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peneropeさんのレビュー一覧

投稿者:penerope

24 件中 1 件~ 15 件を表示

このアンバランスさから…

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この表紙の写真をさらっと流してはいけない。じっと見る。もしかしてこの白いタンクトップの下には何もはいていないのではないだろうか。ええっ!! だからどうしたこのスケベ!!と言われそうだがしょうがない。本書を読んでいくにつれこの、エッチな感覚がとても重要なモチーフになっていることがわかるはず。まずはここから妄想を膨らませていきましょう。

例えばナボコフの「ロリータ」。たとえば山口椿の「ロベルトは今夜」。そしてあるいは「我が秘密の生涯」。そんなエロティシズム全開の作品群を思い浮かべてからこの本に手をのばす。

SEXは大事なことであろうか? 思わずそう問うてしまう自分を読者は発見するだろう。パートナーとのSEXハウツー本が今ブームのようだが、欲情は体だけでするものではなく、頭でもするものだということの再確認を、この本を読むことでできるようになるだろう。本書にはそれが小気味よく記されていて、こんな明晰な頭脳でもって分析する著者に、妄想全開の僕は軽い恋心を芽生えさせながらページをめくっていったのです。

本書はフリーライターの彼女がいろんなスタイルで綴った恋愛論である。もちろんそのベースは自分の実生活に基づくものであって、ゴシップ的な、ある種他人の私生活を覗き見してるような感覚で軽く読めるものになっているのだが、その論述のなかに頻出するアフォリズムのごとき断章がもう、それはそれはじつにいいのだ。

数えたら僕は本のページを49箇所折っていた。

彼女は言う。ただあなたと一緒にいたいのだと。そして、そんなありふれた台詞がそのありふれたまま相手に届かないことを嘆く。年齢って何だ? なんで年くってるとみんな過剰に先走りしていろんな意味を付け加えて考えてしまうの? あたしは結婚してなんてひ・と・こ・と・も言ってないのにっ!!ってな感じで。

本書の帯のリリーフランキーの文「誰にとっても人事じゃない話だ!!」は本書の形容として簡潔かつ最高の文句である。それほど広範囲の内容に触れているということだ。悩める乙女からいかず後家と陰口をたたかれてるかも?という30代OLさんまで、とにかく元気になれる台詞がたくさん書いてある本書を見逃してはならない。もちろん男性陣もね。がつーんとやられたくちですから、僕なんて。やっぱヨーロッパみたいに高年齢でもあたりまえに恋愛していたいじゃないですか。と30台に差し掛かった僕は思ったのでありました。そして最後に本書からの一文。

「結婚には二種類あるのだという。修行のための結婚と、人生のご褒美のための結婚。うまいこと言うじゃない。だって、人生のご褒美が欲しいから、一生懸命生きようなんて殊勝なこと考えちゃうんだもんね。でも、そんなふうに考えると、やみくもに結婚したいと思うように世の中が回っているのは何かの罠ではないか? 独身なら独身である今を楽しまなくっちゃ損だ。自由というメリットを存分に味わうべきだ」。

誰もが読んで欲しい本。いろんな年齢のひとたちにっ。ね。

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まだまだ欲しいの…

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濃いなぁ、そしてつらいなぁというのが最初の印象。なんだろう、僕にとって欲望というのは満たされないもののほうが多いという実感があるからだろうか。このマヨ姉さんの(随時叶えられていく欲望)+(それが叶えられないという嘆き)を寄り合わせた黒い皮の鞭が振るわれるサイクルの速さにこっちはついていけない。さらに欲望発生のチューニングも合わなくて、こっちがどう受け止めてよいものやらうろたえている間にもマヨ姉さんはすでに次のサイクルの真ん中で垂れ流してる。ちょっと待ってよ!!

だけどその表現の核(ご主人様とともにある喜び! そして不在の悲しみ)があまりにも率直で、例えば観念的なことをこねくり回しながらうじうじっていうタイプの文章ではないから、しだいにそのスピードに追いつくことができるのです。チューニングが合ったところで一日、また一日と日記を読み進めていき…でもってその後は…

もう共感なんですよ!! マヨ姉さん本人かおまえはっ!!てつっこみも入ろうテンションで。ご主人様がにゅうっと予期せぬ時に家に来てくれたりすると「きゃああっ!!」なんて喜んでしっぽ振り振りああ嬉しいわって本当に思うんです。不在の人に対して、あらぬ妄想・勘違いも含めひたすらに思いをはせること。そのつつましさ、痛さ、不安と、思い違いかもしれないという一時的な軽い楽観によってもたらされる不在の時間の承認化。そんな、孤独をひしひしと感じざるを得ない時間を過ごさなければならないという…何だろう…人生に訪れる不自由な流れの奔流。相手に対しての同化したいという過度の欲求はパラレルワールドの入り口たりえるかもしれなくてもう、こちら読み手ともども共感通り越して…まさしく同化しちゃったという感じですか…になるのです。彼女の愛らしさ、ひたむきさがまず先に見えてしまって、自分はもうマヨ姉さんの絶対的な支持者になっているというこの意識。

