むつきジンさんのレビュー一覧
投稿者:むつきジン
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人形
2003/02/14 17:40
目を背けたくなるけれどもはまってしまう、邪悪ナル世界。
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脱サラSM作家がゲイバーで知り合った男から紹介された男娼「ギニョル」。その名のとおり人形のように表情の無い彼の体にはおぞましいほどの暴行の痕跡が残されていた。最初は興味本位で近づいた主人公もやがてギニョルの尻に刻印された呪文どおり、「邪悪ナル世界」に引き込まれていき、彼から逃れられなくなっていく。
嗜虐、SM、「邪悪ナル世界」、と、なんともおどろおどろしいキャッチコピーがつく本作。確かにギニョルに対して行われる数々の暴行シーンには眼を顰めてしまう。若干リアリティというか迫力に欠けると思うが、それはギニョルの性格のせいかも知れない。本作は登場するキャラクターの内面描写は非常にうまく出来ていて、読者を飽きさせることが無い。それどころか読み進むにしたがって思わずこちらの嗜虐性を煽ってくる。あらすじから行くと官能小説に分類されがちであるが、結末一つとっても非常に高レベルなホラー小説であるといえよう。
終戦のローレライ 下
2003/02/05 17:34
戦争を知らない私たちだからこそ読みたい作品
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第二次世界大戦中、負けることを知らなかった、あるいは「負け方」を知らなかった日本に、「あるべき終戦の姿」をもたらそうとした男、朝倉。彼の策略にとって帝国海軍の潜水艦「伊507はドイツ軍が無くした秘密特殊精機ローレライの回収に出発する。多くの人間の様々な思惑と共に。 これほどまでにリアルなフィクションがあっただろうか。と感じさせる作品である。戦争の残酷さを誇張することも飾り立てることもなく伝えながらストーリーも十分楽しませる(一部ローレライの実態など、それはありえないだろうと突っ込みたくなる部分もあるが)。
極限状態で、人でありつづけようとした伊507乗組員の姿が胸を打つ。その姿がまた「どうしようもない大人たちが始めたどうしようもなく愚かな戦争」という絶望の中に一縷の希望を残している。
ある意味でタイムリーな時期に発売されたこの作品、戦争を知らない私たちだからこそ読んでほしい。半端でないボリュームだが決して損は無いはずである。
月のしずく
2002/07/02 18:28
切なすぎるぞこれは。
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浅田次郎という作家は、どうしてこんなにも「人が泣く」ポイントを押さえるのが上手いのだろう。
この本には、切な過ぎる男女の恋愛小説が7編おさめられている。
恋愛小説とはいっても、世の中で広く一般的に支持されているようなタイプとは程遠い。
なぜならどの話の主人公も、決してかっこいいとは言い難く、テレビドラマで度々出てくるようなお洒落な設定なんてどこにも無い。
しかし、泣く。心が締め付けられるような切なさに。
きっと7編の主人公が共通して持っている、不器用で、情けなくて、でもどこかロマンチストで人一倍優しすぎる点が読者の心をぐっと掴んでしまうからだろう。
表題作となっている「月のしずく」もおすすめだが、個人的には「ピエタ」をぜひ読んでほしい。
繰り返される毎日に少し疲れたとき、ちょっとしたことに傷ついてしまったとき、この小説集は最高のカンフル剤になるだろう。
まったく浅田次郎という作家は、これだからすごい。
バースデイ・ストーリーズ
2003/02/05 17:45
決して甘くは無いけれど、ポップなバースデイアンソロジー
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本書は村上春樹氏編、訳にの海外の現代作家によるアンソロジーである。誕生日にまつわる話が10編、そして村上氏地震の書き下ろし作品「バースデイ ガール」の合計11編が収録されている。どの作品もタイトルの通り、誕生日をテーマにしているがそこから連想される甘い雰囲気をもつ作品は無い。少し痛く、少し後味が苦い作品や現代作家らしい皮肉の効いた作品がほとんど。
個人的には、孤独で偏屈な老女の誕生日を描いた「バースデイ プレゼント」が一押しである。読後、じんわりと心が温かくなる。
源氏物語
2002/07/31 18:09
美味しい所だけをつまみ食い
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与謝野晶子、瀬戸内寂なそ、さまざまな人によって訳されている古典の大作、源氏物語。その魅力は現代になっても多くの読者を魅了し続けている。
しかし、そのボリュームは半端ではない。加えて訳者の数も非常に多く、古典初心者にとっては殿本を手に取ったらいいのか悩むなど少々つらい作品でもある。
そこでオススメしたいのが本作、円地文子訳の源氏物語である。本作は文庫本1冊というボリュームながら源氏物語のおいしいところをぎゅっと凝縮していて、大筋の流れを掴むにはもってこいだ。訳も原本にかなり忠実で、正に初心者向け、である。
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