奈良よりさんのレビュー一覧
投稿者:奈良より
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千年旅人
2002/07/31 12:51
死とは何かについて考えさせられる
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全体の構成は、「砂を走る船」、「シオリ、夜の散歩」、「記憶の羽根」
という3つの短編から成り立っている。
「砂を走る船」はこれから自殺したい男、死期が近づいている男、
16歳の右足に義足をつけた少女が主な登場人物であるが、死にたくて
死ぬことのできない男と死期が近づいて死ぬ準備に一生懸命な男の
対照的な姿が描かれている。
この2人の間に入って少女が持つ手旗は浜辺を監視しているのだが、
自殺したい男の自殺を思いとどまらせるのもこの少女の監視の範囲なの
だと思った。
自殺したい男の心の揺れが見事に描かれていると思った。
38の「翌日、彼は少女の作業を手伝った。」から54の「山頂に立ち、
振り返ると、彼の目には地球の楕円の縁が見えた。」という箇所が1行
ずつまるで時間の経過がコマ送りになっているかのようだ。
生と死のボーダーを考えさせられる作品だ。
「シオリ、夜の散歩」はシオリを亡くした2人の男が火葬場で出会い
リヒトはシオリを忘れるため他の女に次々と声を掛け一方、その気に
なれずシオリとの過去を回想する浅沼との対照的な行動がユニークです。
そしてシオリの魂がリヒトに入って2人が抱き合うところは正直怖かった。
「記憶の羽根」は異母姉弟による恋愛を描いているが、出会いと別れが
リアルに描かれているがなんか切ない。
東京タワー
2002/07/31 10:13
雨に濡れた東京タワーは悲しいのである!
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高校が一緒だった大学生の耕二と透は親友同士であるが、どちらも年上の
主婦相手に恋愛するいまどきのストーリーである。
透は高校の時に母の友達の詩史に誘われたのがきっかけで恋に落ちた。
一方耕二は同級生の母の吉田厚子にしても喜美子にしても耕二から仕掛けた
計画的な恋愛でありいつも「捨てるのはこっちだ」と決めている。
また若い由利という恋人と同時進行である。
2人のつき合い方も耕二は喜美子と「野獣」のような「果て」のない激しい
セックスをするし透のほうはいたってソフトである。
結局問題山積みながらも透は詩史と恋愛関係を続けるが、耕二は2人とも
失ってしまう。
まったく対照的なストーリーである。
著者はこのストーリーの連載開始時に元5人の少年に対してアンケートを
したそうだし詩史と喜美子のモデルになっている女性をも臭わせている。
恋愛と結婚は異なるという今時の主婦と大学生の実態がよくわかって勉強
になりました。
アンテナ
2002/07/29 09:28
コンセントに続く不思議な話です!
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15年前に忽然と消えた主人公の2歳違いの妹真利江が弟の祐弥を通して
出現しているような描写はオカルトのようで怖い気がした。
また両親の真利江に対する対照的な行動。
父は真利江が消えて8年後家族を集めて「二度とこの家の中で真利江の話は
するな」と言った年の暮れにあっけなく死んだ。
これを自らの死で「真利江ほ封印した」と表現している。
一方、母は「自分を失わないため」にさらに宗教にのめり込んだ。
主人公は取材でSM女王の「ナオミ」と関わったことがきっかけで祐弥と
同じように「錯乱」しやがて「美紀」や「ナオミ」とのセックスを通じて
「アンテナ」、すなわち「目に見えないものを、別の目で見る」ための「触覚」
がとぎすまされていく。
そして祐弥によって「真利江はこの桜の木の下で死んだ」ことを知るのであるが
主人公が幻想の世界で真利江を殺したのは、真利江が主人公の「アンテナ」
を通じて自らが殺された時の状況を示して死んだことをわからせて供養して
もらいたかったのであろう。
激しい性描写と目に見えないオカルトの世界が融合した不思議な物語だと思う。
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