性を題材にした作品は、その表現形態がどんなものであろうとも似たような経験をしていたほうがすんなりその世界に入りやすくかつ没頭しやすい。もしくはほんの少しでも接点があればそこを引き金にして想像力が格段にアップして楽しみも一気に倍増するのだ。

とはいえ自分はこの本にある過激なスタイルの性的パッションを持ち合わせていないし、SMに代表されるような形態での性の交歓も知らない。だから僕がこんなに激しく奮い立ったのは(心震わされて)ひとえにマヨ姉さんの真摯な態度に(ご主人様を求める気持ち)完膚なきまでに打ちのめされたからにほかならない(マヨ姉さんの文章は一行たりとも不純物が混在していないし、具体的なプレイの内容、その過激さ云々が読んでいる僕の発情装置になる機会も少なかったから)。

もっと欲しくなる(不思議な感覚だ)。どうでも何でもいいからもっとだもっと!!と叫んでしまいそうになったし、さらに、とにかく何かむちゃくちゃに曝け出したいと欲望している自分を感じる。なんだろうこの心の振れ具合は。飲み会の後、軽く酔った体で新宿歌舞伎町の中心街を一人でふらついているときの微妙に猥雑な気分と、そのぼやけた視界に突然割り込んでくるすれ違いざまの強い香水の匂いに体全体がぐぐっともっていかれながらもそのまま身を委ねていたいという猥褻な気持ちが欲情という言葉でぴたっと額に貼り付けられる瞬間に似ている(でもその一人の時間そのものが心地良かったりもして)。さらに室井佑月の解説も最高だ。もうただたくさん翻弄されてください。

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紙の本煙か土か食い物

2003/04/03 01:27

IWANTYOU

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一郎・二郎・三郎・四郎…一郎・二郎・三郎・四郎…一郎・二郎・三郎・四郎…ああ俺は呪術的な不気味さとサイクルでもってこいつらの名前をつぶやいている。もう頭から離れない。本を閉じても消えてくれない。すでに俺はパニックの真っ最中だ。こんな閉店間際の安コーヒーを飲ませる店の学生アルバイトがたらたらと床を箒で掃いているが遅いんだよそんな動きは!と俺は叫んでしまいそうになるほど頭のなかはきっちりぐるぐる酩酊してるんだ。ぐるぐる魔人ぐるぐる魔人。俺の頭蓋んなかの酸素を喰らい尽くすな! ぐるぐる魔人。

ジャコパストリアスのあのきわきわハイテンションでテクニカルカルなベースプレイ、そのスピード、その音の羅列が舞上の筆先には宿ってる。ダダダダダッダダッダッダダダダッ言葉は跳ねる一回転、そして転がる二回転、にやっと笑って一発パンチで三回転したらもう奇跡的にかっこいいフレーズの出来上がりだ。ばかなまねごとなんて足元にも及ばない、けど感動したら誰かに伝えなきゃ、どんな形でも独りよがりでもってなことで満ち足りた時間の渦がやってくる。くるくる。

詰め込めるだけ詰め込んでみる。暴力もSEXも理不尽な世界も。饒舌は時に相手を辟易させ疲労に追いやるがそんなこと感じてぐったりしてる暇などない。現実はどこまでも、自分が感じてる速度なんかよりももっと高速でぴゅぴゅぴゅぴゅぴゅーんと進んでいるんだから。「熱にうかされたようにのめりこみたいわ」と思いながらページをめくろう。あらすじとかはみんなの書評を読んでちょうだいね。時々その過剰な話っぷりにいっぱいいっぱいになって頭が螺旋にぐわんと流されたりするんだけど四郎ちゃんそう四郎ちゃん、の次の行動が知りたくて、次の発言が聞きたくて、次の明晰な頭脳でもってすぱぱぱぱんっと謎を解く瞬間に立ち会いたくてやっぱり本が閉じられない。うーぅーと低い唸り声のまま火のついた煙草が丸々一本灰になって視線がやっと目の前のぼやけた現実に移行する。でも一瞬だけねちょっとの間。またすぐ視線は本に釘づけで、いきなり人が血を流してます。骨を折られて頭割られていっぱいいっぱいの暴力です。でも変な奴が多いんだよこの世界には。だからしょうがないんだよね。じっと見てやろう、感じてやろう、まちがいを教えてやろう。

