桜咲くさんのレビュー一覧
投稿者:桜咲く
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慧命経
2002/10/10 15:47
慧命経(えみょうきょう)について
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本書は、中国清時代の僧徒「柳華陽」の著による道教内丹法の書である。従来、内丹法は、とかく秘密主義のもと、あいまいな表現で、判読不可能な文献が多かった。しかし本書では、最初の「起手の方法」から始めて、順を追って次第に高次な内容へと読者をいざない、内丹法の極地である「還虚」までを、比較的わかりやすい表現で、詳細な記述がなされる。
柳華陽らの内丹法は、一般に「伍柳派」と呼ばれている。この流派の文献は、わかりやすさの点で、中国国内に現存する他の内丹法文献の中でも群を抜き、また内容の点で、精緻を極めており、明代以降、この分野に関心を寄せる中国知識人に、最大の影響を与えたと言われている。日本国内では、これまで、本書の一部が翻訳されていたが、完全な邦訳・出版は、初めてであろう。
現代の日本でも、特に若い禅僧などの修行者らの間で、伝統的な瞑想方法や戒律に満足できず、自身の魂の根源的な浄化・進化を求めて、真剣に模索している者も多いと聞く。そうした熱心な求道者にとって、本書の示唆する法により、自身の身体内に起ってくるさまざまな具体的兆候を実体験を通じて知ることで、満足を与えるものと思われる。
世は不況で、その反動で、金さえもうけられれば、すべてよしとする風潮がある。精神的より所を失い、地下鉄サリン事件などに代表される現代宗教の危うさの中で、単に特定の団体に属していれば救われるといった「なかよしグループ宗教」に疑問を持ち、おのれの内面の理性に照らして、心の指針を確立しようとしている社会人に、謹呈したい書である。
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