サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. 消印所沢さんのレビュー一覧

消印所沢さんのレビュー一覧

投稿者:消印所沢

426 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

黒騎士物語

紙の本黒騎士物語

2003/03/03 20:25

「ばかもん!!俺のケツをなめろ!交信終了!」

7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「ちっ,空気までイワン臭くなりやがった」
「いたぞ! お客さんは11時方向だ.距離を詰めろ」
「T34/85多数だ.こっちの射程距離まで食い込め」
「糞ったれ! こいつは化物だ!」
「情け無用! ファイア!」
「おい,ゲルマンスキーの国防軍発表によると,黒騎士中隊は包囲されてるぞ」
「魔女の婆さんに誓って一人ずつ殺してやる」
「中佐殿,我々は脱出すべきです」
「良心の命のままに.3日前の死守命令など,この状況下では無意味です」
「中隊長! イワンのお喋りが急に増えやがった」
 BUH-KOOOM! BTHOOOM! DOKOKOKOKOW!
「触るな! 私の部下だぞ! さっさと消えんか,犬どもめ.射殺するぞ.10数える.ひとつ!」
 中隊長の手が2回,空を切る.黒騎士中隊,前へ!
「黒騎士1より全車へ.前進しろ.さもなくば死だ」
「俺は病気なんだ! ここから出してくれ!」
「黙れ! お前も俺も戦争という病気だ.お前の病名は装填手.そしてお前がいないと,俺達は戦争ができないんだぞ!」
「ローテ小隊,ファイア!」
「ブラウ小隊,ファイア!」
「ゲルベ小隊,ファイア!」
「命中! 命中!」
「左右に構うな! 突進!」
「死人ども,立ち上がれ! 対空射撃だ!」
「気違いめ!」
『逃亡兵!!』『私は敗北主義者です』
「我々の伍長殿は西方に飽きて,今度はハンガリーに興味を示しておられる」
「なんだって!? 奴は発狂したのか!?」
「大尉殿,こちらがヒトラー・ユーゲントの戦士です」
「ガキども,イワンはこんなに甘くはないぞ! 武器を置いて家へ帰れ!」
「もう一発撃て.これでカンバンだ」
「大尉殿,殺してください.殺してくれえ〜」
「諸君,敗戦だ.後衛部隊は戦友のため,最後の義務を尽くせ.以上」
「クルツ,こいつはどうした? 盗んだのか?」
「いい買い物です.SS修理中隊が喜んで古い軍服と交換したのであります」
「エルンスト,最後の命令を与える」
「まだ1台,動く戦車があります.母上とエンゲによろしくお伝えください」
「もう戦争は終わったと思ってるな.ドイツ戦車兵精神を教育してやるか」
「黒騎士中隊突撃!」
「大尉殿,応答してください」
「お前達は充分に義務を果たした.古いドイツのために死ぬべきではない.新しいドイツのために生きろ.ジーク・ハイル!」
「フレブ・ザ・フレブ.クロフ・ザ・クロフ」
「ゲルマンスキー,戦争は終わりだ.お前の上官を埋めてやれ」

 末期の東部戦線.局地的勝利も,また虚し.著者の初単行本にして著者最高傑作,絶対買え.【関心率96.13%:全ページ中,興味あるページがどれだけあるかの割合.当方基準】

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

捨て童子松平忠輝(講談社漫画文庫) 4巻セット

逆手

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 昔,松平忠輝という,たぶん日本一ツイてない武将がいた.
 どれくらいツイてないかというと,いきなり家康から捨てられたくらいで,その後も配流されたり,幽閉されたりして,一生を終えている.
 そのツキのなさぶりが目に止まったのか,隆慶一郎はこれを創作の上で反転させる.
 かくて一代のスーパー・スターが紙上に誕生することとなった.

 忠輝は「鬼っ子」と呼ばれた.
 それを著者は逆手に取り,忠輝を「生まれつき鬼のように強く,敏捷」と設定した.
 7~8歳にして,鍛えられた忍者よりも高く飛びあがり,牛を持ち上げ,ろくに槍も習っていないのに,槍の師範を打ち負かす.
 荒唐無稽になりがちなこうした設定を,「鬼っ子だから」で片付けてしまう.

 もちろん「主人公がめっちゃ強い」だけでは面白い話にならない.
 強力なライバルが必要だ.
 そこで著者は,徳川秀忠をライバルに据える.
 なにしろ2代目将軍だ.
 凡人という設定(むしろだんだんアホになっていくが)だが,将軍という権力の上,直属の配下に伊賀忍者や柳生宗矩という強力な戦力を有する.
 一方,忠輝もその性格と能力とで味方を増やす.
 そして彼らの暗闘が,ストーリーの主線となる.

 さて,この時代を扱うには,どうしても避けては通れない人物がいる.
 徳川家康である.
 これも強力な人物なので,どちらかに一方的に肩入れさせると,パワー・バランスが壊れる.
 そこで脇に回らせる.
 ただし脇とは言っても,歴史的にはこちらが主線であって,その主線の影響を主人公が受けてストーリーが発展するという形にした.
 とはいえ,物語の終わりのほうになると,家康・忠輝の親子物語のようになってしまうが.

 その他.
 傀儡子を笑わせる忠輝.
 まだ子供なのに柳生の刺客を全滅させる忠輝
 長じても伊賀者を全滅させる忠輝
 柳生の道場を自ら爆破する忠輝
 大阪城に忍び込んで猿飛佐助を呆れさせる忠輝
 大阪冬の陣の最中にもやはり忍び込んで,秀頼と離別の盃を酌み交わす忠輝

 ついでに本多正信に叱られる家康という,珍しいものも見ることができる.

 オチはどことなくハッピーエンドふうに終わるが,本当はもう一つのオチ,
「……という願望のような,走馬燈のような夢を,死の床で見ていたのだった」
というエンディングがあるような気がしてならない.

 今でも,そこんじょそこらの一山いくらの凡作漫画を寄せ付けないほどの面白さ.
 絶対買え.
【関心率99.99%:全ページ中,手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の価値観基準】

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

帝国ホテル厨房物語

紙の本帝国ホテル厨房物語

2008/11/21 00:41

意欲モンスター

12人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ジャンルは一切考慮せず,「村上」という名の著者の本を折に触れて読んでみるという,自称「村上シリーズ」を試している.
 そうすることで特定ジャンルに偏りがちな読書傾向を是正し,思わぬ発見ができるのではないか?という意図の下に行っているものだが,本書発見はその成功例.
 おそらく口述だろうとはいえ,名シェフは包丁捌きだけでなく,文章捌きもまた巧み.
 オチのつけかたも,きちんと心得ている.
 かつて読んだ辻静雄の著書も大変面白かったことも考えると,この分野,侮りがたし.

