AK2さんのレビュー一覧
投稿者:AK2
8 件中 1 件~ 8 件を表示 |
紙の本ツール&ストール
2002/09/03 22:45
白戸修、23歳。君はとにかくカッチョいい!
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主人公、白戸修君(23歳)。
かなり不幸で、とてつもなくお人よし、そして実に実にカッチョいい!
「犬も歩けば棒にあたる」というが、彼の場合は家で寝ていたって
「事件」にあたる。出歩こうものなら益々あたる。
特に「中野」は彼の鬼門だ。
卒業がかかった期末試験の当日だろうと、残高51円(!)の預金通帳に
呆然としていようと、いよいよ就職だろうと、出会うものは出会うのだ。
「事件」とは何ぞや? −帯に曰く、「日常の軽犯罪」。
犯罪が日常にあっちゃ困る、と思うのだが、読めば分かっていただける
と思う。ある、確かに。
しかし普通は、気付かないか、気にしないか、見て見ぬフリをするか
とにかく関わらないようにするのではなかろうか。
でも、白戸君は違う。
気付いてしまう、気にしてしまう、巻き込まれてしまう、何が何でも
「飛んで火に入る夏の虫」になっちゃうのだ。
火に入った虫は燃え尽きちゃうんじゃ?と諦めるのはまだ早い。
白戸君はがんばる。
ダイハードの主人公でもシャーロック・ホームズでもない
彼だけれど、もみくちゃのぼろぼろになっても、一所懸命
その時自分に出来ることをする。
人事だというのに真剣に考えて、もつれた謎だって解く。
そういうなんともカッチョいい男なのである。
白戸君がんばれ。
そして、もっともっと事件に巻き込まれて、是非続編を読ませて欲しい!
2002/08/17 02:26
虫の世界へいらっしゃい
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以下の特徴が当てはまる方は、本書の速攻ゲットを
オススメします。
1 昆虫や生き物が大好きな方。
2 「ファーブル昆虫記」または「みつばちマーヤの冒険」が
お気に入りの方。
3
本書の目次
第一話 蝶々殺蛾事件
第二話 哲学虫の密室
第三話 昼のセミ
第四話 吸血の池
第五話 生けるアカハネの死
第六話 ハチの悲劇
このタイトルで「ピン」と来た、ミステリ好きな方。
4 「びっくりするようなこと知りたいなー」と好奇心満々な方。
5 カフカの「変身」を読んで、「自分もああなりたい」と
思われた方(いらっしゃるだろうか。不安だ)。
これらに当てはまらない方でも、「面白い本」が欲しい方なら
本書は一読の価値ありです。
ただし最初の「前口上」を開く時はご注意を。
気を抜いていると、全国の80パーセント以上(数字は嘘)が
「いや〜っ」と悲鳴をあげる「生き物」が登場します。
もちろん私も、思わず本をぶん投げかけました。
本書は虫が、虫の世界(自然界)で、虫の事件を解いてゆく
ミステリです。
「密室」もあれば「アリバイ捜査」もあります。
人間界の「価値観」や「正義」とは一味違った事件と解決。
それでいて、人間としての生き方を考えさせてくれるかも
しれません。
著者は生物学科卒。すなわち専門家。
「餅は餅屋」という言葉は、まさに真なり、なのです。
昆虫の世界、生き物の不思議、それにもちろんミステリが
たっぷり詰まった、驚きと感動にあふれる、そして何より
楽しい作品です。
紙の本青空の卵
2002/08/29 19:39
どこまでも広がる青い空
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初めて本書と出会った時、「ひきこもり」という言葉のイメージが強すぎて、
手に取ることをためらっていました。
けれども、読み始めるとすぐにそんな迷いの雲は消えてゆき、読み終えて残る
どこまでも透き通るような青い空。
加納朋子さんの「ななつのこ」「魔法飛行」、北村薫さんの「空飛ぶ馬」から始まる
〈私〉シリーズ、有栖川有栖さんの「月光ゲーム」などなどと出会えた時の
切ないくらいの幸せを感じることが出来ました。
ほんの少しだけ他の多くの人とは違う。
それだけでどれほど哀しく、ひとりぼっちに感じてしまうことでしょう。
そのせいで、人に手を差し伸べることも、差し伸べられることにも臆病になってしまう
優しくて純粋な人たち。
「夏の終わりの三重奏」「秋の足音」「冬の贈り物」「春の子供」と、四季が巡る中で
出会う事件の「謎」がひとつ解かれるごとに、彼らの固く凍りついた心が柔らかく
とけてゆき、彼らの心に青空が広がってゆきます。
もちろん読者の心にも。
大切な大切な宝物のような一冊です。
2003/11/08 22:27
お見せできないのが残念
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「鳥」と言えば、「縁日のひよこ」。
幼少のみぎり、ねだってねだって買ってもらったものの
正しい世話の仕方も知らず、数日で亡くしてしまった
鳥も人も悲しいお付き合いの記憶。
以来、声を聞くだけ、遠くから眺めるだけの関係になって
しまって、はや幾年。(遠い目)
そんな私だが、本書の表紙に目が釘付け。
なんせ、サラダボウルに小鳥のてんこ盛り!なのだ。
シンプルでいながらおとぼけた表情も愛らしい表紙絵は
まさに「食べちゃいたいほど可愛い」の具現。
今すぐお見せできないのが残念でならない。
遠くば寄って目にも見よ!というくらいの勢いである。
「鳥飼い歴30年を超える」という作者さんが見せてくれる
小さな十姉妹たちのほのぼのだけど不思議な行動の数々は
読んでるだけでついつい頬が緩み、「へぇー、なんでぇ?」な
驚きでいっぱい。
世にも幸せそうな、鳥と人とのお付き合いに触れれば
ほっこり気持ちが柔らかくなる。
鳥とは縁遠い人も、鳥とラブラブな人も、読めばきっと
もっと鳥とお近づきになりたくなる1冊。
紙の本春の微熱
2002/08/20 05:07
見かけにだまされちゃダメ
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表紙で微笑みかける柔らかで乙女ちっくな少女。
「これは美しくもはかない純愛の世界?」などと、彼女の見た目に
だまされてはダメ〜。
といっても、心配ご無用。
美しさ、あります。はかなさ、あります。
純愛? ここ、ここがキーポイント。
ごくごく普通の、青少年・少女(成人男性・女性)が恋に落ちる
恋愛モノではあります。が、みーんな「ちょっとだけ変」。
「少女漫画で恋愛ものー? じゃ、パス」と思った方。ストップ!
