さらささんのレビュー一覧
投稿者:さらさ
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こころ 改版
2002/10/14 20:49
ひたひたと迫る孤独
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Kが死んだのは自分と同じように、淋しくって仕方なくなったからではないか、という先生の独白に、実感と重みを感じました。
「私はただ苦笑していました。しかし腹の底では、世の中で最も信愛しているたった一人の人間ですら、自分を理解していないのかと思うと、悲しかったのです。理解させる手段があるのに、理解させる勇気がないのだと思うとますます悲しかったのです。私は寂寞でした。どこからも切り離されて世の中にたった一人住んでいるような気のしたこともよくありました」。
「私はしまいにKが私のようにたった一人で淋しくって仕方がなくなった結果、急に所決したのではないかと疑い出しました。そうしてまた慄としたのです。私もKの歩いた路を、Kと同じように辿っているのだという予覚が、折々風のように私の胸を横過り始めたからです」。
人を深く愛して、その愛した相手に理解されないこと、または裏切られること。
これほどひたひたと孤独を感じることもないだろうと思う。
家族も親族も他の友人もなかったKは、たった一人の友として先生を信頼していたと思う。女を愛するのとは別の次元で。裏切られた悔しさや失恋のつらさよりも何よりも、手痛く、悲しく、寂寞としただろう。自分を大切にしてくれ、支えてくれ、たった一人信頼していた相手が自分から心を離した。そうして唯一信じていたはずの自分にももう誇りが持てない。もう何もないと思ったのかもしれない。
残された人間にとって、その裏切りの罰としては、死は重すぎる。のだけれど、Kはそうするより他に仕様がなかったのかもしれない。
自殺を肯定するわけではないが、先生も、同じように、そうするより他にどうしようもなかったのかもしれない。
自分はKと同じ道を辿っているのかもしれない、という先生の独白には、何か運命の響きといったようなものが感じ取れます。
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