ちはるさんのレビュー一覧
投稿者:ちはる
2003/08/29 23:16
あら、ちょっとカッコイイ男の子…年下すぎるけどね
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風のように現れ、主人公の少女を騎士(ナイト)のように助けて、去って行く少年。素晴らしい。パーフェクト。掴みはオッケー! …君が小学生相当の歳で、相手が高校生じゃなければね。
案の定、その「ちょっとイイ感じ」なはずの少年が、「親の借金を肩代わりしたから、嫁になれ」という婚約者だった、と判明した時の少女の動揺は激しい。しかし、確信犯の少年はめげない。そうして、若様と呼ばれることすら嫌がる10歳の名家「当主」と、普段はおっとりしていて「チョロ」そうなのに、意外と…な高校少女の、家族ぐるみのドタバタホノボノ同居生活が始まるのだ。
主役のカップリングは「またかい、花とゆめ!」と突っ込みの入りそうな(いや、入れたけど)高校生の女の子と小学生の男の子。けれど、このシリーズは良かった。個人的にツボを突かれてしまったらしい。割れ鍋に閉じ蓋と昔から言うが、話が重なるにつれて、そんな風にお互い補い合える関係に育って行く二人が、おとぎ話のようで和んだ。周りの人物群がまた個性的で、しかし主人公たちが負けてないところが秀逸。
紙の本子どもと始める囲碁
2002/11/11 21:37
子供とのふれあいを目的とした囲碁導入テキスト
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「まず、ポン抜きゲームから入ろう!」
最近の囲碁の導入の変わりように、口アングリの私です。孫と囲碁がやりたいおじいちゃんおばあちゃん、総合学習で今はやりの囲碁なんてどうかなと思っている先生、子供も私も初心者なんですという親御さん、この本を読みましょう!
安田氏の前著「ふれあいの囲碁ゲーム」も体験談が多くてワクワクしましたが、この本はさらにそこからハウツーをコンパクトにまとめたお買得本。コミュニケーションの手段として、誰でも楽しめるゲームの一つとしての、囲碁の使い方が載っています。むしろ、個人より団体、公民館や学校や教育施設での利用に優れているかもしれません。教える側が必ずしも囲碁に詳しくなくて大丈夫、むしろ知っている人への警告があったりします。
勝負の世界とは全く意を異にする、みんなで楽しむ「囲碁」の世界を、あなたものぞいてみませんか?
紙の本まほうの夏
2004/08/21 03:20
幻の夏に近づくには
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「いなか」のモデルとなった愛媛・松山には毎夏行っているので、「伊予鉄の市内電車はこんなとこ走ってない〜!」などと些細なことに気を取られてしまいました。もちろん今ではもう少し、どこもかも拓けて自動車が走ってて危ないし、こんな豪毅な親戚も、てんこ盛りの生き物達も、なかなか出会うことはありません。…と思っていたのが、昨夏。
今年は何故か、結構ワイルドな夏を過ごして参りました。子供が大きくなったのもありますが、アジ・サバのつかみ取りだの、海藻標本作りだの、夜の動物園だの、イベントがやたら増えていて、またその情報が手に入りやすくなっていました。もちろん海でも泳ぎました。2回ほど行っただけで、子供は真っ黒、親は赤むけ。ちょっと(皮膚ガン…)なんて言葉が頭をよぎりましたが、なんの田舎の子は、海行かなくても帽子かぶってても、その3倍は黒いんです、本当に。「メラニン色素もちょっとは作っとかないと」なんて自分に折合いをつけました。
山も川も海も状況が変わってしまって、この本のように子供を野放しにして遊ばせるのは、田舎でも難しくなっています。でも、何か代わりにやれないか…。そんな意識が、親にも子にも、もしかしたら田舎の人達にも、知らないうちに育っているのかもしれませんね。来年は「絶対釣りに連れて行ってね」とリクエストして帰って来ました、おいおい。
千葉県の推薦図書にもなっていて、今年は、とべ動物園の「白くまピース」も入っています。何かご縁があるのでしょうか。
