壱子さんのレビュー一覧
投稿者:壱子
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考える練習をしよう
2002/07/29 22:17
永遠のチョコ
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私がこの本を手にとったのはごく最近のことですが、これに出会えたのが子供の頃だったならば、きっと随分世の中が違って見えたんじゃないかと思いました。
そのきっかけをくれたのは大島弓子さんの「ロング・ロング・ケーキ」。
本を読んだ方ならお分かりでしょうが、永遠のチョコバーのくだりです。
「ものは考えよう」この「考えよう」は考える方法によっていろいろ変わる、ということですが、文字にしてみると、考えてみよう、ともとれますよね。(屁理屈みたいだけれど)
何でも考えてみよう。そうする事で、世の中には幾通りもの考え方があり、当たり前なんだけど、自分も毎日変わっていくんだなって思える、そんなことをこの本は教えてくれました。
今この本に出会ったからこその変わり方もあるでしょう。これからの毎日がちょっとたのしくなりそうな、頭の引き出しにいれておきたい一冊です。
瞳子
2002/07/29 22:06
あこがれ
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瞳子のような女の子になりたい、と思った。いさぎよくてさっぱりしてて、でもちょっとかっこ悪くて大事にしたい友達がいる。
好きなものがはっきりしていて、それに向かって夢中になれる。
日々いろんなものに目移りして飽和状態にある私は、きっぱりとした瞳子の言動にあこがれさえ感じてしまうのだ。
でもまてよ、おいおいそれは言いすぎじゃない?ってところもある。そこが瞳子のただのヒロインに収まらぬ所以であり、人間味を感じさせるポイントでもある。
しかし、いい友達がいてうらやましい。個人的にはキングクリムゾンのライブのくだりできゅんとします。
銀河ガールパンダボーイ
2003/06/11 02:54
ノックアウト!
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この本には短編である表題作と「忘れじのレイドバック」、そして「クラブ・ハリケーン」という連作が収められている。
まず表紙が素晴らしく可愛く、でもちょっとサイケデリックな雰囲気はそのまま作品世界にも通じる。
全編をとおして描かれるのは、思春期(それが終わるものかどうかは別として)の女の子の不安定さ、そして男の子の不器用さ。その描写は「なんてこった」と言いたくなるくらいの絶妙さです。少女、と言う点では少し大島弓子のそれに通じるところもあるかもしれません。ここに描かれているのは、もう少しヘビィな現実の中を、しかし飄々と生きている少女達。
特に「クラブ・ハリケーン」での “ちょっとへん”な少年少女達の日々は、混沌の中にありながら誰もが体験するであろう「歯痒さ」や「切なさ」や「痛み」そして「愛しさ」が詰まっている。
そしてそれらに触れることで、一人きりでいられること、そして一人きりではないことの大切さや素晴らしさを思い出し、ちょっと解放されたような気もちになることが、私はできた。そうやって成長するんだよね、と。
「宇宙のおおきさを計算していて」ひきこもりだったというマス(数学のマス)というキャラクターが個人的には気に入りです。
そして見逃すことができないのが「あとがきにかえて」で、かわかみさんはコラム(?)がすこぶる面白いのです。
確実に、恐るべきスピードで進化を続ける少女漫画界の、次世代を担う一人だと思います。読んだ瞬間にノックアウト、意識を失う瞬間の気持ち良さに通じる?かわかみじゅんこ世界を是非。
残響
2002/07/31 01:15
世界は美しい
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保坂和志といえば猫と、金井美恵子さんにも通づる息の長い文節が特徴としてあげられるけれど、この一冊は保坂和志という人がその小説に何を託しているのかが窺い知れる作品である、と私は感じた。
特に事件が起きるわけでもなく、どんでん返しがあるわけでもないけれど、静かに、だんだんと自分がこの本の中の一員であることを知る。それはこの本が私たちのいる「ここ」について描いているからにほかならない。
本を読むときに私は表紙につられて選ぶことが(ときに)あるけれど、この作品はそれで成功した例でもある。
夕暮れの、一日のお終いが引き伸ばされていく一瞬。自分の輪郭さえ曖昧な瞬間。
「残響」「コーリング」と二つの中篇で構成されてはいるけれど、その二つは対となって非常に良く似てもいる。どちらも別々の場所にいる、殆どつながりを持たぬ数人の「思い」を描いている。彼等の思考の流れの中を私たちは漂い、そうすることで自分自身の形を知る。
私たちは離れ離れでも、ときにそれぞれの声は響きあい、重なりあって、1つの音楽を奏でることも有るのだ。きっとこんな風景のなかで。
茄子 1
2002/07/29 21:30
やばい
