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  3. 吉田くにさんのレビュー一覧

吉田くにさんのレビュー一覧

投稿者:吉田くに

37 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本長英逃亡 上巻

2003/08/26 11:22

幕府の執拗な追跡と逃亡者の苦悩を生々しく描く。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 物語は、地獄ともいうべき環境の獄中の長英から始まる。
このまま牢獄内で朽ち果てるか、それとも一生逃亡者の身になっても
自分の知識を国の為に役立てるか。究極の選択の末、長英は脱獄を決
意する。

 高野長英は幕府が洋学者らを一斉弾圧した「蛮社の獄」により永牢
に処せられた。弾圧、といってもほぼとある人物の私的な感情による
もので、当時の目付・鳥居耀蔵が長英や優れた知識と画才を持つ渡辺
崋山ら多くの蘭学者達の勢力の拡大を嫌悪し、幕府の外交姿勢や国内
防備に意見する長英らを幕政批判を理由に粛清したのである。
特に鳥居の長英に対する嫌悪は激しく、獄中でさえいつ長英は鳥居の
陰謀によって殺害されてもおかしくはない状況にあった。そんな過酷
な獄中生活の中で生への執着が捨て切れない長英はついに牢屋に火を
放ち、脱獄を決行する。

 幕府の捜査網と追跡が予想以上に厳しく執拗な中、潜伏先を次々と
変えねばならない長英は危険を承知で自分をかくまってくれる知人達
に対し、これまでの自分の傲慢さを反省するようになってゆく。揺れ
動きながらも徐々に変化してゆく長英の心の内を巧みに表現している。
だが知人がいつ幕吏に通報するかわからない不安におびえ、次第に形
相も変化してゆく程の長英の苦悩する姿を実に生々しく描いている。
また、綿密な情景描写も筆者の技術ならではの魅力だ。
 あらゆる人間を駆使し日本の隅々にまで捜査網を張り巡らせ、長英
捕縛に躍起になる幕府。江戸幕府が長年続いたのも犯罪行為の徹底取
り締まりがその理由の一つといえるだろう。犯人検挙率の高さを誇る
幕府の執拗な追跡に読者は読み進むにつれて冷や汗をかくだろう。

 長英は年老いた母に一目でも会いたいという思いの末、捕縛される
危険度の高い故郷岩手県の水沢へと向かう。長英は無事、母と再会で
きるのだろうか。そして彼の運命は一体どうなるのか。
下巻の展開に更なる期待を寄せる。


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紙の本羽生善治挑戦する勇気

2003/05/07 17:01

「また将棋やろうかな」。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書は羽生さんが語る将棋との出会い、将棋の魅力、歴史、プロ棋士と
しての意識が満載の本です。将棋では今はやり言葉の「微妙」の状態や
「引き分け」がありません。偶然で勝利することもなく、指しているうちに
必ず勝敗が決定的なものになります。私も幼少時から父と対局し、現在の
コンピュータソフトとの対局に至るまでどれ程負け続けてきたことでしょう。
意地でも勝ちたくて相手から取った駒を使ってルール違反をしたり見え見え
の敗北に嫌気がさして対局途中放棄等、負けを潔く認めなかった思い出が数
多くあります。我ながらやたら勝利に飢えていた悪ガキでした。
本書からは将棋が非常に奥深い競技であることや羽生さんの語る将棋の魅力
がわかり易く理解できる一方で、意外な面も知ることができます。駒の再利用
が日本独自のものであったり、負けっぱなしの私のような人の為に「相手に
よってレベルを変化させ負けてあげる・接待ソフト」の開発も行われていると
いうこと、等です。また、プロ棋士は時代の流れに敏感でなければなりません。
どの世界でも共通していえることなのですね。常識を超えた「ありえない発想」
がまかり通ったりすることもあるのでプロの棋士とて油断大敵、常識という枠
を外れて物事を考える柔軟性、日々の積み重ねや経験を熟考・研究・再利用
する等、プロ棋士としての羽生さんの意識・向上心の高さは必見といえます。
それでも不安や悩みもつきものでそれら心の葛藤といかに戦うかといった方法
も将棋を通じた羽生さんの考え方は大変役に立ちます。
私は素人ですし将棋には相変わらず弱いのですが老若男女誰とでも対局出来
楽しめる雰囲気が好きです。昔ほど卑怯な手を使ってでも勝利にこだわりはし
ないと思いますが「また将棋やろうかな」、そんな気にさせてくれた一冊でした。

