絵師Kさんのレビュー一覧
投稿者:絵師K
堤防決壊
2002/07/22 17:03
押し寄せる波の正体は?
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辛口コラムニストの肩書きも持つ両者が、世間のムーブメントに対して容
赦なくこき下ろす対談集の第二弾である。本書で完結。
女三人寄れば姦(かしま)しいと言うが、ナンシーと町山の二人で充分姦し
かったが、本書では途中SPECIALとして、下ネタイラストで御馴染みの友沢
ミミヨが参戦して「女性誌的世界」に挑戦している。逆に女性誌的世界を嫌っ
てるフシのある面々の挑戦は苦しくもあるが、やっぱり面白い。
ムーブメントが押し寄せて堤防が決壊する前に、帯の文句にもあるが、
「土嚢(どのう)」(という冷静な視線)を積んでおきたいなと私は思うのだが。
俺はその夜多くのことを学んだ
2002/07/31 20:25
可笑しく切ない。そして私も学ぶのであった。
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「人間は学習する生き物である。そして学習したことを忘れるのもまた人
間という生き物である」そこに愚かさがあるのだが、得てして愚かさは可笑
しみを生むのである。笑いを大切にする三谷氏がそれを見逃すはずもない。
三谷氏お得意の悪化が悪化を呼ぶ展開の面白さ、ページ毎に区切られた短文
が次のページへの呼び水になる巧さ、唐仁原氏の絵といった要素が寄って
集って私のページをめくる手を催促する。掛け値なしに面白いのである。
でも私は男だけに、この切ない男心は無視できない。私もまだまだ学ぶこと
が多そうだ…。
読んだはしからすぐ腐る!
2002/07/31 18:06
腐りかけが美味い
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『週刊漫画サンデー』に連載していた松尾スズキのコラムと、その後同誌
で連載された松尾スズキ(原作)と河井克夫(絵)(二人で「チーム紅卍」)によ
るユニット・コラムを一冊にまとめたものである。
タイトルを額面通り捉えるならば、我々が読む時点で“既に腐りかけ”の
コラムということか。確かにフレッシュさを良しとする人に、満足いただけ
るものは微塵も無いかもしれない。しかし、「腐りかけが美味い」という言
葉もあるし、中(あた)ってでも食べたい私にとっては“上物”な訳である。
コラムはもちろん、大阪珍道中や赤塚不二雄との対談など“いいネタ”も
揃っていて満腹気分で読み終わった。
表紙カバーを外すとお目見えする写真もお見逃しなきように、と書き添え
て筆を置くことにする。
Aの人生
2002/07/30 00:24
A印の人生の処方箋
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2002年、漫画家デビュー50周年を迎える藤子不二雄Aが自分の半生
を振り返ったり、日常の一コマを綴ったりしながら、まだまだ現役で創作活
動も続ける彼の、楽しく生きていく上でのモットーや秘訣を披露した一冊。
私自身、藤子不二雄のマンガに夢中になり、別々に分かれた後も藤子不二
雄Aの大人向けの路線のマンガも読んでいたので、本書も興味を惹かれて読
んでみた。
マンガ家が活字で書いた類の本はあまり読まないのだが、本書は読んで良
かったと素直に思えた。特別強く主張した、押し付けがましい教訓めいたも
のは一切無く、彼が生きる上で心掛けている事柄や人付き合いの楽しさが、
そのまま書かれているので、我々でも日頃から心掛けて実践できるような、
「A印の人生の処方箋」をもらったような気分なのである。
本書半ばでは、亡くなった藤子・F・不二雄との50年を振り返える章も
あり、一人の藤子不二雄ファンとしてしんみり読ませてもらった。A氏には
今後とも本書の通り、気楽に現役で我々を楽しませるマンガを描きつづけて
もらいたいものである。
ナンシー関の記憶スケッチアカデミー
2002/07/29 18:38
笑え!記憶が描かせたスケッチを
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脳の研究分野はいまだ解明されていないことが多い。そして偉大なる我々の脳が記憶しているものは…。そんな高尚な話も吹っ飛ぶ記憶スケッチアカデミーの扉を開いた。そして笑った。記憶を辿りながらペンを走らせた全国のダメ〜な作品の数々に。記憶自体を疑うより前に、いかに我々が“そのモノ”を見ていなかったかという事実に愕然とする。私もあなたも笑い事ではない。(いや、やっぱり笑っていいわ。だって何?このカエル…プププ)
一通りスケッチの鑑賞が終わったら、記憶スケッチアカデミー理事長のナンシー関による記憶スケッチの作品群に横たわる数々の問題に対する考察を読むことになるが、いつもながらのナンシーの冷静な視点から繰り出される検証・考察は頷きながらやっぱり笑える。(眉毛問題は根深いねぇ)
あなたも読んでペンを執れ! さぁ、あなたならどう描く?
