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佐々木 葵さんのレビュー一覧

投稿者:佐々木 葵

18 件中 1 件~ 15 件を表示

川の書

2002/04/07 13:30

少女の成長物語と世界存亡の物語

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 巨大な川が世界を分断する惑星での物語。川は人々にとっての唯一の交通路であるが、川に出られるのは女だけ。川の中心に横たわる“黒き流れ”という謎の存在のため、誰も対岸にわたったことはない。17歳の少女ヤリーンは、あこがれの川ギルドに入り、そしてそれが彼女の、果ては世界の壮大な冒険と物語の始まりだった。

 「星の書」、「存在の書」と続く黒き流れ3部作の第1作。この「川の書」ではヤリーンが住む世界の説明と、そして“黒き流れ”の正体ワーム(長蛇)との出会いまでが描かれています。ワーム対ゴットマインドといった対決の兆しが見られますが、その詳しい話は「星の書」に描かれています。ファンタジー冒険活劇の醍醐味をとことんまで味わえ、その全ての冒険がヤリーンの一人称で描かれていて、少女の成長物語としても楽しめます。

 壮絶な想像力で構成され表現される、ファンタジー小説。だけどただのファンタジーだけで終わらないのがミソ。必ず「存在の書」まで読んでもらいたい。そうしないと、ヤリーンの物語が終わらないのです。

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星を継ぐもの

2002/04/07 13:03

タイトルが絶妙

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 もしも月面で宇宙服をまとった死体が発見されたら、その正体はなんと5万年前に死亡した、現在の人類と酷似した生物だったと判明したら、どう感じますか?

 近未来、月面で真紅の宇宙服をまとった死体が発見されることから物語が始まります。綿密な調査の結果その死体は5万年前に死亡しているということが判明。また、木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船が発見されるという「事件」も起こり、地球の科学者たちがその謎を解いていく物語。

 「センス・オブ・ワンダー」ってこういうことなのか、と思わせるさまざまな謎・その答え・そして新たな出会い。

 月面の死体(チャーリーと名づけられる)の謎をひたすら解明していくだけのお話なのだが、それがとても新鮮で面白い。新しい世界の話を読んでいく、子供の頃のわくわくする気分に似た面白さがあります。物理学や生物学など難しい理論も書かれているが、それも読みこなせてしまう面白さ(ただしわたしは難しい理論の部分はすっとばした。なので読むところは半分程度に縮まった(^^;)。「SF」って「サイエンス・フィクション」の略だったんだなあと改めて実感。

 そういえば木星で発見された宇宙船の謎は…? と思ったあなたはホーガンの罠にはまってます。間違いなく。

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闇の左手

2002/04/07 12:33

真摯な心

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 人類が地球のほかにも存在しており、その人類たちで組んだ同盟「エクーメン」の使節として、ゲンリー・アイは惑星ゲセンへやってきた。雪と氷に閉ざされた惑星<冬>。その過酷な環境ゆえに、遥か過去に人類がやってきて放棄した植民地。彼はもちろん外交関係を開き、同盟加入を促すための使節である。まずカルハイド王国をたずね、そこでエストラーベンという実力者に庇護されつつ国王に会える日を待ちつづける。そんな中、アイは惑星を巡る陰謀に巻き込まれていく。

 前半はひたすらゲセンの社会や風景を描写する文章が続く。カルハイドとオルゴレインという2大国の様子が、緻密な文章で描かれていき、まるで自分がそこを知っているかのような錯覚を覚えさせる。
 しかし見所は後半半分。大勢の人物が登場し、絢爛豪華な王国風景を描いた前半も面白いが、ふたりきりの会話、ふたりの心のうちを淡々と描いている後半が、なによりも胸に響く。惑星<冬>の中でも一番寒く過酷な地域を選び、脱出劇を試みるアイとエストラーベン。その過酷な自然描写、異性人とのたった二人きりの逃避行の中で芽生える確かな友情が、細かに、しっかりと、丁寧に描かれている。そしてエストラーベンの故郷で迎えるラストシーン。エストラーベンという人間の生き様を思うと、このラストシーンには素直に感動できる。真摯な心は、万国共通なのかもしれない。

