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子母原 心さんのレビュー一覧

投稿者:子母原 心

3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本

紙の本デフレの経済学

2003/05/29 00:42

物価下落を止めなければ経済停滞から脱出できない。

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 デフレが止まらない。しかも、先進国の経済で実際にデフレになっているのが日本だけである。ところで1990年代の経済停滞と共にデフレも発生した。どうやらデフレには問題があるらしい。だが、どんな風に?

 本書は、経済に関心を寄せる人ならばまず読むべきである。本書には、デフレのメカニズムを解き明かし、そしてデフレが実体経済に及ぼす問題点を抉り出す。本書の第一章ー第三章がデフレの教科書的な説明である。そして第四章ー第八章がその「応用編」という構成だ。ここでは経済論壇でもホットイシューとなっている「失業問題」「資産デフレ」「不良債権処理問題」「構造改革問題」を取り上げ、それらとの日本経済との絡みを描写している。この第四章ー第八章こそ、本書のハイライトなのだ。

 まず、デフレは何をもたらすのだろうか。まずデフレが進行すると不況を伴う。その根拠の一つが「失業率と物価上昇率の間の相関関係」を表すフィリップス曲線である。現実の日本経済でもフィリップス・カーブが成立していることを示す。そして、デフレは借金の実質的負担を重くする。さらに企業の設備投資意欲を抑制し、経済停滞をもたらす。またデフレは「株価」や「地価」の下落を招いて投資意欲をそいでしまう。これらのマイナス側面の最たるものが、「不良債権処理問題」である。デフレ下ではいくら不良債権を処理しても発生が止まることがない。例え日本の銀行業界が旧態依然であった事を差し引いても、である。

 現在経済論壇でホット・トピックとなっている「不良債権処理」や「構造改革」「資産デフレ」などの諸問題は、そもそもデフレに端を発しているのだ。ということは、これらの問題を改善するには、どうしてもデフレを克服することが不可欠になる。デフレを解決するとは、マイルドなインフレの状態に持っていくことである。それには日本銀行の金融政策によって解決しなくてはならない。そこで筆者が提案しているのが「インフレ・ターゲット」を導入して、量的緩和を徹底的に進める事である。

 歴史的に見ても、現在のデフレ不況と類似性を見出せる事例がある。それが「大アメリカ大恐慌」と「昭和恐慌」だ。この2つは、実は他ならぬ金融政策によって克服されたのだ! このケースの描写も実は本書のメイン・ディッシュである。ここで指摘されている事は、金融当局の政策姿勢が根本的に変わった事、そして民間の経済主体がそれを確信し、従来の経済行動を変更したのだ。大恐慌では当時のFRB議長の交代して金融緩和のスタンスの変更、昭和恐慌ではいわゆる「高橋財政」だ。この2つの恐慌は第二次世界大戦が勃発しなければ解決しなかったという通説がいまだ根強いが、これが見当違いであることが見事に示されている。

 本書のスタンスであるインフレ目標付き量的緩和論者に対しては、「インフレ目標をあたかも魔法の杖であるかのように振りかざしている」と批判する向きもある。しかしながら金融政策を「魔法の杖であるかのように振りかざしている」論者は恐らく一人も居ない。上記の「構造改革」「不良債権処理」「資産デフレ」の根がそもそもデフレ不況に原因があるということを指摘しているのだ。それらをマイルドなインフレに持っていけば改善するはずである、と言っているだけである。

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紙の本

正しい金融政策を模索し続けた軌跡

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 2003年の2月、福井俊彦氏が日本銀行総裁に決定した。その直前まで次期総裁候補として福井氏と共に中原氏もマスメディアなどで挙がっていたことを憶えている人も多いだろう。何故名前が挙がったかといえば、かつて1998年から2002年まで日本銀行の政策審議委員を努め、その間にハト派の金融政策を一貫して主張してきたからに他ならない。デフレ克服として金融政策を重視するのならば、ハト派の中原氏が総裁候補に挙がったのも当然のことだろう。