隣家全焼
2002/07/22 16:44
火の用心
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辛口コラムニストの肩書きも持つ両者が、世間のムーブメントに対して容
赦なくこき下ろす対談集の第一弾である。
出る杭が打たれるのは良くあることだが、出すぎた杭=何の疑いもなく世
間が飛びつくムーブメントは、時に不気味でさえある。冷めやすい日本人は
冷めたムーブメントの処理はほったらかしで、当時の熱くなっていた恥かし
さは洗いざらい忘れてしまうかのようだ。ムーブメントに中にあっても常に
冷静な、いや冷酷な視線を送る二人の対談はそれだけで痛快である。
ムーブメントに踊らされた隣家が全焼する様をガッツポーズで見守る姿勢
は、一概に批判できるものではないと思うゾ。
ぼっけえ、きょうてえ
2002/07/22 15:55
一番怖いのは…
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「生きている人間が一番怖い」という言葉が幾度も頭をよぎった。近代史
の日本の暗部(と言っても岡山の寒村等が舞台なのだが)を覗き見てしまった
怖さのようなものに背筋を寒くする。
表題作「ぼっけえ、きょうてえ」は語り口の巧さが冴えている。他の三篇
は、設定が何とも言えず怖い。
夏の夜に読んでみてはいかがだろうか? 「後を引く怖さ」ってのも珍しい
と思うのだが。
サンタのおばさん
2002/07/14 20:00
姿形など大した問題ではない。
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東野圭吾氏の長編小説「片想い」の中に登場する戯曲「サンタのおばさん」が
絵本となって実際に発売された。遅ればせながら書評を。
私も含めて、固定概念でいろいろなことやモノを決め付けている人は多い。
前出の「片想い」のテーマである性同一障害の前に立ちふさがる、
男はこうあるべき、女はこうあるべきといった固定概念は、互いの姿形の上に、
勝手に「あたりまえ」を作り、互いを越えさせない境界線を生み出してしまっている。
じゃあ、サンタは? 白い眉と髭をたくわえた恰幅のいい、「赤」に身を包んだ
おじいさん…じゃなきゃダメなのかな?
姿形は違っても、プレゼントという「幸福」を子供達に運び、翌朝の子供達の笑顔を
親に送りたいと願う「サンタの心」を持った人であれば、その人は立派にサンタの
資格があるんだ…この本を読んで、そう思った。
杉田さんの描かれた優しい絵も印象的。
クリスマスのプレゼントとしてもGOODな一冊。
人生を救え!
2002/08/05 20:50
尽きない悩みを笑い尽くせ!
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本書前半は、町田康が回答する50の人生相談である。突き詰めると悩み
事は全て人間関係から来るものだが、揃いも揃った多彩な50個である。
「別れなさい」「ビシッと言ってあげなさい」などと一言で片付けてしまう
ことは誰にでも出来るし、何の面白みもない。そこは回答者・町田康。容易
く掴めるような“救いの手”を差し伸べたりはしない。その手は、相談者が
握ると時にぐにゃりと形を変えてみたり、時に足を差し出し「これは手だ」
と嘯(うそぶ)いてみるような、手・手・手の50個である。
後半は、いしいしんじと浅草・丸の内・お台場を歩きながらの対談である。
街には「あれは一体どういう人だろうか」と、知らぬ間にこちらの悩み事に
もなりかねない危うい人やモノが溢れかえっている。そんな人やモノと遭遇
しながら街を闊歩する二人のやりとりは、しゃべくり漫才のようでオモロイ
のである。『流鏑馬』『やぶじか』『蜂犬』等々との遭遇。街は侮れない。
読む者は救われる…という保証はしないが、悩み事など忘れて「わはは」
と読めてしまうのは保証してもいい。
オルファクトグラム
2002/07/31 23:54
優れた嗅覚ミステリー
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「嗅覚が優れていることをどう表現するか」これが意外と難しいことで、
この小説の肝となる部分なのである。しかし井上夢人は、容易くこのハード
ルを越えてみせた。荒唐無稽な設定では読み手は投げ出してしまう。視覚機
能と絡めて匂いの世界を表現し、優れた嗅覚を得ることになった身体的メカ
ニズムも理論的に説明してみせている。「匂いが見える」というのは読み手
にもその世界観の想像を促すことにもなり、容易く小説の世界に入り込むこ
とを可能にした。こうしたディテールの構築を投げ出さなかった小説に対し
て読み手が投げ出すはずがない。
とは言っても、これだけの分厚い小説には優れたストーリーテリングが必
要である。その点に関しても要らぬ心配だった。姉を追いやった犯人の追跡、
