よしけんさんのレビュー一覧
投稿者:よしけん
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定ときみ江 「差別の病」を生きる
2006/04/09 11:38
薄っぺらな小説とは違う、本物の感動
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今、若い人たちが生きづらさを嘆き、リストラや借金苦の中高年が自殺したりする時代。でも、だからこそ、読まれるべき1冊だと思います。実在の夫婦である、定ときみ江の生き様には、どんな人でも勇気づけられると思うからです。
まず、生きることの壮絶さを見せ付けられます。しかも、そこには気負いがありません。自分に与えられた「ハンセン病患者」という運命と率直に向き合い、あるときは嘆き苦しみながらも、決して自らの命を絶つという選択はしない・・・。
ハンセン病を扱った作品の多くは、国の責任や法の問題点を指摘し、患者「たち」がいかにひどい目にあってきたかをリポートするノンフィクションがほとんどでしたが、この作品は違います。
二人の人生を丹念につづることで、患者「たち」の物語ではなく、いきいきとした人物ノンフィクションになっています。とくに、きみ江がふるさとを追われていく場面では、落涙を禁じえません。薄っぺらな小説とは違う、本物の感動があります。そして、読み進めるうちに、この不幸な病への偏見も自然と解けてくるのです。
マイナーな出版社から出ている本ですが、本書と出合えたことを幸せに思います。
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