 一読して驚かされるのは,著者の意欲モンスターぶり.
 「フランス料理を極める」と戦略目標が明確であり,そのためには骨身を惜しまず.
 帝国ホテルへ転職してみると,見習からやり直し(p.56)
 銅鍋を独りで全て磨き上げる著者(p.57)
 「手伝え」は「よく見て覚えろ」の意(p.58)
 秘伝の調理をするときには,「飯に行ってこいよ」と人払いする先輩シェフ(p.64-65)
 その秘伝のレシピを,出征の前に餞別代わりに教えてもらった著者(p.75-76)
 メニュー書きのときに困るというので始めたフランス語学習(p.69)
 留学の話に即答する著者.
 外貨不足のため,とりあえず大使館付きの料理人に(p.117)
 留学先では「悪い点は見ないようにしながら,現地の流儀に従え」(p.129)
 コンパクト・カメラを配って,ローマで「調理場出入り御免」(p.144)
 最初は不満だったが,学ぶところが多かったNHK「きょうの料理」出演(p.145, 149)
 それまで丼勘定でやっていたところを,食材管理をシステム的に行うフード・コントローラーを導入する著者(p.168)
「『俺の料理は』と威張るのは,客が喜んでからにしろ」(p.176)
「料理はそれぞれ歴史を持ち,物語がある」(p.184)
「欲を持て」「急ぐな」(p.203)
「チャンスは練って待て」(p.227)

 他にも,著者にしか書きえないだろう興味深いエピソード多し.
 シャリアピン・ステーキ誕生の経緯(p.64)
 戦争中でも,役人の宴会のときには厨房に届く,ないと思っていた肉・魚(p.71)
 出征兵士のために縁起を担いで出した鯉とカツレツ(p.71-72)
 銅鍋疎開大作戦(p.72-75)
 牛刀・フライパンつきで入営する著者(p.80)
 厨房と軍隊とでのげんこつの違い(p.81)
 両手で作業する厨房での経験が活きて,歩兵砲でようやく適所に(p.82,90)
 戦後40年たって皮膚近くまで浮いてきたので,ようやく摘出できた砲弾の破片(p.87)
 包囲奇襲戦の直前にカレーを料理し,その匂いで敵が退却した話(p.87-89)
 自分で重営倉を作って,自分で入営倉(p.92)
 シベリア抑留.
 衛兵所でソ連兵と折半することで,堂々と捕虜収容所へ持ち込めた薪(p.97)
 少ない配給を活かすために作ったイマン団子(p.98)
 収容所近在での結婚式などで,料理人の助っ人として呼ばれる著者(p.99)
 シベリアでノウハウを蓄積した解凍技術(p.99)
 帰国直前に受けたが,すぐに忘れ去った共産教育(p.100)
 米軍に接収されていて,アメリカ料理ばかり作らされた戦後の帝国ホテル(p.108)
 帝国ホテルでのフレンチ復活のきっかけとなったソース事件(p.113)
 復員しても容貌が変わっていたが,キャベツの千切りの音で著者と分かってくれた先輩シェフ(p.110)
 柔道禁止の指令を出したGHQの本部のすぐ横で,柔道を続けていた丸ノ内警察署(p.221)
 「バイキング」命名の経緯(p.137)
 東京オリンピック.
「日本の野菜は堆肥を使うので非衛生的だ」という偏見を改めさせるため,ヨーロッパ人役員を長野に招待(p.152)
 日本のパンに不安を抱く欧米役員に試食させたところ,「ふだん食べているパンよりずっとおいしい」(p.153)
 イスラーム教徒を安心させるため,目立つところに貼っておいた,高位のイスラーム法学者による証明書(p.154)
 名選手は食事も選び方上手(p.158)
 著者所有の,オリンピックの裏方として活躍した車を,「お国のために頑張ったのだから」と整備代をタダにした整備工場(p.158)
 東京オリンピックのおかげで日本に普及した,大量調理や食材冷凍技術のノウハウ(p.161)
 客に喜ばれるためには「段取り八分」(p.162)
 客に恥をかかせないため,自分もフィンガー・ボールの水を飲んだ荒木貞夫大将(p.200-201)

 その他,社会状況等.
 日露戦争勝利の余韻で命名された食堂「万歳亭」(p.22)
「男なら(将来なりたいものは)総理大臣か大将と書くものよ」(p.30)
 出席日数不足で卒業証書を貰えなかった卒業式(p.34)
 テキヤの親分のために,警察が張り込みをしている屋敷へ,岡持ちを持って出かけ,食器を下げるふりをして財布を取ってきてあげる著者(p.46)
「学歴もない少年少女が明日に希望をもって生きることができたのは,社会にあそび,「のりしろ」のようなものがあったから」(p.47-48)

 名シェフによる文庫版の名料理,堪能せよ.
 買え.
【関心率24.90%:全ページ中,手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の価値観基準】

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

戦乱下の開発政策

紙の本戦乱下の開発政策

2006/01/11 21:07

実写版「拝啓ジョン・レノン」

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

♪拝啓 ジョン・レノン
あなたがこの世から去り,ずいぶん経ちますが
まだまだ世界は暴力に溢れ 平和ではありません
内戦が起こった国は 軍事費が79%増え
固定資産が40%破壊されましたね
難民の3分の2は
財産を全てなくしました

内戦 所得15%減少
内戦 貧困者30%増加
内戦 1年分のGDP60%喪失
内戦 人口の70%難民
内戦 今では犠牲者のほぼ90%は一般人
戦後も不安定が残ることで どこか外国へ資産は20%逃げた
そして今も腐敗が残り PTSD後遺症はとても長い
難民の中にいるような 鬱病患者は68%と多い

♪拝啓 ジョン・レノン
内戦中も戦後も大して変わりはしない
5年以内に再び内戦になる確率は そんな国では約44%になるからさ
拝啓 ジョン・レノン
そんな内戦を資金抑制で防止したい
天然資源も海外送金も目一杯規制しながら和平へ進む

内戦 根本原因は
内戦 経済開発の失敗
内戦 優勢な民族がある場合
内戦 起きる確率は20.9%になる.