そしたらまたスタートです。虫の歩みから始まって川の流れになって風のそよぐ調べになる。のちに歩きながら、早足になりながら、小走りになったところで額に滲んだ汗を袖口の繊維質になすりつけよう。やがての疾走、全力疾走。本を片手で持ちながらメインストリートを突っ走る。ぱららららっとページが音を立てる。それでも離さないで必死に走り、読む。そうだ、行間も忘れちゃいけないぞ。下手から太陽が登場してくるときに地雷を踏んではいけないように注意深く、でも疾走しながら読みつづけて走りつづけて息が上がっても足が震えてかくかくしてふくらはぎに熱されたハリガネを押し付けられたように痛い熱さを感じてもまだ走りつづける。エコーをこだまさせて叫びながら、いつまでも走りつづけよう。くわんくわんくわんくわんくわんくわんくわん……

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紙の本平壌ハイ

2003/01/13 01:33

YYYYYYYYYYEEEEEEEEEESSSSSSSSSS!!!!!!

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昨日この本を読んでいたときに思いついた気の利いた(はずの)本書への形容の言葉が今日はどうしても思い出せない。自分の記憶など信用してはならないということだ。<今・この瞬間>を逃してしまっては後悔しか残らないのだ。思いついたときにメモをとれ。ばか! 死ね! この俺。

んでもって今日の俺はいつもと違って興奮している。興奮しているということは他人のことなど考えないということだ。僕ではなく俺ということだ。どこかに思いをはせたりもしないし、感傷的にもならない。ただ頭から始まって下り、足先まで体中が発熱してるだけ。そしてその原因はもちろんわかっている。この本を大興奮のうちに読み終えたからだ。

ばかっぽい? うん、きっとそうに違いない、俺もそう思う。俺はばかだしついでに浮かれている、打つ手なしって感じだ。だって言葉のほとばしるスピードとキーをたたくスピードがずれているのがわかってもそのまま打っているじゃないか! もちろん修正かけているので今は大丈夫だがほんとのところはこんな感じ…”&$%$%”$(&’$’%%#”#!!”$#”##”…俺はアイリッシュウィスキーと読後の余韻でべろべろに酔っている。

YYYYYEEEEESSSSS!!!!! みんな元気かな? この「平壌ハイ」は文庫三作目。かつて「スピード」・「アフタースピード」の二つでドラッグ体験の極上ルポをものにしそのまま刑務所行きとなった石丸の才気あふれる野心作だ。今回、幻のドラッグ<平壌ハイ>を求めて5泊6日の北朝鮮パックツアーに潜り込んだ石丸は、クレイジーかつめちゃくちゃ笑える、そして過剰なほど生命力に富んであほでまぬけででぶで人一倍欲深い相棒キムと一緒に(他の連中も最高にばかでいかしてる!)この得体のしれない国を練り歩き、前作をはるかに上回る作品を書き上げた。

この人を形容する言葉であるゴンゾージャーナリストの<ゴンゾー>とは、ならず者という意味だ。俺的にはここに、ワイルド・はちゃめちゃ・予想外の・とっぴな・大ばか者などの言葉や、例えば、怒りとやるせなさと呆れて口あんぐりになって「もーっ! あぁぁんた!って人はぁぁ! なぁぁぁぁぁんでそぉぉんなにぃぃっっっ……!!!」なんて言いたくなるときのこの<……>の部分、どんな言葉をもってきても足りなくって憤然やるせないこの感じ、を表す言葉を付け加えたい。ならず者の危ないジャーナリスト、つまりはそういう奴が頭で考えるんじゃなくって(お勉強しました!的なルポではなく)体で感じたそのときの現実だけを基盤にしたルポルタージュは、始めてこの作品に触れる人々には奇異に映るかもしれない。そしてきっと嫌悪感をもよおすだろうがそんなことはどうでもいい。これは一人の人間、俺らと同じ日本人がたどった現実の世界だ。俺は自分に渇を入れる。知らない世界から目を背けるな、じっと見つめ続けろ、そして歩き出せとね。

本書の解説はあの重松清が書いている。「石丸さんは、現実に対して、徹底的にフェアでありつづける。ぼくはその一点において……彼の他の著作と同様、本書を全面的に信頼する」。

さあどうだ、重松ファンの皆様方!(たくさんいるでしょう) ここで一発、おそらくむかつかれるであろう俺の支離滅裂なたわごとなんかじゃなくって、彼の言葉を信じて(信頼して)みようじゃないか!!!