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紙の本氷川清話

2002/10/01 23:43

活(カツ)!

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 身分制度のやかましかった江戸の幕末当時にたいそう広い眼で世の中を見渡していた男がいた。人として生まれたからには皆それぞれの志を遂げられる世の中に、と肩書きを嫌いどんな身分であれ人間の器量を見抜き能力を伸ばしてあげようとする姿勢に感銘を受けた。それに加えての肝っ玉の強さと備え持つ余裕には思わず驚いてしまう。
 日本が大きく揺れ動いた幕末・維新時は長い間身分制度によって様々なことを虐げられてきた庶民の層からも逸材が多く輩出したが、皆何より熱意が旺盛で命懸けであった。時代の流れに乗る者も逆らう者も自分の確固たる信念を持っていた。度重なる迫害に耐え自らの相場が下がれば上昇するまでじっと、機会を待つ。事あるごとにたとえ周りから卑怯者と思われようともその中で時代を見つめる鋭い勝の眼光、現代人の何事にも対していえる「誠」の欠如の指摘等、物事に対する行動を性急に早まりすぎぬようという声が今もなお響いてくるように思える一冊である。

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紙の本花神 改版 上巻

2003/01/23 23:19

大村益次郎になるまで

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 仏頂面で必要以上の事は一切しゃべらない。風変わりな身なりと性格だが物事を数値ではじき出す力、先を読む直感力において右に出る者はいない。将来は村医者で終生過ごすはずの男が面白い程人間の出会いに恵まれ時代が求める男となっていく様を描いている。本書の中では「村田蔵六」とまだ大村姓を名乗る段階ではないがのちにこの蔵六が幕府を倒す人物になろうとは。
 過激な志士が横行する時勢の中、淡々と与えられた任務をこなす姿、同じ適塾出身の者達がやがてそれぞれの運命で道が分かれていく人生の面白さを司馬氏は巧みに描き、読者をひきこむ。「運命の糸」というものは本当にあるのかもしれない。司馬氏の文脈の中で単に出会ったけれどすれ違っただけの人、単なる偶然というべきなのか何度も出会う人などを重ね重ね読むうちに「よくよく考えると過去も未来も人間の出会いほど不思議で面白いものはないのかもしれないね」というようなメッセージを感じずにはいられない。さらに生誕の地を愛し誇りに思う心、何のために勉学をするのか、日本人の生まれ持っての器用さなど、現代人が知らなかったりかつ欠けがちな心を司馬氏によって再認識させられたように思った。

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紙の本人斬り半次郎 幕末編

2003/08/30 10:04

精力的な半次郎と温かい人柄の西郷隆盛が魅力的。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 現存する中村半次郎(のちの桐野利秋)の写真を見ると、この本の
中に出てくるような人前で放屁したり、「はアい」と甘えたような返
事をする男には到底見えない。むしろ威圧感を感じさせる雰囲気で写
っているように思える。

 この本では薩摩藩出身の貧乏郷士・中村半次郎が西郷隆盛や大久保
一蔵(のちの利通)に認められ徐々に出世し、京都で秀でた剣術から
人斬りと怖れられながらも次第に藩の重きを成す存在になってゆく様
を描いている。
「今に見ちょれ!」を口癖に卑賤の身からの立身と貧困がもとで罪人
となった父親の息子という汚名を返上するため、何事にも精力的に動
く半次郎を明るく元気いっぱいに描いている。南国薩摩のガッツ有る
青年である。恋に対しても純粋な半次郎の様々な女たちをめぐる恋愛
事情も楽しい。また、半次郎にとって運命的な出会いとなった西郷隆
盛という男の人柄の魅力がこの本の中であふれている。人望が厚かっ
たという理由が改めてよく理解できる。