拝啓 ジョン・レノン
そして今 石油のように
天然資源から流れてくる資金は 反乱者にとても優しい
拝啓 ジョン・レノン
麻薬資金は反乱者にとても優しい
拝啓 ジョン・レノン
反乱リーダーはとても裕福だよ


買え.
【関心率約90%:全ページ中,手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の価値観基準】

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

偽装農家

紙の本偽装農家

2010/12/01 20:40

濡れ手に粟

12人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 塩津計氏の書評を読んで興味を持ち,読破.
 確かに薄い分量の割には,濃度高し.
 また,俗説打破も多数.

「食糧自給率を上げることは,実は簡単.農業補助金をばら撒き,外国産農産物を完全に閉め出せばいい」(p.8)
「バイオエタノールが必ずしも穀物生産を圧迫するとは限らない.
 茎など食用ではない部分からのエタノール生産技術が確立されれば,むしろ農家にとっては,穀物価格騰落が緩衝される」(p.8-9)
「戦後60年以上,穀物価格は下落傾向にある」(p.10-11)
「発展途上国の食糧不足は,先進国の農業補助金を原因とした穀物生産過剰と,そのダンピング輸出に起因する」(p.12-14)
 バイオエタノールは補助金制限の抜け穴(p.14-15)
 飢餓は絶対量の問題ではなく,経済力の問題(p.15-17)
 「水田フル活用」構想は,非現実的で破滅的(p.22-23)
 農業ブームを煽っている識者・マスコミは,インチキ金融会社と同じ(p.28-30)
 小売段階での利便優先を放置したままの「地産地消」「グリーン・ツーリズム」など意味無し(p.31-32)
「日本のトレーサビリティは,行政の関与が大きすぎる」(p.41)
 日本農業に最も利益をもたらしているのは,農地自体(p.42-52)
「収入を農業に頼らなくて済む兼業農家は,片手間で作れるため,米を作りたがる」(p.45)
 農地転用で濡れ手に粟の利益を待っているだけの「偽装農家」と,その悪影響(p.50-51)
 民主党と自民党のバラマキ合戦(p.54-55)
 農地制度の骨抜き(p.57-60,62-64)
 都市計画の滅茶苦茶さの悪影響(p.60-62)
 米作りを減らして欲しいのが本音の農水省(p.64-66)
「現代版検地を実行せよ」(p.68, 78-79)

 しかし,やはり薄い分量であることは,本書の弱点.
 なぜならばそのために,主張の裏づけとなるデータの類が一切割愛されており,これではその主張の根拠を問われたときに,返事に窮す.
 データ類を兼ね備えた完全版の登場が待たれる.
 また,
「自給率が高いことが,国家戦略上の強みとはならない.
 むしろ輸入慣れしていないことが,凶作のときには国家戦略場の弱みとなる」(p.7)
という主張には,確かに一定の説得力はあるものの,地球規模の気象異変という,現在起こりつつある新たな事態に対しては,必ずしも適切な主張とは言えない.

 なお,海外で芥子の代わりの換金作物として蕎麦栽培を支援しようとしたNGOを,政府が圧力をかけて潰した例(p.33)も記述されているが,アフ【ガ】ーンではない模様.
 中村医師本はおろか,伊藤和也本にも,そうした圧力の話は登場せず.
 もしアフ【ガ】ーンでそれをやれば,ペシャワール会のこと,嬉々として政府批判のタネにすること間違いなし.

 農業問題に関する基礎知識として,最低限度備えておくべき本.
 買え.
【関心率46.81%:全ページ中,手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の価値観基準】

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

総員玉砕せよ!

紙の本総員玉砕せよ!

2011/04/05 21:53

戦死者よもやま話

10人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 いわずと知れた,水木しげるの戦記マンガ.
 TVドラマ化もされた,比較的有名な作品.
 巻末解説に著者の言葉として,
「戦後20年くらいは他人に同情しなかったんですよ.
 戦争で死んだ人間が一番かわいそうだと思ってましたからね」
とあるが,本書の中の人死にに関しても,過剰な同情もムード盛り上げも一切なく,淡々と描写.
 たとえば,川から落ちて鰐に食われたらしい兵士に対しても,死体を見つけたときに,「持って帰ろう」程度.
 テング熱で死んだ兵士に対しては,「死んだらしいぞ」で済まされる.
 それゆえ,かえって妙にリアリティや生々しさが.
 中でも,
「行ちまうんか」(p.79)
は強く印象に.

 また,著者にとってはよほど空腹がこたえたらしく,食い物譚も印象深し.
 昼飯はビンタ(p.46)
 バナナに熱心(p.163-164)

 米軍の上陸が近くなって以降は,とにかく無闇に死を前提とする,狂気の論理が日本軍を支配している様子が活写.
 死にがいを議論したり(p.198),玉砕を再決意するよう圧力をかけたり(p.303)する状況は,下手なホラー・マンガより数段恐怖.

 末端兵士からの視線で,日本軍を描いた書籍としては,「よもやま話」シリーズが比較的有名だが,もし戦死者が口をきき,何かを書いたとしたら,本書のような作品になるのではないかと.
 買えば?

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

日本を滅ぼした国防方針

紙の本日本を滅ぼした国防方針

2009/09/16 00:27

国益<省益

9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 第2次大戦の日本軍関連を調べると,「これでもかっ!」というほどダメな事実ばかり出てきて鬱になることが多いが,本書もまた,その例に漏れず.
 現代の官僚批判として「国益よりも省益優先」がしばしば聞かれるが,戦前,「国益よりも陸軍省 or 海軍省の省益優先」に,次第になっていった様子を本書は解明.

