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5 件中 1 件~ 5 件を表示

現代人に必須の科学リテラシー

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 学習指導要領と教科書検定が理科教育をつまらないものにしてしまった。子どもたちの理科離れが進み、日本人の科学リテラシーの低下には目を覆うばかりだ。そんな現状に危機感をもつ200人もの人たちが集まって作った検定外の中学理科教科書、それが本書である。
 現場の教師や研究者たちを中心にしたボトムアップ方式の成り立ちと、教育現場で培われた経験の蓄積を元にしていることが、まずは本書の大きな特長だろう。そんなかれらの理科教育への熱い思いが、本書の内容にも色濃く反映している。
 理科教育において知識を伝えることはもちろん重要だが、その知識はどのようにして得られてきたのかを知ることもまた、科学リテラシーにとっては大切なことだ。本書を読んでまず感じたのは、自然科学はどのような活動なのかをきちんと伝えようとしているということだ。冒頭で「これまでに得た知識をもとに仮説をたて、それを検証する方法を考え、実際に自然に問いかけてみる」という科学の活動を紹介し、その後の各章の実験でも「予想を立てて、調べてみる」という姿勢が重視されている。自分の頭で考えること、自分の手で確かめてみること、それが科学の楽しさなんだよ、という著者たちの声が聞こえてくるようだ。
 科学のもう一つの特徴は、その体系性、個々の知識の間の論理的な連関性だが、本書ではこの点も重視されている。本書の内容は物理、化学、生物、地学の各分野にわたっているが、これらの分野の知識を結び付けるのに重要な、原子、分子、力、質量などの自然科学の基本概念を早い段階で提示することによって、物質の状態変化や熱、光合成、そして鉱物の成り立ちなどについても、見通しよく学ぶことができる構成になっている。
 本書には、II巻、III巻が続く。こちらも大いに楽しみだ。

(彦坂暁/広島大学 総合科学部 http://home.hiroshima-u.ac.jp/akirahs/index-j.html)

(※この書評は第1版刊行時のものです)

【II巻、III巻はこちら】
『新しい科学の教科書 現代人のための中学理科 II』
『新しい科学の教科書 現代人のための中学理科 III』

【目次】
第1章 光と色の世界/第2章 音の世界/第3章 物質と原子・分子/第4章 物体と力/第5章 溶液と水溶液/第6章 物質の状態変化と気体/第7章 植物のくらしとからだの仕組み/第8章 植物のなかまと歴史/第9章 大地の成り立ちと生い立ち/第10章 震える日本列島

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遺伝子組換え作物をめぐる、推進派と反対派の群像劇

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 遺伝子組換え作物は、いかにして開発され、いかにして農場と市場に送り込まれ、そしていかにして反対派の激しい敵意にさらされることになったのか。本書は、その歴史的な経緯を、推進派と反対派、どちらにも与することなく語っている本だ。
 物語は植物への遺伝子導入技術の開発競争が続いていた1980年代初頭にはじまる。この分野でトップを走っていた科学者たちの中に突如参入し、かれらを追い抜き、競争に勝利したのが、本書の主役、のちに「バイテクの支配者」となる企業モンサントだった。勝っただけではない。モンサントはその成功を他の先駆者たちの多大な助力に負っていたにもかかわらず、特許によって技術を独占的に支配しようとした。
 開発競争に勝ち抜き、開発した技術はあらゆる手段で支配する。それがモンサントの戦略だ。関連企業を買収して市場を支配し、敵対する者には訴訟を起こし、農家には収穫した遺伝子組換え大豆の種子を翌年に畑に撒く事を禁止した。
 モンサントは資本主義社会の企業としては“正しい”行動をとっていたのかもしれない。しかし、そのような傲慢かつ強引な行動が招くであろう反発を甘く見ていたのがモンサントの誤算だった。農業と食料という人間生活の根幹が利益本位のアグリビジネスに支配されることへの懸念と反感は、やがてヨーロッパを中心に組換え作物の安全性への疑問という形で吹き出し、モンサントを苦境に立たせることになる。
 本書は推進派、反対派両陣営への大量の取材をもとに、研究者、経営者、環境活動家、それぞれの夢、信念、情熱を描きだしている。同時にバイテク企業の傲慢さも、反対派やマスメディアの行き過ぎた煽動も、的確に指摘している。登場する人々は、どちらの側にしても人間臭い人々であり、かれらの群像劇、バイテク戦国時代の歴史物語としても面白く読める本だった。