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A型の女

2002/04/07 14:37

揺れ動く少女の動きが実は主人公かも

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 アメリカの私立探偵ものの中では、実に普通の男のサムスン。金持ちの妻と別れ、幼い娘がいるのだが妻はもう再婚して、世界中を旅してくらすような優雅な身分。反面、自分はドアに鍵もついておらず、バスタブがない部屋をオフィス兼自宅としている、ちょっと貧乏にシフトした生活。拳銃も持たず、なにかトリッキーな技も持たず、実に地道に人々に話を聞いては依頼をこなしていく。そんな彼の生活ぶりなどが鮮やかに描かれています。

 この第1作目は、サムスンの元に可愛いお嬢さんが依頼人としてやってくることで始まります。「あたしの生物学上の父親を探して」。大富豪の娘が学校で血液型の検査をしたところ、父親と母親の血液型からは自分は産まれないとわかったというのだ。自分はA型。母はO型。父はB型。ということは、自分は父と母の子ではないということだ。

 大富豪の遺言にまつわる、家系の謎。陰謀。出だしの雰囲気からするととても想像がつかないようなラストが待っています。家族の謎を解き明かしていくサムスンに対する、彼女の心の揺れが、サムスンの心まで揺さぶる。少女の悲しい心の内が、読後の心に染みます。

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スピリット・リング

2002/04/20 15:43

少女の冒険物語

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

舞台はルネサンス華やかりしイタリア。高名な錬金術師であり、大魔術師として名高いプロスペロ・ベネフォルテを父に持つ、フィアメッタという少女が主人公。
父の手伝いをしながらこっそり魔法の勉強もして、そして父のところにお城の仕事でくる近衛隊長に恋心をいだき、結婚していく友人たちに嫉妬をし、女の子だからと本格的に魔法を教えてくれない父に怒りを覚えるフィアメッタ。

領主の一人娘の結婚式の当日、その結婚相手に城をのっとられることからフィアメッタの生への冒険が始まる。
敵はロジモ公、目的は父の魂の「死霊の指輪=スピリット・リング」化の阻止。相棒は、淡い恋を抱いた近衛隊長の(彼とは似ても似つかぬ田舎男だけど)弟、トゥール。

しょっぱなからハラハラドキドキの連続。フィアメッタの父の芸術とも言える魔法の数々や、「スピリット・リング」の作り方、トゥールの優柔不断っぷり、フィアメッタの逃亡シーンなどなど見所満載となっている。

フィアメッタの恋の相手、近衛隊長の弟思いが見られるシーンや、ベネフォルテが娘を思うシーンなど、家族愛がテーマなのか、とも思えてしまう。

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ネアンデルタール

2002/04/20 15:40

雪男などの伝説をうまくまとめた作品

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

古人類学者のマットとスーザンは、恩師ケリカットがタジキスタンで行方不明になったと連絡を受け、先史調査研究所へ向かう。
ふたりはそこで、25年前!のネアンデルタール人の頭蓋骨を見せられ、そのネアンデルタール人を追って行方不明になったケリカットを探しに、タジキスタンへ向かう。

「雪男」などの超常現象話をうまくまとめ、そこに人類の進化の過程での謎、ネアンデルタール人を絡めた作品。
古人類学の勉強もついでにできるお得なお話。
進化の過程をかいま見ることができる。

果たして、本当にネアンデルタール人はいるのだろうか。
なんだかとてもわくわくさせる物語だ。

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ダーティペア独裁者の遺産

2002/04/07 13:36

SF+ラブコメ+アクション

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 第4作目で封印されていた「オリジナル」のダーティーペアの新作。これはMSNのオリジナルコンテンツとして、MSN上で連載されていました。わたしもこれ目当てにMSNに入ったくち(すぐに解約したけど)。ちらっと見たかぎりでは、出来栄えはよく、へぼいわたしのPCでもそこそこ見られる、いいコンテンツだったと思います。絵もちゃんと安彦さんだったし。

 今作は、ダーティーペア(いやラブリーエンゼル)結成直後の話になっています。ケイとユリの2人がまだ新人のトラコン(トラブルコンサルタント)なのですが、やってることは新人時代からベテラン時代まで大して変わってません。最初っから彼女たちは大陸は沈める、生態系はぶっ壊す、惑星も壊す、と荒っぽい仕事をしているようです。今作は、後には2人の有能なパートナーとして活躍しているクァール(銀河系最強の「絶対生物」。先史文明が生み出した人工生命体)のムギとの出会いがわかるようになっている、ファンには嬉しい作品です。