 日露戦争において日本は,状況を有利にしようとしてどんな努力を払ったのか?(p.11-12)
 「国防方針」とは?(p.13-14)
 用語(p.15-16)
 日英同盟の価値は日露戦争後,どう変わったのか?(p.20-21)
 北守から北進へ(p.22-23)
 なぜ北進へ変わったのか?(p.24)
 南北併進方針は,どこから生まれたのか?(p.24)
 そのそれぞれの論理は?(p.25-26)
 山県の考えは?(p.29)
 陸主海主論争とは?(p.30-32)
 問題点は?(p.32)
 どのようにして決められたのか?(p.32-33)
 海外攻勢戦略とは?(p.34-)
 その問題点は?(p.35-)
 当時の外交政策方針は?(p.36-37)
 50個師団構想とは?(p.38-39)
 妥当性は?(p.41-42)
 八八艦隊の「八八」は,どこから導き出されたのか?(p.43-44)
 財政上,それは可能だったのか?(p.44)
 なぜ軍事協商は行われなかったのか?(p.49)
 対華要求に対する米英の反応は?(p.51)
 石井・ランシング協定とは?(p.51)
 なぜ4ヶ国同盟はできたのか?(p.52-53)
 WW1に日本陸軍が出兵しないことで,英国で募る日本への反感(p.54-56)
 40個師団派遣案とは?(p.56)
 田中案とは?(p.58-59)
 WW1の調査研究はどう行われたのか?(p.60-61)
 報告された意見にはどんなものがあるのか?(p.62-64)
 それはどう国防政策に取り入れられたのか?(p.64-)
 軍備構想はどう変化したのか?(p.72)
 大局合意(p.75)
 根本的問題は?(p.76-77)
 対日への変化(p.80-81)
 ワシントン会議は「アメリカの勝利」(p.82)
 加藤の認識(p.83)
 対米開戦一時回避論(p.86-87)
 補助艦増強に乗り出したのはなぜか?(p.86-87)
 現状維持派とは?(p.87-89, 97-99)
 不戦論とは?(p.89-91)
 なぜ不戦を支持しなかったのか?(p.92)
 不検討(p.93)
 宇垣の思想は?(p.95)
 山梨軍縮の背景は?(p.99-100)
 山梨自身の考えかたは?(p.100-101)
 軍備整理とは?(p.102-105)
 上原一派からの反対論は,どんなものだったのか?(p.105-106)
 産業立国主義とは?(p.107-108)
 国家戦略は何故失われたのか?(p.109-110)
 大正12年方針の問題点は?(p.113-115, 119)
 兵站上の裏づけの無かった,陸軍の方針(p.116)

 そして昭和.
 軍制改革は何故頓挫したのか?(p.122-125)
 陸軍「革新」勢力の思想は?(p.125-127)
 「革新」勢力は何故皇道派と統制派とに分裂したのか?(p.127-129,132-134)
 永田鉄山の軍備構想は?(p.130-132)
 艦隊派と条約派とは,なぜ分裂したのか?(p.135-136)
 両派の国防思想は?(p.136-)
 アメリカの建艦能力を甘く見ていた艦隊派(p.140)
 論理の飛躍の見られる艦隊派(p.141)
 条約派の思想と大正12年方針との違いは?(p.145-146)
 条約派の問題点は?(p.147-149)
 なぜ艦隊派と皇道派とは提携できたのか?(p.151-152)
 条約派はなぜ衰退したのか?(p.154)
 艦隊派思想の欠陥は?(p.155)
 石原莞爾の思想は?(p.160)
 石原と福留の対立点は?(p.161-162)
 及川の意見具申の内容は?(p.162-163)
 国策要領とは?(p.164-165)
 当時の国際環境は?(p.165-166)
 改訂は何故支離滅裂な内容になったのか?(p.168-171)
 国策基準は何故妥協的内容になったのか?(p.172-173)
 5相会議の結論の問題点は?(p.174-175)
 当時の陸軍の軍備構想は?(p.176-177)
 当時の海軍の軍備構想は?(p.178-179)
 国防国策大綱とは?(p.180-181,191-193)
 国防国策大綱はどのようにして実現されようとしたのか?(p.182-186)
 なぜ石原莞爾は孤立していったのか?(p.186-187)
 石原構想はどのように失速していったのか?(p.187-188)
 石原構想には問題はなかったのか?(p.189-193)

 第2次大戦勃発.
 時局処理綱領とは?(p.196-)
 どのようにでも解釈できる文面(p.200)
 日独の政略的食い違いは?(p.201-203)
 松岡外相の誤算は?(p.203-204)
 完全に意思分裂していた,昭和15年の国策綱領(p.205-207)
 なぜ南部仏印に進駐したのか?(p.207-208)
 関特演構想の問題点は?(p.209-211)
「自ら四面楚歌の状況を作り出す愚行」(p.211)
 他力本願な帝國国策遂行要領(p.211-213)
 戦争指導要領作成に見られる混乱ぶり(p.214)
 戦争指導要領にはどんな欠陥があったのか?(p.215-218)
 なぜ杉山参謀総長は乙案に反対したのか?(p.219)
 戦争終結構想とは?(p.221-222)
 その問題点は?(p.223-225)
 陸海軍は戦争指導上,どれだけ混乱していたのか?(p.226-228)
 陸海軍の軍備構想の問題点は?(p.229-232)
 井上成美の軍備思想は?(p.233-234)
 空理空論(p.234-236)
 英米との比較(p.237)

 「戦前は自主防衛できていた」などと吹聴する,口だけは勇ましい連中(石破茂命名するところの「自慢史観」論者)が近年目立ってきているが,本書を一読するだけで,それがどんなにむなしい虚言かが理解可能.
 買え.
【関心率99%:全ページ中,手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の価値観基準】

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

阪神大震災自衛隊かく戦えり

紙の本阪神大震災自衛隊かく戦えり

2007/08/29 22:19

自衛隊バッシングを一蹴することのできる一冊

10人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

阿部知子議員の自衛隊誹謗発言をきっかけに読む事にした本.
 薄めだが要点は全て簡潔に網羅.臨場感もたっぷり.
 地震発生時の状況.
 基地にも少なからず被害.
 近傍派遣.バイクによる偵察.
 県庁とのやりとり.
 交通渋滞.ヘリポート不足.
 足りない重機,人員.
 炊き出しにおける,「下に合わせる」悪平等主義.
 微妙な問題のあったガレキ撤去.

 派遣要請の遅れよりも重大問題だった,派遣後も続く自治体からの連絡の悪さ.

「自衛隊の出動が遅かった」(準備は早かったが,派遣要請が遅れた)
だの,
「自衛隊は役に立たなかった」(限られた人員,物資で少なからぬ成果を挙げている)
だのと自衛隊バッシングを一蹴することのできる一冊.

