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投稿者:新曜社
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対話の回路 小熊英二対談集
2005/07/12 14:34
「あとがき」より・目次
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本書は私が一九九九年から二〇〇三年までに行った対談を集めたものである。
私自身がかつて出版社に勤めていたので、その経験からもいえることだが、対談ほど安易にやろうとすれば安易にできてしまうものはない。
また一方で、真剣によいものにしようとすれば、大変な作業が必要になるのが対談というものである。
当然のことだが、対談は一種のコミュニケーションである。対談と称して、通り一遍のあいさつや、あたりさわりのない四方山話ですますことはできる。だが本当に相互の神髄に食い込むほどのコミュニケーションをはかることが、日常生活において困難なことであるように、充実した内容の対談を実現するのはむずかしい。
まずよい対談を実現するためには、相互の信頼が不可欠だ。相互に信頼や尊敬が成立している場合には、相手の深層に迫るような質問を行ない、深いコミュニケーションをはかることが可能になる。逆に言えば、相手に対して信頼や敬意、予備知識や感心がない場合ほど、あたりさわりのない会話だけですまそうとする傾向が強くなる。
この対談集で私の対談相手となっているのは、作家や学者など、何らかの表現にたずさわっている人びとである。こうした人びとと信頼関係を築くためには、相手の作品を読み込み、「私はあなたの作品に接している。そして評価している」という姿勢を示すことが必要だ。そうでなければ、相手の信頼を得ることはむずかしい。
・・・・・・対談は共同作業だから、私の努力だけではどうにもならない部分があったり、準備や質問が的外れだったりしたこともある。この対談集に収録された対談も、完璧な作品ばかりとはいえない。
しかしさまざまなハードルをのりこえて、対談がうまくいったときは、楽しいものである。人間誰しも、通り一遍のやりとりをこえて、深い部分での対話の回路が成立したと思える瞬間は、たのしいものだということは知っているだろう。願わくば、この対談集の読者にも、そうした楽しさを共有していただければ幸いである。
(小熊英二)
【目次】
「日本」からのエクソダス (対談者 村上龍)
同時多発テロと戦後日本ナショナリズム (対談者 島田雅彦)
人類史的転換期における歴史学と日本 (対談者 網野善彦)
柳田の経世済民の志はどこへいったのか (対談者 谷川健一)
〈有色の帝国〉のアジア認識- 柳田思想の水脈と可能性 (対談者 赤坂憲雄)
戦後思想の巨大なタペストリー (対談者 上野千鶴子)
ナショナリズムをめぐって (対談者 姜尚中)
秘密の喫茶店 (対談者 今沢裕)
あとがき
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