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松尾順さんのレビュー一覧

投稿者:松尾順

38 件中 1 件~ 15 件を表示

マッキンゼーコンサルタントによる最新マーケティング論文集

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書は、原題が「The Mckinsey Anthology」とあるように、世界各地のMckinseyのコンサルタントらによって執筆された論文集である。「マーケティング」を中心テーマとして全部で13篇の論文が収められている。
「マーケティング」が中心テーマとはいえ、各論文が掘り下げている内容は多岐に渡っている。例えば、今の企業にとって最重要課題である、「CRM戦略」の成功の秘訣や「ソリューションビジネス」のマネジメント、また、「マーケティングの新しいP」というタイトルで展開される、ビジネスパートナーシップについての論文など、読まずにはいられないタイトルが並ぶ。
 また、経営コンサルタントならではの、「マーケティング組織の建て直し」(執筆者は「更年期障害」の克服と呼ぶ)についてのものや、マーケティング機能や職能を組織内でどのように統合すべきか、といった論文も収録されており、単にマーケティング担当者だけでなく、経営層にも一読の価値ありである。
 さて、マーケティングを日々実践している1マーケターである私が、特にお勧めの論文を挙げるとしたら、「戦略の選択:経験の浅い顧客と経験豊富な顧客」と「市場調査の発展四段階」の2つを推したい。
「戦略の選択」については、商品の利用経験を重ねる中で、「経験の浅い顧客」が「経験の豊富な顧客」へと進化し、商品に求めるものも変化していくという、指摘されてみれば「なるほど!」と思う視点から、どのようにマーケティング戦略を対応させていくのかについて論じており、テーマの斬新さを感じた。
「市場調査」については、市場調査の役割が、限定されたマーケティング領域に止まらず、もっと幅広い領域までカバーすることが今後期待されていると説き、その発展段階を4つに分けて示している。市場調査担当者にとって、本論文に示された発展形は、かなり高いハードルかも知れないが、同時に挑戦しがいのある課題でもあるだろう。 (bk1ブックナビゲーター:松尾順/Eビジネスプロデューサー 2002.06.27)

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サービスのクオリティを高めるための施策について、現場に則した実践的な提案が満載

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 私は、本書をむさぼるように読んでしまった。商品ではなく、スキルや経験・知識を売る職種、いわゆるコンサルティング系の仕事に従事する私にとって、まさに求めていた内容であったからだ。

 本書の特徴は、「コンサルティング会社(会計士や弁護士など、類似する職種を含む)を組織として運営するノウハウ」が書かれている点にある。個人としての「コンサルタントになる方法」の本は他にもたくさんある。しかし、それぞれが高度なスキルを持ち、自立心やプライドの高いコンサルタントたちを組織として束ねた場合に、どのような管理が望ましいのかについて触れているものは、本書以外ではほとんどない。

 例えば、大手コンサルティング会社に典型的に見られる組織構造、すなわち「パートナー」「マネージャー」「アソシエイト」という3階層をどのように構成し、またどのような業務を分担したら組織全体としての生産性が向上するのか、あるいはコストが低減できるのか、といった点について具体的な数値に基づく精緻な分析と施策を提示している。

 また、既存クライアントからさらなる収益を得たり、新規のクライアントを獲得するための方法、すなわち、コンサルティングを“マーケティング”するノウハウや、コンサルティングという「サービス」のクオリティを高めるための施策についても、現場に則した実践的な提案が満載である。

 さらに、コンサルティング会社の組織運営で最も頭を悩ませる問題、つまり、コンサルタント個別の業績評価や報酬制度、教育やキャリア形成といった点についても多くのページが割かれている。

 言うまでもなく、本書の内容は、コンサルティング会社関係者に最もフィットするものである。しかし、企業の競争力の源泉が「モノ」ではなく、「サービス」すなわち「社員のスキルや経験・知識」へと移行しつつある現在、幅広い業種・業態の企業に大いに参考になる内容が含まれていると断言できる。(bk1ブックナビゲーター:松尾順/Eビジネスプロデューサー)

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紙の本完全なる経営

2002/02/01 18:15

マズローの理論と現実を対比させることができるようになっている

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 本書は、「自己実現の欲求」で知られたアブラハム・マズローが「経営」について語った唯一の本だ。

