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  3. 鳥居くろーんさんのレビュー一覧

鳥居くろーんさんのレビュー一覧

投稿者:鳥居くろーん

206 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

ひらけ!きのこワールド!その無用な情熱に乾杯

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

おっ、乙女の玉手箱シリーズ!宝箱じゃない、玉手箱!この微妙に古風で魅惑的な響き!

かつては生き物の本と言うと犬猫といったペット、さもなくば教育モノか図鑑くらい、といった窮屈さを感じさせるもんだったけど、近頃は、なんだかよくわかんないマイナーな生き物の本も出るようになった。しかも多様な視点で取り上げられるようになって。たとえばそんな生き物たちのフォルムだとか配色だとか、デザインという観点から……そんな流れで、キノコにもこんな本が出版される日が来たのだなぁ、などとちょっと感慨深く。

知る人ぞ知るキノコ女子にして重度のキノコ病患者・とよ田キノ子さんの手による、ビジュアルに特化した「きのこカタログ」。編集がすこし変わってて、五つの動詞をテーマにして章が立てられている。

雑貨や服飾、切手など、きのこアイテムが一堂に会する『愛でる』
日本全国のきのこスポットを巡る『旅する』
意匠やシンボルとしてのキノコ、生き物としてのキノコ、本・写真・映画……『調べる』
ホクトぉぉぉぉ!エリンギぃぃぃぃ!『食べる』
キラ星のごとく活躍するきのこアーティストたち『発信する』

おお、この五つの「Do」に込められたアクティブなパワー!俺が追い求めてきたのはこれだ!キノコ雑貨を集める、キノコ写真を撮る、キノコオブジェのある公園を探索するなど、どう考えても無駄なことにだって、実はメチャメチャ意義があるような気が俺もしてきた!
現代というカチコチと凝り固まった世界に、自分なんかは窮屈さを感じるわけだけど、こーいう感性に触れるとノーミソに風穴を空けられるというか、ブチ抜かれるというか、はっはー、なんだか元気が出てくるねー(なに言ってんだか)。

さてさて、この本でもうひとつ注目すべきはデザインかな。五つの章はそれぞれ橙、緑、青、ピンク、紫を基調に構成されていて、そのカラフルさがキノコをかわいくポップに演出している。気分がウキウキするね。それでいてシュールで妖しい空気もふわっと。レイアウトもよく練られているみたいだし、印刷もバッチリ。

個人的にスゴイ良い出来だと思うんだけど。これを機にもっときのこコレクターやきのこクリエイターが増えるといいな。

ただ、この『乙女の玉手箱シリーズ』というのが、まだ『きのこ』の他に『マトリョーシカ』しか出てないのが気になる。きのことマトリョーシカ……いくら玉手箱に入れるったってマイナーにもほどがある。きのこの名誉のためにも早く仲間を増やしてくれい。

それにしてもグッチのきのこスカーフが素敵すぎる。

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紙の本

紙の本センセイの鞄

2012/01/12 22:00

センセイの鞄・評 fromキノコ視点

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

≪以下引用≫

「ツキコさん、その魚は生きがよさそうだ」
「ちょっと蠅がたかってますよ」
「蠅はたかるものです」
「センセイ、そこの鶏、買わないんですか」
「一羽まるごとありますね。羽根をむしるのが難儀だ」
 
 勝手なことを言いあいながら、店をひやかした。露店はどんどん密になってくる。軒をぎっしりとつらね、呼び込みの口上を競いあっている。
 おかあちゃん、このにんじん、おいしそうだよ。子供が買い物籠を提げた母親に向かって言っている。おまえ、にんじん嫌いなんじゃなかったの。母親が驚いたように聞く。だって、このにんじん、なんかおいしそうなんだもん。子供は利発そうな口調で答える。ぼうやよくわかるね、うまいんだよっ、この店の野菜は。店の主人が声をはりあげる。

「うまいんでしょうかね、あのにんじん」センセイは真剣ににんじんを観察している。
「普通のにんじんに見えますけど」
「ふうむ」
 
 センセイのパナマ帽が少しはすになっている。人波に押されるようにして歩いた。ときおりセンセイの姿が人に隠れて見えなくなった。そこだけはいつも見えているパナマ帽のてっぺんを頼りに、センセイを捜した。センセイのほうはわたしがいるかいないかにはぜんぜん頓着しない。犬が電柱ごとに止まってしまうように、気になる露店の前に来ると、すぐさまセンセイも立ち止まってしまう。
さきほどの母子連れが茸の露店の前に佇んでいた。センセイも母子のうしろに佇む。
 かあちゃん、このキヌガサタケ、おいしそうだよ。おまえ、キヌガサタケ嫌いなんじゃなかったの。だってこのキヌガサタケ、なんかおいしそうなんだもん。母子は同じことを言い合っていた。

