まきしまむさんのレビュー一覧
投稿者:まきしまむ
めぞん一刻(小学館文庫) 10巻セット
2002/07/01 00:36
一刻館よ永遠に!!
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結果が判っていてでさえ何度なく読み返す作品がある。
この『めぞん一刻』がそうだ。
冴えない浪人生だった五代くんが未亡人の響子さんに出会い
徐々に成長を遂げ、どこか頼りなさはあるのだけれども
抜群の優しさと思いやりを持った保父さんに。
五代くんを取り巻く環境、一刻館のハチャメチャな住人達、
大学の友人、仕事仲間や上司…彼らとの出会いと交流が
五代くんを大きく成長させたのだろう。
彼のその成長過程を響子さんと一緒に追いかけているうちに
グッとなにか熱い気持ちが生まれてくる。
五代くんにカツを、そして響子さんの優しさが欲しいときに
私は『めぞん一刻』を読み返す。
姑獲鳥の夏
2002/07/05 01:06
目眩がしそうな暑い夏の日に
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著者の妖怪(京極堂)シリーズを始めて読むという方のために一様簡単に設定について触れておこう。
時代は昭和20年代後半。古本屋の主にして陰陽師である京極堂こと中禅寺秋彦、鬱病気味の作家関口巽、人の記憶が“見える”超探偵榎木津礼二郎、猪刑事の木場修太郎などが一風変わった魅力を持つ人物が登場し、一見不可解としか思えない事件を解いていく。
物語はただ流れていくのではなく、京極堂の激しいまでの蘊蓄の嵐や様々な紆余曲折(?)をたどりながら重層的かつ神秘的に進んでいく。
「呪文」のような怒涛の薀蓄の嵐をかいくぐり、見事「解」へとたどり着いたときの爽快感は何物にもかえがたい。
あなたはこんな疑問を持ったことはありませんか?
「見えているはずなのに」「聞こえているはずなのに」…なぜ?
その答えが本書の中に隠れています。
目眩がしそうな暑い夏の日に読みたい一冊です。
ヴィラ・マグノリアの殺人
2002/07/03 00:02
作品名にご用心!?
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海外それも地中海にでも浮かぶ島を舞台にした殺人事件を叙情豊かに描く作品
…ではありません。
本当のところは神奈川県葉月町(仮想)にある住宅街を舞台にした物語です。
殺人事件というものは被害者は勿論その家族、そして周囲の人にまで
何らかの影響を及ぼす。警察によるしつこいまでの追求…殺人事件さえ
起きなければ暴かれずに済んだことまでもが取り沙汰され、殺人事件で
ギスギスし始めた人間関係をこれでもかと壊しにかかる。
本書ではそう言った殺人事件によって引き起こされた闇の部分を
若竹七海流の視点をもって描いている。
この作品「犯人あて」を謳っているだけはあって、結構巧みに情報が操作されており
ボケッとしていると重要なポイントを見落としてしまうので要注意。
真面目に犯人あてをしようと思う方は<見取り図>はしっかり頭に入れておくこと。
ここを見落とすと【双子ちゃん】が本格的に登場するまで、真相に近づけません(たぶん)。
どこか余韻を残す結末なのでシリーズで読んでみたい。
また、この作品のテーマを違った方向から描いた『人間の幸福』(宮本輝・著)
という作品があるので、この作品を気に入られたのであれば一読されることを
オススメします。
月光ゲーム
2002/07/05 00:54
せまりくる恐怖!