紙の本晴れた日は図書館へいこう
2004/07/07 01:52
図書館好きな人は必読
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晴耕雨読じゃ物足りない。「すごく面白いロールプレイングゲームを、一週間かけてやっとクリアした」という友達には、内心「一週間もあればどれほど本が読めるか、もったいない…」なんて思ってしまう。小さいながらも立派な本の虫の少女が主人公です。自転車で5分のところに市立図書館があって、優しくて美人ないとこのお姉さんが司書として働いている。なんてうらやましい環境なんだ…。
図書館に出入りしているとふと出会いそうな、様々な出来事。普通ならそのまま通り過ぎてしまいますが、好奇心一杯のお年頃で職員にツテまである少女は許しません。おかげで一緒に、今どきの図書館事情というものを、ちょっとのぞけたりして? 本が好き、図書館が好き、という人には年齢を問わず楽しめる本でしょう。
逆にいうと、主人公は小5にしてはかなり大人びています。今時中学生でもそうはいない落ち着きぶり。一応いろいろ事情があって背伸びもしているようですが、それにしても。そこを何とか納得できれば、全体に前向きでとても楽しめるお話です。
紙の本さるのひとりごと
2003/11/12 03:04
しっぽが長い…
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詩情にあふれた大変味のある本なので、感動に水を差された方がいらっしゃったらごめんなさい。でも私のこだわりからすると、この本には大きな問題点があるんです。それは
「サルのしっぽ」!
長い…長すぎるんです。日本の民話が題材という本だけに、これでは困ります。ニホンザル、つまり日本に昔からいる唯一種のサルのしっぽは、実際はもっと短くて、正確にはウサギくらいなんです。絵描きさん、しっかりして下さい。というより、どうして出版まで行って、誰も気付かないんですか…泣けてくる〜(気付けば、断りの一言がありますよね?)。どうでもいい本なら放っておくんですが、素晴らしい本だけに、感動と一緒に間違った知識も広めそうなので、ここに一筆書かせていただきます。
もし、この本を誰かに紹介する時は、ぜひ「日本に昔からいるサルのしっぽは、実際はもっと短い(正確にはウサギくらい)」という正しい知識を補足して下さい。よろしく、お願い申し上げます。だって、ニホンザルの短い尻尾は、彼らが日本の厳しい冬に適応して暮らして来た、スノーモンキーの証なんですから…(ちなみに日本で越冬した外来ザルも年々尻尾が短くなってきてます)。
ついでに、年賀状用などのイラスト・カットをざっと見ると、いかに世間の人の頭の中にシッポの長いニホンザルが多いか、よくわかります。
紙の本のだめカンタービレ(講談社コミックスキス) 25巻セット
2003/10/15 02:38
ハマりました。
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おススメ書評を読んで半月あまり。古本じゃ見当たらないなあ〜仕方ないな〜まず1巻だけ、と試しに買ったらアラ大変。何だかハマって一気買いした上、雑誌チェックまでしている今日この頃です。
主人公は千秋サマこと千秋真一。クールでハンサム、イヤミなほど才能&自信にあふれた、天才音大生。指揮者志望だけど、あえて「苦手」なピアノの上達のためにピアノ科に籍を置いているという、そこの主席(おい)。なら早よ留学でもして旅立ってくれ〜!というのが、周囲の心からの叫びなんですが、実は彼、日本から出られない呪われた体質なのでした…。ここで、そのギャップに笑わない人はいないでしょう、どんなに気の毒でも。
ヤケ酒飲んで自分の部屋の前で寝クタレていた彼を、その日拾っちゃったのが、実は隣に住んでいた変わり者の後輩「のだめ」こと野田恵、ゴミの中でピアノを弾く女。妙齢の女性にあるまじきズボラだし、言動がはっきり変だし、そのくせ王様・千秋に遠慮なく懐いてくるしで、大変困った娘なんですが、人間誰しも取り柄はあるもので、「ちゃんと」ピアノを弾けば、千秋を唸らせる演奏を天然でやってのけてしまいます。ただし気まぐれでいい加減な上、譜読みが超苦手ですが(しかし耳はいい)。