「サクラだったんですね」センセイは嬉しそうに言った。
「母子連れっていうのが、ちょっとした工夫でしょうかね」
「キヌガサタケってのは、やりすぎです」
「はあ」
「マイタケくらいにしておいたほうがいい」

≪引用終了≫


……とらえどころのないほんわりとした中に、時おり妖しさ、怖さが見え隠れしたりする独特の文体を持つ川上弘美のベストセラー。四十路手前の「ツキコ」さんと、その高校時代の教師で、どっからどう見ても正真正銘おじいさんの「センセイ」。師弟のような酒飲み友達のような恋人のような…という奇妙な間柄のふたりが、ほぼ四六時中酔っぱらいつつ、すっとぼけた掛け合いをしながら時を重ねていく。

ここに「キノコ狩」の話が入っていて、けっこう密度が濃いのでそれもおもしろいのだけど、それとは別に露店の市を二人で歩く話「ひよこ」の一節にインパクトがあるので引用してみた。……キヌガサタケ(激マイナー食材)売ってるってすごいな、というか、茸の露店ってこういう場所に普通あるか?これ日本?

もっとも、この作者の場合、本人が酔っぱらったまま文章書いてんじゃないかと思われるフシがあるばかりか、ラリってんじゃないかと疑いたくなるような幻覚の描写もしばしば出てくるので、冷静なツッコミはなんら意味をなさない。本書の「キノコ狩」の話では、まさしく毒キノコを食べる話題になって、キノコ汁食べて酒飲んで干しベニテングタケ?噛んで、あげくに最後わけわからなくなっている。

この本の良さは、老いらくの恋がどうとか、年の差なんてとか、そういう世間知からかけ離れたところに存在すると思う。で、その場所ってのは、酔っぱらって毒盛られて、あーもうわけわかんないってとこに、ぷくりと生まれてくる、なんだかデキモノみたいな、無垢の心なんだと思う。それはもう危なっかしいし、どうにもばかばかしい、そんでもって無視できない、そんなものだ。

酒の力を借りて意識と無意識のあいだをさまよう。妙に視点がおぼつかない気がするのも、妙に地に足がつかない感じがするのも、きっとそのため。そこで見つけた自分の気持ちは、本物なのか、それともまぼろし?うん。酔っぱらっているのでそれすらもどうでもいい。

以上、つまらぬゴタクを並べた上で、川上弘美をキノコ作家と認定シマス。

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紙の本

紙の本ドリフターズ 1 (コミック)

2011/08/04 23:24

歴史上の偉人たちを仮想空間で闘わせたら!?この壮大な物語の主人公は……え?誰それ?

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

何時のどこだかよくわからないファンタジー世界に次々とさまよいこんでくる歴史上の偉人たち。彼らはその世界で大きな力を持ち、漂流者(ドリフターズ)と呼ばれ恐れられていた。そんな中「漂流者は一人として生かしてはおけぬ」そう語り妖魔の大軍を率いる巨大勢力が国境をおびやかす。その名は「黒王」。そして彼の配下にも、歴史上の偉人の姿が見られるのだった。

「どこに行ったって俺たちに明日なんてねぇよ」

闘争本能だけで闘い、理由も分らぬまま戦に身を投じる「漂流者」たち。彼らに本当の明日は来るのか……。



「歴史上の人物をカードゲームにして対戦したい!」

という作者のサブカル的好奇心から突っ走ってるだけなんじゃないかと疑いたくなるようなハイテンション・アクション漫画。迫真のアクションシーンとカッコいいセリフ回し、さらにはスケールのデカすぎるストーリーに、何より世間体を全く気にしない出血と殺戮のオンパレードで勇名をはせた『HELLSING』の平野耕太の作品なので期待大。

それにしてもすごいのが召喚されてくる人物のセレクション。主人公がいきなり島津豊久!マイナーすぎる!趣味的すぎる!この辺の読者無視の傍若無人ぶりがまたサブカル的にサイコーかと。