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私は怖かった。この作品を読み進めていくとともに、記述者であるアリスと
自分が重なっていき、とどめようのない恐怖に駆られた。
まさに映画『13日の金曜日』のジェイソンに追い詰められるような恐怖感だ。
このような恐怖に駆られたのは『十角館の殺人』や『殺人鬼』
(いずれも綾辻行人・著)以来だ。
推理小説は処女作が最も素晴らしいというのは至言であろうと思う。
『姑獲鳥の夏』(京極夏彦・著)、『すべてがFになる』(森博嗣・著)等々…
どれもが心に残る作品だ。
作者は本書を発刊するまでに3度の加筆・修正を行っている。
それほど大事に、丁寧にこの作品を仕上げたのだろう。私は自らが感じた
恐怖感に作者の圧倒的な思い入れを感じた。
秋の花
2002/07/05 00:46
私たちって、そんなにもろいんでしょうか
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「私と円紫さん」シリーズ第三弾。
物語の語られ方、主人公の考え方や行動パターンから作者の性別を
推し量ると…どう考えても…当時、覆面作家として名をはせた
作者ならではの文章が光っている。
ミステリを題材にしているが世にあまたあるミステリ小説のように
頭をかち割られたり、手をもがれたり、毒殺されたりというものではなく、
私たちのまわりでもひょっとしたら起こるかもしれない…
事実起こったのかもしれない、そんな種類の話が収められている。
ラストになって登場する噺家円紫さんの全てを包み込んでくれるような優しさが、
真相の残酷さと相まって見事なコントラストを醸し出している。
なかでも主人公が言った「私たちって、そんなにもろいんでしょうか」という
言葉が深く心に刻まれた。
江戸アルキ帖
2002/07/02 22:52
タイムマシンに乗って
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「日曜の昼下がり、タイムマシンに乗って、のんびり江戸の町を散歩してみませんか。」
という文句に惹かれて購入。
江戸時代の“江戸”をイラストと文章で紹介したガイドブック形式の作品なので、
ここに描かれているイラストと現代の有り様を見比べながら東京を散策してみるのも
なかなかに楽しいことかもしれない。
あまりの変わり様にショックを受ける場合もありますが…(実体験)
文章の方は紀行文と言うよりは小説仕立てになっているので先を読む楽しみがあり
飽きさせない作りになっている。
魔法飛行
2002/07/02 22:49
“ほわぁん”とした柔らかな気持ちで読み進められる作品です
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入江駒子を主人公とする第二連作短編集。近況報告するつもりで書いて
ごらんという言葉に後押しされ小説を書き始めた駒子は、自分が日常生活を
送っていく中で疑問に思ったことや不思議に思ったことを題材に選んで
執筆を始めた。
童話作家の瀬田さんに当てた小説仕立ての近況報告は、彼女や友人たちの
成長を記すだけではなく、ある奇妙な事件をも同時にトレースしていた。
物語は自分の知らないところでも紡がれているのだ。
「駒子が書いた小説+瀬田さんの感想・解説+謎の手紙」という組み合わせが巧く融合し
絶妙な世界観を生み出している。瀬田さんの感想は読者が漠然としか抱いていなかった
疑問点を明確な表層へと押し上げた後に、明確な回答までも提示してくれる。しかし、
瀬田さんは全てを解決してくれるわけではない。瀬田さんの感想文の後に「謎の手紙」が
届くことで読者は作品全部を通した謎解きに挑戦しなければならない。
真・快傑蒸気探偵団 Case9 (Dengeki comics EX)
2002/06/30 23:29
蒸気都市あらたなる幕開け!
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われらが蒸気探偵団が、鳴滝少年が還ってきた。
より凶悪に、より巧緻に罠を張り巡らせるナイト・オブ・ファンタム。
そして彼に従う新たなる影…。鳴滝少年とファンタムの新たなる
戦いをオールキャスト出演で描く。
『ガチャガチャファミリーえびるクン』でギャグとお色気を、
『バットマン』で圧倒的なキャラクターの存在感に磨きをかけた
著者が装い新たに蒸気探偵団の活躍を描く。
これからも蒸気探偵団に! ティンカーベルから目が離せない!?
京都魔界伝説の女
2002/07/02 23:31
全100巻の大構想
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コードネームQAZは『陰陽大観』の思想に乗っ取り、人の心に悪魔を運び殺人者に
仕立て上げるという殺人プロデューサー。QAZが仕掛けた第一の大罪は魔界都市
京都を舞台にしたバラバラ殺人事件。
この悪の伝道師QAZに立ち向かうのが精神分析医氷室想介。
彼は事件を解決し、犯人の心の奥に潜むQAZの影を捕らえることができるのか?
