池谷さんのレビュー一覧
投稿者:池谷
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空想自然科学入門
2002/11/07 10:36
科学の果樹園を俯瞰する
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「1800年までの科学といえば、まるで果樹園のようなものだった」。本書はじめにの冒頭である。何のことだろうと、つい読み始めた。当時の「科学」は、全体の様子を簡単に把握できる程度に単純だったということのようだ。ところが「今日では、科学という果樹園は地球をとり巻く巨大な怪物となり、そこには1枚の地図もなく、誰も道を知らない」。科学は、専門分野ごとに深化し、科学者たちの、己の専門分野に閉じこもるばかりで、誰もその全体像を捉えることができない。
化学から生化学の専門分野を極めたアシモフは、ある時「反逆」を起こした。果樹園のちっぽけな片隅に閉じこもっていくような感覚に耐えきれなかったのだ。SF作家というもう一つの顔をもつアシモフは、科学の多くの分野との関わりを保ち続ける努力も続けていた。その彼が、「高いところから眺めながら、科学の果樹園をところどころ覗き見した」のがこの随筆集である。
はじめにの最後に、彼はこう結んでいる。「私に見えるものを、あなた方にも見てほしいと、心から思うからである」。科学には門外漢の、単なるSFマニアの“元”文学青年である私は、これを読んで感激し、即座にこの本を購入した。
正直に言って、難解なエッセイである。聞いたこともないような科学の最新(当時の)の話題が次々と飛び交う。とてもそれらを理解できたとは思えない。しかし、アシモフ一流のユーモアを交えた語り口は、理解できないながらも、「なるほど」と思わせる、充実した読後感をもたらしてくれる。
この科学エッセイシリーズは、早川書房から全15巻が出版されている。それをすべて読破したというのが私のひそかな自慢だ。彼の死去により、彼のSFの新作は楽しめなくなったが、彼の遺した科学エッセイは、まだまだ限りないはずだ。続刊を楽しみにしている。
最後に、この駄文にここまでおつき合いくださったみなさまにお勧めします。とにかくこの本の「はじめに」をお読みなさい。貴方もきっと、科学の果樹園を覗いてみたい誘惑に引き込まれることでしょう。このシリーズ、他の刊の「はじめに」もまたすごいですよ。
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