豆鉄砲さんのレビュー一覧
投稿者:豆鉄砲
| 4 件中 1 件~ 4 件を表示 |
シャカリキ 7巻セット
2002/08/16 17:07
『坂やったら誰にも負けへんッ!!』
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「どうして山に登るのですか?」と訊かれて「そこに山があるから」と答えたジョージ・マロニー(登山家)は有名。
では、本作主人公・野々村 輝(テル)が「どうして山の登るのですか?」と聞いた場合、テルはどう答えるだろうか?
テルならきっと、「そこに坂があるからや」とそっけなく答えるのかもしれない。
本作主人公・テルは、関西のとある坂の多い町で育つ。自転車を買ってもらったうれしさに、歩いたほうが早い坂道を、来る日も来る日も登り続ける。
そんなある日、いつものように坂を登っているテルを横を、軽々と追い抜かして頂上に向かってしまうライバル・由多比呂彦(ユタ)が現れる。
自転車がすべてだったテルに、敗北の二文字を加え、ユタに対してのリベンジに燃えるテルは、ユタが進学するという横浜の自転車部のある高校に入学を決める。
本書を読んでいると、自転車のペダルがこぎたくなる。なぜだか分からないが、テルやユタのように走ってみたくなり、いてもたってもいられない。真夏でも、真冬でも、とにかく風を切って走ってみたいと思わせてくれる、男達の熱き自転車ロードレスの戦いを描いた傑作。
O・ヘンリ短編集 改版 1
2002/08/14 20:33
20世紀初頭のアメリカが見えてくる
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
大衆文学の傑作。
20世紀初頭、アメリカの街中の、どこにでもいた人たちをモデルとした、皮肉あ
り、涙あり、そして笑いがある、びっくり玉手箱のような短編集。
恣意的な解釈すれば、現代版よしもと新喜劇みたいなものだろうか。
とにかく書店で一度手に取って見てほしいものだ。一読の価値はあると思う。
きみを守るためにぼくは夢をみる
2003/06/29 09:50
将来に向けた可能性
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
主人公である大江朔は、10歳の誕生日を迎えたその日、川原砂緒というクラスメートの少女と「はじめてのデート」をする。デートを堪能した帰り道、公園のベンチで二人は将来について考え、未来に向けた<ある約束>を誓う。
彼女と別れ、朔は今日の出来事を夢うつろに考えるまま、家で待っている母親の手料理、彼女が見せた笑顔、そんな何気ないことを思い、頭の中から響いてくる<眠りをささやく声>に耳を傾け、闇の眠りへと落ちていく。
眠りから覚めた朔に待っていた現実は、七年の時を超えた未来だった。
10歳の体のまま7年後の世界に降り立った朔。その世界に存在する人たちはみな、七年もの成長を遂げていた。いくばくかの時間を超えた少年が経験する苦悩、彼女との約束の結末、たどり着いた世界の「答え」とはいったい何だったのだろうか。
やさしさに満ちた文章が心に響く。作中に登場する弟、医者、そして彼女etc……、どの人物たちも「大江朔という人間の将来性」を見捨てようとはしない。だからこそ、思い悩む者の心の葛藤が胸を打つ。
作者が見せようとする世界は、丹念に描いた青春の輝きを文章に込め、爽快な気分かもし出し、躍動させ、沈んだ心を活気づける。
最終章「きみを守るためにぼくは夢をみる」の中でみせる少年少女の決断は、ひとつの形でしかない。大人に近づこうとする一歩を踏みこんだ成長のプレリュード。作者が伝えようとした「勇気」を受け止めてほしい。
小説は、読んでみたい! と思うことが前提にあって、始めて成立するものだと思う。そういった意味で、本書「きみのため……」はイラストのやさしさが胸を打ち、この一冊を書店で手に取ることに成功している。もちろん「児童書にありがちな「<楽しさ>を堪能する」という文体が大きなネックなっていることも。
家族全員で楽しめる作品としてオススメ。
社会性などの小難しいことを考えないで、ただ文中に広がっている恋愛だけを楽しめばいい。それ以上のことは何もいらないから。
幸福な王子 ワイルド童話全集
2003/06/29 11:20
ワイルドが求めたもの
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
生来涙もろい私(現時点22歳)が、小学校のとき涙を貯めてしまった「ルドルフといっぱいあってな」と双璧をなした「幸福な王子」が収録された童話集である。ちなみに私は、ツバメと王子様が人間たちを助けるやさしさに満ちた作品だと記憶していた。
年甲斐もなく、人生に嫌気がさしていた私が、もう一度だけ「やさしさ世界に埋没したい」という短絡的な思いのために、本書に手をとった。が、この童話集に収録されている作品には幸せ感じさせる世界など存在しなかった。
本書は、ワイルドが求めた「救いの念」から生まれたものだ(と思う)。
社会主義(この社会主義と、現代に存在する社会主義の理念とは違う。ワイルドが個人的に考えた独自のもの)を崇拝したワイルドだけの崇高の精神が反映され、この世でワイルドだけの珠玉の作品が生まれている。流麗な文章に集約された美的センス、ずば抜けた個性を感じ、ひとつひとつの世界の中に感情がトリップする。
代表作として収録されている「幸福な王子」や他の作品にしても、必ず人間の残虐性が目に付き、少年ときの爽快さなやさしさとは違った感性が働く。悲しみだけの世界にとどまらない。今まで経験した人生の経験論が、所々に存在した人間の皮肉や不完全さを推し量ることを考え出させてしまう。年を取りすぎたのかもしてない。昔読んだものと、また違った裏世界が脳内を駆け巡った。たしかのすばらしい作品であるのだが、すさんだ心で読むような本ではない。人生の幸せがあるときだからこそ読んでみたい本なのだ。
これはきっと、幸せをもっている人たちのための訓示のような気がする。
だから言いたい。この本は人生に余裕があり、幸せをたくさん持った人間が読む本だ。
間違っても人の残虐性を垣間見たいのならオススメするが、そうでないのなら、この書に手を出すことは今一度考えたほうがいい。
必ず救いを求めた終局を迎えるが、それをしのぐほどの<人間対しての戒め>が、目の前に点灯し、ああ……と嘆いてしまう。
オスカーワイルドにとっての幸せとは何だったのだろうか。本書からは、自虐的な自分自身への警鐘のようなものが心に突き刺さし、痛いほどの人間の愚かさに心の葛藤を残した。やりきれない。
| 4 件中 1 件~ 4 件を表示 |