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紙の本ONとOFF

2003/01/13 00:32

本当にONとOFFだ、でもあえていわれなくったってねぇ、でもやっぱり…

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15・22・26・32・40・60・67・82・83・88・91・95。本の角が折られていたページ。

本書は全部で222ページある。つまりは僕が、いいなぁこの台詞とか、いかしてるなぁこういう考え方・言い回しとか、自分の上司もこんなだったらいいのになんて感嘆して後でもう一回読み直さなきゃって思った部分は全て、前半100ページ以内におさまっている。

本書の構成はおおまかに二つにわかれている。前半はソニーCEOとしての企業家を前面に出した会社の運営についてやそれにまつわるいろいろ。そして後半は、ゴルフ・ワイン・車など自分の趣味についてのエッセイや、夏休みの過ごし方、塩野七生とのローマでの散歩のことなど、個人的なことに端を発するあれこれ。多少前後はあれどもこんな感じ。

ということはつまり、僕が感動した個所はいずれもCEOの立場からのメッセージなのである。書いていて自分でもびっくりしたが、自分が現在気にしていることや関心の中心はサラリーマンとしての日常のものであるということが、無意識的な選択のせいかもしれないけれどこれで証明された。そういえばおもいっきり共鳴してましたもん、読みながら。自分の会社の状況や上司や部下達の顔なんかが頭をちらほらとかすめながら。

それから後半部分、こちらも楽しく読みました。著者の興味の発露はとても60過ぎの老人?のそれとはかなりかけはなれていてとてもアグレッシブだし、ゴルフが好きで好きでたまらなくって肩を痛めてもまだやりたくてどうしようかと思いあぐねているさまなんて子供がおもちゃに夢中になっているような無邪気さのなかのひたむきさみたいなのを感じさせとても愛らしいし、塩野七生のローマについての解説が深すぎてついていけなくて正直に言ったらさらにハードな説明をされたけれども集中して聞いてとても為になったと、強がるそぶりも見せずに素直に認めるなんて、ほほぅ、いい心がけだねぇなんて言いたくなるし。その他にもいろんなエピソードがでてくるのだが、たとえばゴルフについて書いていても、その視点は常に新しい発見をしたいという欲望に満ちていて、同じテーマが何度でてきてもあきない。こんなものに勝ち負けがあるとは思わないがそれでも、俺なんかまだ半分の年だぜなんて自嘲の声がでるのを抑えられませんでした。

いいことずくめ、ほめちぎりだけどしょうがない。これなら売れているのもよくわかる。こういうのを読むと、普段はマイナーへマイナーへ向かう自分の感性を疑いたくなってしまう。良いものは良い、そうあらためて思った。そしてやっぱり前半部分のインパクトは大きかったのだろう(たくさんのアフォリズム! 即効性あり)後で必ずもう一度彼の言葉を反芻しようと思ったのでした。そこから得た思考の方法を自分の日常にどう溶かすか、そして血肉化していくか。そう考える今この瞬間の嬉しさも手伝い、とても楽しみなのです。

人間もそうだがいろんなことがらのスタートはつねに出会いだと思う。この本を読もうと思わせてくれたやんちゃ青さんに感謝します。

即買い!

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紙の本パッチワーク

2002/12/10 01:34

百花繚乱お手ごろ入門書

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いろいろつまっててたいへん良い感じ。同じエッセイでも「それいぬ」とはまた違って、本全体に春先のような軽さを感じます。野ばらん入門編の趣きに満ち満ちた愛らしい本です。
個人的には圧倒的存在感で読み手を失神させ続ける長編達に深い愛着(いや執着か?)と敬意を感じてるだけに、このインターバルは少し残念。でも装丁も含めてGOODですから文庫になってもかわいいたたずまいの本になるようにとみんなで今からお祈りしましょう。

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紙の本睡魔

2002/12/10 01:23

ははっ、ばっちりクロスオーバー

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夜11時に読み始めて気が付きゃ朝の6時。うそじゃありません、久しぶりに読書で徹夜しちゃいました。

さえない主人公とその仲間達がマルチ商法にはまってゆき、結局何も得られず(ようは金ですな)元通りにさえないままになってしまうお話。僕も昔やってたんです、こういうの。見事に24時間お風呂の機械を30万ほどで買わされて…。

だから本当にリアリティがありました。全くおんなじこといってんじゃん!的な発言や人を言いくるめる手段があまりにも似ていてびっくりしたのです。しかし(かつての僕もそうでしたが)金に困った人間の発想ってたいがい一緒で、ちょっと立ち止まって考えればわかることなのにそれができない、がゆえに泥沼にはまって取り返しのつかない場所まで自ら踊り出てしまう行動形態はこうやって客観的に読むとはっきり知覚できるのですが、その当事者たちはやっぱり、ある意味トリップしちゃっていてなんか痛々しいと思いました。でもなんだろう、ただ共感したっていうだけじゃなくて、人の不幸ははたから見ると面白いのかなぁやっぱり、なんていう疑問も浮かびながら休む間もなくただひたすらページをめくりつづけてしまいました。

この作家、どうなんでしょう。過去何冊か読んで、いずれも楽しく夢中になったんだけれど、例えば花村萬月の本を読んでいるときに感じるようなあの、前のめりになっても鼻息荒くページをめくるような高揚感がないのです(なんか手触りは似てるんだけど)。だからいまいち手放しで褒めちぎることができなくてもどかしいのです。

しかし面白いことは面白い、掛け値なしに。でもなんかなぁと同じことをつい繰り返してつぶやいてしまうのもつまりはこの作家の術中にはまっているのだと思えば納得も?するのでしょうか。

文庫だし通勤電車45分同じなんて方、ぜひチャレンジしてみては? 多分、もうおりなきゃなんないの!なんてくらい夢中になれることうけあいだと思いますので。

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紙の本無境界の人

2002/11/23 16:29

またまたびっくり!