 機密とされている有事の作戦行動計画も,輪郭がぼんやり透けて見てるので,二重にお徳.
 買えば?
【関心率約80%:全ページ中,手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の価値観基準】

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

トレイシー 日本兵捕虜秘密尋問所

必敗

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「これでは日本が負けて当たり前」
 誰でもそう思わざるを得なくなるほど,本書に示されている,米軍側の情報収集が徹底され尽くしていたことが分かる一冊.
 まず,冒頭に挙げられた皇居の平面図が,ほぼ正確で驚愕(p.10-18)
 他にも要塞情報(p.149-151),果ては伍長の証言によって作成された暗号用タイプライターの形状(p.246-263,311-315)まで筒抜け・丸裸状態.

 そのために準備されたのが,まず施設(p.21-26, 55-56)
 情報収集対象とした捕虜は2000人以上(p.30-31)
 ドイツ兵捕虜の情報収集を行っていた,英国のMI19へアルブライト海軍少佐を派遣して,そのノウハウを学び(p.39-49),
リフェルダッファー中佐(p.43,120-123)の指揮する新組織OP-16-Zの下に,チャールズ・スピンクス少佐(p.49-50)などの日本語専門家を揃え(p.243),
日本語に通じた者が少なければ,特別講座を開くと共に,民間人からも広く登用し(p.58-64),
JDCなる秘密会議を開き(p.168),
memobox recorderを用いて盗聴設備まで整え(p.44-51)
「サクラ」を送り込み(p.116-120),
得られた情報をチェックするための工程表があり(p.141-143),
陸海軍の縄張り意識を克服するため,組織内容まで工夫(p.51-53)
(それでも,前線部隊がその情報収集のため,捕虜を手放したがらず,「トレイシー」に閑古鳥が鳴いていて(p.120),ニミッツの介入で事態が解決した(p.122),などというエピソードはある)
 本書では,ある尋問官の日課を紹介している(p.64-68)が,さながら日本教育⇒尋問業務⇒日本教育⇒尋問業務といった感じ.
 その上,ベルリンの日本大使館の書類を奪取する作戦まで立てられるが,ソ連軍の進攻が早く,こちらは中止(p.176-179)
 その代わり,大島大使一行や,小島秀雄少将を連行してきて,私語を盗聴(p.268-285,288-311)
 戦後も巣鴨プリズンにおいて行われた盗聴(p.372-373)
 その上,イラク戦争に際しても,「トレイシー」が研究され,参考にされるという徹底ぶり(p.374-375)

 さらには心理学まで動員.
 だいたいにおいて日本兵捕虜は,米本土に連れてこられた時点で,その豊かさを目の当たりにして既に動揺(p.69-70)
 入国審査書類を装った「登録書」(p.71-72)
 収集情報のリクエスト(p.73-74) ハーヴィー指示書(p.143)
 捕虜になった日本兵の心理(p.79-81,98-100,107-115)
 尋問官長・ウッダード海軍大尉(p.85-87,356-359)
 盗聴器の仕組み(p.89)
 日系人からの歓迎(p.92-93)
 「飛龍」からの脱出・漂流(p.93-96)
 日記の扱い(p.104-106)
 「情報交換」まで行っての懐柔(p.126-132)
 入院体験で感銘を受ける捕虜たち(p.135-136)
 JTG(p.139-141)
 スケッチの描かせ方(p.154-165)
(余談ながら,日系人米軍兵士にも道義心の葛藤があったようで,日系人部隊が対日戦線ではなく欧州戦線に送られたのは,日本兵と戦いたくないという心理が働いたためとのこと(p.172-176))

 対する日本陸軍が,英米情報収集の部署を立ち上げたのは,開戦から半年後(p.33)だったというから,大差がついていたのは工業力や物量だけでなかったことが明白.

 心理戦はさらに,日本向け謀略放送という形でも(p.226-244)
 放送原稿をチェックする審査委員会(p.239)
 さらにまた,戦後統治でもGHQ神道指令に関し,活用される心理分析(p.360-369)

 情けないのが情報将校のはずの,沖野という日本海軍大佐(p.182-211,311-317)
 情報の大切さを知っているはずなのに,心理的動揺も手伝ってか,様々な情報を喋りまくる.
 米側から「よくしゃべる男」と評されるほど(p.208-210)
 呂号潜水艦の通信兵のほうは,そうだということを隠し抜いている(p.113)だけに,いっそう情けなさが引き立つ.
 いかに日本が情報軽視だったかが,この一件からも明白.
 後に言い訳本を出しているあたり,武人というより今日の無責任官僚に通じるような印象も.
 ワン・ウーの尋問(p.186)
 デキス・キルドイルによる心理戦(p.194-197)
 エドワード・ピアス大佐(p.196-197)
 捕虜についての認識の違いに慨嘆する沖野(p.211)
 佐藤大尉も喋りまくり(p.212-213)
 「打ち首」問題に興味津々の米軍(p.214-220)
 突然の獄舎移送(p.220-224)
 Uボート(p.264-265)

 終章は日本兵捕虜が射殺された一件(p.320-355)
 これに対する報道姿勢の違いから,戦後も決して情報の価値が見なおされたわけではない日本の姿が浮き彫りに.

 総索引が無いのは残念.
 また,日本人著者が書く,この手のものにありがちな,無意味な飾文が,この本にも多く,少々イラつかされるが,我慢できる範囲内.
 買え.
【関心率90.02%:全ページ中,手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の価値観基準】

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

石油で読み解く「完敗の太平洋戦争」

「資源は欲しい,でも資源国にケンカは売るよ」

8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 さすが元石油公団理事であるだけあって,日米開戦前夜の石油を巡る日本の状況に関しては,図表データ類も含め,実に詳細.
 石油資源確保に日本が血眼になる一方,資源国に片っ端からケンカを売って回るという,コメディとも何とも言いようがない状況がよく分かる.

