青木レフさんのレビュー一覧
投稿者:青木レフ
紙の本夕凪の街 桜の国
2005/06/04 23:51
映画化決定
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ヒロシマもの。ユーモアと狂気の紙一重。諦念と強さと。弱さとの共存と。
戦後まもなくの話の激しさと最近の話のゆるやかな話の展開と。
戦争が終わった後の戦争を描いている。異常な事態に抗する生活の力を、異常さを取り込んで何でもないことに変えていく意志の力を。
戦争なんて所詮作業だ。意志を持って「戦う」のではなく、生存の為の最適判断に支配されて(流されて)、やらされている作業に過ぎない。意志を持って「戦う」のなら堕落し弛緩した戦後の毎日にある。
39頁の鍵のシーンは79頁に繋がるのか。裸足で歩くのは下駄を盗んだ事の贖罪?黒田硫黄や小田扉みたいな昭和テイストな味もある。
ところで旭が京花ってロリコンにならんのかな。(77頁は茨城弁?)
(投射by「短歌と短剣」探検譚)
紙の本素晴らしい世界 1
2003/07/14 09:59
過酷な世界観を持たない奴は俺の敵だし
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一話完結だけど、登場人物がどこかしら繋がっている連作。
(中原俊のビデオシリーズ「欲望だけが愛を殺す」を思い出す)
過酷な世界観があり、日常の描写力(多分この人、背景とか描くの好きだ)があって、稀にぶっとんだ情景(悲惨と爽快の紙一重)で魅せる。
ただ、この作風って、連載向きなのだろうか、とも思う。読み飛ばすような速度で読めない。雑味というか、遊びがなさすぎる気もする。珠のような作品を産み出すスタイルって映画や小説では見かけるが、漫画では……残念ながらレアだ。
マークシート試験にFUCKと塗りつぶしてあったり、彼女の帰還をモミモミモミと迎えさせてみたり、細部にも注目(焦点の合っていない雪だるまとか)。
紙の本グアルディア
2004/12/27 20:32
MRSF
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久しぶりに読書が楽しかった。最終局面はアリアリの展開でつらかったが。
未来は変なことになってますよモノ。
宮崎駿「未来少年コナン」(テレビ)や山田正紀の「宝石泥棒」、バルガス・リョサの「世界終末戦争」遠藤 浩輝「EDEN」に神林長平てところか、共通項のあるのは。
なかでも「世界終末戦争」が一番近いと思った。起こり得る事は全て起こり得る、という豊饒のラテンアメリカを写実している。惹句を付けるならマジックリアリズムサイエンスフィクションか。
初っ端から伏せカードをどんどん開ていく展開が気持ちいい。
タンゴ描写あり。あとホアキンの弱さ萌え。
(投射by「短歌と短剣」探検譚)
2004/12/08 01:02
4巻138頁の武士とか
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何度も読んで最近、自分の中で評価が高まってきてる。今「ハンター×ハンター」より上。
どこまで自由に空想の羽根を伸ばせるか、という挑戦は高校生の設定からでもここまで可能なのか、と驚く。ファンタジー設定でなく、地続きからの冒険だ。
この漫画が何に似ているかと言えば「ドラクエ」である。パーティーを組むロープレの世界だ。「バカ」「普通」「変」「かっこいい」と種類の違ったキャラが「天使のようなヒロイン」を軸に組み合う妙がキモ。読者が選ぶ好みのキャラを用意している、という事だ。
「パーティー」「魔法」「運命」が物語の骨格なのだが、伏線が非常に長く張られているのが、連載漫画には珍しく ブレないストーリーが最初にありき、の証明。(こんな長い伏線は「気分はグルービー」以来) 背表紙も話の決着点というか、本来どういう話なのかを最初から示唆していることに最近気付いた。
長期シリーズだが、名前だけ出て登場しないヒロインの祖母(12巻141頁)がいる等まだ余力があることを窺える。
難を言えば「キャラが殴られる程盛り上がる」のが少しワンパターン。
「伊賀のカバ丸」のような少女漫画テイストがある気もするのだが……。
(放射byガイガーカウンタンカ)
2004/09/28 10:33
BUMPOFCHICKENのように
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松岡圭祐は前身のアヤしさ(深夜番組のエロ催眠術師)、鼻につく自己顕示欲、上滑りの万歳三唱のようなエンディング表現など突っ込みどころが多い作家だが、彼の著作を読み「つまらない」と思ったことはない。(全著作は読んでないけど)
