朝霧さんのレビュー一覧
投稿者:朝霧
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紙の本宇宙生命図鑑
2003/07/03 12:18
図鑑はいつ完成するのだろう
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異星人研究に現地の惑星へと赴く学芸員に、宇宙生命図鑑を携えた謎の二人組が絡んで、さらには、現住種族と地球移民の軋轢や、古代文明、現住種族そのものの謎が絡まりあって、と正統派SF。
正統派なんだけれども……。
なんでこうも倒錯的な話なのか(ほめ言葉です)。
情緒はとても感じられて、一気に読み込める作品なのだが、難を言えば、もう少し、異星種族の生態をかきこむページ数が必要だったのではないか、というか、読みたかったなあ、という感慨を持つ。
架空生物の創造という意味では、鼻行類のような博物学的アプローチのほうが、たやすいのかもしれなくて、こういう物語形式では、書き込み始めると、どこまでも続いてしまう危険性があるのは確かだ。
物語をからめてこそ描けるものもあるので、それがでていればいいのでしょう。そういう意味では、この物語は成功している。
まずは話自体が続いているようなので、続卷を期待する。成功が大成功につながるように。
紙の本レトリック感覚
2003/07/01 18:36
思考を生みだす言葉
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「あとにはただ、ことばばかりが残ったのだろうか」。
人間は、思考というものを言葉にせずにはいられないらしい。
感情や感覚や、そのほか、言葉にならないものを、なんとかして言葉におとしこむ。そんなことをいつもしているらしい。
ただ、そういった考え自体が、論文などの文章にあるものであることを考えると、どうも信用しきるのは、危ういともいえる。
実際、思考を言葉に落とし込むことは、「表現しきれないこと」を取り逃す可能性があるのだから。
この世の中は、けして、言葉にできるものだけで成り立ってはいない。
その無限の事象を、有限の言葉で表現しようとするとき、生じるのがレトリックなのだ、と作者はいう。
上にあげたのは、この本の最後の一文だが、これだけを見ても、この作者本人の、言語感覚のすばらしさが窺い知れるだろう。
半月ほども書けて読んだが、それだけ中身の濃い本である。
文章に、楽しく酔える本だ。文庫でこの値段はちょっと高いけれど、それ以上の価値はある本。
物事を考えるのが好きな人にはおすすめな本だ。
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