草の仮面さんのレビュー一覧
投稿者:草の仮面
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死なないで生きて 虐げられた魂の詩
2003/04/06 22:42
自分であることを許されないで生きてきた人たち…
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この詩集は、虐待を受けて育った子供たちが大人になった今、インターネットという手段を通して、初めて声をあげることができた心血の結晶である。しかもその虐待の内容は、必ずしも身体的暴力などだけではない。言葉の暴力や精神的な暴力も含まれる。
インターネットを介して知り合った8人がほぼそれぞれ口々に、何の申し合わせがあったわけでもないのに、今まで生きて来た過程のある時点で、本当の自分は死んでしまったのだと、詩の中で語っている。大人として生きている今の自分は、生ける屍、あるいはいくつもの仮面をかぶって自己をいつわった存在なのだと。
被虐待児本人が胸中を表現した初めての詩集…。詩という形であったがゆえに、手記などの形ではつづれない、深い心の中が表れている。
その驚くべき絶望の深さと、しかしその中で、「生きる」ことに真に向かい合ってきた澄んだ魂を、私はそこに見る。
同じような悩みを持つ仲間が手に取り、「ひとりではない」と知って欲しいと。そして、何も問題を感じていない子育て中の親にも手に取っていただき、自分を吟味してみて欲しい、そんな願いが込められているこの詩集は、虐待を経験していない者にも、必ずや心の琴線をゆさぶるものがあるはずだと思う。
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