それどころか時たま見せる既存の作家と違うアプローチには注目してる。(「水の通う回路」は不思議な小説だった)いつも見せる奇妙な希望も。
本書はバンプオブチキンのように自己言及的だ。マジシャンである事について深く内底まで降りて書き出している。マジシャン小説のハイエンド、マジシャン文学。(森 博嗣「幻惑の死と使途」もオススメ)
松岡圭祐暫定ベスト。
紙の本ラッシュライフ
2004/09/15 03:15
神は内臓か蚊
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「マグノリア」(←「パルプフィクション」や「スナッチ」ではなく)を思い出す多重進行型。11人(神・犬含む)の主要人物が五つの舞台で、プレイしリンクしステッチしリレーする。
俺の中の無職小説のベストスリーに入れても良いと思った。(他二つは村上春樹「ねじまき鳥クロニカル」とジョージ・オーウェル「パリ・ロンドン放浪記」)
文体は軽いが泣かす。寓話っぽい所もあるので、細かいリアリティは期待しないこと。
(放射byガイガーカウンタンカ)
2003/07/23 17:41
ブギポのリンクは笑わない、でお願いします
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泣けるー。笑かすー。という事で今一番、各国語に訳したいシリーズ。
何しろ先端すぎてほとんど日本語が間違っている。
バルガス・リョサの「魔術的リアリズム」が混乱時制を用いたように。
ネットのテキスト系の文体と同期している、と言うも可。
「ラピュタ」(少女を拾う。但し○○衣)で始まり、「ブギーポップ」(僕の半身と友達になってくれたまえ)で繋げ、「宴の始末」(ラスボス登場)で終わる話。
ラストの行動の意味が最初わからなかったが、こういうコトだろう。
「自分と会わない人は、自分の物語から出た人、つまり死んだ人なのだ」
表紙カバーはリバーシブル。
紙の本リバーズ・エッジ
2003/06/05 01:43
鳴らない目覚まし時計
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岡崎京子ベスト。
real for body.sex for lie.飛び跳ねる殺意。冗談にする作法。our very short touch.描ける力。
ぼくらのsleeping beauty.。
紙の本蛍
2005/07/12 11:08
勇者は呪文を唱えた「パ
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バチ当たり大学生ミステリ。「十角館の殺人」リスペクトな感じ。
何か不自然なアレだな、と思ってたらそれが主トリックでした。まあ、わからなかったけど。
「えっ、その読者へのひっかけは何の意味があるの?」というのもあったけど、繰り返し読むには楽しいかも。パズル的小説。
事件の陰惨さと人間関係の微温さのギャップが気持ち悪いがオチは好き。
P.S. 長崎方面から取った人名は松浦亜弥が最初にありき、か?
(投射by「短歌と短剣」探検譚)
2004/10/21 13:47
リーマン予想とはサラリーマンになるんだろうなあ、という意味ではない
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西尾維新書く「きみとぼくの壊れた世界」の主人公が尊敬するのがエルデシュなので読んでみた。
放浪の数学者。ある時期から職なく家なく生涯独身で、講演から講演へ学会から学会へ数学者の家から数学者の家へスーツケース一つで跳び回った天才。死ぬまで(83才)数学の神が頭に宿った その世界では稀有の生涯現役。
本書ではエルデシュを中心に数学者達の異様で美しい世界を紹介している。数式で置いてきぼりをくわない数学関係の本は初めて。エピソードを細切れにして不連続に並べているので飽きが来ない。
例えば有名なフェルマーの定理は、彼の死後その蔵書の片隅に「この定理について証明があるが、この本の余白は狭いので書けない」
という意味の走り書きを遺族が発見してしまった事に始まる。(以後350年、どれだけの数学者が絶望したままこの世を去ったことか。幸い最近、証明がなされたが、別の方法で証明ができるのではという予想もある)
またインドの天才数学者は「これはこうだ」という事は彼自身わかるのだが、天才すぎて人に伝えられない、つまり「証明」ができず、イギリスの老数学者が必死にコミュニケーションし、人の言葉に直し、証明していった。インドの天才数学者の死後、彼のノートが発見されたが証明なしの公式がてんこもりで、それってフェルマー以上の大迷惑ではないだろうか。迷惑ってことないか。