その他登場人物

織田信長
那須与一
ハンニバル
スキピオ
ワイルドバンチ強盗団
土方歳三
ジャンヌダルク
アナスタシア(ロシア皇女)
源義経
菅野直(撃墜王)

国内国外・古今東西を問わず、なかなかの人選。これも「実は死んでいなかった」みたいな噂のある人物ばかりを集めたのがミソらしく。黒王側の偉人は魔術が使えるようなので、もはや何でもアリですな。三国志の武将出ないかな。

それはそうとカバー取りはらった表紙・裏表紙&巻末のオマケはあいかわらず正気とは思えないひどさだが、この人はこっちが本筋なのか……

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紙の本

自称「最低」の名に恥じぬ下品さ&くだらなさが満艦飾の逸品。これを手にするものは等しく人格を疑われるであろう……

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

もはや神格化された漫画家・手塚治虫。

その大家の作画を完全にパクった挙げ句、もはや非の打ちどころのないほど下品でくだらない漫画に仕立ててしまう田中圭一。手塚サイド、及び手塚ファンにとっていわば悪夢の権化、この最低最悪の存在に対しては、もはやコックローチを口につっこんでカラになるまで噴射しても飽き足らないであろう。

それでも出版してもらえるあたり、ああ、手塚治虫って懐がひろいなぁ、などと好感度がアップ・・・したりしないとは思うけど。

中身は説明するまでもなく壮絶にくだらない。ひどい。どうしようもない。自分の表現力の限界をはるかに突破するのでこれ以上の表現ができない。ガンダムとかジョーとかのパロディがチョロっと混じってるのはまあ良いとして、本宮ひろ志の絵を突然出すのは勘弁してほしい。

これを読んで死ぬほど笑える自分の品性の低さに愕然とする、そういう意味でもこの漫画、サイテー。

家族・友人・知人にこの本を見つかった場合、確実に人格を疑われるので、自虐的に裏表紙に書いてある通り、読後は速攻で○ックオフに持ち込みましょう。

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紙の本

紙の本四畳半神話大系

2011/04/24 00:28

「また阿呆なもの作りましたねえ」

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

当時は大して人気もなかった5年以上前のこの本が、今さら本屋で大量に平積みになっていた。なんのこっちゃと思っていたら、どうもアニメ化されたのが好評で、なんとか祭のアニメ部門で大賞までもらったからだと、森見ファンの知人の談。
人気の高い「歩けよ乙女」でも「有頂天」でもなく、なぜ「四畳半」をアニメ化したのか疑問ではあったが、さっそくDVDを借りて観てみると、確かにこれはものすごく出来がいい。ということで、原作も気になってしょうがないので読んでみることにした。

本作は森見氏のデビュー作『太陽の塔』に次ぐ2作目。
京都大学に在籍する主人公が、無駄に高い知能指数をドブ川へと垂れ流しつつ、目指すべき学生の本分を力いっぱい踏み外した挙げ句、不毛なキャンパスライフをぐだぐだと邁進する、という内容は前作と本筋で変わらない。

ただ、少々筋立てが凝っている(凝りすぎている?)点と、フィクション色が濃いという点が違っている。わけても現実離れ寸前のキャラクター設定が出色で、(ヘタレの主人公を除く)各登場人物の八面六臂の活躍たるや、まさしく四畳半狭しといったところか。

「他人の不幸をおかずにして飯が三杯喰える」唾棄すべき悪友。
「中世ヨーロッパの城塞都市のように堅固な」孤高の乙女。
年中浴衣、天狗の高下駄、下賀茂神社の神さま?・・・謎の師匠。

なるほど、このキャラクターたちを映像化したかったわけね。

正直言って、小説としての出来は微妙。プロットが巧妙でおもしろいが、ちょいとやり過ぎというか消化不良気味。主人公のうだうだ学生生活も、元・腐れ大学生の私にしてみれば大いに共感できるところではあるが、そうでなかった人が読んだ場合、どうなんであろうか?間違っても万人受けしない、学生の自主製作映画のようなものだと思って読まれたし。

そんな原作の構成を大幅に書きかえ、足すべきところを足して削るべきところを削ってなお、元のテイストを損なわないばかりか、むしろ森見的世界を底上げしてしまったアニメ制作陣には脱帽。映像の威力は素晴らしい!