 マズローによれば、経営理論は二種類の成果に焦点を当てたものだという。ひとつは生産性、品質、利益向上といった意味での成果、もうひとつは、労働者の心理的健康や自己実現を目指しての成長、また、労働者の安全・所属・愛情・自尊欲求の充足といった人的成果である。心理学者であるマズローは、言うまでもなく、経営の「人的成果」に主軸を置き、多面的で深い洞察を示してくれている。

 実は、本書は1965年に出版され、当時はほとんど売れずに絶版となっていたものが再版されたものである。おそらく、当時としてはあまりに先を行き過ぎていたのであろう。カネでもモノでもなく、「ヒト」が企業の競争力を決める最大の経営資源である、という認識が常識となった21世紀の今こそ、彼の主張が心に響く。

 例えば、彼のリーダーシップ論。曰く、「リーダーは、より健康な精神の持ち主であり、他人に命令を下したり牛耳ったりすることにはまったく関心がない。…一般にリーダーは他の人びとから選ばれる必要があり、自分は責任を負っているのだという自覚、あるいは自分が集団のために尽くすのであって、その逆ではないという意識をぜひとももたねばならない…」

 企業組織に属している人間から見ると、しょせん理想論だという印象を持つかも知れない。しかし、現実はどうであれ、リーダーのあるべき姿を的確に描写しているのではないだろうか。

 本書では再版に当たって、様々な企業の経営者や大学教授にインタビューを行い、マズローの主張に対する彼らの意見や、現実の企業運営の苦労話などをコラムとして収録することで、マズローの理論と現実を対比させることができるようになっている。

 経営について、読むためではなく考えるための本として最高に面白い。特に、心理学大好き人間にはこたえられない内容である。(bk1ブックナビゲーター:松尾順/Eビジネスプロデューサー)

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「あるべき姿」と「現状」とのギャップを発見するためのノウハウ

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 タイトルに含まれる言葉が、「問題解決」ではなく「問題発見」であることに気付くと、もうそれだけで深く考えさせられてしまう方が多いのではないだろうか?

 解決策を絞り出すためにさんざん議論したのに、実は問題は別のところにあり、それらの解決策はまるで無意味なものだった、ということを誰もが一度は経験しているだろう。つまり、解決すべき“正しい”問題を発見する前に、その解決法を考えるのは間違っているのである。

 本書では、これまであまり焦点が当てられてこなかった、「当を得た問題」を発見するノウハウを提供している。問題とは、「あるべき姿」と「現状」とのギャップなのだが、著者は、的確な問題発見ができない理由として下記の4点を指摘し、マツダ、日産、ダイエー、イトーヨーカー堂といった企業を例に挙げながら詳しく解説している。

1:問題を定義する前提となる「あるべき姿」を的確に描けない
2:「現状」に認識・分析力が低く、正確な把握ができない
3:「ギャップ」の構造を解明して、問題の本質を具体化・優先順位づけすることができない
4:実行可能な「解決策」から逆順で短絡的に問題をとらえるために拡がりを見失う。

 さらに、あるべき姿を構想するためのフレームワーク(枠組み)として、4つのPを紹介し、その活用法を指南する。4つのPとは、Purpose(目的軸)、Position(立場軸)、Perspective(空間軸)、Period(時間軸)である。本書では、このフレームワークを使って、生命保険営業や百貨店のあるべき姿を明確に描き出している。

 本書の後半部分では、発見された問題を整理するための様々な分析テクニックを解説している。「トレンド分析」「相関分析」「シェア分析」などである。これらの分析手法は格段目新しいものではないが、「あるべき姿」をとことん追求した後で初めて有用になるテクニックであることを認識しておかなければならない。(bk1ブックナビゲーター:松尾順/Eビジネスプロデューサー)

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ナレッジマネジメントを学ぶ方には必読書

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 本書で最も重要なメッセージは、第一章冒頭に記されている。"マネジメントにおける知識の蓄積は静かな水たまりではなく、川の流れのように常に新しいアイデアによって補充され、また企業革新の絶え間ない源を構成する泉(wellspring)のようなものである。(中略)今日の企業にとって知識は、原材料であり、製品なのである"

 本書は、このような「知識」の構築方法について体系化したものである。その拠って立つ理論は極めて明快だ。著者は、競争優位を生み出す「コア・ケイパビリティ」は、4つの主な学習活動によって生み出されると言う。すなわち、「問題解決の共有」、「新しい技術やツールの統合」「継続的な公式・非公式の実験」、「市場からの知識の導入」である。