 ちょっとしたSF用語に耐えられれば、実に楽しいエンターテイメント小説として読めます。スピーディーな展開、しっかりとした構成・時代背景、テンポのいい会話など、エンターテイメント小説としてもSF小説としても、充分読める、いいシリーズです。今まで「SFはちょっと…」とためらっていた方にこそ、お勧めしたい作品です。ケイとユリの2人の美女あり、アクションあり、ラブロマンス(だいたい最後でこけるけど)あり。ね? 楽しそうでしょ。

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あいどる

2002/04/07 12:24

作者からみた日本像が楽しい

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 「ヴァーチャル・ライト」から始まる3部作の2作目。日本を舞台にすることが多かった著者であるが、今回もまた日本で物語が繰り広げられる。

 世界的なアーティスト「ロー/レズ」のレズが、日本の電脳アイドル「麗投影(レイトウエイ)」と結婚したがっているといううわさが世界に広まったことから物語が始まる。レズのファンである少女チアとある特殊な能力を持った青年レイニーがそれぞれそのうわさを追って物語をつむぎ、最後には日本で(しかも日本の場末のラブ・ホテルで)その糸が結びついて物語を終焉へと導くのだ。

 レイニーの持つ特殊能力が、いまいちわたしのぼんくらな頭には理解できなかったが、途中重要な役として出てくる「マサヒコ」「ゴミ・ボーイ」といった「オタク」や、公衆電話のピンクチラシなど、著者の日本観察の視点の面白さがよく出ている。
 チアがマサヒコやゴミ・ボーイと一緒に訪れることになる、香港の九龍城をモチーフとした電脳都市のイメージは圧巻。登場人物が扱うコンピューターの形態などにもわくわくさせられる。
 「ヴァーチャル・ライト」に出てきた山崎という学者が今回も重要な位置を占めているので、前作から読んだほうが面白い。だが、この作品だけでもヴァーチャル・アイドル、ロックシンガーの熱狂的ファンなどといったどちらかというと身近な存在が出てくるため、十分楽しめる。

 レズはどうやってヴァーチャル・アイドルの「麗投影」と結婚しようというのか、その結果はどうなるのか、などもしかしたら未来はそういうものなのかもしれないと感じさせる。グルーヴ感のあるストーリー展開や文章運びはさすがとうなってしまう。

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死者の心臓

2002/04/07 13:41

エジプトの空気

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 「古い骨」から始まるスケルトン探偵、ギデオン・オリヴァーのシリーズ第7弾。
 大学で人類学教授として特に古い骨を専門にしているギデオンは、ひょんなことから警察の手伝いをするようになり、ついたあだ名が「スケルトン探偵」。そんな彼がしぶしぶ引き受けたエジプトでの仕事。エジプト学研究所の宣伝用ビデオのナレーションとして出演することになり、妻とともにエジプトへ行く。そんな中、研究所の所長がナイル川を進む豪華船で不審な死をとげる。研究所の裏に怪しい人骨が発見される。所長の死は事故なのか、殺人なのか。現地警察との協力の元、ギデオンの捜査が始まる。

 このシリーズの特徴は、世界各地に出かけるギデオン夫妻の目で見た各地の描写が美しいこと。まるで目の前がその土地になってしまうかのような錯覚を起こさせる。しかもただの観光ガイドのような描写ではなく、ギデオンの人類学的・考古学的見地からの歴史案内などもあり、観光ガイドを買うよりも情報はありそうだ。二人が食べるご当地の食べ物は湯気が見えそうだし、結婚してもう長いはずの二人のアツアツぶりも見えてくる。

 ただのミステリーとしてより、何かの知識も得ることができるのでお得? なシリーズです。

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炎蛹

2002/04/20 15:32

人間以外の恐怖

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新宿鮫シリーズ第5作。
今回は「蛹」というタイトルからもわかるように、「虫」が影の主人公。そしてその虫を扱う植物防疫官の甲屋(かぶとや)が、鮫島とともに敵を追い詰めていく。

連続娼婦殺人、連続放火、外国人マフィアによる盗品の売買、この3つが絡み合い、そんな中で殺された娼婦が日本に持ち込んだと思われる、南米の「フラメウス・プーパ」という恐ろしい害虫の蛹が消えていた。
その害虫は、羽化すれば恐らく日本の農業全てを全滅させるであろう、恐ろしい虫だと甲屋はいう。実際、南米では「フラメウス・プーパ」によってその年の作物が全滅しているとも。
とにかく数日後にせまっている羽化までの間に、蛹を見つけ出して処分しなければいけない。
ところがその蛹は、連続殺人事件とも密接に絡み合った人間が持ち出していて、なかなか見つからない。

