リーダーさんのレビュー一覧
投稿者:リーダー
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紙の本八つ墓村 改版
2003/01/30 16:17
夜、パジャマのまま冒険に出かけたくなる
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金田一耕介ものでは最も有名な作品だろう。最も多く映画化もなされ、多くの読者が初めに手に取る横溝作品といえるのだが、実際これは金田一もの随一の異色作なのである。それは何故か。
金田一耕介の出番がとても少ないのである。金田一耕介の推理がこれほど冴えない作品もない。さすがに映画化の際には、金田一の出番も増えるようであるが、そのいずれも、「八つ墓村」自体の作品の魅力を充分に伝えきるには至らない。
それは、この作品の魅力の多くが「洞窟探検の魅力」に拠るからだ。主人公がほとんど偶然に発見する、村の地下全体を血管のように渡る洞窟には、事件に関するある秘密が隠されているが、その発見の描写などに触れるとき、読者は、幼い頃の夢想を呼び覚ます。
例えば「自分の家のどこかに地下への入り口があって、それはどこか(例えば友達の家の庭など)に繋がっている」という空想や、知らない林を発見し、初めてそこを踏みこんでみるときの何とも言えない気持ち…誰でも体験したことのある、または夢見たことのある、このドキドキ感を、八つ墓村を通して、読者は再体験することになる。
その洞窟を中心に、八つ墓村の伝説、かつて村に起こった大量殺人、因習、そして洞窟が導く恋。それらが全て、洞窟描写の魅力と共に絡み合うプロットは見事というほかない。
読者を一気に感動的なラストまで導いてしまう。
これは形を変えた冒険小説だろう。
夜、パジャマのまま冒険に出かけたくなったら是非。
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