 しかし、上記の4つの学習活動は、企業の強みである「コア・ケイパビリティ」だけでなく、「コア・リジディティ」(硬直性)をも生み出す。コア・リジディティの増殖は、知識の流れが淀んでいる状態を意味する。環境変化への対応が遅れ、コア・ケイパビリティが弱みに転じるのである。これは、時代遅れとなった技術・考え方に固執したために、結局は倒産、あるいは吸収合併の憂き目にあった多くの企業を見れば、いかに陥りやすい罠なのかが、改めて思い起こされる。

 「市場からの知識の導入」についても、核心を突いた、興味深い議論が展開されている。既に確立された既存製品の拡張においては、伝統的な市場調査によって外部知識を導入することが有効であるが、新しい技術に基づく新製品開発の場合には、「共感的手法」というテクニックが有効であるという。これは、明確にされていないユーザーのニーズの深い(共感的な)理解に基づいた、製品やサービスのコンセプトの創造を行うことである。

 知識創造のための包括的な理論書であり、かつ実践的な内容も含む本書は、ナレッジマネジメントを学ぶ方には必読書であろう。 (bk1ブックナビゲーター:松尾順/Eビジネスプロデューサー 2001.10.11)

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「自立性の高い組織」「仕事の流動化」など、組織管理やキャリアのあり方について様々なヒントが得られる

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 本書は、「人と組織のマネジメント」におけるイノベーションの枠組みを提示したものである。

 第1章では、この枠組みの根本にある最大のテーマである、「自立性の高い組織づくり」の重要性が提示される。自立性の高い組織とは、仕事の第一線に位置する小単位の組織、あるいは個人のレベルにおいて、何をなすべきかという問題発見や問題設定(What)を自らつくり出し、生み出し続けることができる組織のことだ。

 従来型のピラミッド組織では、経営者層が「What」を考え、それをどうやるのかという「How」を管理者層が考え、部下が実行「Do」していた。しかし、このようなやり方では、現在の経営環境には適合できない。顧客が多くの選択肢と情報を持ち、また変化のスピードが速い状況で競争に打ち勝つためには、第一線での迅速で自立的な判断が求められるからである。

 第2章以降では、この「自立性の高い組織」をベースとして、硬直化した組織階層の序列を流動化させるための考え方や組織管理手法、What構築能力の高いリーダーシップを開発する方法、仕事へのコミットメントを強化する動機付けの手法などへと議論が展開される。

 また本書では、「雇用の流動化」、その原因である「仕事の流動化」の現状を踏まえ、社員は、雇用される力(エンプロイヤビリティ)を向上するため、自立的にキャリアづくりやスキルアップを図り、企業はそういった社員を積極的に支援するという、個人主導でのキャリアマネジメントへと移行すべきことを説く。

 さらに、企業経営の今後の方向性として「知的資本経営」という概念を筆者は提唱する。「知的資本経営」において人材は、単なる労働力でも、経営資源でもない、「知恵」を投資する投資家であると言う。

 今後の望ましい組織管理やキャリアのあり方について様々なヒントを与えてくれる本書は、人事担当者、経営者のみならず、すべてのビジネスパーソンにお勧めしたい。 (bk1ブックナビゲーター:松尾順/Eビジネスプロデューサー 2001.10.03)

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バランスト・スコアカードの実践性と重要性を明らかにした一冊

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 「バランスト・スコアカード」は、近年注目を集めてきた経営管理手法である。ただ、これまでこのツールについて書かれた文献を読んだ限りでは、理論としては美しいのだが、果たして実践可能なものなのか、また、例えばTQCや目標管理といった、日本企業が長年にわたって採用してきた経営管理手法とどう違うのか、といった疑問がなかなか払拭できなかったように思う。

 しかし、本書はまさにそういった疑問を一掃してくれる内容である。まず、第1、2章において、バランスト・スコアカードの特徴だけを示すのではなく、目標管理や方針管理との対比において、この新しいツールの位置付けや意義を明確にしている。また、モービルやモトローラなどの米国企業における採用事例、日本企業ではリコーや宝酒造等での採用事例を通じて、どのような手順を踏めば当ツールを実践に落とし込むことができるのか、を理解することが可能だ。
 
 本書によれば、バランスト・スコアカードとは、経営に降りかかる霧を振り払うワイパーのようなものである。これまでの経営はバックミラーをだけを見て運転してきた。バックミラーとは財務的な数値のことである。本書を読むことで、将来を展望する戦略経営を行うためには、バランスト・スコアカードが基本に置く4つの視点のうち、「財務の視点」以外の3つの視点、すなわち、「プロセスの視点」、「顧客の視点」、「学習・成長の視点」の重要性が十分に理解できるだろう。

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転職マニュアルの大横綱、完璧な内容で満を持しての登場!

