森本真紀さんのレビュー一覧
投稿者:森本真紀
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誕生日の子どもたち
2003/01/29 06:57
子ども時代の無垢なる自分へのレクイエム
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自分の子ども時代を思い出すことはできても、そこに生きつづけることができるとは、だれも思わないし、また思ったとしてもほとんど不可能なことだろう。そしてもし、神さまが(いるとしたら)子ども時代に返してあげよう、といわれたとして、躊躇なく「かえりたい!」と言える人も少ないのではないだろうか。しかし中には「いいや、自分は絶対にかえりたい!」と言い切れる幸せな人もいるかもしれない。そこで、そんな人にこそおすすめしたいのがこのトルーマン・カポーティの『誕生日の子どもたち』だ。
ここに収められた六編の作品は多少の作風の違いはあるものの、どれもそんな子ども時代に由来する、人間の素の姿──無垢さ──を描いている。無垢、というとなにか無条件によいもののような響きがあるが、少なくともここで描かれている無垢な人々は、かならずしもその無垢さによって現世的に幸せに恵まれているとは言いがたい。カポーティは無垢というものが、その人間が元来もっている真実さであり、希有な魅力あふれる資質である反面、それは時にはまわりの者を傷つけ、自分自身をも壊してしまう、危険でかつ脆くはかないものだということを、これらの作品のなかであますところなく描いている。「ありのまま」が自分をこわしていくという事態を受け入れられる人間はそういない。現実を生きるために忘れていった自分の姿をこの作品の中に見た人は、その存在感、リアルな肌触りにおののきながらも惹き付けられるのだ。
村上春樹氏の翻訳ということで手に取られる方もあるかもしれないが、期待に違わず心に迫るもののある一冊だと思う。
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