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「無境界家族」を読んで驚きすぐさま本屋で本書を購入しまたまたびっくりしたおかげでここ数日は何だか今までの自分がどこかに行ってしまったような、地に足のつかない浮ついた場所に存在しているような気がしてなりません。

一つの物語が、思想が、メッセージ・提言が及ぼす影響の大きさにあらためて驚愕しているのです。

糸井重里&…の「海馬」を読んだときも目からうろこで、知らないこととは何ともったいないことかと思ったのですが、海馬のほうは例えば、ポリフェノールは体にいいとか、ニラには疲労回復効果があるけれど切って5分以内に調理しないとその効果はないんです、といったようなちょっとした、知ってると得する人生のエッセンス…職場の人達と軽口の延長で話せるような…のようなものとして、あー世の中には知らないことがいっぱいだなぁとその場でその効果が記憶に定着して終了してしまったのですが、この森巣博の本はただ知っておしまい、ちょっとお勉強になってよかったねというような着地の仕方ではすまされなく、冒頭のようにやっぱり僕は気付くといろんなことについて考察させられているのです。その影響、いつまで続くのかはわからないけれど、今僕が生きているなかでは結構インパクトの大きい、決定的なことを知ったのだという思いばかりがぐるぐると頭の中を駆け巡っているのです。

ギャンブルのあれこれは僕には全くわかりません。本書のなかでも絵入りで解説されているゲームのルールは何度読んでもわからなかったのですから。しかしこの、ギャンブルを中心とした人生を突き進む森巣博を取り囲む世界の、何と美しく生命力にとんでいて激しいことか! もちろん人それぞれ自分の人生を一生懸命に生きているだろうし、そうだからこそ今の自分がここにいるのだろう。けれどこの魅力的な世界は決しておとぎ話でもないのだと思ってしまったが最後、僕ははっきりと思うのです。どうせ一度しかない人生なのだから、好きなことしかやらないぞ。そしてその後には、好きなことをもっと増やしてやれば、極端にこのような、ある意味異端な境遇にむやみに憧れて自分を見失うこともないだろう、もっと自分の快楽原則にのっとって生きることができるのかもしれない、と。

そして僕はまたいそいそとこの人の本を買いに走るのです。

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紙の本無境界家族

2002/11/21 01:50

まだまだこれから!!

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まだ全部読み終わってません。今日の昼休みに読むものがなくて(佐藤亜紀の新作を買おうと思って手ぶらで仕事場を出たら本屋になかった)しかたなく買ったからです。でも今まで二時間のあいだ湯船につかりながらページをめくっていたらとにかく面白くて、目からうろこだなんて感じで、何かを物申したい気分にもなってきて途中だけどこの喜びを伝えたいって気になったのです。

解説が永江朗さんだったから僕はこの本を手にとりました。僕も彼と同じく、この著者の名と一部での話題さは知っていたのですが、いかんせんギャンブルの人だなぁというレッテルを貼っていたので、賭け事に興味のない僕はなんだか敬遠していたのです。

しかししかし本当に損した! 永江さんの解説とほとんど重複してしまうのですが、時間は経ったけれどやっと出会った作家だ、これから過去に出ていた作品を読めるのかと思うともうそれだけで幸せの極地であーる、と万歳三唱でもしてみたくなるのです。大げさにうつるかも知れませんが、一冊の本が自分の思考回路を変化させ、生活にも進入して、何度目かの新しい自分みたいなものを読書から体験したことのある人には、この大げささ加減も許していただけるでしょう。

本書の詳細は上の書評を読んでください。簡潔に書いてあるので。それでどこが面白いかというとこの人、会話文と説明とのバランスがとてもいいのです。自分の意見を無造作に語っているかと思えばすぐにそれを自分でちゃかして、その後すぐ息子や妻が言った台詞を引用したりするのが見事に、その意見の重さと鋭さと熱意ともしかしたら思い込みじゃあないの?という軽い不信感を読んでる最中に感じてもそれが簡単に払拭されて良い余韻ばかりが残るのです。

