北街公国さんのレビュー一覧
投稿者:北街公国
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第四間氷期
2002/07/14 07:08
現実世界への取材と逃避
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かねてよりSFというジャンルにあっては、題材や内容、展開に作家個々人の差はあるものの、テーマに共通するところがある。すなわち現実の世界で繰り広げられていることやものへの逃避だ。空想を言語化するという意味では、ほとんどの小説は同じであるから、例えばジャンルというものを分けるとするならば、どの学問領域に取材し、かつどの時代背景を利用するかによって、それぞれの小説を分類できる。その時、SFは今に取材し、そこから考えうる未来なるものの世界に読者を誘うものといえそうだ。今現在に注意を促し、ありありと見せ付けられる現実に迷い込ませ、溺れてさせていく感覚に息詰まりそうになった頃、ふと頭をよぎるであろう逃避の思考、それこそがSFであると思う。このことを簡潔にして無責任にも、未来を待ち焦がれる感情と言ってしまえばそれまでである。しかし、実際には現実が全く途切れ、改竄されることもなく続くという結論が待っている。逆説的ではあるが厭世的になってしまいそうな事件の連続が、SFの醍醐味であろう。さて、安部公房の「第四間氷期」は、まさに上記SFの本質を的確に突いた傑作である。そこには、現実から隔絶した未来なるものが引き起こす悲劇が綴られている。未来の無条件的到来とそれへの期待に明け暮れ、出口が見出せなくなってしまった方には一読していただきたく思う一冊である。
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