(彦坂暁/広島大学 総合科学部 http://home.hiroshima-u.ac.jp/akirahs/index-j.html)

目次
日本語版の読者へ
第1章 最初の形質転換
第2章 ワシントンに向かって進撃
第3章 何でもやってやろう
第4章 最初の有用遺伝子
第5章 神の賜物
第6章 毒を好む遺伝子
第7章 遺伝子職人の勝利
第8章 抵抗勢力
第9章 種子戦争
第10章 期待に震える
第11章 勝利の夏、いさかいの夏
第12章 力ずく
第13章 巻き返し
第14章 決壊
第15章 果てしない地平線
エピローグ
訳者あとがき

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実験科学の視点から見た自然発生説論争

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 多くの創世神話は生命は神の奇跡によって創られたと語る。現代科学は生命は太古に無生物から生じたが、現在は生命は生命からのみ生まれ、新たな創造は 起きないと言う。そして「自然発生説」は条件さえ整えばいつでも生命は無生物から生まれうるし、実際に生まれている、そしてそれはまったく自然のプロセ スであり、なんら奇跡は必要ない、と主張した。自然発生説の源流はギリシア・ローマ時代以前にさかのぼり、ヨーロッパではアリストテレスとスコラ学の権 威によって広く信じられてきた。しかし17世紀の科学革命の時代には経験を重んじる実験家たちの挑戦を受け、19世紀に論争は頂点に達し、20世紀初頭 についにその命脈を絶たれる。本書はこの自然発生説論争の歴史を辿った本である。
 本書の特徴は、自然発生説論争の歴史を「実験のもつ力」という視点から見ている点だ。科学史の議論ではしばしば、科学論争の帰趨は事実と論理ではな く、科学者社会の政治的な力関係によって決まるという主張が聞かれる。たとえばコリンズとピンチは『七つの科学事件ファイル』(化学同人)の自然発生説 に関する章で「反対意見を打ち負かすものは事実でも理屈でもなく、力と数の論理なのである」と書いている。たしかに、完全な実験はあり得ないという意味 では、この主張は一面では正しい。しかしそれでも実験には優れた実験と信頼性に欠ける実験が厳としてあり、科学者たちはそれぞれの実験の証明力がどの程 度のものなのかを、常に検討している。「力と数」を決めるのも、最終的には、この実験の力なのだ。著者はこのような立場から、それぞれの実験の優れた 点、問題点を詳細に検討している。とかく科学者間の「政治」や、科学者の哲学的・宗教的背景の分析などに傾きがちな科学史の書籍の中で、実験そのものに 焦点を当てた本書は逆に新鮮に感じられた。実験科学者出身の著者の個性が発揮された本と言えるだろう。

(彦坂暁/広島大学 総合科学部 http://home.hiroshima-u.ac.jp/akirahs/index-j.html)

〈目次〉

まえがき
第1章 信仰
第2章 ハエとそのほかの昆虫
第3章 微生物
第4章 フラスコ戦争の開始
第5章 唯物論、支持派と否定派
第6章 劣化した空気
第7章 体内の寄生虫
第8章 脱脂綿
第9章 細胞の自然発生
第10章 フランス科学学士院における論争
第11章 有害な微粒子
第12章 イングランドのプーシェ
第13章 浮遊する粒子の観察
第14章 もうひとつの問題に関するエピローグ
訳者あとがき
原注
索引

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現代人に必須の科学リテラシー

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 学習指導要領と教科書検定が理科教育をつまらないものにしてしまった。子どもたちの理科離れが進み、日本人の科学リテラシーの低下には目を覆うばかりだ。そんな現状に危機感をもつ200人もの人たちが集まって作った検定外の中学理科教科書、それが本書である。
 現場の教師や研究者たちを中心にしたボトムアップ方式の成り立ちと、教育現場で培われた経験の蓄積を元にしていることが、まずは本書の大きな特長だろう。そんなかれらの理科教育への熱い思いが、本書の内容にも色濃く反映している。
 理科教育において知識を伝えることはもちろん重要だが、その知識はどのようにして得られてきたのかを知ることもまた、科学リテラシーにとっては大切なことだ。本書を読んでまず感じたのは、自然科学はどのような活動なのかをきちんと伝えようとしているということだ。冒頭で「これまでに得た知識をもとに仮説をたて、それを検証する方法を考え、実際に自然に問いかけてみる」という科学の活動を紹介し、その後の各章の実験でも「予想を立てて、調べてみる」という姿勢が重視されている。自分の頭で考えること、自分の手で確かめてみること、それが科学の楽しさなんだよ、という著者たちの声が聞こえてくるようだ。
 科学のもう一つの特徴は、その体系性、個々の知識の間の論理的な連関性だが、本書ではこの点も重視されている。本書の内容は物理、化学、生物、地学の各分野にわたっているが、これらの分野の知識を結び付けるのに重要な、原子、分子、力、質量などの自然科学の基本概念を早い段階で提示することによって、物質の状態変化や熱、光合成、そして鉱物の成り立ちなどについても、見通しよく学ぶことができる構成になっている。
 本書には、II巻、III巻が続く。こちらも大いに楽しみだ。