もちろん、妻は外国人で自分はさすらいのギャンブラー、息子は十五歳で190センチ90キロの体格でおまけに秀才で大学にスカウトとくればその物語性も十分魅力だし、非日常の世界、もしくはその片鱗、もしくは軽い現実逃避を読書に求めている人ならなおさらのこと、この不思議な世界に埋没できるでしょう。いやいやしかしこの人の本領は啓蒙家としてではないでしょうかと思うのです。日本の男たちが頭ではわかっていながらもいろんな風習や制度のせいで叶えられなかった思いを見事に実践してなおかつそんな自分を信じているこの著者の強さと自信は、男なら誰でも羨ましいと思い、そして励まされるメッセージとなりうるのではないかと僕も、まだ途中だけれどもすでに、そう信じて疑わないのです。僕自身いろんなことに感化されやすい性格ですが、だからこそ! この人のメッセージに感化された自分はもちろん自分が思うに良い方向へ導かれたぞという嬉しい実感があるのです。

さあまだあと半分もある。勢いに乗って一気に読んでしまうかそれとも、ちょっとずつ惜しむように読み進めていくか、そんな選択を自分でできるのも読書の楽しみであり最大の醍醐味なのですね。

最後に。ほかの本だけど、僕の書評に反応してくれた方どうもありがとう。自分の固着した考えに少し亀裂が入って、違う視線を獲得できました。

いやまだあった。これ文庫版も出てまーす。

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紙の本聖週間

2002/11/13 12:59

聖なる一週間を…

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まあこれが美しい本ですね、本というよりかスケジュール帳だけど。
金子画伯の様様なタイプの絵を眺めながら一週間の予定を記入していく。
これはとっても贅沢ですね。
個人的にはサバト館(漢字がわからない)から出ているジョルジュバタイユの箱入り豪華本の表紙などにもなった、暗く・陰鬱で・ダイレクトに性的興奮を呼び起こすような一連の絵が好みなのですが、ブランド、アツキオーニシの広告に使われたものや、鏡の国のアリスをモチーフにしたかわいい、愛らしい作品も収められているので大変お得です。

本当はスケジュールを書き込むものだけど、僕は何を思ったのかいきなり油性のペンで詩とも散文ともつかない、後で読み直してみるとそれはそれは恥ずかしい、しかも冴えない文章をかいてしまい、いきなりこの本を汚してしまったのでした。

気持ちはわかる!と自分を励ましたところで後悔先に立たず、結局もう一冊購入し大切にとってあります。

自分好きなもの(作品や思想やグッズなんか)をいつも携帯していたいという思いが僕にはあるので、この金色の書物はいずれ鞄の中に放り込まれることでしょう、ただしもう失敗はしないぞという条件つきですけど。

それから余談ですが、金子さんの絵を使ったハンカチが新宿のタワーレコードに売っていました。とってもチャーミングなアリスの絵です。それとこの本を持ち歩く喜び、なんて贅沢なんだろう。関係ないけど大人っていいなと思いました。

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紙の本無限の網 草間弥生自伝

2002/10/31 15:35

生きることは描くこと

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もうかれこれ10年前、自分は絵描きになってやると息巻いていた20歳の頃。休日にはたった独りで美術館巡りをしてた時期、品川の原美術館ではじめて彼女の作品を知った。

狂おしい程の反復、点、黄色と黒に彩られたかぼちゃがなぜそんなに僕の興味をかき立てたのかはわからないが、とにかく僕は夢中になって彼女のことを知ろうとし、いろんな本を買いあさってはどんどんのめりこんでいった。もちろん彼女の小説も読みまくった。

この希有なアーティストは精神を患っているようだ。彼女自身のビジュアルもそうとう過激だが、本書に書かれている事実をまのあたりにして僕はひどく動揺してしまう。

「人生のスピードを上げるのよ!」といったのは鈴木いずみだったろうか。高速回転しながら爆走する鉄の塊のイメージは草間弥生にもあてはまるだろう。とにかく自分の欲望にこれだけ忠実になれなければいいものが創れないのだろうかと僕は不安になるけれど、この、決して自分では体現できない猛スピードの人生は僕をとことん魅了してやまない。生きることそのものは創造することでしか成り立たない、その究極がこの本には記されている。みんなも驚いてほしい、岡本太郎のシンプルなメッセージが多くの芸術家の卵たちに愛されているのとは対局の表現で、草間弥生は発熱し続けている。

僕の携帯電話には黄色いかぼちゃがぶら下がっている。生きることに無関心になった瞬間にはこのかぼちゃをぎゅっと握りしめ、「まだまだだ」とつぶやいてみる。どこまでも生きてやろう、創ってやろうという声が胸の内で反響する。