ってこれは書評の投稿欄であったか、失礼。

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紙の本

踏まれても抜かれても……雑草、愛すべき災厄

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

かつて昭和天皇が「雑草という植物はない」とおっしゃられたそうだが、そんなことを言えるのは純度100%の自然愛好家か植物学者、さもなくば聖人君子だけだ。たとえそれぞれに名前が付いているのだとしても、雑草はやはり雑草に過ぎず、ひとくくりにして排除されるべき存在なのだ……

とまあ、建前としてはそう言っておく。

ゴメン、こいつらのことが愛おしくてしゃーない。

たとえば家庭菜園などをしていると頼みもせんのにモコモコと生えてくる。この「頼みもせんのに生えてくる」のが雑草の本質なのだが、ペンペン草ダマシイの塊たる私がそこに親近感を感じてしまうためなのか、ついつい気にかけてしまう。

うーん、タネツケバナの葉っぱってかわいいよなー、残しとこ。おっ、ゲンノショウコだ、珍しいなー、残しとこ。……なんて言ってるうちに畑を制圧されて、いったい何を育てているんだかよくわからない状態になってしまったのも一度や二度ではない。
情をかけたところで何の得もないのだが、だからって名前も知らないというのではそれもなおざりな気がする。そうは思わんかね?ということでこの本。

本書はカラー写真付きの図鑑っぽい体裁を持ちながら、軽妙に雑草たちの人となりならぬ「草となり」を紹介してくれる軽文集。適度に理知的で適度に情緒的な著者の文体は、こちらから見ようと思わなければ決して見えてこない控え目で奥ゆかしい雑草たちを語るのにふさわしい。
著者はガーデナーでもあるので、憎らしい、でもいとおしい、という複雑な心境にも共感できる。ただの観察者目線では得られない温かみが滲み出ているのも、この「愛すべき災厄」ともいうべき雑草たちと直接にかかわり続けてきたからこそだろうと思う。

世の中にはクジラ愛護だトキ繁殖だとかまびすしい人々もいるが、あなたの足元でふんづけられて、それでもなお生き続ける彼ら彼女らの営みを知らずして、なんのナチュラリストよ!……なんて憤慨することでもないんだけど、まあよろしく。

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紙の本

紙の本夜は短し歩けよ乙女

2011/03/07 21:35

「なむなむ」と「おともだちパンチ」で美しく調和のある人生を!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

頭でっかちのヘタレ京大生であるところの「先輩」と、彼が追いまわし続けている総天然系美少女「黒髪の乙女」が、主客交代しながら繰り広げるキュートでポップな痛快大活劇。

夜の先斗町や学園祭などを舞台に、年中浴衣の自称天狗・樋口や鯨飲美女・羽貫、高利貸しの老翁・李白、詭弁論部やパンツ総番長など、魅惑的な脇役を巻き込みながら展開するドタバタは、武田騎馬軍団も真っ青の怒涛の進撃ぶり。著者・森見氏の無用に小むずかしい修辞の連続攻撃が装飾過多なストーリーに花を添える。

本作には達磨、林檎、鯉、招き猫、行燈、炬燵などといった魅力ある小道具がふんだんに用いられている。どこかなつかしくてかわいらしい、そんなアイテムたちが、貧乏くさくて垢じみているのにそれでいてファンタジック、という不思議な世界を演出してくれる。「赤」で統一された視覚的イメージもステキ。

偏屈者の作者ゆえ、「ご都合主義的なハッピーエンドってどうよ?」という自戒と、「妄想の中でくらい幸せにさせてくれ!」という本能的欲求とのせめぎあいがあるようだが、楽しいほうがいいに決まってるじゃんよ!ということで、妄想が現実を凌ぐという仕上がりになっておりマス……いい選択だ。

それにつけても「黒髪の乙女」がキュート過ぎる!もはや反則!ヘタレの先輩など薙ぎ倒し、私が黒髪の乙女ストーキング部の部長に名乗りをあげるぞ!(←ほぼ同類)

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紙の本

本当にこれでよかったのか?ソフトバンク編集部。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「21世紀を賢く生きるための科学の力を培う」というポリシーの下、創刊された『サイエンス・アイ新書』の一冊。
近年のブームで、新書の創刊が相次ぎ、新書という枠組みが随分拡張された感があるが、この本も新書でありながらオールカラーで画質のいいキノコ写真をバリバリ載せており、へたなハンディ図鑑ならばビジュアル勝負でも負けそうなシロモノ。ひと昔前から見れば隔世の感、といったところか。