 全体的に明るい調子で描かれているが実際に半次郎は幾つもの試練
を経てきたに違いない。身分の差を利用したいじめはもっと陰湿なも
のであったろうし、読み書きもろくに出来ず志士達の会話の内容も理
解出来ない己の無学さをどれ程悔しく思ったことだろう。そんな試練
に立ち向かって睡眠時間を削り、人の何倍もの努力を重ねる半次郎の
姿がこの本の中で生き生きと明るく描かれていて実に魅力的である。
 私の想像していた中村半次郎とはやや姿が異なっていたため多少の
ギャップが生じたものの、この本は畑を耕し芋掘りばかりしていた青
年が幕末動乱期の中で見違えるほどにメキメキと頭角を現してゆく様
を楽しみながら読むことが出来る作品といえる。

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紙の本新編教えるということ

2003/05/05 14:06

「初心忘るべからず」

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 教員を目指している方、現職の方々へ。
生徒に対する本当の愛情とは、どんな事をしてあげることでしょうか。
教師の本懐とは何でしょうか。
また、授業をユニークなものにしたりする自分なりのアイデアを幾つ
言えますか。
教師は全身全霊を捧げなければ勤まらない職業です。教室の雰囲気作り、
教材研究、子供とのコミュニケーション、自身の向上心、責任感。
一つでも欠落した場合、子供にとっては永遠に繰り返すことのない貴重な
時間を台無しにするわけで仕事とプライベートの区別が無い位自分を磨い
ていないとやっていけない憧れとは裏腹の過酷な仕事の毎日です。
著者は初心忘るべからずというメッセージを本書から発し、今後の若手教師
への励ましには心からのあたたかさを感じます。特に二十代でひらめくアイ
デアは一生の宝物となること、だから恐れず工夫を凝らしてみましょうとい
う提案やつらい教員生活の中でも後の思い出となる財産の築き方等は大先輩
ならではのものといえます。
大量の情報量の中で生き、日々便利な世の中になりすぎている今日このごろ、
何事にも飽きやすくなった子供をどう学ばせるか、一人一人が成長感を味わ
えるような授業をどう作っていこうか、教師は山積みの課題に今日も悩んで
いることと思います。簡単に解決の糸口が見つかるとは思えませんが、本書
を読んで初心に戻ってみるのも何らかのヒントが得られるかもしれません。

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龍馬自身の声を聞く。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 今、龍馬が脚光を浴びている。
小説だとどうしても人物像が誇張されている気がしてならない。
真の龍馬の姿を知りたい方にはこの本をおすすめしたい。
この本の中では現存する龍馬の手紙や文書の中でも特に重要なものを
24編選び、誰でも手紙内容が理解できるように丁寧に解説されて
いる。

 龍馬の手紙は実にユーモアに富んでおり、他の志士達と比べると
現代人でも原文で内容がそれとなくわかる程、読みやすい文で綴られ
ている。だが随所に綴られている龍馬の人生観には並々ならぬ思いを
感じる。そして他の幕末の志士達もそうだが龍馬も決してがむしゃら
に国事に奔走していたのではなく、大いに様々な事に悩んでは時機を
見て慎重に事を運んでいた事が文面からよくわかる。また危機的な状
況下においては寺田屋遭難事件など実に生々しい報告をしている事か
らいかに当時毎日が命がけであったかがわかる。
一方で妻としたお龍さんを家族に紹介したりイラスト入りで新婚旅行
を報告する面もあって、龍馬の性格がにじみ出ている文面にじかに触
れるとその死が本当に残念でならない。