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紙の本同姓同名小説

2002/10/26 00:33

絶対松尾スズキ宣言…序章

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さて、待ちに待った松尾スズキの小説集。はやる気持ちと、つまらんかったらどないしよ的不安が交錯して発売日を数日過ぎてからの購入とあいなりました。やっぱりきちんとした場所で読まねばならぬとの使命感から、日頃愛用している笹塚エクセシオールと方南町ドトールは避け、誰もいない会社のデスクで一人きり(みんな帰るまで3時間も時間つぶした)これで誰にもじゃまされずにおもいっきり下品な笑い方もできるのだと意気込んで、さあ読み始めたのです。

この本にはたくさんの有名人らしき人々が登場します。くわしくは本の紹介を御覧いただくとして、おどろいたのはめちゃくちゃ的確にそれぞれのキャラクターをつかんでいること。演出家なんだからあったりまえじゃんといわれればそれまでですが、みんな生き生きしてるんだもん、実際にTVで見るよりね。なんだかここに書かれていることこそTVでは見られない本当の彼・彼女たちではないだろうかというふうに錯覚させるほど松尾の筆は滑らかに、そして下品に滑ってどこにもぶつからない。おいっ垂れ流すだけかいっ!なんてつっこみのひとつもいれてしまいたくなるんだけど、それぞれのキャラがあまりにも魅力的に書かれているしチャーミングだから全て許してしまおう。もちろん僕はだだっぴろいオフィスに下品な笑い声をこだまさせ…

とにかく笑うなら竹内力、松尾ビギナーならみのもんたがいいかな。そして重度の松尾フリークの方なら最後のモー娘をよんでみるがいいさ。

読み終わったあなたの頭上にはどんよりとしめった雨雲がやってくるのかそれとも、異常気象かと思うような晴れ間と砂嵐と大洪水がやってくるのかはわかりませんが、真っ当とか実直だとか誠実だとか規則正しいなんて言葉を聞いたりすると何かいやぁな気分になってしまう人たちへ一言

早く読んでみよう。

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紙の本空爆の日に会いましょう

2002/10/24 16:59

しょせんは他人事なのか……

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読んでてむかむかしたんです。頭のなかから疑いの言葉が次々と浮かんできて最後まで消えなかったんです。「これは個人的な戦い」とあなたはいいますが、空爆でなくてもいいではないですか? どうしてあの惨劇、映像をきっかけにしたのですか?

あなたは男達の家を泊まり歩き、疲れ果て嫌になり男とは寝ないということを前提にしながらもそれへの執着を文章の間からにじませる。スターバックスで、ドトールで、こじゃれたレストランで、男たちと何を話したのですか? とりとめのない話ならもちろん聞きたくありません。僕はあなたの個人的な戦いに興味をもったのですから。

しかし会話の内容はほとんど記述していませんでした。カタログ的な羅列(泊まった場所・間取り・眠るときの住人との距離・おみやげ・晩御飯・眠るときの格好・そしてその晩に見た夢など)はまったく意味をなさず(何かの効果をねらっていたのですか?)誰々は彼女がいたから泊まるのを断られただの、風呂に入りたいだの、もっと眠りたいだのなんて台詞ばかりでページを埋め尽くしていくあなたのその感覚は全くわかりませんでした。惨劇の後だから悲しめよといいたいのでは決してありません。たった人間ひとりのメッセージではあるけれど、それを出版することによって今までそれを意識しなかった人々にもこの事実を重く受け止めてほしい、もう同じあやまちを起こさない為に、精神的にみんなが結束することが大事なのであるならば、あなたの起こした個人的な戦いは茶番にすぎないのではないのでしょうか。忘れないために夢を記述し、その夢を思い起こすことでこの惨劇を忘れないといっているわりには記述する前にすでに夢を忘れてしまいかつ、叔父と寝ただの誰々君と寝ただのなんて夢はよく見るようですね。現在気になっている出来事は夢にでてきやすいでしょう? あなたはあの惨劇を自分の表現のきっかけだけに利用したのですか? そうは思いたくありませんが、僕の理解力がないせいかもしれないけれど、僕の目にはそう映りました。

「これは醜い戦いだ」。

僕が期待したのは、関係のない男女が狭い部屋のなかで一夜をともにし、あの事実について思うことを、そして平和について考え、その内容がびっしりと記述されていることだったのです。個人の声を集めてそれを出版すること。あなたは彼らの声に耳を傾ける一人の黒子的な媒介でよかった、本当にそう思います。

しかしこの本を他の人は違う感想をもったかもしれません。ほうっておけない事実だからこそ、今僕は他のひとの感想を聞きたいとせつに思います。みなさんよろしくお願いします。