さて本書、サブタイトルに『見た目の特徴・発生時期・場所から食感・毒の有無・中毒症状まで』などとやたらと長い能書きがついており、「お、硬派。やる気マンマンじゃないの」と思いながらページを繰ってみると……

ちょっと待てー、中身めっちゃ軟派やん。

一種類ごとにキノコを紹介していく、という体裁をとっているものの、内容はぶっちゃけ、きのこエピソード集。『ペンションきのこ』のオーナーであり、名だたるキノコ人とも古くから親交のある著者の多彩な経験談が、軽妙、というかザクザクポワッというか(意味不明)、まあそんな感じで語られていく。『見た目の特徴・発生時期…云々』は写真の下にチョロっと。これでよかったのか?ソフトバンク編集部。

ひとつひとつのエピソードもかなり内容が濃く、特にキノコ中毒体験談はゲリベンなどの描写がリアル過ぎて、凄い内容となっておりますです。他にもゲロが飛び散ったり、女性にタケリタケ(ちょっと卑猥な形のキノコ)持たせたり、しまいには「ボクのキノコ」などと言いだしたり…もはや、やりたい放題。これでよかったのか?ソフトバンク編集部。

この本がこのようになってしまったいきさつは、前書きのところに丁寧過ぎるほどことわってあり、まあ私個人としては大いにうなずけることではあるのだが……いたずらっぽそうな笑顔の著者近影が「してやったり」という顔に見えて、妙に合点がいくのだった。

ということで、タイトルで買ってしまった人は「なんじゃこりゃー」となること請け合いの、素晴らしいきのこエッセイ集というのが偽らざるこの本の評価かと。

評価はどうあれ、どんな知識も経験の厚みには勝てませんなー。

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紙の本

紙の本きのこのほん

2010/12/18 00:41

一富士二鷹三きのこ……

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

今年刊行されたばかりのキノコ写真集。

ここ最近は富士山ブームとやらで、夏は毎日大変なにぎわいだったと聞くが、その山麓は知る人ぞ知るキノコ狩りのメッカでもある。鈴木氏は御殿場在住のアーティストで、その富士山麓をフィールドとして撮影したキノコ写真を集めたのが本書だ。

文字は最低限といった感じで、大小さまざまなキノコ写真が、わりと気ままな感じでちりばめられている。一点、普通にイメージする写真集とおもむきが違うのは、光沢の少ない印刷を使用しているところ。絹目調というんだろうか、やや紙っぽい質感を残したものを採用している。ピカピカ光る光沢紙は綺麗だと思うけど、よそ行きじゃないありのままのキノコを表現したいというのであれば、こういう選択もおもしろい。

そういう意図があるのかないのかは別としても、写真から感じる全体的な印象は、やはりどちらかと言えば誠実、純朴といったところ。アーティストを自称するくらいだから、もっと先鋭的な表現があるのかな、とも思ったけど、そのへんは人柄も関係してるんだろうか?本の帯にある、クマっぽい(失礼)豪快そうな著者の姿とはうらはらに、抑制のきいたスタイルだと思う。
キノコのアップ写真ばかりではなく、周囲の背景を広くとったアングルも織り交ぜ、富士山麓の林内のしっとりした雰囲気をうまくつたえている。

分量は200ページ弱とかなりのボリューム。これを光沢紙にしたらすごい厚みになったろうから、そのへんの議論があったものかなかったものか。

45ページのタマゴタケ写真(表紙のタマゴタケの別カット)がやはりピカイチだとおもうのだが如何に。


菌類が平和でありますように 月刊 きのこ人

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紙の本

機能美あふれるキノコ狩りの友

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

食用キノコを中心に、きれいな写真と丁寧な解説で、キノコ狩りの人にとってはありがたいキノコ図鑑。

最大の売りはなんと言っても美麗なキノコ写真。これらはキノコ写真家として第一級の腕前を持つ大作氏によるもので、背景白抜き写真・生態写真ともに折り紙つきの逸品。しかも傘の裏側や断面などの写真も多くまじえており、派手さこそないものの、機能美にあふれている。