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 転職マニア(そんな人いるの?)垂涎の転職マニュアル邦訳版が、ようやく登場だ! 並みいる既存の転職本を蹴散らし、頂点に立つまでにそんなに時間はかからないだろう。実際、転職を重ね、数多くの転職本を読み漁った私が見ても、本書は完璧!と言える充実した内容である。

 転職をスキルアップ・キャリアアップの機会と捉え、積極的に自分を売り込むことが常識の米国で、初版が出たのが1970年。それ以来、本書は、10以上の言語に翻訳された世界的なベストセラーである。これまで邦訳版が出版されなかったのは、それだけ「転職」が、日本では日常的ではなかったということの裏づけだろうか。しかし、日本でも、ようやく転職が肯定的に語られるようになった。本書の内容は極めて実践的であるだけに、満を持しての登場といったところである。

 さて、本書が、他の転職マニュアルと「格」の違いを感じさせるのは、単なるハウツーの解説ではない点だ。もちろん、ハウツーの部分も驚くほど詳細である。本書に書いてある通りにやれば、小学生でさえ転職成功間違いなしだろう(笑)。冗談はさておき、本書の狙いは、生計を立てることだけが目的の、単なるマッチングゲーム的職探しではない。人生の「天職」を求める、あるいは夢の仕事を見つけるための、「人生を変える職探し」に成功することである。本書では、そんな視点から、様々な職探しのノウハウが実に丁寧に書かれている。

 本書によると、転職希望者の大多数が行う、求人広告を見て、目に留まった企業に履歴書・職務経歴書を送るというやり方は、それほど効果的な方法ではないそうだ。時の立つのを忘れるほど熱中できる仕事に就くには、言い換えると、あなたの魂と身体、心と知性が求める「夢の仕事」を見つけるためには、もっと効果的なやり方がある。本書にはそれが書かれている。成功率は86%だそうだ。職探しに苦労しているアナタ、この本買わなくて大丈夫ですか?

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成功を収めた企業の詳細な事例紹介を通じて、自社の価値観に忠実に従うことの意味を問う

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 本書で著者が意図したことは、ただ一点だけだと言えるだろう。それは、この本を手にした読者それぞれが、「すべての社員の資質やスキルを大きく花開かせる力は、自社の価値観——人材を引き付け、高いモチベーションと熱意を引き出すことのできる価値観——に忠実に従うことである」という真実を詳細な事例紹介を通じて読み取ってもらうことである。

 本書には、独特の経営で成功を収めた企業として有名な「サウスウエスト航空」「シスコシステムズ」を含む、8社を中心とする様々な事例研究が収められている。内容は、人材採用・評価、組織運営、リーダーシップ等についてだが、各社とも掘り下げ方が深く、生々しい。成功事例だけでなく、失敗事例についても多くの頁が割かれている。

 ただし他の経営書に見られるような、戦略上の明快なコンセプトや具体的な解決策が提示されているわけではない。戦略の立案力以上に重要なのは戦略の実行力であるが、その実行力を担う個々の社員の秘めた価値を解き放つことは、極めて難しいからだ。明快なコンセプトや解決案を示せば済むものでもないということだろう。

 本書を読み進むと、様々な疑問にぶつかる。なぜ、戦略的には抜きん出たところがあるとは思えない「サウスウエスト航空」が、競争の激しい米国航空業界で勝ち残ってきたのか? あるいは、買収を繰り返した「シスコシステムズ」が、なぜ、一体感のある組織運営を行うことができているのか? また、閉鎖されたGM(ジェネラル・モーターズ)のフリーモント工場を再建してスタートした、NUMMI(ニュー・ユナイテッド・モーター・マニュファクチャリング・インク)の工場は、建物も従業員も労働組合も元通りなのに、なぜ、高い品質と生産性を誇る自動車工場に変貌できたのか?

