藍桐 さんのレビュー一覧
投稿者:藍桐
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紙の本白昼堂々
2002/01/05 22:54
物語の結末をどうしても知りたくなる一冊
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少年愛というか同性愛というか、そういう話になるのでしょうか、この作品は。最近爆発的にはやっているような気がする同性愛モノですが、この作品はその流行のものとは少し違う気がしました。どこがというと、とにかく自分が異常だということを主人公が徹底的に自覚しているという点です。同性しか好きにならない自分に対してあまり違和感を持たないキャラクターがこのジャンルでは多い中で、この作品は主人公がちゃんと自分の異常さを自覚し、そして悩んでいます。だからこそ、物語は切ないし重たいものになっています。主人公を周りで支える親戚達もそれぞれに悩みや痛みを抱えている。その悩みや痛みは決して彼らだけのものではなくて、読んでいる読者にも少なからず当てはまる、そこがこの物語を重たく、切なく、そして引き込まれる作品にしていると思いました。
シリーズはまだこれが始まったばかり、とにかく登場人物達の行く末が気になりますので、シリーズの次の作品へと手をのばさずにはいられません。
紙の本レッスンズ
2002/02/19 19:36
母を持たない二人の女性の母性を巡る物語
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物心ついたかつかないかのころから母を知らない主人公と出会った中三の少女は、母が心を病んでいてやはり普通に愛してもらったことがない。母がいないことで母親のことなど考えもせずに育ってきた主人公と、愛してはくれない母がそばにいることで苛立つ少女の出会いは二人に少しずつ変化をもたらす。じょじょに少女は自分も母のように心を病んでしまうのではないかと不安に駆られ始め、それと同じころ、主人公は自分の選んだ道が間違っていたことを悟る。
二人の母性を知らない少女のふれあいから母性というものについて考えさせられる一冊。特に主人公が家庭教師というアルバイトを通して少女と出会っているだけに、家庭教師を経験したことのある人にはオススメ。私も経験があるだけに共感を覚えました。
紙の本平安妖異伝
2002/01/05 22:44
続きが出ないかとついつい期待
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平安時代を舞台にした小説は最近よく出ていますが、その大体が陰陽師モノではないでしょうか? ところが、この物語は妖しを題材に使っているのに陰陽師は全くと言っていいほど出てきません。そうなると陰陽師という存在から平安時代の物語が好きになったファンは読みにくいような気がするかもしれませんが、これがまたそうでもない。妖しを解決するのはいわば楽師に当たる登場人物で主人公はまだ若き日の藤原道長です。この二人の微妙な関係がまたいい。事件は全て楽器や音楽がらみでどことなく風流な感じさえします。連作短編で一つ一つの物語が読みやすいのもいいですね。ただ、最後はちょっと物足りなくて次回作が出るのかも? と期待させられてしまいました。
もう大御所でとにかく有名な著者が描く、ちょっと流行とは違った風流な平安絵巻です。この著者の作品を一冊も読んだことがないという人は他の作品も読みたくなってしまうかも。
紙の本青の聖騎士伝説 1
2002/03/21 20:56
他の作品も読みたい!
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映画などの影響か、ファンタジー小説がそれこそ竹の子のように続々出版されている昨今、本当に面白いファンタジーにめぐり合うのは実は難しくなってきてるかもしれないと思い始めていたところだった。だが、この物語は読み進めれば読み進むほどにひきつけられていくタイプの、今騒がれている海外のファンタジー小説とは一味違った話だった。主人公とその周囲に登場する人物達が魅力的で、他の物語に出てきているキャラクターの父の物語だというから、読み終わった時、ついその息子達の物語も読みたい! と思ってしまう。
とにかく、冒険者でありながら騎士のごとき品を漂わせつつ、どこか間が抜けたように見えるほどお人よしで優しい主人公に是非めぐり合ってもらいたい。特にTRPGを楽しんだことがある人にはオススメ。
紙の本すべての雲は銀の…
2002/01/11 22:25
ジャンルで区切ることなどできない力作
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読んだあと、しばらくはその世界にひたってしまって脱力状態になる小説というのを久しぶりに読みました。そこそこ面白くても、読み終わったら満足したという程度の作品ばかりに当たっていましたが、今回ばかりは全身に力を入れて読むほど没頭させられました。
青春小説、恋愛小説、そんな風にジャンルわけすることがよくありますが、物語の向こう側に語られていることの重さを思うとそんなジャンルにはとても割り振ることができない作品だと思います。といっても読むのが難しいような話では決してなく、主人公とその周りにいる人達の一つ一つのエピソードは読んでいる私達に少なからず共通することばかりです。この著者の作品はだいたいそうですが、文章もとても読みやすいです。それでも、さらさらと読んで最後に涙した後に何かしらの想いが残る、そんな作品でした。
主に女性の方が向いているかもしれませんが、女流作家の作品は大丈夫という男性の方もじゅうぶん感動できると思いますのでぜひお薦めです。
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