「フラメウス・プーパ」とは大沢氏の想像の産物だということだが、そんな害虫が日本にもし上陸でもしたら、恐ろしいことになるだろうということは簡単に想像できる。
そして害虫や、日本にはなく日本の同種を脅かすかもしれない外国の種を国内に持ちこませないために活躍しているのが、甲屋のような、植物防疫官なのだという。

海外旅行が当たり前になり、海外から日本へ人がやってくることも当たり前になった今の世の中、植物防疫官などの仕事に従事している人たちの仕事はとても大変になっているのだろうと思う。
そして、わたしたちも海外に行ってへんなものを持ちまないように、海外へ持ち出さないように、しないといけないと痛感。

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男たちの絆

2002/04/20 15:30

父と息子の物語

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パウダー警部補シリーズ第3作。
着実に年を取っているこのシリーズの主人公たち。パウダーはその独善っぷりにみがきがかかり、いやみな口調は冴え渡っている。
だけどそんなパウダーに年老いた男の寂しさのようなものが感じられる作品。

父親が消えたとパウダーのいる失踪人課へやってくる少年。その少年の依頼を受け、父親の消息を探していくが、まず彼の家に写真や手紙などの身元を示すものが一切ない。勤めていた会社でも彼を切羽詰って探している風でもない。
父親を探しているのは、少年とパウダーだけ。
少年との交流も交え、パウダーは父親の居場所を探すがそのうち、父親の正体を暴くことになっていく。
部下のフリートウッド刑事は身障者だけを狙う殺人鬼がいるという訴えを受け、その調査にあたるが…。

いくつかの事件が交錯し、最後にパウダーは折り合いの悪かった息子と仲直りをすることになり、そして退職を示唆する発言をする。

詳しく語るとネタバレになるので語らないが、「アメリカならでは!」(いやもしかしたらイギリスなどでもあるのかもしれないけど、少なくとも日本ではなかなかお目にかかれないだろう)というのが、事件の真相である。
いくつかの事件が同時に進行しているため、途中でごっちゃになる時もあるが、最後に全ての種明かしをパウダーがしてくれるので安心。そしてまたパウダーの活躍を読みたいのだが、彼はもう退職しているのだろうか…?

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泥棒はボガートを夢見る

2002/04/07 14:52

恋に落ちた泥棒

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 ローレンス・ブロックといえば、マット・スカダーシリーズが有名です。わたしはそちらのシリーズも大好きですが、そちらの暗い雰囲気に疲れた時など、この「泥棒バーニイシリーズ」がオススメです。

 この主人公のバーニイ・ローデンバーは、ニューヨークで古本屋を営みながら、泥棒を副業としている(どちらがメインでどちらがサブかは、多いに疑問がありますが)独身男性。毎回、なにか副業中にややこしいことに関わることに才能がある。今回は、ある書類を盗んでくれといわれるのだが、結局は失敗してしまう。依頼人にそのことを告げようとするのだが、依頼人は消えてしまっている。
 また、バーニイの古本屋に美しい女性が現われ、ハンフリー・ボガードの本を買っていく。それをきっかけにバーニイは恋に落ち、二人で毎日ボガードの出演映画を2・3本立てで見に行くことになる。彼女は第2次世界大戦後に建国された、アナトリアという国が出身だ、とバーニイに告げ、一度だけバーニイを自分の部屋に誘い、その次の日には消えてしまう。

 この、アナトリアという建国されたが世界から認知されなかった国をめぐる人々の物語。なのですが、このシリーズにかかると、重苦しい雰囲気はちっともなく。
 持ち味はあくまでもバーニイと他の登場人物が繰り広げる、馬鹿馬鹿しくも笑ってしまう、洒落た会話の数々。今回はまた、ハンフリー・ボガードの出演映画に関する知識も得られます(役に立つかどうかは別)。ボガードといえば「君の瞳に乾杯」が有名ですが、これによるとかなりB級チックな映画にもでていたようです。