 ミステリーを解くような感覚で深く読みこみ、上記のような疑問に対する自分なりの答えを見つけてみて欲しい。面白さが倍増すること間違いない。 (bk1ブックナビゲーター:松尾順/Eビジネスプロデューサー)

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紙の本本業再強化の戦略

2002/03/12 22:15

新規事業の前に、コア事業(本業)に再度フォーカスを当てる視点を、他社事例から学ぼう

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 企業が業績不振に陥る原因は様々だ。よく見られるのが、本業とはほとんど関連性のない新規事業に乗り出したはいいが、経験やノウハウのなさから収益を上げることができず、企業全体の業績を悪化させてしまうケースだ。よく考えてみれば、なぜそんな無謀な行動を企業は取るのか不思議に思えるのだが、そんな行動の背景には本業の行き詰まり感がある。本業にはもはや成長の余地はない、と考えているからこその新規事業なのだ。

 しかし、本書の著者は逆説的な指摘を行う。「自社に潜在する事業成長や利益創出の源泉を見つけ出すためのカギは、既存のコア事業から離れることではなく、新たな視点と想像力を持って、コア事業に再度フォーカスすることである。」

 例えば、こんなデータが示されている。企業価値を増やし続け、かつ過去10年超にわたって5.5%以上の売上高成長率を達成し続けている企業の約8割は、マーケットリーダーの地位にあるコア事業をひとつ持っている。一方、複数の多様化した事業を抱える、いわゆるコングロマリットは5%しかない、という調査結果だ。つまり、大半の企業が、コア事業にフォーカスし続けることによって、高い成長率を維持しているというのである。

 本書は、200件のケーススタディ、約100人のシニアエグゼクティブとのインタビューやディスカッション結果、各種データベース、論文等、膨大なデータを元にしての実証研究結果から、企業成長をもたらす、本業(本書では「コア事業」)の再強化策や周辺事業進出の方法論などについて解説したものである。前述したような、コア事業以外の分野に成長機会を求めて失敗する企業の事例が、本書には多数収められている。もちろん、インターネットのような技術革新が業界構造を一変させつつある中で、これまでのやり方をそのまま続けられるとは限らない。そこで、コア事業のあり方を再定義することによって企業環境変化への適応を図る方法にも触れている。(bk1ブックナビゲーター:松尾順/Eビジネスプロデューサー)

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実に示唆に富んでいる二人の言葉は、ビジネスパーソンにも感銘を与える

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 将棋の天才、永世名人の谷川浩司氏と、「ギャンブルの社会学」というユニークな講座を持つ、大阪商業大学教授、谷岡一郎氏の対談録。全文話し言葉で書かれた対談録だからさくっと読めるが、かたや将棋の世界で頂点を極めた勝負師、一方、谷岡氏は、コントラクトブリッジを始め、さまざまなギャンブルを実践・研究する第一人者である。それぞれが語る言葉は、実に示唆に富んでいる。

 谷岡氏によると、実力が伯仲している勝負の場合、「ツキ」が勝敗を決することが多いが、これは確率論で説明できることであるという。本書では、10円玉を投げ上げて表か裏が出る確率はフィフティ・フィフティであるにも関わらず、実際には繰り返し裏が出たり、表が出つづける時期があることを例に上げている。長く続けていると、確率的には5分5分に近づいていくが、ある時期だけを取り出してみると、ずっと同じ現象が続くため、「ツキ」があるように思えてしまう。

 だから、逆に言えば、ある時期に、勝負事で連敗が続いたのだとしても、「ツキ」がないとして落ち込む必要はないと言う。そして、「実力」と「ツキ」の関係についての谷川氏からの質問に対して、「勝てる時はいつ来るか分からないわけですから、そのときにいつでも自分の実力を出せる状態にしておけば良いわけです。つまり、実力を維持しているということがいちばん大切ですね」と谷岡氏は答える。

 さて、谷岡氏がたたみこむように投げかける、対局中の打ち手の読み方や「光速の寄せ」の秘密についての質問への谷川氏の回答は圧巻である。天才の思考法のすごさを垣間見ることができる。「ある局面をパッと見たときに、直感的に印象を得るんですね。“好き”とか“嫌い”とか、“美しい”とか“美しくない”とか…」中盤戦ではこういった感覚的な部分で次の打ち手を読んでいくという。