清原さん描くところの「恋愛」は只者ではないのです。
揺れ動く乙女心の描写が素晴らしいのはもちろんですが、
「ちょっとだけ変」にご注目。
「パンツ一緒に洗ったらニンシンするんだから」
という台詞に代表される、あまりにも「うぶ」な思い込みが
巻き起こす騒動には、きっと笑ってしまうはず。
(「うぶ」って、もはや死語かしらん?)
Hな話も、さらり淡々と描かれてて、絵の可愛さとのギャップに
可笑しさ倍増!
どこにでもいそうで、でもいないような、「恋する少年少女(または男と女)」
のお話。
「恋愛」経験者も未経験者も、時に優しく時に哀しい結末を、
どうぞ一度はお試しあれ♪
紙の本泥棒は選べない
2002/08/26 16:31
泥棒はルパン三世?
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留守宅であるのを確認して泥棒に入ったら、そこには死体。
唖然、呆然とする間もなく、警察が踏み込んできた。
そんな時あなたならどうする?
「そもそも泥棒なんてしない」…ごもっとも。
でもお話の中ならいかがでしょう。
こんなジレンマとピンチに陥った、泥棒さんのその後、が気になるでは
ありませんか。
ましてその泥棒さん、鍵開けの腕は上々、暴力は大嫌い、女には甘くって、
そのうえちょっとお人よし。
かの有名なモーリス・ルブランさんの「怪盗ルパン」みたいな、いやいや、
アニメの「ルパン三世」みたいなキャラクターなのだから、思わず「頑張れ」
と応援したくなっちゃいます
(「バーニイ」という名前もウサギみたいで可愛いし)。
そもそもこの本を知ったのは、タイトルの付け方がリリアン・J・ブラウンさんの
「シャム猫ココ」シリーズと似ていたから、というだけだったのですが、ユーモアと
機知に富んだ文章の楽しさ、という点でも似てました。
固ゆで卵(ハードボイルド)ならぬ半熟卵(ソフトボイルド)な
歯ごたえ(語り口)なので、気楽にあっさり味わえます。
どうぞ美味しく、召し上がれ(シリーズ作品だからオカワリも有りですよ)。
紙の本狼の寓話
2003/11/04 17:24
警察小説が嫌いな貴方に
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「警察小説」と呼ばれるものが苦手だ。
現実世界でTVや新聞で目に付いてしまう「警察官の不祥事」
の文字。見るたびに怒りや悲しみを覚えてしまうから、そんな
「警察」が描かれる作品だったら読みたくはない。
せめて、小説という想像の世界の中ならば、良心的で頑張る
心温かな警察官たちに会いたい。
そんな願いをかなえてくれたのが本書。
刑事になりたいという希望かなって強行犯係に配属された
會川(あいかわ)圭司。初めての現場で失敗を重ね、捜査班を
変えられてしまう。
新しくコンビを組むことになったのは黒岩という女性刑事。
与えられたのは一週間前に起こった、妻が夫を殺したとみなされて
いる事件。妻は犯行後失踪したと考えられている。しかし動機は?
事件に取り組むうちに現れる真相とは…
本書は、失敗にめげつつも頑張る主人公の素敵な成長物語であり、
主人公の兄をはじめとした個性的なキャラクタ小説でもあり、
「狼の寓話」に導かれる魅力的な謎を持つ本格推理小説でもあり、
そして何よりこの作者ならではの、痛みと切なさと希望と救いの
物語である。
筆者のように「警察小説」という言葉に苦手意識を持っている
人に自信を持ってオススメできる。
紙の本非在
2002/08/23 06:50
南の島でミステリー
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お読みなさい、楽しいから。
…あ、一行で終わっちゃった。やり直し。
波打ち際、砂に半分埋まってるガラス壜。
近づいて手に取ると、中には遠い異国からの手紙。
こんなシチュエーションに憧れませんか?(私は憧れるんです)
本書の語り手である植物写真家、猫田夏海が拾ったのは
「壜」ではなくて「プラスティックの密閉容器」
「異国からの手紙」ではなく「フロッピーディスク」
ロマンティックさは減るものの、これはこれで実に魅力的な「謎」では
ありませんか。
「好奇心と行動力は人並み以上」な、猫田夏海が黙って見過ごすはずも
なく、やがては事件の舞台となった島へ。
本を開くと島の地図があるのも「宝島」みたいでわくわくさせてくれます。
舞台となる南海の孤島の描写は、詳しい方には
「ああ、あるある」または「あれがそうだったのか」
と再確認、新知識の獲得の楽しみが、
詳しくない方は、旅費と比べたらぐっとお安く
「南の島への冒険」が楽しめるはず。
冒険と謎解きと自然の知識が一度に味わえちゃう、実にお得な一冊。
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