 司馬遼太郎氏による名作「竜馬がゆく」のように作家によって脚色
された龍馬の小説も勿論楽しめるのだが、なんら誇張の無い、龍馬自
身から発せられた声を聞き龍馬の考えや伝えたかった事を理解する事
にも大いに価値があり、幕末と同様先の見通しが立たない今の時代に
は自分の生き方と照らし合わせるなど色々な意味でためになる本とい
えるだろう。それにしても龍馬暗殺を命じたのは一体誰なのか、今も
謎に包まれている人物の事を昼も夜も暇さえあれば考えてしまう今日
このごろである。

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マキオちゃんとチアキちゃん。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書は宇宙飛行士・向井千秋さんの夫である向井万起男さんが妻の宇宙
飛行への道のりをご自身が非常に楽しみながら愛情たっぷりに綴った本と
いえます。
 にらめっこから始まったお二人の出会い、結婚、千秋さんの生い立ち、
性格と夢、世界の宇宙飛行士などについて万起男さんの性格がにじみ出て
いる文章で書かれており、こう言っては失礼ですがお医者様とは思えない
程愉快です。常識を超越した妻の食事の量に度肝を抜かれたり、お洒落に
無頓着な彼女から逆に衣服を巻き上げられてもやはり何といっても屈託の
ない妻の明るい笑顔が大好きなようで文面から愛情を感じますし、つられて
読者もニンマリしてしまいます。一直線に夢を追い続ける千秋さんに時折
力になってやれず夫として無力感を感じたこともあったようですがそれでも
見守り続けて、食事など出来る限りの応援をして一緒に喜びあったりする
姿が非常に純粋で良いです。
 また性別や年齢にこだわらず、夢に向かってひたむきに頑張る向井千秋
さんは同姓から見ても凛々しく、おまけに彼女の面白い個性には思わず笑
いころげてしまいます。近頃笑っていない方、大きな夢をお持ちの方に本
書をお薦めしたいと思います。
 妻の千秋さんと夫婦になったことによって日米の夫婦観の違いなども直
接肌で感じたり、万起男さんの男として、夫としての視野が毎回大きく広
がっているように思いますし、千秋さんにとっても万起男さんが自分の夢
を応援してくれるかけがえのない夫なのでお互いに「チアキちゃんじゃな
きゃ!」「マキオちゃんじゃなきゃ!」と微笑ましい位必要としあってい
ます。美味しそうにお二人でご飯をほおばる様子は本当に楽しそうです。
改めて生涯を共にするパートナーの温かさと大切さを実感できる本です。
お互いの呼び名である「マキオちゃん」と「チアキちゃん」、ちょっと
個性的なお二人がこれからもずっと幸せでありますように。

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紙の本白い犬とワルツを

2003/02/18 22:36

理想と現実・現代人へのメッセージ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 最愛の妻に先立たれ自身も病に蝕まれながらも余生を送る一人の老人のもとに突如白い犬が現れ、老人と犬との不思議な生活が始まる。権力や世間体への見栄に執着せず、ただ愛する人にそばにいて欲しいという純粋な夫婦愛が心に響く。真っ白な犬の白さはまるで汚れのない真実の愛の純白さを象徴しているのかのようである。同時に核家族化や少子化の進む現代人に伝えるメッセージかのように「家族」という絆をも温かく描いている。
 たくさんの愛情を注がれ惜しまれながら「死」を迎える。死後も生前の存在を長く愛され続けてもらえたら理想的だ。しかし現実は老後夫婦間で介護疲れが原因となり殺人沙汰となったり、親の面倒を見る見ないの件などでも家庭内での意見の衝突や問題は後をたたないのが現実ではないだろうか。理想はいくらでも築くことは出来るが現実は思い通リにいかないものだ。理想と現実との差を考え出すと複雑な気がしてならない。しかし温かい家庭は誰もが望むものであり、人間が生きている中で最も素敵で大切な空間である。本書は家族というものの絆、人と人とのつながりを忘れかけた現代人の心を潤してくれる物語としては申し分ない作品であるといえる。また、映画化されたビデオも必見の価値があるのでおすすめしたい。

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紙の本サイマー!