この、学内ピラミッドの頂点と底を結ぶ「妙」な縁から、千秋がのだめにかき回される日々が始まります。彼の苦労はもう言うに耐えないんですが、彼女の天衣無縫さに影響される時もあり、いろいろな人に出会ったり、様々な経験を積む中で、少しづつ、二人とも、変わっていきます。巻を追うごとに成長していくので、1巻を読み返すと何だか懐かしい感じがして、また読み通したりしてしまいます。二人と関わっていく周囲の人たちも、個性的でぶっ飛んでるのばかりで、イイですよ。
でも、二人はカップルではないのでした。のだめの完全一方通行。さて、千秋が降参の旗を揚げるのはいつの日か、やっぱりもったいなさすぎる〜と読者が思ってるうちは、当分無理かもね。
紙の本ゴーストハント(講談社コミックスなかよし) 12巻セット
2004/06/20 00:15
恐くて哀しい人の心の不思議に触れる
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ひょんなことから、渋谷サイキック・リサーチという心霊研究所(!)の手伝いをすることになった女子高生・谷山麻衣。所長はあろうことか未成年の渋谷一也、美形で頭脳明晰過ぎ、自分以外は皆バカとして扱う、悪い意味で天上天下唯我独尊な、ナルシストのナルちゃん。「僕は霊能者じゃない、ゴーストハンターだ」と主張する彼の元、心霊調査(主に肉体労働…乙女なのに)を続けながら、麻衣が出会う様々な人々、事件とは。ちらりちらりと見え隠れする伏せられた事情が、このシリーズを謎めいた雰囲気にしています。が、種明かしはシリーズ最後までのお楽しみに。
原作は、今では「十二国記」で知られている小野不由美さんの出世作、ティーンズハート文庫で「悪霊(タイトルが全部それで始まっている)」もしくは「ゴーストハンター(ヒーローの主張する職業名)」シリーズと呼ばれていた一連の作品です。既に店頭から消え、絶版となって久しい為、このシリーズの概要を今から知るには、このマンガを読むか、古本を後生大事に取っている知り合いに借りるかしかありません。荒削りながら登場人物が皆個性的で明るくて前向きで、強烈に恐いが救われもするオカルトホラーなエピソードを読み進めていくと、実はシリーズ全体が謎解きになっていた、という構成の妙。私も含めて未だに根強いファンがいます。その原作ファンの厳しい目にさらされながらも、文句の言えないレベルで続けられているいなだ詩穂さん、これからいよいよシリーズ後半、ますます内容が濃くなってきますが、頑張っていただきたいと心から応援しています。
紙の本だれも知らない小さな国 新版
2004/06/02 22:18
初めて出会った本と聞かれたら
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読んだだけならもう何冊かあるのですが、自分でも驚くほどの執念深さで本にかじりついて、その物語の世界に入り込んでしまったのは、この本(の前バージョン)が初めてでした。
友達と離れて自分一人の秘密を持つ楽しみ、トマトのおばあさんに話してもらった「こぼしさま」のちょっと恐くて不思議な話、親の都合で離されて、いつしか思い出になったはずの場所への止みがたい憧憬…。そして再訪から動き出す、見えないものの小さな影。ちょっと変わった幼稚園先生との出会いと、意外な結末。今読んでも大人びてんなあ、というお話ですが、当時の私のハートをがっちりつかんで離しませんでした。
いや、今に至るまで「おススメの本は」と聞かれると、コレと答えることが多いです。ええ、見栄坊の中高時代も、大学時代も、現在も、です。情熱が空回って、「いやそこまでは…」と退かれるのに気付いてからは、「あくまでマイ・ベストだけど」と付け加えるようになりましたが。
誰しも波長の合う合わないはあると思いますが、読んでみなけりゃわかりません。とりあえずご一読を、おススメします。
2004/03/18 22:36
ガイな名作!
