金谷　修さんのレビュー一覧

アマチュアをやる気にさせ、プロの威厳を示す好著

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　この本は将棋の定跡本である。島朗プロが週刊現代に連載したものをまとめたものだが、本格的な戦法も解説はしているが、奇襲的要素の強い「鬼殺し向飛車」や「メリケン向かい飛車」、「新早石田」などプロが黙殺ないし、一段低く見てきた戦法にも光をあてて解説している。
　画期的なのはこういう場合、居飛穴や立石のように私物化して解説するか蔑視するプロが多い中、考案者がアマならアマであるとはっきりいい、プロなら誰の考案なのかはっきり宣言してから解説している点である。それも真摯に研究し、自ら実戦を経てその結果まで載せているのだ。その視点はもちろん島プロならではの分析的な緻密なものである。
　アマチュアをやる気にさせ、プロの威厳を示す好著といえる。こういう解説なら元祖居飛穴裁判のような騒動もおきないだろう。島プロの将棋に取り組む真摯な姿勢に敬意を表したい。