J.B.さんのレビュー一覧
投稿者:J.B.
藤子・F・不二雄少年SF短編集 1 未来ドロボウ
2002/07/27 02:32
志貴杜と小山の生き方とは
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本書の最後に収められている短編「宇宙船製造法」は50ページに渡る、
短編集の中では一番の長編である。
宇宙を旅行していた一行が、事故により漂着した星での生活を余儀なくされる。
秩序と正義を重んじ、現実を見つめて皆の命を守ろうとするリーダー、
志貴杜はクールな表情の中に葛藤を漂わせる。
自分が皆の命を預かったのだから、それを守らなければならない、
望郷の念はなくなることがないが、実行可能な道を考えねばならない、と。
一方で小山は「どこかに道が残されてるよ。ぼく、そんな気がする。
…希望を捨てないで」と確信も可能性もわからないまま、考え続けた。
最後には、彼は不可能を可能にした。それはいわば、信じ続けたからではなくて、
考え続けたからではなくて、彼は一握りのスペースを頭の中に残していたから、
新しい何かを受け入れる場所を残していたからだと言うこともできるだろう。
そんな登場人物たちの生き方が印象的な作品だ。
藤子・F・不二雄少年SF短編集 2 絶滅の島
2002/07/21 01:07
宇宙人に侵略される人々
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9編の短編を集めた中でも、本書の表題にもなっている「絶滅の島」が一番の印象的な作品である。
かつて人間が動物の一種を絶滅させた島で、宇宙人の侵略に遭い最後に残された人間たちが絶滅の立場に追い込まれるという話だが、これは単純に人間の犯した過ちを指摘するだけでなく、秩序と正義の失われたこの世界に、真に人間らしく生きる人が今は本当に少数だ、むしろそれが絶滅するかもしれない、ということを象徴的に表しているようでもある。
この作品の中で、宇宙人たちは人間を追い回し、人を食い物にするかのように狩っている。「…あいつら、悪魔ですよ。血を流して楽しんでいるんだ。逃げ惑う人間を、突き刺して、引き裂いて…」と主人公は語る。
宇宙人の来襲こそないが、形を変えてこの作品と同じことが起こっているということを語っているのかもしれない。
ドラえもん 恋愛編
2002/05/31 02:07
恋愛編がいちばん。
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文庫版のドラえもんの中でも、この一冊が一番のお気に入りです。アニメにもなった「結婚前夜」の話も有名ですが、全編を通して見ることができる、しずかちゃんのことが好きで好きでたまらないのび太の姿がけなげでもありかっこよくもあります。ちょっとしたことでもやきもちを焼いたり、「あの子がいるから僕は生きていけるんだよ」と言い切ってしまうまっすぐな気持ちも素的です。おっちょこちょいなのび太が最大にして最強のライバル、出木杉くんにドラえもんの道具を使って、あの手この手で挑む姿もなかなか。心温かくなれる一冊です。
ショーシャンクの空に
2002/07/25 20:56
刑務所の英語は
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前々からこの映画はいいと聞いていたので、
そのDVDを観るのと一緒に本書を買って読んだ。
映画の中で話されている英語の語彙は確かにそれほど難しくないが、
話の舞台が刑務所なだけに、スラングやら普段使うのは
ためらうような言葉がいっぱいでてきた。
何も知らずに、呼び掛けの時に使う蔑称のようなものを使ってしまったら、
喧嘩をうってるのかと誤解されること受け合いだろう。
それはさておき、ヒューマンドラマの名に恥じない人間描写や
終盤の盛り上がりなど、映画そのものが完成度の高いものになっている。
一つ一つのセリフを英語で味わいのも面白い。
日本語訳には表されてない細かな部分を分かるのも本書の魅力である。
やはり映画の中で使われるセリフはかっこいい。
こういった本はどんどんだしてほしいのが個人的な希望である。
ある種の英語に関する感性を養うのにいいかもしれない。
紅の豚
2002/07/25 01:19
マンマ・ユート団
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20世紀初頭の地中海を描いた宮崎駿の作品である。