行方不明の友人捜し、犯人側の視点、大学での嗅覚研究、マスコミを巻き込
んだ追跡劇等、あらゆるエンターテインメント要素がぐいぐい物語を引っ張っ
て行ってくれる。
読んでみてはいかがだろう。そうすれば、今もあなたの周りに漂っている
いろんな匂いの風が見えるかもしれない。
無間地獄
2002/07/31 18:51
清算できる日は訪れるのか
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表紙カバーのような、無間地獄に迷い込んでしまった人間・人間・人間の
群れが描かれている小説である。そんな人間達が背負うものは、何も金銭の
借りばかりではない。過去に背負ってきた負の体験という借りが人間達を苦
しめる。
過去といえば、この小説で描かれる主人公・桐生の幼少から青年にかけて
の家庭環境の凄惨な場面描写は嘔吐感すらおぼえるほど衝撃的だった。
息をもつかせぬ展開で、目を逸らす暇も無く人間の汚さをまざまざと見せ
付けられるような感覚であった。
無間地獄は小説の中だけで楽しんでいたい。実生活では勘弁願いたい。
爆笑問題の日本史原論
2002/07/31 18:28
歴史を笑う
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収録ページの順序が前後することもあるが、本書は爆笑問題お得意の漫才
形式で縄文から昭和に至るまでの歴史上のトピックを笑いにしている。
全く歴史に関係の無い話にそれることもあるが、押さえる点は押さえてい
て、連載時にはなかった解説も挟まれているので、妙に勉強になった。歴史
を教科にしてしまうとひたすら暗記モノになってしまうが、本書のように
とんでもない駆け足ではあるが歴史を大きな流れのポイントポイントで見る
ことができれば、もっと歴史の楽しみ方が広がるんだけどなぁ。
わたしのグランパ
2002/07/31 17:10
グランパの残してくれたもの
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「かわいい孫」と「やさしいおじいちゃん」が普遍的な孫と祖父の互いの
評価であるとすれば、この小説での後者は「やさしい」などという一言では
表せないくらい、孫・珠子の中で複雑に変化する。危険に身を晒してハラハ
ラさせたり、夢のような時間を見せてくれたり、いざとなれば命懸けで守っ
てくれたり、まるでヒーローである。ヒーローはいつも主人公の側にいてく
れるわけではない。それがヒーロー物のお決まりでもある。別れの時が来て、
明日から一人で立っていかなければならない主人公は、知らない間にヒー
ローからそのチカラをもらっていた…。正統なヒーロー物でありジュブナイ
ル作品であるが、筒井氏が描く短い間の珠子とグランパの交流はたまらなく
面白かった。
夢を持った珠子がこの先生きていく上で、グランパが残してくれた最大の
モノは、“素晴らしい仲間”と“グランパが手本となって見せてくれた強さ”
だと思いたい。
2003年には映画化が待っている。原作が中篇であることはプラスの要
素だと思うが、そちらの方も楽しみではある。
丸山さんのしあわせ。
2002/07/31 01:08
しあわせの姿を探して夢を見る。
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「鳥は大空を飛ぶ。そういうものだ」「モグラはひたすら穴を掘る。そう
いうものだ」 ここで言う『そういうものだ』という“本来の姿”がそれぞ
れのしあわせではないか。自分がしあわせでないと感じるとき、人はどこか
本来の自分の姿を忘れていたり、隠していたりするのではないか。
それは自信の無さの現れなのかもしれない。本来の自分の姿に自信を持っ
て、「私はこういう人間だ」と胸を張って生きることが出来れば、
『○○さんのしあわせ。』にあなたの名前が入るときなのだと思う。
本書を読んで、こんな哲学的なことを考えてしまった。そういうチカラが
この本にはあると思う。眠る前にこの本を読んで、丸山さんのような夢を見
てみたい。
ミルクのお茶 Girl friends’ milk tea
2002/07/28 15:58
いつまでも友達だよね
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「出会いと別れを繰り返すのが人生」みたいな言い方をするが、一生の別
れでない限り、別れは「お互いの新しい距離との出会い」ではないかと私は
思う。離れ離れになった時期があったにせよ、どこかでつながっているモノ
がある。それが例えば2人だけが知るミルクたっぷりの紅茶の味だとしても、
また会えた時には、そのお茶を飲むだけで2人が最も近付いていた距離に戻
れるのである。そんな、友達との別れを、ミルクのあまーい香りで包んだよ
うな絵本である。