2003/05/15 09:31

競馬!!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 サイマーとは、中国語で「競馬」のことをいう。
初めて馬券を購入し大金を賭けた馬が落馬という劇的な幕開けを皮切りに、
府中・中山で鍛えぬかれ今や世界の競馬界を駆け回るタフなオヤジのフォト
エッセイ集である。所々で競馬を通じて教訓めいたことを綴る一方で江戸ッ
子弁丸出し・筋金入り博打オヤジになったり、子供のように駄々をこねる姿
がおかしくてたまらない。また浅田流の競馬に臨む際のポリシーには男のロ
マンを感じさせてくれて粋なオヤジである。
しかし見所は小説家浅田次郎として本書の中で光る文章である。それはだて
に国内外の競馬場に通っているだけの状態ではないということであり、各競
馬場内や周辺の地元の様子、人間模様、景色、その土地にまつわる競馬の歴
史や食事等、総合して各国や各地域の文化を筆者の観点でとらえて綴ってい
る所にある。文豪アーネスト・ヘミングウェイもかつて競馬場通いをしてい
たようだが単に生活費を稼ぐ為ではなく著者同様、競馬場に通うかたわら実
に様々な角度から物事を見て考えていたようで、小説の題材として何かしら
のヒントを得ていたのかもしれない。これが小説家か、と思ってしまった。
競馬が公認賭博であっても悪いという意味で偏見を持たれている方も多いと
思う。しかし国や地域によって国民の競馬に対する意識は勿論、競馬産業や
馬券購入システムが全く異なったりと、競馬が奥深いものであることを本書
から理解してもらえるはずである。
両親の血筋を参考に、直感のビビビ勘もあわせ馬を決め馬券を購入していた
が思索を十分に行うこと・事が終わった後に決して「イフ」を口にしてはな
らない、結果が悪かったのは運でも他人のせいでもなく自分の努力が足りな
かっただけだという浅田流の教訓がナンダカンダ勉強になった気がした。
また、ラスベガスにも行きたくなってしまう本でもある。
筋金入りのギャンブラーの方も、そうでない方も是非ご一読あれ。

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すべては剣とともに

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 新選組の組織の生い立ちから終止符が打たれるまでの歴史と共に、自分の情熱に火をつける何かを日々求める若者達へ向けた写真とメッセージが印象的だ。
 崩壊していく幕府の為日本の北の果てまで戦い続けた新選組。壬生浪(ミブロ)と白眼視されても人間として正しい道を歩み、誠の行為を!という信念を貫き通した局長・近藤勇を筆頭に武士になることを夢見てきた副長・土方歳三は一時的な生活の安泰や食いつめ浪人といったいわば烏合の衆を局中法度という恐怖の掟によって最強の剣客集団にする為、次々と隊内で士道に背く者は粛清を行い本物の武士を求め隊の引き締めに奮闘した。後に土方は優れたリーダーシップを生かし軍神へとなっていく。
 局長近藤勇の人柄の魅力あってか最強剣士として名高い沖田総司や永倉新八、斎藤一、山南敬助、原田左之助、藤堂平助ら血気盛んな若者が運命にひきよせられるように集い、国事を論じ合い幕府の下で京市民を過激な浪士達から命懸けで守り続けた。めまぐるしく変化する時代の情勢の中で隊士の脱走・粛清・別離といった隊内の様子を丁寧に描写している。新選組とはどんな人物の集まりだったのか?と思う人には理解し易い書といえる。
 しかし時代の流れはあまりにも急激すぎた。最強の剣客集団の要ともいうべき「剣」による戦の時代が終わりを告げたのである。時代の流れに翻弄されいつしか賊軍となり、限りなく押し寄せる新政府軍に退却を余儀なくされ、それでも新選組は最後まで剣とともに戦い続けるのであった。
 たとえ肉体が朽ち果てようと、「蒼狼たちはいまも奔り(はしり)続けている」という巻末のメッセージは心に響く。彼らの魂は今も生き続けているように思えるからだ。

