうちを説明するシーンや対処法を決定するシーンが多い。この花や木を引き合いに出して語る桑田判事が非常に良い味を出している。

 違った味わいの社会派コミックである。がちがちの硬派でも無く軟派でも無い。万人にお勧めできる社会派コミックの代表作である。

 

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黄昏流星群(ビッグコミックス) 71巻セット

2002/07/31 22:10

人生色々

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 作風は人間交差点を彷彿とさせる。しかし今回は原作、画ともに弘兼憲史である。

 黄昏は中年の男女を意味しているのだろう。どの物語も中年男女を主人公に据えたものばかりである。これが面白い。人生の機微を知っているというか、酸いも甘いも知り尽くしているというのか、切ない物語が多い。

 こう書くと著者に失礼かもしれないが、人間交差点の話の中でも中年男女を主人公に、且つ恋愛をテーマに描いた物語の集大成と言えるのではないだろうか。

 これもまた大人の物語ばかり。20代ではちょっと早いかもしれない。

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人間交差点(小学館文庫) 19巻セット

2002/07/31 22:02

社会派コミックの先駆け

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 原作者の矢島正雄は好きな作家だ。テレビドラマのシナリオなども手がけている。そのせいか、矢島正雄原作のコミックはいずれも社会派ドラマである。

 最近でこそ社会派コミックは数多くあるが、その中でもこの人間交差点は一番早い時期に描かれたものではないだろうか。

 特に切ない物語が多い。本当の大人にしか解らない悲しみが数多く描かれている。大学生でもまだ早いだろう。このコミックは30〜40代で理解できる作品じゃないかと思う。

 人恋しくなったら、寂しくなったら読んでみることをお勧めいたします。

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パラサイト・イヴ

2002/07/31 18:07

バイオホラーの金字塔

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 映画化もされ、ゲーム化もされた有名な作品。
 作品中でも説明が為されているが、ミトコンドリアは細胞の中でエネルギーを生成する重要な役割を果たしている。つまり呼吸である。呼吸とは生物学的定義で言うならばミトコンドリアに酸素を受け渡すことなのである。酸素を受け取ったミトコンドリアは酸素を利用してエネルギーを生成する。

 またミトコンドリア自身はほぼ独立した形で増殖することが可能である。
 増殖を独自に行えることから、ミトコンドリアの起源は好気性細菌の寄生によるものではないかという説もある。この話も文中に出てくる。
 自己増殖可能でエネルギーを生成する。もしミトコンドリアが意識を持つならば、これはまさに独立した一個の生物である。人間は無数のミトコンドリアに寄生されていることになる。著者はそこに目を付けたのだろう。

 妻の聖美が交通事故を起こして脳死する。聖美は腎バンクに登録していたので腎臓は中学生の女の子に移植されることになる。
 それとは別に夫の秀明は妻の死を整理できずに、肝臓の細胞を培養する。それが恐ろしい物語の引き金であった。
 なぜ聖美は交通事故を起こしたのか。移植手術後の女の子は毎夜恐ろしい悪夢は何か関係しているのか。遼原の炎のようにミトコンドリアは人目に触れないように増殖していく。

 バイオホラー作品の中で超一級品の娯楽作品。まさにバイオホラーの金字塔と言っても言い過ぎでは無かろう。バイオテクノロジーの知識を持っていない方でも充分楽しめること請け合い。

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リング

2002/07/30 21:26

単なるホラーではない!

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 リングシリーズの第1弾。

 リングといえば貞子。貞子といえばリングと言うほどに定番化してしまった感は有るが、初めて読んだときにはその魅力に引き込まれてしまい、一気に読んでしまった。

 最初の掴みが良い。このビデオを見たものは一週間後に死ぬという死のビデオ。実際に何人か死ぬ。そのネタを追って新聞記者の浅川も興味からそのビデオを見てしまう。見た後でこれは本物だと感じて恐怖に駆られ、死から逃れるために大学の同級生だった高山の知恵を借りることにする。

 しかしその裏側で浅川の保管していた死のビデオを妻と子供が見てしまう。
 事態はどう展開してくのかと思わせて、予想を裏切るような展開を見せる。

 これはホラー作品の金字塔です。最近のホラーの中でも趙一級品だと思います。お勧めです。

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