 洒落て、粋なニューヨークの雰囲気を感じたければ、また、防犯の知識を得たければ、ご一読下さい。

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死の演出者

2002/04/07 14:43

当時の社会事情を色濃く反映

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 いつもサムスンは依頼人がなくて暇を持て余しているような感じがするが、今回も彼は暇でしょうがない状態である。そんな折、殺人罪に問われ、留置所に入れられている娘婿を助けてほしいという依頼が舞い込んでくる。しかしサムスンを選んだ理由は「一番安かったから」。がっくり。サムスンもそれにはぶつぶつとなにやらいいわけを本文中でしていたりして。

 ベトナム戦争から帰還した娘婿が、ある警備会社で警備員として働き始めた。彼は警備を依頼している男をたずねてやってきた私立探偵を、警備会社から与えられていた銃で撃ち殺してしまう。殺人罪で逮捕された彼は「わたしは依頼人に、「あいつを殺せ」と言われたから殺したのだ」と主張する。
 その妻はひたむきに彼の無罪を信じ、彼のことをサムスンに話す。妻の姿に心打たれてサムスンは捜査を開始するが、殺された私立探偵・警備会社社長・警備されていた男であるオークション会社社長の3人の関係を洗い出すうちに…。

 本当にそうやって人を殺せるのかといった疑問は沸くが、当時アメリカでベトナム戦争帰還者がいろいろと問題になっていたことがよくわかる。そんな物語。

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裁判はわからない

2002/04/07 14:31

アメリカ流成功者の姿

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 「探偵になりたいで始まった弁護士事務所お抱えの調査員、スタンリー・ヘイスティングスのシリーズ。
 スタンリーが雇われているリチャード・ローゼンバーグは民事専門のやり手弁護士。そのリチャードの裁判を助けるための調査をするのが彼の仕事。とはいえ、その仕事は「すべって転んだ」人たちから「すべって転んだ」事情を聞き、現場の写真を撮るものがほとんど。そんな彼が何故か事件に巻き込まれて(自ら望んで…?)いくのがこのシリーズ。巻き込まれていく中で自然と知り合いになったマコーリフ刑事、スタンリーよりも頭が鋭くて行動力もある妻のアリスなど、登場人物がみんなほんわかとしていることも、このシリーズの特徴。

 今回はリチャードが本格的に刑事事件を扱うことになり、その事前調査をスタンリーが行うこととなったことから始まる。現代アメリカのさまざまな分野でそれぞれ成功を収めている男たちが、週末になると集まってポーカーを楽しんでいる。家に帰ると妻が死んでいる。さて、どう考えても夫が殺したとしか思えない。しかし…? その事件の裁判に証言者として出席することとなったスタンリーの、事件解決へのドタバタが楽しい。

 現代アメリカの成功者とは、いったいどういう分野の仕事をしている人たちなのか、そんなアメリカのちょっとした姿もわかります。

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ホワイトアウト

2002/04/07 15:02

日本を舞台にした冒険小説

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 季節は真冬。深淵の森と雪に覆われた奥遠和にある日本最大のダムがその舞台。そのダムが職員を人質にテロリスト達に占拠される。かろうじて難を逃れた富樫という職員が、ダムと仲間を救うべく、テロリストに立ち向かっていくのがメインのストーリーです。もう一本のストーリーとして、富樫の過失で死なせてしまった(というと語弊はあるけど)、このダムの職員と婚約をしていた女性がテロリストに捕らわれてしまい、その女性が見るダムの中、つまりテロリスト達の内情が語られていきます。
 富樫は身に付いているダムについてのあらゆる知識を駆使して、テロリストに向かっていきます。ストーリーとしてはそのテロリストがどうやって身代金を受けとり、逃げ出すのかというのがポイントとなり、話が展開していきます。

 しかし、この小説の本質は、対テロリスト小説、と言うよりは、富樫と彼を襲う雪との戦い、またその雪との戦いを通じて表現される彼の内面の葛藤にあるのではないかと思われます。中に捕らわれた女性の婚約者は、一緒に救助に出た彼の友人でした。その友人を救えなかったという彼の悩み。そして今度こそは自分の手で、自分の力で、婚約者の女性を救うのだという決意。そういう彼の心すべてを、奥遠和の雪が表にさらけ出されていきます。

 つまりこの小説の陰の主人公は、奥遠和の雪ともいえます。その雪の描写、ダムという山奥に降る雪の特質をうまくとらえた表現。圧倒的な質感を感じさせ、なによりもこの小説を「冒険小説」たらしめている雪と氷の表現は、まさしく圧巻です。

 日本を舞台にした冒険小説。寒い一日にいかがでしょうか。

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