 木炭自動車の普及状況は?(p.14-21)
 国内油田開発状況は?(p.25)
 中東使節団の顛末(p.26-32)
 なぜ日本は満州において油田を発見することができなかったのか?(p.33-37)
 なぜ日本は樺太油田からの原油を獲得することができなかったのか?(p.38-41)
 現在の北韓(北朝鮮)と良く似た,当時の日本の石油事情(p.43-45)
 ガソリンの質の差(p.50-53)

 開戦後の状況.
 葬られた「抗戦力調査」(p.56-58)
 やはり葬られた新庄報告(p.60-61)
 石川信吾とは?(p.64-66)
 企画院の石油需給状況見積もりについては,猪瀬直樹『昭和16年夏の敗戦』の簡略型的記述.
 船舶輸送力に関する,開戦前の指摘(p.81)
 真珠湾で見せた,米軍の高い対応能力(p.83)
 真珠湾にあった石油タンクの能力は?(p.85-87)
 日蘭会商(p.91-96)
 南方石油確保準備はいつ頃から行われていたのか?(p.95-97)
 メナド攻撃とは?(p.98-100)
 南方油田の接収時の破壊状況は?(p.100-101)
 接収状況は?(p.101-106)
 タンカーの状況は?(p.109-116)
 石油業界の犠牲者(p.116-118)
 兵員輸送状況(p.118-121)
 タンカー不足が作戦に与えた影響は?(p.136-142)
 松根油は役に立ったのか?(p.143-145)
 ガソリン研究の状況(p.146-148)
 人造石油は役に立ったのか?(p.148-152)
 国内精油所の被害(p.168)
 末期の国内状況(p.170-172, 180-182, 188)
 国内産油の状況(p.178-180)
 戦後日本の石油方針に関する米側の各種報告書(p.190-193)
 戦前と現在の石油事情比較(p.199)

 現代への提言.
 中核石油開発企業の必要性(p.206-207)
 備蓄量はじゅうぶんか?(p.210-215)
 石油専門情報機関(p.221-222)

 一部の,石油には直接関係しない記述においては,やや疑問のある部分も2箇所ほどあり.
 戦況への全般的な考察は平均的.
 いくつもの書籍で何度も既出のもの.
 一方,専門分野=石油に関しては,さすが情報量豊富.
 現在に繋がる提言にも,目新しい点,多し.

 買えば?
【関心率48.52%:全ページ中,手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の価値観基準】

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

天魔 新装版

紙の本天魔 新装版

2007/01/09 21:57

「隠居・島耕作」

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 簡単に言えば,「隠居・島耕作」.すなわち御隠居ファンタジー.
 サラリーマン・ファンタジーである「島耕作」シリーズが,上役に恵まれ,仕事に優れ,女にももてて,人望もある……という「ぶっちゃけ,ありえな〜い」人間なのに対し,本書の主人公,秋山小兵衛も,田沼意次という(本書においては)理解ある偉い人とのコネクションに恵まれ,剣術に優れ,娘のような妻を持ち,人望は山の如し……といった,現実には滅多に存在しない「ゴージャス隠居」.
「こういうことをきちんとせぬと,今の世の剣術遣いは飯の食い上げになってしまう」
「人間の不思議さ」「もともと,人間なんてものが,わけがわからぬものさ」
「こんなことはお前,剣術をつかうよりも楽なものさ」
……などというセリフは,「生と死の境界へ身を置くことに,小兵衛はあまりにも体験が多過ぎた」からこそのもの.現実には,権力を背景にした隠居老人なんて,巨泉かナベツネのようなのしかいないって.
 というわけで,本シリーズを未読の,ある意味不運な読書家諸氏におかれては,ファンタジーだと割りきった上で楽しむべし.実際,ハリー・ポッターよりも楽しめる.
 八百長試合の意外な結末と,小兵衛の意外な弱点.
 斬ったことが「なぐさめ」
 むささびのように飛び跳ねる怪物も登場.
「同じやり方で」
 「奪って打つ」ことができるほどの老剣士が,「しわ腹を切って果て」ねばならなくなるかもしれなかった理由.
 善良な詐欺師(オチは,そんなオチでいいのか?というものだが)
 小ネタも効いている.
「このごろは江戸に,仕掛人とか呼ばれて,金づくで人を殺す連中が増えているそうな」
と,しれっと書く著者.
 「あれほどの剣術の名人が,たかが鯰にしてやられ」た理由.
 饅頭に纏わるアネクドート.そこだけ抽出し,落語のバレ噺としても使えそうなほど上手い.
 買え.
【関心率,約67%:全ページ中,手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の価値観基準】

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

正義・戦争・国家論 ゴーマニズム思想講座 自分と社会をつなぐ回路

猿でも分かる「市民」論

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 小林よしのり絡みの本にしては意外にも良書.
なぜ良書になったかと言えば,全く知識のない小林に,竹田・橋爪両氏が,猿か幼稚園児にでも教えるように丁寧にレクチャーしているため.

 人間が生活の中で持っている「よい」や「美しい」を表現するのが文学や芸術.
 それを認めず,表現を政治に従属させようとする「政治派」の問題.
 絶対正義を想定し,そうでないものに対しては攻撃的になる「政治的プラトニズム」.それが垣間見える市民運動.
「援助側にイデオロギーがあると,困っている人に社会変革の『目的意識』を与えることが目標になってしまう」
「『弱い者の味方』も,権力発生の手段になりえる」
罪悪感の押し売りをする「罪悪感脅迫」
 絶対正義主義や罪悪感脅迫では,なぜ差別問題が本当の意味で解決しないのか?
「『正しさ』とは関係の『快(よ)い』である」
「人類は非武装平和の域にまではまだ達していない」
「事実を突きつけられたときにグラグラするのは,健全なナショナリズムとは言えない」
 「反米」という自我分裂(p.193)
 別の極端な世界象を与えるカウンター・バランスは悪手.世界像は3枚以上必要.
 市民派と市民の違い(p.219)
 市民派運動が縮小再生産していくワケ(p.231)
「戦後日本は共同体主義への退行」
「社会は宗教的権威のゲーム・政治的権力のゲーム・マネー・ゲームの3つの約束事の網の目でできている」
 家庭も社会であることを認めないのが,フェミニズムの歪み.

 若干,話が重複したり前後する部分もあるが,対談形式なのでやむをえないところ.

 ところで,本書で述べられていることとは大きく矛盾するトンデモ主張を,昨今の小林は繰り広げているわけだが,その矛盾に対する小林自身による釈明はあったのか?——ということはさておき,買えば?
【関心率65.52%:全ページ中,手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の価値観基準】

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

ソヴィエト後の中央アジア 文化、歴史、言語の諸問題

気合

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書出版のため,専門家が書き下ろしたという,気合の入った一冊.
 おかげで情報量において,非常に充実した内容.
(類書が少ないということもあるが)
 また,「南トルキスタン」こと北部アフ【ガ】ーニスタンについても,僅かながら記述あり.