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煽られる焦燥感

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 幕末動乱期は世の中に対する矛盾であるとか計り知れぬ人間の思いが沸騰し、交差しあい、日本が新たな時代を迎えようとしていた時代であった。出生時の身分が何であれ一身を犠牲にしてでも人民に正しい政治が行われる世にしなければ日本に将来はない。同じ人間なのに身分の差があるのはおかしい、国の未来を考えるならば一日たりとものんびりとしている事は出来ない、とここにも情熱的な男がいた。一方で己の行為が世に効をなさねば意味が無いから無駄死にだけはしまいと冷静沈着さをも持つ、渋沢はまさに「切れ者」であった。その切れ者・渋沢が商工業界に身を投じるきっかけから名高い実業家になった経緯を描いている。
 彼が「器ならず」の人間としてたたえた維新の三傑、大久保・木戸・西郷ら他的確な目を持つ大隈重信、運命を変えた徳川慶喜など、人は尊敬したり時にはぶつかり合いながらもとりまく人間によって磨かれ成長するのだと改めて思った。
 人が人間らしく生きるのにせっかく生まれたからには一身を投じたいと思う物事に誰もが出会いたいと望む事は当然だ。渋沢の生き方を読み彼は時の運と周りの人材に恵まれてきたからこそ成功をつかんだのだと思った。これは私のひがみというべきものなのかもしれない。成功した人間を見てこのたび焦燥感を煽られてしまった。格好悪いが結果は後からついてくると分かっていながらも進むべき道に迷い、焦る自分と今日も向かい合っているのである。

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紙の本罪なくして斬らる 小栗上野介

2002/12/10 15:18

時の流れのむごさ

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 人の心ほど変化に富むものはなく、時代の流れほど急で時にむごいものはない。その犠牲者ともいうべき、歴史に埋もれた幕末の幕臣・小栗上野介の姿を描いている。幕臣といえば表向きに有名なのが幕末動乱の最中江戸を無血開城させ、江戸を戦火から救った勝海舟であろう。しかし日本が諸外国に侮られず現在の経済大国までに成長してこれたのは、国内の産業・工業の基盤を築いた小栗がいたからこそではないだろうか。徳川御用金着手など冤罪の汚名をきせられ歴史から名を抹消され続けてきた事をこのたび私は悲しく思った。崩壊していく幕府の有様を既に先読みしながらも最後まで幕府再建の改革に尽くした小栗。時代を見抜くあまりにも鋭い目を持ちすぎたがゆえ自らの災いを招くとは、あまりにもむごい。手がけた日本初の大掛かりな造船所の完成を見ることもなく、また死後明治という新たな国家でようやく彼が過去の渡米の際着眼していた日本にとって必要な改革が次々と実現していったという皮肉さ、時の流れというものの残酷さが身にしみる思いである。
 いつの時代でも優秀な才能を持っていながらそれを生かせる上司・環境がなければ何も育たない。むしろとりまく環境の悪さの為に身もろとも潰されてしまうこともある。小栗は後者で彼の生きた時代・環境が味方をしてくれなかった。もし今、彼が生きていたらどんな手腕を発揮するだろう?などとふっと考えてしまう。
 より広く、多くの人間に小栗の存在を知って欲しいと思う。また現代人が平和に暮らし何気なく使用している公共物やあらゆる日常生活の中に彼の功績が幾つも残っているということも。

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紙の本ハードボイルドに生きるのだ

2003/08/23 19:44

ユニークな病理医さんが綴る面白エッセイ。

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 常にハードボイルドでかっこいい人生を送ろうと努力している向井
万起男さんによるエッセイ。マキオさんはオカッパ頭にヒゲを生やし、
外見から既に独特の雰囲気を放っている。宇宙飛行士・向井千秋さんの
ご亭主だ。人相を誤解され、テロリストと怪しまれた事も幾度かあると
いうから失礼と思いつつも笑ってしまう。