主人公のポルコ・ロッソ(すなわち『紅の豚』)は、
かつてはれっきとした人間で、アドリア海のエースとなった程の腕前を持つ
飛空挺乗りだった。しかし、物語が始まると、彼は豚の姿で現れる。
彼がどうしてそうなってしまったのか、それはこの話の中において一つのテーマである。
それについていろいろ思案をめぐらしながら何回も繰り返し見るのも面白い。
しかし、『紅の豚』の魅力はそれにとどまらない。
登場人物たちがカッコいいのである。
その中でも一番のお気に入りはマンマ・ユート団のボスだ。
強盗に相当する行為をしているので、いい人というわけではないのだが、
子供のことを考えて仲間はずれを作らないようにと全員を連れ去ったり、
自分なりのプライドか正義感か、何かしっかりしたものを持っているところである。
ドラえもん 0点・家出編
2002/06/05 02:13
のび太のコンプレックス
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のび太といえば0点というくらいに、のび太はよくテストで0点を取っている。のび太にとって(テストの点が悪いからといって頭が悪いわけではないが)、「頭が悪い」ということは大きなコンプレックスになっている。また、のび太にとって、乗り越えなければならない問題の一つでもある。そんな状況にいるのび太を助けにやってきたドラえもんは、コンピューターペンシルなどの便利な道具を持ちながらも、自分の力でやらなければ意味がないと言い、かえって道具を貸さずにそのような言葉でのび太を諭している。ドラえもんは、自分の持っている道具は本当に便利なものであることを分かっている。しかし、ドラえもんは、問題の本質的な解決というのはのび太自身が変わらないといけないということを知っているのである。
耳をすませば
2002/07/27 03:42
おじいさんと天沢くんとの出会い
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自分の才能を試してみたいと徹夜をしながらも物語を書き続ける雫の姿。
そんな彼女の努力を分かりまっすぐにその気持ちを受け止めるおじいさん。
そのおじいさんが雫に宝石の原石をくれるシーンが
この作品の中で一番のお気に入りのシーンだ。
主人公の雫は、2人の人との出会い、つまりおじいさんとの出会いと、
天沢との出会いによって、大きな成長を遂げていく。
おじいさんは、雫のよき理解者であり、
また美術品のコレクションを持つほどのアーティストである。
一方、雫にとって天沢という存在は、自分の夢を持ち、
その夢のために行動している人であり、
ずっとずっと自分の先を走っているような遠い存在でもあるし、
自分も何かしてみないといけないだろうかと考えさせてくれる人でもあった。
しかし天沢は、雫の先を走っているようでも、
その後ろにいる雫のことをずっと気にかけていた。
図書館のカードを使ったストーカーまがいの行動はどうかと思うが(笑)。
そんな2人の心が触れ合う瞬間を観ながら、私は勇気をもらった。
それはすなわち、天沢にはなれないけれど、雫のように一念発起しようと、
そう思える勇気だ。
いいひと。 26巻セット
2002/07/19 00:43
思いの力がもたらすもの
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主人公・北野ゆーじは「周りの人を幸せにすること」という信念を持ち、
その信念に従って仲間や恋人や、会社の人や出会う人と接している。
ある人は、まっすぐで純粋な姿には共感を覚えるかもしれない。
一方で、こんな人はいないと思う人もいるかもしれない。
「人のためといっても結局は自分のためなんじゃないか」
「全ての人を幸せにすることなんか不可能じゃないか」
という批判があるとしても、北野ゆーじはその信念を曲げない。
人との関わりを避ける気持ちや傾向が強い中、自分のことだけでなく
相手のことも考えて、まっすぐに相手にぶつかっていく。
そこに行き違いがあったとしても、必ず分かり合えると信じて進み、
歩み寄っていく力は、やはり彼の信念によるものではないだろうか。
「周りの人を幸せにしたい」という気持ち・信念は、
現代社会に指摘される乾きがちで中身のないコミュニケーションが
失ってしまったものなのかもしれない。
ドラえもん ジャイアン編
2002/06/06 01:15
ジャイアンの姿