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高校が松山だったので、司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」の地元ネタにウケていたら、郷里の姉が「じゃあこれも結構いけるかもよ」と教えてくれました。読んで大爆笑。吹き出しに伊予弁がつまっとる〜。秋山兄弟の笑えるほど厳しく暖かい関係。地元俳句王国じゃ下にも置かない正岡子規こと「のぼさん」の、文字どおり「のーぼー」とした不思議な持ち味。司馬さんの描いた大人たちとはまた違った趣の少年〜若者たちが、頁狭しと暴れています。江川さんというと若い男性向きの作家さん、というイメージがあったのですが、少なくともこの作品ここまでは、実にカラッとした少年やストイックな男の世界を描いていて、女子供も面白く読めます。まだ執筆途中なので個人的に楽しんでますが、この調子で最後まで描いていただければ、司馬さんは字が小さくて多くて「読めるワケねーっつーの」という中学生あたりにも、おススメできる歴史マンガの一つになるかもしれません。
実際、松山の公立図書館書庫には既巻が揃っているそうです。でも「だ〜れも借りてないみたいでキレイだったよ」だそうな。もったいない! 松山の若者〜読まんかい〜!
2003/09/24 21:22
恐るべき第二弾!
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「恐るべき」というタイトルを知人に紹介したら、「それって食べると危ないってヤツ?」と真面目に返されてしまいました。ご時世ですが、違います。むしろ「あなどれない」という意味で…。恐るべきは、読者を讃岐に誘うその吸引力でしょう。てらいのないライブのような文調は、瀬戸内地域および出身者にはたまらないのではないでしょうか。
さて、その第2弾(ちなみにネットで購入)、特筆すべきは「恐るべきロンリープラネット社」の章。知る人ぞ知る世界的な旅行ガイド発行社(たしか)ですが、筆者の知り合いの外国人が持っていた「JAPAN」のガイドブックに、なんとバッチリ! さぬきうどん、しかも麺通団がお勧めする穴場タイプの店がズラーリ、網羅されてしまっているのです。まさしく恐るべし! まんま引用されているページの細かい英字をついつい追って、いっしょに「おおーっ!」と叫んだりして。いや、冷静に考えると十年前なんですけどね。臨場感があるもので、つい…。
あと、前巻で、名前と場所だけでも、と記録された「東京に存在したさぬきうどんの灯」の店が、しぶとく生き残って登場します。首都圏在住者には嬉しいエピソードです。それとともに、やはり不安が浮かんできます。今、セルフの安いかなうどん店が街に乱立を始めていますが、「うまかった〜」という感想はまだ聞いたことがありません。ちなみに、讃岐のとなり愛媛でも、セルフのチェーン店が広がってますが、正直おいしくなかったんです。湯通しの腕がなかっただけかもしれませんが、自分の手間がかかるだけ、一般店タイプの方が面倒も間違いもないと思いました。今度チャレンジしてみようと思ってはいるのですが、もしや客の技量が問われるのでしょうか。どうせ問われるなら間違いなくウマい店に行きたいよな…と、やはり心は讃岐に向かうのでした。いつになることやら。
2003/11/04 23:49
二ノ宮的農村ライフ
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「のだめカンタービレ」で二ノ宮ワールドにはまった方には迷わずお勧め、そうでなくとも爆笑とほのぼので和ませてくれて、農業への親しみが湧いてくる作品なので、生協あたりで扱ったら大ウケしそうなアグリカルチャー・コメディ(だって生産者通信を彷佛とさせる漫画なんだもの)。
東京生まれの東京育ち、田舎暮らしに少し憧れているワコちゃんこと吉川和子は、ある日キャンプ地で理想の王子様に出会います。近郊の農家を継いでまだ2年の新米百姓・小野誠さん…。腰を傷めたおばあさんの代わりに、友人とのキャンプも調理師専門学校も放り出して、お手伝いに走りました。失敗もしたけど良い反応ももらって、毎週会いに行くようになったんですが…。いっそこのまま居座りたいワコちゃんと、そうはさせない誠さん。「本当に、私のこと好きなの?」 いやまったく両思いの二人なんですが、今イチかみ合ってないようで、結構お似合いのようで? 突っ走って「良い意味でも悪い意味でもドキドキさせてくれる」彼女と、野菜オタクで土オタク、淡白な態度で見守る彼の、農村を舞台にしたドタバタ恋物語。おばあちゃんをはじめとする外野陣がまた、みんな個性的でイイ味出してます。誠さんも実は東京生まれの東京育ちで、苦手な生き物もいて、バカにされないよう結構突っ張っているところもポイントです。意外な特技もあるんですが、それは読んでのお楽しみ。だって、最後の最後でこの設定が笑わせてくれるんだから…。
紙の本サラディナーサ 第1巻
2004/08/21 04:45
良質のジュブナイル歴史大河まんが
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河惣益巳=「ツーリング・エクスプレス」=BLの「走り」の人。そう思い込んでいた私にガツンと一発くれたのが、この作品。
大航海時代に世界を席巻した大スペイン帝国。その圧倒的な海軍力の重要な一翼を担っていたのは、フロンテーラと呼ばれる独立不覊の海の民だった…。そんな架空の存在を、華やかに鮮やかに、歴史に名だたる人物と堂々絡ませることで、「もうこれはこれで美味しいんだからOK!」と思わせてくれた名作です。
たしか日本の歴史モノを考えていた作者を、編集が中世ヨーロッパに引っ張って行ったはず。絵柄からして向いてるものね。BLどころか、女主人公を取り巻く男達という逆ハーレム状態は、もしかしてかなりヤケなのでしょうか。その割にはいい出来なんですが…。
この作品が気に入った方は、同じ作者の「風の城砦」もお勧めします。呪われた青い瞳を持つ女性が主人公です。
紙の本精霊の木
2004/06/07 02:10
復刊ばんざい!