 何といっても、一つ一つの話のテーマや内容がユニークだ。
特に大リーグに関する話の熱の入りようはぶっ飛んでいる。
自称“日本屈指の大リーグ通”と名乗るだけあって、知識の豊富さは
勿論、「そこまでは誰もやりゃあしないよ!」と言いたくなる程著者自
らが様々なデータ分析までしでかしている。大リーグ好きな方は是非、
マキオさんに挑んでみるといいと思う。
 だが一人で大リーグ熱を帯びて読者を無視し暴走しているわけでは
ない。マキオさんは様々な話の中で実に多くの本を評価し、紹介して
くれている。ユニークなものの見方や考え方、語彙の巧みさはおそらく
マキオさん自身の膨大な読書量からきているのであろう。本人はそのつ
もりはなくとも、さりげなく光る読書のすすめの連鎖はやはり病理医な
らではの緻密な技術を以てしての事なのであろうか。それとも天性の才
能なのだろうか。それにしても豊富な知識の量には驚くばかりである。

 病理医という仕事はあまり日本で知られておらず、国内における人数
も少ないという。だが需要は高まりつつあるのが現状だ。
私も知らなかったのだが病理医とは患者と直接接する事がないにしても
遺体を解剖したり患者から採取された臓器や組織を細かく見ては診断す
るのが仕事だ。当然未知のウイルスや病原菌に接する事もあるのだろう
から、病理医自身の命はいつも危険と隣り合わせなのである。
 そんな危険と日々戦いながらもユニークな発想を持つマキオさん。
時にはホロリとさせながらも大いに笑わせてくれる本書は、ありきたり
のものの考え方には満足しない、新発想を求める方に最適といえるだろう。

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ほのぼのとした物語。

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 精神的にイライラしていたある夜、布団の中でTBSラジオの「講談社・
ラジオブックス」という番組で本書が朗読され、聴いているうちに和やかな
気持ちになったのは、つい最近のことである。

 著者にとっては本書がデビュー作。かつて実在したダックスフントをモデ
ルに本書を執筆したという。
主人公は「ビーノ」というダックスフントの犬で、ちょっと変わっている。
胴が自由に伸び縮みするのである。伸びるだけなら「ノービ」と命名された
はずだが逆に縮むこともあるので「ビーノ」と名付けられたのである。
名付け親はビーノの飼い主のおじいちゃんで、奥さんを前に亡くしているが
料理と冗談の大好きな心温かい人間で、ビーノとの交流が実に微笑ましい。

 自分が大芸術家ミケランジェロの生まれ変わりだと信じ込んでいる親友、
ナルシストの猫・「ミケ」やビーノの胴が自由自在に伸び縮みする不思議
な能力を気味悪がってなじる意地悪ブルドックの「ブル」、ビーノと同じ
く外見で特別視されしまう金髪で青い眼をした少年ジョーダンらに囲まれ
一話一話、ビーノは悩み、そのつど成長していく過程を丁寧に描いている。

 ビーノは「不気味な犬」、ジョーダンは「外人」、と普通と違うからとい
って特別扱いされてしまうが自分をそういう目で見る人が世間にいることを
受け入れて試練を次々と乗り越えていき、そして外見よりも世界にたった一
つしかない「自分らしさ」の大切さに気付くことを、本書はほのぼのとした
物語の中においてもしっかり読者に伝えてくる勢いを感じる。「今の自分の
ままでいいんだ!」と大人も子供も元気が沸いてくるはずだ。
 恐くても一歩踏み出す勇気や友達を思いやること、家族との愛情というも
のがいっぱい詰まった心温まる一冊に仕上がっている。小さな子には読み聞
かせるのに最適あり、大人も和やかな気持ちになれる良書といえる。

 不思議な犬を通して改めて実感する「自分らしさ」、はなかなか新鮮だ。

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