これらの写真に添えられるのが博物館の学芸員である吹春氏の解説。この系統のキノコ図鑑としては、ややアカデミックな解説だが、基本的には平易な文章なので、専門的な用語さえ把握していれば、丁寧で過不足のないものに仕上がっていると思う。

食用キノコ140種・毒キノコ60種の構成は、やや毒キノコ多すぎの気もしなくはないけど、まあこのぐらいの認識(3割が毒)でいてもらった方が間違いが少なかろうから、べつに悪くはないかと思う。
間違えやすいキノコを同じページにまとめてもらっているのもよい。

全体として機能性が高く、シンプルで清潔にまとまっており、キノコ狩りに行く人ならば買って損はないだろう。

問題は異常ともいえる今年の夏の暑さと雨の少なさ。これからちゃんとキノコが生えてくれるのかどうか……

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紙の本

財政再建しながら景気浮揚?日本の将来は……

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

毎度おおきに会社四季報。

好調中国の快走により、V字回復すら夢ではなくなってきた……そう、数字的には。それでも失業率は下がらないし、将来の展望は見えないし、民主党政権のアタマがすげ変わったからって、そんなに期待をかけていいのかしらん、というのがあって。財政再建?また心にもないことを……

案の定、株価は日本の政局なぞには微塵の影響も受けず、勝手に上げたり、勝手に下げたり。市場を動かしてるのは外人さんだから、その辺はさすがにクール。急所とも言える経済政策と外交政策に将来性がないことを完全に見抜かれてるようだ。

世界経済も不安定、5月6月は株価もド派手に下げて「すわ大暴落の再来か」と市場関係者を震撼させた。ギリシャやハンガリーのような小ネタでこんなになるのは行きすぎ(売り仕掛けに利用された?)との声もあるけれど。

こんな状態で投資なんてできる?

いやいや、それができるのだ。

理由はひとつ「そこにカネがあるから」

ファンドのみなさんはお金を投資するのがお仕事。現金持ってるだけならただのサル。だからとにかくお金は投資しなきゃいけないのだ。今は世界がこぞってお金を大増刷しちゃったもんだから、おカネならいくらでもある。だから我々もその波に便乗してしまえば……

あー、アタマ痛くなってきた。ま、わからないから面白いんだろうね、経済は。

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紙の本

森からドングリとキノコが消える

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「ナラ枯れ」という言葉をご存知ないだろうか。

ここ30年くらいで「松枯れ」という現象が日本中に広がり、これまで長く守られてきた多くの松林が無残に枯れ果てたことを知る人は多いかもしれないが、それと同じような現象が、いまナラ(コナラ、ミズナラなど、ドングリを作るもっとも一般的な樹種のひとつ)を中心として広がりつつあるそうだ。

松枯れの主因がマツノマダラカミキリと、それが媒介するマツノザイセンチュウであったように、ナラ枯れもカシノナガキクイムシと、それが媒介する病原菌の仕業であることがはっきりしているが、問題はそう単純ではない。

樹勢の強いナラであれば、仮に昆虫に穴を開けられても、その樹液で虫を追い出すことができる。つまり、害虫と害菌が猛威を振るうというそのこと自体が、ナラを中心とした広葉樹林そのものの衰えを示しているのだ。ではその衰えの原因はなにか……鍵を握るのはキノコ。菌類の専門家であり、松林再生プロジェクトでも精力的な活動を行ってきた著者が、ナラ枯れの真相を探る。

……近年、キノコの発生量が激減したとの話をよく聞く。特に去年の秋などは、まれに見るキノコ不作で、多くの愛好家を泣かせたようだ。ここんとこの異常気象と荒れる一方の山林環境のせいなのかな、と個人的に軽く考えていたのだけど、問題の根はもっと深かったようだ。全ては土の下で起こっているだけに。

ナラが枯れて、キノコが採れない。それだけなら街の人は「関係ないや」と、そう思われるかもしれない。ただ、同じ現象がマツ、サクラ、クリ、スギ、シイ、カシと広い樹種におよび、弱った樹が子孫を残そうと花や実を大量につけてしまうことを考えれば……これは近年の花粉症の増加、シカやサルなどの獣害の増加(山村荒廃の影の主役)の遠因として考えざるをえない。水害や山崩れも増えるし……全てはつながっているのだ。