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ジャイアンは非常に自己中心的な考えが強いし、何かと暴力に頼って自分の言うことを聞かせようとする問題児だ。このジャイアン編は、そんな彼の話を多く収めている。のび太を始め、多くの仲間たちは彼に苦しんでいる。しかしジャイアン本人は、「こうして、みんなに歌を聞かせて、喜んでもらえば、それで、しあわせなのさ」と実情に全く気づいていない。ジャイアンの最大の武器は、なんといっても彼の歌だろう。のび太たちにとってこの歌は迷惑このうえないが、ジャイアンは「真の芸術は大衆に理解されにくい! それがおれの悩みなんだ!」と自分の才能を信じて疑わない。また、彼の趣味は歌にとどまらず、料理、絵画、作曲など多岐にわたる。これはジャイアンの魅力を堪能できる一冊だろう。
ドラえもん 恐怖編
2002/06/19 21:19
最も恐ろしい話は
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この一冊に収められた話の中で、最も恐怖編と呼ぶにふさわしいのは、ゴルゴンの首という道具の出てくる話であろう。趣向としては、ある種のホラー映画のような感じもあるが、頼みのドラえもんがゴルゴンにやられたときに、のび太ならず読者である自分自身にも、問題を解決する手立てがない八方塞のような感覚に襲われる。また同時に、何か自然にいるけれども、あたりまえのようだけれども、いかにドラえもんが頼りになって、また助けてくれる存在なのか、改めて感じさせてもくれる。
ドラえもん エスプリ編
2002/05/31 23:00
掘り下げてみると深い
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ドラえもんは、確かに多くの笑いを提供してくれるギャグ漫画ではあるが、世の中の矛盾や社会の問題を浮き彫りにするような深いテーマのものもある。このエスプリ編は、そのようなものも含め、考えさせられる話が多い。ひみつ道具一つにしてもその使い方によって大変なことになってしまうこともある。エスプリ編に集められた話は、今再びドラえもんを読み直す世代にとっても掘り下げてみる価値のあるものである。
ドラえもん スネ夫編
2002/06/13 14:43
スネ夫はやっぱり
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スネ夫は財力と権力にものを言わせ、のび太をいじめにかかる陰湿な男である。もしこのまま彼が大きくなって政界でも行こうものならそれこそ漫画に出てくるような悪徳政治家になってしまうだろう。特に初期のドラえもんではその傾向が顕著で、スネ夫にいじめられたのび太を見て、ドラえもんが仕返しに行く姿を見ることができる。しかし、ジャイアンの有り余るパワーはその被害者にスネ夫も捕らえるようになり、スネ夫はのび太への優越感を残してはいるが、被害者の仲間入りをしてしまうのだった。またこの一冊の中で、スネ夫の多芸多才ぶりを見ることができる。特筆すべきはいとこのスネ吉か。
ドラえもん 爆笑編
2002/06/11 21:00
シニカルなやり取り
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ドラえもんはもともとギャグ漫画なので、この爆笑編にのみならず多くの作品で私たちに笑いを提供してくれる。この爆笑編ではその中でも個性的なものをピックアップしている。特にその初期に書かれた作品では、ドラえもんや登場人物たちの冴え渡っているセリフを見ることができる。ただ、個人によって笑いのツボが違うので、一様に勧めることはできないが、シニカルで、時としてまじめだがおかしくして仕方のないドラえもんとのび太のやり取りが見ものだ。
ドラえもん むかし話編
2002/05/31 22:58
想像力を刺激するような作品が集められている
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むかし話編は、タイトルの通り、のび太とドラえもんがタイムマシンを使って過ぎ去った過去へと行く話が集められています。もうあえないはずのおばあちゃんにもう一度会いたいと、またご先祖様の埋めた財宝のありかを探しに行こうと、またあるときは宮本武蔵を見に行こうとその舞台は時代を超えて広がります。現実にはありえないとしても、一つ一つの話が読者の想像力を刺激するような、そんな力に満ち溢れた作品です。
