さかなさんのレビュー一覧
投稿者:さかな
5 件中 1 件~ 5 件を表示 |
紙の本黒と茶の幻想
2002/04/14 04:00
事実は視点の数だけ解釈できる
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
読み終わったあと、『三月は深き紅の淵に』の最終章を読み返して鳥肌が立った。そこには、この話の冒頭がそのまままるごとあった。あの話は、ここに来るための物語だったのかと理解できた。
主要な物語は屋久島をモデルにした島を旅行する4人の男女の行動から成るのだが、ここにかつて失踪した憂理という女性の影が色濃く落ちる。彼女の親友だった女性→一面識ぐらいしかなかった男性→かつて恋人だった男性→顔見知り程度の女性……視点と彼女との関係は濃くなったり薄くなったりしながら話が進む。そして、一番関連の薄そうな彼女の視点こそが、真理を突いていく——筋立てはそう複雑でもないが、拡散する物語の要素の、その密度に圧倒される。
螺旋階段をのぼるように、とにかく一気に読んだ。読書の面白さが凝集した本だと思う。作者の年代からプラスマイナス15歳の人は読んでおくべきだと思った。
紙の本ドミノ
2002/04/14 03:48
伏線のドミノ倒し
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
まず表紙をめくったところにあるイラストつきの登場人物を眺めていただきたい。実に老若男女バラエティのある人物の、それぞれの事情を魅力的に描くところからこの作品は始まる。
ノルマ達成ぎりぎりの銀行員、爆弾を抱えたテロリスト、始めてのオフ会に向かう句会の老人、オーディションを受けたばかりの子供たち——バラッバラに配置されたまるで何の関連性もなく脈絡のない登場人物たちがパタパタと交差していく。東京駅というキーワードで綺麗に結び付けられたその瞬間の気持ち良さときたら!
コミカルでスラップスティックで気持ちがイイ、まさにドミノ倒しを見てる感覚。恩田陸作品で論理的に一番好きです。
2002/04/14 04:13
スラップスティック・オカルト
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
主人公は漫研の部員。部誌の製作に追われている。やたら美形で知的な部長、無愛想で幽霊部員スレスレの部長の弟、ミステリアスな美人、そしてやおい妄想にとりつかれた友人に囲まれている。主人公は自分たちの住む町に伝わる隠れキリシタンを題材にした悲恋の物語を描こうと資料集めに奔走する。それが彼女にとってのオカルティックな生活の始まりだったのだ——。
コミカルなようですが、地名にまつわる謎などの作り込み方が丁寧で感心しました。そのくせ、とにかくもう徐霊の方法が報復絶倒。漫研部員必見というか、所属していた人ならもう涙なしでは読めません。人気シリーズ『聖霊狩り』のプレ物語でもある本作、読んでおいて損はない。というかむしろおすすめです。
紙の本聖霊狩り 贖罪の山羊
2003/05/20 21:30
購われたものは何だったのか
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
安内(アドナイ)市舟山(骨山)を舞台にした『闇がざわめく』『聖霊狩り』シリーズのブラックガーディアンも、これで終了です。
闇がざわめくと聖霊狩りは、同じ場所を舞台にしながら、主役が交代してしまったために安内市組の物語の描写が非常に削られてしまって、どちらかというと闇がざわめくが熱烈に好きな自分からしてみえれば、残念なこと極まりありません。
でも、あまり描かれないからこそ、募る妄想もあるわけで。最後あそこまで極端な行動に走ってしまった彼の、その暴走の『最初』の最初はどこだったんだろう、とか。まるっきり出番が少ないけどヒーローの中のヒーロー(断言)物語中一番能力が高い彼女の心の内を萌に成り代わって推測してみたりとか…彼と彼女(と彼女)の物語は、作品が終わってからもまだ、自分のなかで息づいています。
ヤミブン&御霊部での続編があるようですが、自分としては安内組の続編を熱烈に読みたいです。書いてくれないかなー。
5 件中 1 件~ 5 件を表示 |