キノコを偏愛する者として、少なからずショッキングな内容だった。CO2削減とかは後回しでいいから、なんとかしようぜ、中国……

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紙の本

紙の本なめこインサマー

2010/05/07 10:27

吉田戦車のぬるぬるエッセイ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

――食べる前にいってほしいものだが、それぞれのものを食べ終わったあと、娘が、
「私もなめこが食べたかった!」
と悲しい顔をした。
子どもの好き嫌いは、小さいうちはあっという間に変わっていくものらしいが、最近はキノコではなめことしいたけが好き、しめじとマッシュルームが嫌いなのだという。
じゃあ今日のおやつはなめこにしよう、と冗談でいうとニッコリうなずいた。
本当かよ、と思いながらスーパーでなめこを買う。
さて、おやつなのでそばをゆでてやることもないだろうと、とりあえずめんつゆを少し用意した。なめこをさっと湯通しし、めんつゆであえる。それだけだ。汁が少ないしぬるいので、なめこ汁ですらない。
一、二個試食をして見たら、あたりまえだがめんつゆの味のただのなめこだった。
喜んで食べましたね、娘は。
これがある夏の日の午後四時ぐらいのおやつである。本人は満足そうだった。

……「吉田戦車の珍ごはん なめこインサマー」より

「爆笑間違いなし」とか「切れ味が鋭い」とかではない。そんなものは店頭のショーウインドーに飾ってあるだけでいい。どうせ必要ないし。
なにね、笑わせてなおかつ寂しげな余韻を残すなどという芸当は、連中には到底できまいよ。いや、ま、どっちにしても必要はないんだけど……

不条理ギャグ漫画の大家・吉田戦車のエッセイ集。引用させてもらった表題作以外はナメコとはいっさい関係ないけど、なんとなく全体を通してぬるぬるとした感触がある。いやーなにかなーこれは。

「吉田戦車の珍ごはん」シリーズが素敵。



菌類が平和でありますように 月刊 きのこ人

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紙の本

ひらひらする経済。ひらひらする配当。

5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

中国の勢いが止まらないらしい

……止まらないんじゃない。止まれないんだ。

アメリカの輸出が好調らしいぞ

……あの国って、武器と映画と正義以外に売るものあったっけ?

日本も持ち直すかもしれん。円高が心配だけど

……大丈夫。あの政権運営見てたらこれ以上円を買う気は起きん

それはそうとヨーロッパ、ヤバいんじゃないか?

……それも大丈夫。ヤバイってことみんな知ってるから

懸念と楽観が交錯する世界経済。おぼろげな未来の形をいかにとらえ、それに向けていかに対応して行くのか。今まさに過渡期を迎える日本企業のこれからが興味深い。

株価?全会一致で「わからん」

需給と雰囲気だけで動く株価は、さながら風にもてあそばれる桜の花びらのよう。予測などつくはずもなく。しかし、ただひとつ確かな事実がある。それは……

「みんな配当が欲しい」

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紙の本

いっい湯だぁ~な♪時空を越えた風呂マンガ・古代ローマより愛を込めて

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

――伝統的な浴場にこだわるあまり、閑職を言い渡された古代ローマの建築技師・ルシウス。失意の中、彼は気晴らしに訪れた公衆浴場の浴槽の底に、ぽっかりと開いた穴を見つけてしまう。穴に吸い込まれた彼を待ち受けていたのは、なんと、現代日本の風呂であった!

いやー、ヘンテコリンな漫画はいくつもあるから大抵のことでは驚かんと思っていたけど、風呂マンガとはおそれいった。しかも国籍はおろか時代まで超越してしまうこのスケールのデカさ!

なんてったって、古代ローマの風呂と現代日本の風呂がつながっちまうって発想がすっばらしいねー。よく考えりゃ風呂ってトコは、老いも若きも男も女も奴隷も金持ちも日本人もローマ人もみんなそろってスッポンポン。宮崎駿の「千と千尋」の舞台にも使われた、世にも稀なるボーダレスな空間なのであります。

こんな異空間なんだから、古代ローマと日本がつながっちゃっても全然不思議じゃないよな、と、なんとなく思わせてしまうところに、風呂の恐るべき魔力が秘められていると言うべきか。

風呂上がり銭湯のフルーツ牛乳で恍惚に浸ってしまうルシウス……あー、こんな幸せ空間に自分も浸りたい!そんな衝動に駆られてしまうこと請け合いのワンダフルな作品でありました。

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