モノさんのレビュー一覧
投稿者：モノ
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赤いくつのハンナ
2003/02/05 16:54
再生の物語
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「あたしのことぜったい忘れないってやくそくしてほしいの」とハンナは死ぬときに言う。３歳の少女にも自分が死ぬというのがわかるんだ。不思議だと思う。文字通りかどうかはわからないけど、とにかく「わかる」。「知る」とか「感じる」のほうが正確なのかな。それで忘れて欲しくないというのはきっと「あなたのなかでは生きていたい」ということなのだと思う。「生きる」というのはそういうことなのかも。「死ぬ」というのもそういうことなのかも。たしかに死は悲しいし、怖い。私もこの本を読むだけでも悲しかった。でもそれだけじゃない。そう思わせてくれた。
それとこれはただ悲しいだけの闘病記ではなくて、母親の破壊と再生の物語だった。愛する者の死を目前にしたことで一度は破壊された自己を、闘病と死後の生活のなかで再生していく。そしていつまでも愛するハンナと、ハンナの好きだった赤いくつとともに生きていく。愛する者が去っていくのは避けられないことなのかもしれない、でもずっとずっといっしょに生きることはできると思った。自分も年老いた両親など、いつかは「別れ」がくるんだろうけど、著者のように強く生きていきたい。
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