地理:
 1950-60年代,40-45%が沙漠に染み込み,無駄になっていた大カラクム運河の水(p.9)
 700以上造られたシルダリヤ川水系の運河(p.9)
 灌漑目的には利用できない,イリ川の水(p.10)
 灌漑農業が非科学的な方法で実施されたために起きた,アラル海の死(p.10)
 2期作可能な,ウズベキスタンやタジキスタンの平野部や谷あい(p.11-12)

概史(p.12-89)
 シルクロードの始まり(p.13)
 クタイバ将軍(p.15)
 ムカンナの叛乱(p.16)
 サーマーン朝の軍指揮官たちの裏切り(p.16)
 モンゴル帝国に唯一抵抗したホジャンド(p.18-19)
 ウルグ・ウルス(p.19)
 アミール・ティムール(p.19-20)
 クンドゥーズの戦い(p.20)
 oltin davri(p.20)
 ティムール帝国の内戦(p.21-22)
 「ジュズ」(p.22)
 シルクロードの地位低下(p.23)
 ベルコビッチの遠征軍の全滅(p.25)
 中央アジアへのロシアの標的変更(p.26-27)
 ロシアのトルキスタン侵略史年表(p.27-29)
 建国当初から複数民族の集合体だったアフ【ガ】ーニスタン(p.32)
 南トルキスタンの生活水準の「アフ【ガ】ーン化」(p.33)
 ブハラ・ユダヤ人(p.37)
 フェルガナ盆地での,赤軍による大虐殺(p.41)
 アラシュ・オルダ(p.41-42)
 TASSR(p.42)
 ウズベキスタンへの革命輸出(p.43)
 BSSR(p.45)
 民族境界策定(p.45-46)
 キャラバン掠奪⇒開戦(p.56-57)
 シルクロード再建(p.61-65)
 遊牧民社会の高尚な精神的風土(p.66)
 Tangri taolo(p.73)
 天空の宗教(p.83-84)
 ドゥクチ・エシャン暴動の基本的理由(p.87-88)
 過激原理主義に対抗するための,土着イスラーム支援(p.88)
 中央アジアでは対立していない,イスラームとキリスト教(p.89)
 横行する歴史プロパガンダ(p.136-146)

 p.92からは文化・言語に起因する,中央アジアの紛争の諸問題:
 民族主義は一過性のもの(p.92-93)
 民族紛争の分類(p.94-96)
 攻撃的民族主義と,防衛的民族主義(p.96-98)
 民族主義を生み出す危険性のある事象とは(p.99-102)
 民族紛争事例(p.102-105)
 スターリン主義下の「民族理論」とは(p.105-106)
 強制移住(p.115-119)
 トルキスタン構想(p.124-132)
 ロレンスの暗躍(p.131)
 現状,日本にもたらされる効果の少ない,中央アジア諸国と日本との交流(p.179)
 日本と中央アジアにおける活動の成果を無にしようとする組織でもある上海協力機構(p.179)
 水争い(p.180-188)

 p.190からは各国別のデータと論考(~p.265)
 北部アフ【ガ】ーンについての考察を含む.
 その抱える問題は,どの国も多く,かつ,深刻であり,ここに列記しきれないほど.
 アーリア人思想まで残っている(p.235)とは……
 キルギスの分裂危機(p.245-246)
 アフ【ガ】ーンにおけるウズベク語公用語問題(p.263)
 政治的に非パシュトゥン排除の進むアフ【ガ】ーン(p.264)
 民衆運動と政党とを互いに対立させるよう仕向ける中央政府(p.265)

 参考文献一覧(p.270-291)は,リンク集としても有益.
 また,訳者作成の文献案内(p.292-297)は,ネット書店の検索でも出てこなさそうなマイナー文献を含む.
 さらに索引まであり(p.298-302),これらの点では満点に近し.

 必ずしも政治的に中立とは言えそうに無い記述が,散見されるのが残念.
 けれども,4000円もしない低価格で,これだけの情報を得られることは,滅多に無し.
 お買い得.
【関心率76.16%:全ページ中,手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の価値観基準】

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

戦略の格言 戦略家のための40の議論

盲点

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 戦略格言を40チョイスして,本格の戦略家の視線でそれを解説するという,これまでありそうでなかった本.
 しかもそれぞれの章のタイトルが,また,格言ふう.
 読者にとって盲点だったのは,その企画性ばかりではなく,内容にもしばしば盲点をつくような解説が.

 戦争の「コンテクスト」は7つ(p.21-25)
 テクノロジーよりも,テクノロジーの使い方(p.22)
 すべてで有利である必要はないが,一つでも弱点があると,それが命取りに(p.24-25)
 戦争と平和とは連続したものだが,それを認めたくない人は多い(p.31-34)
 戦争は秩序形成のきっかけ(p.33)
 戦争実行の際,なければならないもの(p.37)
 戦上手と平和構築上手とは別物(p.37)
 「敵を打ち負かすこと」は,戦争の本来の目的を達成するための重要なステップの一つ(p.40)
 平和作りを成功させるには,敗れた側にしっかりと負けを認めさせることが肝心(p.42)
 6つの判断基準を持つ「戦争についての正義」(p.44-45)
 戦争は「効く」(p.46-48)
 「ドイツを阻止するには,戦争以外の選択肢はありえなかった」(p.48)
 国連による秩序回復の失敗原因(p.53-54)
 リーダー国家の必要性(p.54,56-58)
 多くの国は国際秩序に無関心(p.55)
 力関係のロジックに厳格に従って行動したり反応したりすると想定するのは,ネオリアリストの根本的間違い(p.63)
 ムード(p.63-64)
 他国から見れば非理性的な「合理的行動」(p.65)
 戦争遂行中に発生する2つの病理(p.71-73)
 戦争の多面性(p.76-77)
 結果を出せなかった理由(p.78)
 他のコンテクストで他国に負けている要素を,戦闘技量と士気によって補うことはできない(p.79-80)
 戦争と政策の間の適切な関係を破壊するもの(p.84)
 対話不確実(p.86)
 政治家にはありがちな,「望ましいこと」と「実現可能なこと」とを混同する性質(p.87)
 戦場の「不確実性」の要因(p.91)
 「戦争は常にギャンブルである」には例外なし(p.93)