(彦坂暁/広島大学 総合科学部 http://home.hiroshima-u.ac.jp/akirahs/index-j.html)

【II巻、III巻はこちら】
『新しい科学の教科書 現代人のための中学理科 II』
『新しい科学の教科書 現代人のための中学理科 III』

【I巻目次】
第1章 光と色の世界
 第1節 物体が見えるのはなぜだろう
 第2節 光はどのように進むのか
 第3節 凸レンズでどんな像ができるか
 第4節 光の種類とエネルギー
第2章 音の世界
 第1節 音の伝わり方
 第2節 音の大小・高い低いの仕組み
第3章 物質と原子・分子
 第1節 原子とはどんなものか
 第2節 物質を大きく3つに分けよう
第4章 物体と力
 第1節 力を見つけよう
 第2節 力は相互作用
 第3節 力の大きさをどう表すか
 第4節 圧力とはなにか
第5章 溶解と水溶液
 第1節 水に溶けた物質はどうなっているのか
 第2節 物質を分ける方法
 第3節 酸とアルカリの水溶液
第6章 物質の状態変化と気体
 第1節 物質の状態変化
 第2節 熱と温度
 第3節 常温で気体の物質
第7章 植物のくらしとからだの仕組み
 第1節 生物とは 植物とは
 第2節 いろいろな植物のくらし
 第3節 植物のつくりとはたらき
第8章 植物のなかまと歴史
第9章 大地の成り立ちと生い立ち
 第1節 日本列島とはどんなところか
 第2節 平野のおいたち
第10章 震える日本列島

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最先端の映像化技術で描き出された胎児の発生

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 たった一つの細胞である受精卵から、複雑な体(そしてヒトの場合には精神さえも)が作り出されるプロセス——個体発生——は、この宇宙で最も驚くべき現象の一つだ。
 本書は、そのヒトの発生プロセス、すなわち、赤ちゃんがどのようにして胎内に宿り、体を作りあげ、成長し、誕生してくるのかを、多くの写真を用いて解説した本である。そしてこの「写真」が、この本の最大の特長になっている。

 この本を手に取って、本文を読む前にぱらぱらとめくってみたとき、これらの写真は一体どんな技術によって撮影されたのかと、驚き、不思議に思った。あらゆる角度から見た胎内の胎児の姿、なかでも胎児の体の外側を透明化して内部を透かし見たような写真がたくさん使われているのが驚きだった。
 言葉で表現するのは難しいのだが、たとえばウニのように体外で発生する透明な胚ならば、いろいろな光学系を使って内部構造を顕微鏡で見ることができる。それをヒトの胎児でやってみせたようなイメージ、といえば近いかもしれない。内臓、血管系、神経系、骨格など、胎児の体の各部がどのように出来上がっていくのかが手に取るようにわかる。
 最初はコンピュータグラフィクスで描かれた「絵」ではないかと疑ったのだが、解説によれば、これらの写真の多くはCTやMRIなどの医学用スキャニング装置と、コンピュータによる画像処理によって作られたものらしい。それと知って不思議に思う気持ちは薄らいだが、画像から受けるインパクトは薄れなかった。これらの画像はヒトの発生の新しいイメージを読者にもたらしてくれるだろう。

 写真に添えられている解説文はやさしくていねいなので、専門知識がなくても興味をもって読めると思う。一つだけ不満をいうと、写真にはすべてスケールを入れて欲しかった。写されているものがどのくらいの大きさなのかわからずに、何度かいらいらさせられた。

(彦坂暁/広島大学 総合科学部)

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