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本業・文化人類学者の上橋菜穂子さんの文学作品には、異民族の移入によって圧迫され、文化摩擦の挙げ句に変質・消滅していく、原住民族の悲哀が底を流れています。この作品もその一つで、なんとSFです。今、地球人として少し根性を直しておかないと、遠い未来、よその星で、私達は加害者になってしまうかもしれないよ…。そんな裏メッセージを受け取ったと思うのは、私の気のせいでしょうか。文化人類学での著書「隣のアボリジニ」と併読すると、大変啓蒙されます。
お話としては、年頃の女の子が主人公で、一冊読み切りにまとまっていて、「月の森…」より明るい感じで、読みやすいです。中高生の特に女の子への上橋作品の紹介や導入に最適でしょう。
2004/05/16 18:03
2巻から必読!
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タイトル・装幀からして「面白そう」で買いましたが、正直1巻はそれほどでもありませんでした。2巻も古本屋で安くなかったら買わなかったはずです。しかし、これが読んだら凄くて、気がついたら逸実といっしょに滂沱の涙を流していました。以降3・4巻と、単なる小学生探偵ものではない、社会の一面をえぐるような鋭い内容の作品が続いています。即席少年探偵団達が解き明かしてしまう、切なかったり痛かったり、そこで終わらなかったりする、今時の子供達そして大人達の抱える問題。普通にノンフィクションだったら、手に取るのを避けたり、読む前に心の準備をしてしまうかもしれません。「謎解き」仕立てにすることで、気がついたらそんな問題に思わず踏み込んでいた…そんな感じが一杯のお話満載です。ご一読を。
2003/11/29 12:07
児童文学とサルの性生理学の絶妙な融合。一読の価値あり。
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たいへん可愛らしいカット・イラストが、表紙および本文を飾っています。「ノンとゴンが生まれたのは、ふるような星明かりの夜でした。」そんな、児童文学のような語り口です。とんとんと、山で暮らす野生のニホンザルの一生が語られる中で、同じ日に生まれたオスのゴンとメスのノンの成長の違いが、生理学の知識で彩られながら、描かれていきます。この一見何だかなと思われるコンビネーションの絶妙さは、読んでみないとわかりません。これ以前もこれ以降もない名著です。
ちなみに私は学生の時に、縁あってこの本と出会ったのですが、当時、高校の生物でも保健の授業でも性の本でも今ひとつ掴めなかった、高等動物の性的成長と生殖の仕組みが、この一冊でポンと整理されて、頭の中に収まったのを覚えています。一風変わった性教育にもよろしいのではないでしょうか。とかく我が身と同じ人間の性については、照れが出て、どこか横目で理解してしまいがちです。ニホンザルという、ヒトではないが近い、しかも同じ日本の四季の中で暮らしている生き物で説明されると、不思議にすんなり知識として理解ができる気がします。
95年に出たのは新版で、それ以前に書かれた本なのですが、今読んでも楽しい、長い寿命の本です。