 普段の仕事にも参考になるような考え方が語られる本書は、将棋やギャンブル好きでなくとも楽しめる本である。(bk1ブックナビゲーター:松尾順/Eビジネスプロデューサー)

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テクノロジー主導型の製品を販売する企業にとって、バイブル中のバイブルと呼べる本であり、必読書だ。

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 タイトルの「キャズム」とは、「深い溝」の意味である。キャズムは、少数のビジョナリー(進歩派)で構成される初期市場と、多数の実利主義者で構成されるメインストリーム市場との間にパックリと口を開けて待ち受けているという。

 本書の著者、ジェフリ・ムーア氏は、「テクノロジー・ライフサイクル」という切り口で、ハイテク製品のマーケティングについて明快な理論を展開する。「テクノロジー・ライフサイクル」とは、一般のマーケティング本でも紹介されることの多い、購買者の分類のことだ。

 つまり、まっ先に新製品に飛びつく、「イノベータ−」、「アーリー・アドプター」、次いで、単にその新製品の目新しさだけでなく、ある程度の利用条件が整備されたところで購入に踏み切る「アーリー・マジョリティ」、その後に追随する「レイト・マジョリティ」、決して新製品に飛びつこうとしない保守的な「ラガード」(無関心層)の5つのタイプである。

 ハイテク製品は革新的な技術を武器に市場にデビューすることが多いが、一部のテクノロジーオタクに熱狂的な歓迎を受けただけではまだ成功ではない。前述したビジョナリー、 すなわちイノベーターやアーリー・アドプターと、アーリー・マジョリティとの間の「キャズム」を乗り越え、メインストリーム市場で受け入れられなければ市場を制覇することはできないという。

 本書では、この「キャズム」を乗り越えるための詳細な地図を示してくれる。また、第二次世界大戦の転機となった「ノルマンディー上陸作戦」になぞらえ、どのように攻めたらメインストリーム市場を攻略できるのかについて豊富な事例を通じて解説する。

 思えば、日米の多くのインターネット関連のベンチャー企業が、この「キャズム」を意識せずにマーケティングを展開し、死屍累々の山を築いたのではないだろうか。テクノロジー主導型の製品を販売する企業にとって、本書はバイブル中のバイブルと呼べる本であり、必読書だ。(bk1ブックナビゲーター:松尾順/Eビジネスプロデューサー)

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ナレッジマネジメントをこれから学びたいという方向けの入門書の一つとして活用できる

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 本書は、ナレッジマネジメントについて幅広い視点から解説したものである。

 「ナレッジマネジメントとは何か」という質問に対する答えとして、本書では、マネジメントの歴史に遡る。フレデリック・テイラーの「科学的管理法」から始まり、ヘンリー・フォードの「大量生産の効率化」、エドワーズ・デミングの「品質管理」、ピーター・ドラッカーの「戦略的経営」と発展する中で、ナレッジマネジメントがどのように理論形成されてきたかを追う。そして、ナレッジマネジメントとは、結局のところ「経営品質向上のための手法」と本書では定義づける。

 次いで、本書はナレッジマネジメントの効果に焦点を当てる。本書によれば、ナレッジマネジメントには「量的な効果」と「質的な効果」があるという。
 「量的な効果」とは、スピードの向上、コストの削減、品質の向上であり、「質的な効果」とは、総合的な「企業力」が高まることである。つまり、経営品質向上を通じて企業力が高まり、それは消費者や顧客から見ると、「企業価値の向上」を意味するとしている。さらに、ナレッジマネジメント導入のポイントについて、組織の作り方や、情報システムの構築について簡潔に触れている。

 ナレッジマネジメントの解説に続き、本書の約半分のボリュームを占めるのが、「ヒューレット・パッカード」、「カゴメ」、「スカンディア」、「ネットレイティングス」、「マイクロソフト」の5社の取り組み事例の詳細な解説である。
 「ヒューレット・パッカード」の事例は経営品質が、「カゴメ」の事例はITツールの活用がメインテーマとなっているように、それぞれの事例ごとに異なるテーマに基づいた内容であり、興味深く読める。