 現代における戦略家の立ち位置(p.101)
 「橋」(p.102)
 戦略を軽視すると……(p.116-118)
 戦略の古典の必要性(p.121-126)
 戦略にも流行あり.
 戦争と時間との関係(p.143-149)
 摩擦(というより物理学的抵抗というほうが適訳か?)のコントロール(p.154-156)
 サイバースペースは地理の重要性を克服できるか?(p.162-163)
 軍事戦略と大戦略の混同の傾向(p.165-166)
 戦略研究に対する低評価(p.167-168)
「軍事戦略と大戦略とは,軽軽しく変更されてはならない」(p.169)
 根拠のない楽観主義は,戦略の敵(p.174)
 根拠のない自信は,潜在的な命取り要素(p.174-175)
「不可能なことは不可能である」(p.176-177)

 RMAや核の相互抑止といった戦略に欠けている,人間の要素(p.180)
 戦略で最も重要なのは,人間の要素(p.181-186)
 敵のリーダーが,こちらから見て「合理的」選択をしない可能性(p.186)
 政治は安全保障における軍事面を忘れがち(p.189-191)
 民主制国家は,「現代には軍事的脅威は全く存在しないか,非軍事的手段で封じ込めたり,制御することができる」と誤解しがち(p.191-194)
「ある状況で軍事的に優秀であることが,すべての軍事的問題や戦略において優秀であることを意味しない」(p.198-202)
 取り組もうとしている戦争のタイプにマッチさせる必要(p.207-209)
「新しい機械を受け入れてばかりいる戦い方というのは怪しい」(p.222)
「ロジスティクス面での実行力は,戦略的チャンスが本物のチャンス_なるかどうかを決定することができる」(p.224-)
「ロジスティクス面の充実は,戦闘力を削って得られたものであることが多い」(p.228-229)

「恐怖,名誉,利益」(p.236)
「我々が国際社会を良い状態に変化させようと本気で取り組むのなら,良い行動の規範の形成や,国際制度期間の創設などに,無駄な時間を費やすべきではない」(p.237)
「戦略史は道徳的な教訓話にはなりえない」(p.242-243)
「普通のものとは違うとはなかなか気づかれない,超大型の脅威」(p.244-245)
 超大型の脅威とはどういうものかの判断基準(p.247-249)
 慎重ではない政策家は危険(p.254-255)
 道徳論は国際政治に無知の証し(p.259-262)
「戦略にはドル・マークがついている」(p.268-269)

「国政術と戦略が持つ,最も重要な特徴は変化しない」(p.280-282)

 紙幅が限られているせいか,具体例が不足している章があるのが残念.
 本書を本当に理解するには,古今東西の戦史の知識集積が事前に必要.

 したがって難易度は高いが,買え.
【関心率,約90%:全ページ中,手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の価値観基準】

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

コサックの旅路

紙の本コサックの旅路

2009/02/12 22:23

あるコサックの死

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 どうも最近,当方の「コサック・スイッチ」がonになったようで,コサック関連の本ばかり読んでいる.

 このスイッチonのきっかけとなったのが本書だが,その中に,「エレーナ」というタイトルの1章があって,これが興味深い.
 少々アレンジを加えて紹介してみたい.

 エレーナはごく平凡なロシア人主婦.
 夫の名前はゲンナジー・コトフ.
 空挺軍リャザン軍事大学を中退後,原発機器工場従業員.
 工場内の共産党新聞の記者であり,コムソモール(共産主義青年同盟)のリーダーとして,市の代議士になったこともある.
 2人の生活は,ソ連という枠の中では順調であるかに見えた.

 だが,1993/2/9,彼は死亡する.
 彼が死んだのは,エレーナが新聞でしか聞いたことのない,ボスニア・ヘルツェゴビナという場所だった.

 なぜそんな場所で?

 その頃ゲンナジーが,工場をやめ,フリーのジャーナリストとして戦場を渡り歩いていたことは,エレーナも知っていた.
 不在がちな夫と,そのことで口論したりもした.
 でも,まさかボスニアとは……

 やがてその地域のコサックの本部から情報がもたらされた.
 ゲンナジーは,90年になってコサックの復古運動が始まると,彼はその運動に没頭するようになっていた.
 その情報によれば,ゲンナジーは狙撃されて死亡し,その地で埋葬されたという.

 エレーナは大変な苦労をして,その地,ヴィシェグラードに向かった.
 自分のその目で遺体を見るまでは,彼の死を信じることができなかったからだ.

 ヴィシェグラードのセルビア人たちは,彼女を暖かく迎えた.
 彼らは言った.
 ゲンナジーは,セルビアのために命を落とした英雄だ,と.
 セルビア兵たちは言った.
 ゲンナジーの戦闘能力の高さはズバ抜けていた,と.
 ゲンナジーのボスニア・ヘルツェゴビナ紛争での「顔」がようやく分かった.
 彼はコサック義勇兵を指揮する小隊長だった.

 それはどうやら,それ以前のナゴルノ・カラバフ紛争などでも同じだったようだ.
 いつからそうなったのかは分からない.
 しかし間違いなく,ある時期から彼は戦場ジャーナリストではなく,義勇兵として参戦していた.
 他の多くのコサックが義勇兵として参戦していたのと同じように.
 でも,なぜ?

 参戦中,彼らに払われる給料は僅かなものだったという.
 コサックたちは,金が動機ではないことを強調する.
 彼らにとってはロシアを守る戦いこそがアイデンティティなのだという.

 コサックは冷戦時代,弾圧の対象だった.
 コミュニティは解体され,コサック指導者は抹殺され,歴史資料は焼却された.
 ロシア革命に協力したコサックもいたにかかわらずである.
 その自由な気風をソ連当局は恐れたのだろうと,同書では推測している.
 ゲンナジーも,自分がコサックの血統であったことをそれまで知らなかったという.

 冷戦後,コサックはようやく復活したが,抹殺期間が長かったため,伝統は完全に途絶えており,欧米に残る資料を頼りに,幾多の試行錯誤が続いているという.
 ゲンナジーにとっては,そして他のコサックたちにとっても,戦いはあいまいなアイデンティティーを強固なものにする,唯一の手段だったのかもしれない.

 チェチェンでも,そして2008年のグルジア・ロシア紛争でも,コサックは参戦したという.
 これからも,多くの「ゲンナジー」たちが戦い続けるに違いない.
 コサックとは何か?
 アイデンティティーとは何か?
 この問いへの答えを求めて.

 他にロシア・コサック史,シベリア東進史などのパートも興味深し.
 買えば?
【関心率約50%:全ページ中,手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の価値観基準】

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

426 件中 1 件~ 15 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。