 中原氏はかつて東亜燃料で社長まで務めた実務家であるが、一方でハーバード大学で修士号を取り、大学の教壇でオイルビジネスについて講義するなど、経済学への関心は昔から高かった人のようだ。しかも、「中原賞」という日本の若手の理論経済学者で目覚しい業績を上げた人を表彰する制度を創設するなど、単なる「学究肌」以上の才覚の持ち主であると思う。

 そのあたりのセンスが良く出ていると思ったのは第二章と第三章である。この時期は1999年の講演録で、いわゆるゼロ金利政策の真っ只中であるが(11月と12月)、ここで量的緩和とインフレーション・ターゲッティングの政策を提唱している。アカデミックな研究成果を引用し、そのメリットを説く。その叙述には全面的に信頼が出来る。
 
 さて、中原氏は速水優氏と共に日銀入りしたわけであるが、両者のスタンスは完全に分かれてしまった。この「速水日銀」の5年間では「ゼロ金利政策」や「量的緩和」「インフレ・ターゲット」などのこれまでの日銀史上に前例のない政策が議論され、そのうちの前者2つが導入されたが、本書を読むとこれら一連の政策を主張し続けたのが他ならぬ中原氏だったということが分かる。しかも、これらの政策は当初総裁や日銀幹部が強く否定的だったのに、結局は導入されているのだ。審議委員会で総裁案には常に反対票を投じていた中原氏の粘り強さの賜物だろう。
 
 少なくとも速水氏自身は在任中何一つまともな政策を論じる事が出来なかった。上に上げた在任中の打ち出された政策は、断じて速水氏の功績ではなく偏に中原氏のものである。要するに速水氏の「実績」は絶無だったのだ。それどころか「円安売国論」「中国発デレフ」「良いデフレ論」を唱えるなど、全く中央銀行総裁としての資質を疑わしめるのに十分なお粗末さだった。この点は岩田規久男『デフレの経済学』でも指摘されている(ちなみに同氏の『ゼロ金利の経済学』の併読も薦める)。

 速水日銀への評価として、次のような至極真っ当な意見がある。

 「日銀の金融政策の透明性は十分だ。議事録を読んで、一人の委員の意見を除いて、他はジャンクである事が分かった」。

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紙の本

見るべき物もない

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 「ケイザイ」とはつくづくヤッカイなものだし、勉強しようとしてもとらえどころのないムツカシイものだ。そう考える人は多い。そういう状況で、著者のような言説を吐く人というのはよっぽどヒロイックに見えるのだろう。また著者の方もそうした状況を巧みに利用して名前を売り、政策関与への道を切り開いたようだ。

 本書のイイタイコトは「ニッポン・スタンダード」を確立せよ、アングロ・サクソンと違った真っ当な資本主義を確立せよ、とこれだけです。びっくりするほど中身がない! この程度の言説ならば誰にだって出来る、典型的な「ヒョーロンカ本」だ。(もっとびっくりしたのはメディアなどで好意的な書評を寄せる人が多かった事だ。知識人ですら「ケイザイ」って難しいんですね)

 人々が経済に関してあまり知識がないことを悪用して、「インフレ・ターゲットは経済評論だ」だの「大手銀行は中小企業への貸し剥がしのイジメをするな」だのアジまがいの言説を吐く。しかし、インフレ・ターゲットは既に先進国では軒並み採用されているし、デフレ下での不良債権処理の厳格化は銀行に貸し剥がしをやれといっているも同然だ。それは大企業だろうと中小企業であろうとあおりを受けるのだ。

 何よりも当の著者が「30社リスト」だの「51社リスト」だの特定の企業をチラつかせて風評被害を誘発しかねない状況を作り出している。が、当人は到って涼しい顔である。近年の経済論壇では最悪なデマゴギストには違いない。

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