全100巻完結の長編ミステリの第1巻。全100巻といっても各巻ごとに犯人は設定
されており、最終100巻目で全ての事件をプロデュースしていたQAZの正体が
明らかになるというしろもの。完結は2022年2月らしい。その頃、作者は約70歳。
まさにライフワークといっていいだろう。
名探偵役の氷室想介はこのシリーズが初登場ではなく、カッパノベルズなどで
いくつかの作品に登場している。が、この巻から読み始めたとしても大きな影響は
見受けられないのでご安心を。
Train+train 5
2002/07/02 22:34
ジョーズのテーマ曲が聞こえる
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今回の特別授業の舞台は青い海と海上都市。
海底トンネルを進むスクールトレインへと迫りくる巨大生物。
スピード感ある駆け引きと次から次へと起こる怒涛の展開が
さながら映画のカーチェイスシーンを見ているかのようだ。
決められたレールの上を走り抜けるしかないスクールトレインが
如何に巨大生物から逃げ延び生還するか。
スクールトレインを人生に置き換えたとき「自分の未来について」
漠然とした不安な思いを抱く主人公 礼一の求めるものが見えてくる
かもしれない。
エキストラ・ジョーカーKER (あすかコミックスDX)
2002/07/01 00:12
引きずり込まれる世界
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清涼院流水と蓮見桃衣の強力タッグが読者を未知の世界に引きずり込む。
言葉の魔術師が新たなる才能と美麗なる画力を得て世に解き放つ『ジョーカー』。
そのあまりにも美しすぎる美貌からサングラスの着用を義務付けられた
九十九十九に相対するときのように、われら読者は清涼院流水と
蓮見桃衣の強力タッグを迎え撃つときには相当の覚悟が必要である。
そう、わかっていた…わかっていたはずなのに…気がつけば
彼らに翻弄され、操られ、迷走する世界の中でJDCの探偵と共に
事件の大いなる“深層”に足を踏み出している。
そして“深層”を見たとき、読者はもう引き返すことはできないだろう…。
カーニバル・デイ 新人類の記念日
2002/07/05 01:18
逃れる術もない泥沼
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長い…長すぎる1000ページという厚みを持った本はまさに凶器だ。
著者の作品でこの厚み…人を狂わすのに充分な量と内容だ。
読了後、“爽快とした安らぎ”ではなく、逃れる術もない泥沼に引きずり込まれ
覚悟を決めるしかない時の“諦観にも似た安らぎ、死への安らぎ”をしすら
感じる。
これまで張られてきた伏線に一応の答えは出されるものの、納得いかない
ことばかり。本書の中で、何度無く「順序を間違うな。一足飛びに答えを
求めようとするからそういう過ちをするのだ」(要するに解答のみを追いかけるな
過程を追えといいたいらしい)という言葉が出るが、なんだかその言葉があるが故に
余計に翻弄されているような気がする。
物語も中盤に差し掛かると機能が麻痺したのか倒錯した状況を
楽しめるようになってきたから不思議だ。
中でも「桃太郎」、「浦島太郎」、「金太郎」のモデルが龍宮家の祖先の龍宮○太郎
(○には任意の文字が入る)だったのだという件では「ばんざい! やってくれたぜ」
という気分になるしかなかった。この後登場する“ノアの箱船伝説”の真相なども
「ええいどうとでもしておくれ」という気持ちで読ませていただいた。
恐るべし清涼院流水。作者の論調には「MMR」のキバヤシさんでも勝てません!
七瀬ふたたび
2002/07/03 00:08
善とは何だ
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七瀬たちを追いつめる特殊警察の描き方が雑。
本当に人類を守る為に行動しているのなら、なるべく一般人に知られぬように
細工するのではなかろうか。
堂々と人を殺すは、誤殺するはでろくなもんじゃない。
彼らも完全に善というわけではないだろうが、七瀬をあくまでも善として
描く手法には辟易した。彼女は自分の都合で能力者を殺す存在であり、
人を殺すことにそれほど躊躇を感じていない存在だ。
彼女は特殊警察に追いつめられる可哀想な被害者のように思えるが、
ある意味で犯罪者が警察に追いつめられているのと同じ考えても
おかしくない状況なのだ。背表紙の表現を借りれば七瀬たちも又、暗黒組織なのだ。
一番可哀想なのは彼女に巻き込まれる形となった人々であり、
彼女という因子がなければもう少し長生きできたかもしれない人々だ。
能力者は兎も角、ヘニーデ姫などの一般人がそうだ。
とはいえ、七瀬と出会うことで平穏と安らぎを一時的に享受することは
出来たのだろうが…。
非常に複雑な気持ちにさせる作品だ。
旅で眠りたい
2002/07/02 23:38
虚構でも良いから物語を求めてしまう
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特に旅をしたいわけでもなく、何となく普通にエッセーを読むのでは面白くない
という理由と軽妙なイラストに心惹かれて購入。
今まで読んだ旅の本といえば『深夜特急』(沢木耕太朗・著)が一番だろうか。
『深夜特急』のよさは現地の人々とのふれあいや作者がその時何を思ったのか
という部分が精緻に描かれていた。しかしながら本書では若干その部分が弱い。
日本人同士の触れあいも長い旅の中では当然必要になるし、せざるを得ないだろう。
ただ、それを主軸にしたような内容だとどうも興ざめしてしまうことがある。
「日本人は日本人としか話さない」という悪評が頭をちらついてしまう。
また、どこか本書は日記を他人向けに書き直したような感じがする…
従来紀行文とはそういうものなんだろうけど、どうも物足りない。
虚構でも良いから物語を求めてしまうのは我が儘なんだろうか。