 本書は、幅広い視点を取り上げたためにやや総花的であり、掘り下げも浅いが、解説自体はとてもわかりやすく書かれており、ナレッジマネジメントをこれから学びたいという方向けの入門書の一つとして活用できるだろう。(bk1ブックナビゲーター:松尾順/Eビジネスプロデューサー)

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紙の本企業分析入門 第2版

2002/01/15 22:17

会計の問題をより広くカバーし、新たにAOL、ホーム・デポ、ギャップといった企業も取り上げる

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 本書は、多くの全米ビジネススクールで標準的な教科書として採用されており、いわゆる「財務分析」を扱ったものである。ビジネススクールで採用されているだけあって、カバーしている内容は多岐にわたっており、また掘り下げが深い。単なる分析テクニックのハウツーを解説するのではなく、より的確な企業評価を行うに当たっての数々の課題を俎上に議論が展開される。例えば、「のれん」や「ブランド」は資産としてどのように扱うべきなのか、航空会社のマイレージ・サービスによって発生する将来の無料航空券を債務(費用)としてどのように計上すべきなのか、といった、研究者によって見解が分かれる課題について、様々な視点を提示している。

 本書における分析のフレームワークは、「経営戦略分析」「会計分析」「財務分析」「将来分析」の4つに大別されている。著者らが序文で書いているように、「経営戦略分析」を財務分析の一環として組み込んでいるのが最大の特徴のひとつであろう。内容を読む限りでは、「経営戦略分析」の理論的支柱はマイケル・ポーターの「競争戦略」にあるようだが、財務データのような数値に基づく定量的分析を離れ、企業環境、経営戦略についての定性的・記述的な分析を行う方法について1章を割いている。

 また、将来性分析にも多くの頁が割かれている。会計分析、財務分析が企業の現状を把握するための分析手法であるのに対し、将来性分析は今後の企業価値を予測し評価するための手法である。さらに、企業価値を高めるという視点から、企業の財務政策や経営者による情報公開のあり方についての議論へと進む。

 なお、分析のケーススタディとして、本書では、AOL、ホーム・デポ、ギャップといった日本でも知られた企業が取り上げられている。データそのものは新しくはないが、財務諸表を通じて、的確に企業の現状を掴み、将来の価値を予測する方法論を習得するために格好の題材であろう。(bk1ブックナビゲーター:松尾順/Eビジネスプロデューサー)

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企業変革という重いテーマにも関わらず、まるでドラマを見ているような感じで楽に読み進めることができる

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 ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)のコンサルタントである著者のジーニー・ダック氏によると、あらゆる大変革に共通するプロセスがあるという。それは、「停滞」「準備」「実行」「決着」「結実」という5つの段階であり、「チェンジカーブ」(企業変革カーブ)と呼ぶ。この大変革のプロセスに伴う様々な人の問題が、「チェンジ・モンスター」(変革をかきまわす怪物)だ。そして、変革の成否は、いかにしてこの「チェンジ・モンスター」を退治するか、にかかっている。

 本書では、変革が大成功に終わった実例として、ハネウエル・マイクロスイッチ社を取り上げる。また、変革のプロセスのどこに落とし穴があるのか、を指摘するため、製薬会社2社の合併という架空の事例をベースに解説している。こうした具体事例を通じて、変革の中で目覚め、企業内を跋扈する「チェンジ・モンスター」を退治するためのポイントを提示しているため、企業変革という重いテーマにも関わらず、まるでドラマを見ているような感じで楽に読み進めることができる。

 結局のところ、変革のどの段階においても、変革を主導するリーダーの力量、つまり変革を管理する能力が重要であることがよくわかるのだが、その能力の根幹にあるのは、変革に関わる人々とのコミュニケーション力である。また、決してあきらめない強靭な精神力である。

 本書では、翻訳を担当したBCG東京事務所の手によって、補論「日本企業への処方箋」が追加されている。日本企業に多いチェンジ・モンスターの例を取り上げ、それらがはびこる背景にある本質的な課題、例えば、経営の「ものさし」が相対的で曖昧、であるとか、コミットメント不足、覚悟不足、といった点を指摘し、「チェンジ・モンスター」を退治するための手法について解説している。

 変革のプロセスは管理できる、という前提に立つ本書は、変革に立ち向かう人々に様々な示唆を与えてくれるだろう。(bk1ブックナビゲーター:松尾順/Eビジネスプロデューサー)

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