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コミックは未だ黎明期であるとコピーをつけたのはIKKIですけれど(タワレココピーno music no lifeに通ずるナイス、しかしちょっと気恥ずかしいコピー)まさにコミックの新しい時代を開こうとしている一人がこの黒田硫黄さんであろうと思われます。IKKIに連載中の「セクシーボイス〜」も良いけれど、新しさという面では「茄子」こそを筆頭にあげたい私。
何で茄子なの?と思われるかもしれませんが、それでも茄子、腐っても茄子、まるで「茄子」というタイトルの気の利いた連作短編映画を観ているようです。何でもないことを何でもなく描く昨今はやりのなんでもない漫画(にも良いものはあるけど)に留まらない、何でもないかと思ってたら、やられたーっ、って不意打ちを食らわせるパワー有り。なんて大げさなことをいいつつ、ぜーんぜん気楽に読めちゃうところも好きです。漫画好きなら是非。
キッドナップ・ツアー
2003/07/28 23:39
出口なし
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角田光代の描く物語の素晴らしい点は、分かりやすい解決などないところにあると思う。「出口のないこと」が良いのではなく、物語として成立していながらも、その中にはリアルが詰まっていることが素晴らしいのだ。
「リアルって何?」そう訊く者の立っている場所こそが現実なのだ。現実に予定調和はない。
「キッドナップ・ツアー」は主人公であるハルが実の父親(訳あって一緒には暮らしていない)にキッドナップ(誘拐)される話である。誘拐、とはいえそこには犯罪の絡む深刻さはない。物語は久しぶりにあう父親に対して、遠慮したり、あきれたり、戸惑ったりしながら接するハルの視点から逸脱することなく進む。
何故、ハルの父親は娘を誘拐するにいたったか。物語の主題はそこにあるのではなく、父親にふりまわされながらも、親を「自らを庇護する存在」としてではなく、いろいろ事情のある一人の人間として認識するようになる、その過程にあるのではないだろうか。
情けないけれど、時には憎らしくもあるけれど、それでも父親を好ましく思う。そのある意味で醒めた視線は女の子ならではかもしれない。
サローヤンの「パパ・ユーア クレイジー」を思い出してみると、主人公である少年は素直に「父さんと暮らすの大好き」と声を大にして言うことができる。少女ハルが語り手である「キッドナップ・ツアー」では、そのような台詞はでてこない。その様子はぎこちなく、もどかしさすら感じるが、だからこそ大切な「言わなかったこと」を浮き彫りにしている。
リアルってそういうものだよな、と私は思う。伝えたいと思っても、言えなかったことは残るのだ。そして時に、それはちゃんと伝わっていたりする。
隣人
2002/07/29 22:34
あなたの隣に
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とても読みやすく、親切で、個人的であり、優しいルポタージュだ。
著者の、まるで事件の当事者に宛てた私信のようなルポ。
自らの立ち位置を「読み物作家」としつこいくらいに繰り返すことで(まるで戒めを与えつづけるかのようにほんとに何度も繰り返されるのです)これが世間一般のルポとは一線を画しているのですよ、と予防線を張っている。それは逃げ道としての予防線ではなく、推測によって綴られたルポだからこその気遣いなのだと私は思う。
テレビを見て、噂を聞いて、好き勝手なことをいえる場所にいるからこそ、その人の(いつかは名前も忘れられていく、しかし当事者には忘れられ得ない名前を持つその人の)ことを、もうちょっと考えてみようよ。そういう文章だと思う。
表紙の写真を見て思う。ありふれた街角に、通勤電車で隣り合う見ず知らずの人々に、顔は知っているけれど名前も知らない店の店員さんに。トイレの落書きに、間違い電話に、同じ本を読んだことのある大勢の知らない人に、同じ時間別の場所でくしゃみをしている誰かに。
すべての人に物語があり、全ての物語は等しく重い。
そんなことを思わせてくれる一冊です。続編も読みたい。
人生処方詩集
2002/07/29 21:53
詩というもの
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詩集、というものを頻繁に手にとる、という人はある日の本屋さんに偶然居合わせた人の中では少数派に属すると思います。しかしその中で、詩というものを読んでみたい気分になったことがある人は、そう少なくないのではないでしょうか。
でも、どれを手にとったら良いのかなあ、と思いつつ、詩集のコーナー(というのが置かれている本屋さんも少ないでしょう)を離れてしまったことが、私にはあります。
詩を読みたいとき。それはどういう時でしょう。
「なんだかこの気分を、うまい言い方で言い表して、うまい突破口を示してくれるような、そんな気の利いた台詞はないものかしら」
そんなリクエストにきちんと答えてみましょう、とドクトル・ケストナーが処方してくだすったのが、この「人生処方詩集」なのです。処方箋にしたがって読むもよし、自分の好きに開くもよし。
「飛ぶ教室」における「泣くこと厳禁」という言葉に励まされ幼年期を送ったような(勿論青年期でも壮年期でもいいんですけれど)そんな男の子にもお勧めです。
「なんだかなあ」とつぶやきたくなる夜、枕もとに置いておきたくなる一冊になることでしょう。
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