古祇 さんのレビュー一覧
投稿者:古祇
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紙の本翻訳夜話
2002/02/23 14:19
翻訳家を目指す人はぜひ読んでおきたい新書
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言わずと知れた翻訳家・柴田元幸氏と、小説家であり趣味で翻訳をしている・村上春樹氏の共著。ほとんどは、このふたりの対談で構成されている。以下に内容を紹介する。
(1)村上春樹氏まえがき
(2)東大助教授である柴田氏の授業に、村上氏を迎えて行なわれた対談。途中、東大生たちからの質問を交え、村上・柴田両氏が、翻訳に挑む姿勢や、翻訳に対する愛情を語る。
(3)翻訳学校の生徒たちと、村上・柴田両氏による質問会。例えば、原文による「私」は、そのまま「私」と訳すのか、それとも「僕」か「俺」なのか、など、翻訳における実践的なお二人の考えが聞ける。
(4)両氏の「競訳」。カーヴァーの『Collectors』とオースターの『Auggie Wren’s Christmas Story』をおふたりがそれぞれ訳す。おなじ物語なのに、それぞれの訳を読み比べてみると、雰囲気や登場人物像が微妙に違っている。翻訳は裏方と言えども、訳には訳者の「色」はしっかり出るものなのだなあ、と感じた。
(5)若い翻訳家(岸本佐和子・坂口緑・畔柳和代・都甲幸治・前山佳朱彦・岩本正恵)と両氏の対談。(4)に関するディスカッションや、翻訳を進めていくうえでのそうれぞれの思いが熱く語られる。
(6)柴田元幸氏あとがき
(7)(4)の原文
新書なのでサイズは小さめ。しかし、翻訳のことだけでなく、村上氏は小説家としての自身のことを語るなど、村上ファンも必見の充実ぶり。内容が濃いので読み応えがある。また、これから翻訳家を目指す人たちの参考書にもなると思う。
両氏の主な翻訳書は以下の通り。読んでみるとこの新書の奥深さがさらによく解る。
村上春樹 『レイモンド・カーヴァー全集』、ジョン・アーヴィング『熊を放つ』、マイケル・ギルモア『心臓を貫かれて』、ほか多数
柴田元幸 ポール・オースター『幽霊たち』『偶然の音楽』、スティーブン・ミルハウザー『イン・ザ・ペニー・アーケード』、リチャード・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』、レベッカ・ブラウン『体の贈り物』、ほか多数
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