例えば将来宇宙人と遭遇した時、どちらが優れているか知るには ひとつ戦争してもわかるかもしれないが、どちらの知る素数が大きいかで競うのが簡単ではないか。人類がその数を言ったら、宇宙人はこのnに数を入力すればいいのさ、と公式を提示されるかもしれないが。
宇宙人と遭遇しなければ数学者も有用性を発揮しない訳ではなく、原爆開発の時も「私は堕落して今では小数点の入った数字など扱っている。最大の屈辱だ!」と嘆きながらも数学者はその有用性を示した。
別に役に立たなくとも構わないというスタンスの異能者達なのだが。
エルディシュが片目の手術のドナー待ちをしてる時、偉大な人物なので順番をすっ飛ばしたエピソードは医療の平等って何だっけと少し考えさせられた。
(放射byガイガーカウンタンカ)
紙の本撲殺天使ドクロちゃん
2005/06/28 04:27
オチなんて飾りですよ、エラい人にはそれがわからんのです
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アニメイトで買って、近くのてんやで早速読み始めたのだが、21頁で挫折した。外で読むには凶悪すぎる。
変なのと同居する、という「ドラえもん」に端を発する「押し入れモノ」。「押し入れモノ」に区分される作品はいろいろあるが、ここまで意図的にドラえもんドラえもんしてるのは稀有。同時に軽SFの火浦功の正統な後継者でもあるテンポ良い文体。
設定と文体で突っ走っていて、各話のオチが少し弱い。
出オチ(設定のインパクト勝負)感が強いので続刊は買っていない。
(投射by「短歌と短剣」探検譚)
紙の本桜姫
2005/06/23 02:42
静かな語り口が悪意より恐ろしいものを
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純文学に一番近いミステリ。ただミステリとして粗いか。
梨園もの。桜の下は死屍累々。正視できない真実から被保護者を守ろうとする者すら拠って立つ地は汚い。しかも自覚してない。つまり皆汚れてるってコトか。でも意志はある。姫。
読み返して一章の素晴らしさに気付く。
(投射by「短歌と短剣」探検譚)
紙の本バンコク下町暮らし
2005/05/14 23:59
遅刻ってなに?
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フリーライターの著者が家族をタイに連れて生活する。タイバーツ暴落の前の頃。
面白いエピソードを抜き出して紹介したいが、全部紹介したいカンジ。とりあえず、胸の前で手を合わせる礼は「ワイ」と言うそうだ。タイの幼稚園事情が一番詳しく載っている本だと思う。
(投射by「短歌と短剣」探検譚)
2004/11/25 00:37
プロローグが終わる
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ルネッサンス期イタリアが舞台の伝奇漫画。
歴史上の人物も入り乱れてオカルト能力炸裂!
(メディチ家・ザビエル・ミケランジェロ・マキャベリ等)
ローマ滅亡の予言を巡り、「30枚の銀貨」と「7つの大罪者」が争う。
というのが大筋らしいが、まだ先触れの段階らしく「銀貨」のそれぞれはじめ、全員策動している。
ルネッサンスと言えど未明で、どちらかと言うと暗い中世の雰囲気。
膨大なキャラが出てくるが、主人公の二人は他のキャラとは没交渉で、「主人公の二人」と「それ以外のキャラ」の二頭立てのストーリーだった。二人は世の中でひっそり暮らしていこうとしてるので、そのひっそり感が少し淋しく、「銀貨」たちのにぎやかさに食われていたのだが、4巻で前面に出てきている。(世間一般で言うと足を踏み外しかけている)また遂に「銀貨」たちも主人公たちのいる地に合流し、次巻から本編開始といったところ。
原作者の冲方 丁は小説(日本SF大賞受賞「マルドゥック・スクランブル」)やアニメ脚本、ゲーム企画製作にも携わる多面な人。
ピルグリム・イェーガー ホームページ
(放射byガイガーカウンタンカ)
紙の本うつくしい子ども
2004/10/08 22:44
アンサーノベルはgoogleで6件(04/10/8)
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本書は「酒鬼薔薇」事件に対するアンサーノベル。
1.事件の関連者に対して本書自体が「マスコミの暴力」として働くのでないか。
2.事件を物語(虚構)に回収してしまっていいのか。
以上の事を思わないでもないが、ガッツのある書き手として評価する。上記の二点の批判は作者の誠実さで拮抗できると信じて書いたのだろうから。
主人公の揺れない鈍いような心が逆に読んでてドキドキした。
(上遠野浩平が「海賊島事件」でオサマ・ビン・ラディンのいるアフガンにアメリカが侵略した事に対するアンサーノベルを書いていて、これもガッツがある)
(放射byガイガーカウンタンカ)