ミコさんのレビュー一覧
投稿者:ミコ
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海辺のカフカ 上
2002/10/05 12:46
根底に流れ続けているもの
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15歳の誕生日に少年は生まれ育った家を出る。これ以上、自分が損なわれることのないように──。
小説、エッセー、ノンフィクション……どのような表現形態でも村上春樹の作品は、根底に流れているものはすべて同じという印象を受ける。それは、単にシンボリックなものが重複しているからというわけではなく(図書館、猫、雨、料理、音楽……)、書くスタンスが一貫しているためだと思う。それがとても心地よい。
『海辺のカフカ』では、少年と老人、生と死、日常と異界。相反するもの、そうでないもの、隣り合うものが渾然一体となって、静かな世界を形作っている。舞台も背景も実にリアル。そのまま現代の日本だ。なにしろ東京・中野区と四国・高松。超現実的なことが起こるには、リアルに過ぎる。であるのに、軽やかな文体は、あっさりと現実と非現実の境界を超えてしまう。
大通りから一歩脇道に踏み込み、裏道や獣道さえ通り抜け、また大通りに戻る。淡々としているのに圧倒されるのは、この世界ではタフであることが求められているからだろう。等しく、基本的に。
よどみなく展開していくストーリーをただ追っていく。それは、跳び上がる前のバッタをじっと見詰める気分によく似ている。ポジティブシンキング、読後そんな言葉がふっと浮かんだ。
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