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紙の本ふくすけ

2002/10/22 14:36

全てを引き受ける覚悟こそ…なのである

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松尾スズキの日記「ギリギリデイズ」の書評には、彼の芝居を生でみたことがないと書いたけれど、ようやく見てきました「業音」。もううちのめされたんです、というかぶちのめされました徹底的に、完膚なきまでに。それで家にあった「キレイ」のビデオを見直してさらにぶったまげてもうここ2週間ばかりは松尾スズキの本をむさぼり読む日々が続いています。

彼のエッセイは軽妙で笑える。エロかったりグロかったりナンセンスなところもあるけれど、結果的には笑える文章になっていて軽く読み飛ばすことができる。こっちサイドのファンの方は結構多いのでしょう。

でもね、この「ふくすけ」をはじめとする彼の芝居(戯曲)の数々はもう本当にすごいことになっているんです。

もちろん笑いもある、それはエッセイなどから立ち上るあの雰囲気とほぼ同じでそれはそれで楽しい。なかなか口に出せない、自分のダークサイドな独り言みたいなのを代弁してくれているようなところもある。でもそれだけじゃあない何かが彼の芝居(戯曲)にはあって、それはあえてここには書かないけれど、もう30を過ぎた普通の社会人である僕が、「なんだかわからないけれどもう一度人生やりなおしたいっ! 今までの自分をもう全部とっかえたいっ! 脳味噌とか、バーン!」なんて思ってしまうほどにインパクトの強い代物なのです。

芝居の力ってすごいなぁ。こんな世界を知らないなんて人生損してんだろうなぁ、自分はよかった、こういう習慣があって。そんなことを思ったのです。

結局人生が永遠の暇つぶしであるならば、何で暇をつぶすかってこと。石丸元章の本もそうだけど、こういうの読むと刺激的って感じる自分の心の幅みたいなのが狭いって感じる。「もっとだもっと!」と第三舞台の芝居のアンケートにただ一言書かれていて、主催の鴻上尚史が、押さえられない気持ちについて書いていたけど、今の僕も同じような気持ちかもしれません。

「うぉおおおお! あんたすげぇよ!」

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紙の本フラッシュバック・ダイアリー

2002/10/21 15:09

YYYYYYYYEEEEEEESSSSSSS!!!!!!!

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「すっごぉぉぉぉい! 面白い!!!!!」と誰もいないのに叫んでしまうほど面白い、っうかすごすぎる。この日本唯一のゴンゾジャーナリスト(ラスベガス77という本の書評などを参照のこと)はどこまでつっぱしるのだろうか。一般的にみたらかなりあぶない、そして近づきたくない友達になんてまちがってもなりたくない石丸元章の文章はすでに麻薬のように僕の脳髄を震撼させつづける!

この本は、雑誌の連載をまとめたということもあり、いろんなトピックがつまっているので大変にお得。ドラッグ、神風特攻隊についての本はすでに出ているが、そんなもんに興味ない人ならなおのことこの本からはいるのが良いでしょう。値段も1200円と良心的だし、本のサイズや装丁も含めて、かばんにぽんと放り投げてあらゆる場所で読んでほしいって感じの代物だ。カバーなんかもとっちゃって表紙なんかもそっくりかえっちゃってハンバーガーのしみなんかもつけちゃったらもう最高!って感じで本は生き生きと街のガス臭い空気を吸ってその存在感を大いにアピールしていくことでしょう。

この人の世界を知っている人には説明なんていらないだろうから、何かの偶然でこの書評を目にしている未だ石丸知らずのあなたに向けて何らかのメッセージを発するならば、この世界において自分が存在するステージは、そんなにきらびやかな場所ではないんだよってこと。人は自分の人生を後悔しないように失敗を正当化していく生き物だけど、そのせいで自分にかける負荷って相当なものだと思うんだ(もちろん僕もです)。でもね期待しすぎなんだ、みんな。特別な人生、特別な出来事、素敵な、快適な、認められた生活と存在、自分はやっぱり特別でありたいという様々な思い、思念、想像、妄想などのあれこれ。そんなものは不必要だってこの本は言ってる。自分の立場と現実をきちんと認めて、そのステージで楽しんで笑うこと、そうあるべきだと言ってる。幸福の基準ってもちろん人それぞれだけど、たくさん笑ったら人生勝ちなんじゃないか、僕はそう思う(松尾スズキも何かで書いてた)。

この本はおおよそ一般の人がおそらく死ぬまで経験しないであろうことを(おおざっぱにくくってごめんなさい)たくさんたくさん書いてあります。それはおそらく嫌悪感をもよおすかもしれません。でも、本来生きるってこんなことの繰り返しじゃあないかってこの本読んでると思えてくるんです。そしてしだいに嫌悪感もなくなってきていつしか共感していてかつこの世界にあこがれている自分も発見しちゃったりする。人生はあなどれない、しかしだからこそ次々にやってくる倦怠感をやりすごす術をたくさんもっていたほうがいいんだな、なぁんて気持ちを覚えたのです。

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