波子さんのレビュー一覧
投稿者:波子
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見えないドアと鶴の空
2004/05/05 20:38
凍えている夏風景
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初夏の夕方、扇風機の風を受けながら、枝豆をつまみ、ビールをコップに注ぎ、面白くもない野球中継のテレビを付けっぱなしにしながら、夕刊の文化欄を開き、会社の帰りに買ってきた文庫の新刊を表紙もあけずに放っておく。もちろん風呂上りである。頭の中は真っ白である。なにも考えはない。すぐ隣で洗濯物をたたむ女は素足で正座している。何も言わないが、瓶の残りを気にして、ウイスキーと氷と水を用意しにすっとたって台所へ向かう。そして私も風呂に入ってくると視界から姿を消してしまう。だけどどうやって着物を脱ぐか、どのくらい湯につかっているかはお見通しである。
親しい人をさらに知る努力をせずにいられるうちは幸せである。それが長く続くと無関心になり、人生は大きくカーブを切ることになるみたいだ。しかしそれも人生だ。
だけど人生は気を緩ませる時があってはならないのであろうか。
「見えないドアと鶴の空」の主人公昂一は、絹子に恋し結婚し夢中になり、そして無関心となると同時に由香里に恋し、夢中になっていくその俗っぽい姿が描かれている、と書くとかなり乱暴だが、まあ事実だ。
新橋にある書店の大げさな広告につい手にとって、読んでしまったが、昂一の由香里に対するそれはまた無関心へとこまを進めていくことが容易に想像できる。
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