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  3. 西山 昭彦さんのレビュー一覧

西山 昭彦さんのレビュー一覧

投稿者:西山 昭彦

11 件中 1 件~ 11 件を表示

紙の本仕事ができる人の心得

2001/05/24 18:17

話題の経営者が自社で使うテキスト「経営用語解説」を書籍で公開。すらすら読めて経営がわかる

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 2001年前半のデフレ時代下,経営の方向が見えなくなっている。100円ショップの隆盛など価格破壊はとどまるところを知らず,一体どこまでコスト削減をすればいいのか。一方で若者を見ると,携帯電話代を払い,海外旅行に行く,高級ブランド品を買う。市場が不透明な時代,大事なのは経営の原点に返ることだ。
 本書は,株式会社武蔵野の小山昇社長がテキストとして自社で使っている経営用語解説を書籍にまとめた,いわばビジジネス語録。経営の原点が詰まっている。同社は朝1時間,社員との勉強会を行っているが,その際,社員があげる20個ほどの用語に,社長が過去の会社での経験を事例に解説。最後に,社員が勉強になった事柄を1つコメントする。これらを1冊に凝縮した。
 記述の1例で赤字という項に「社長の甘えです。社長が赤字になってもよいと決定したからです。罪悪です。赤字は絶対に避けるという意識を持って,1円なりとも損をしないようにすることです」とある。
(C) ブックレビュー社 2000-2001

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「自分に“転職力”はあるのか」。自己のキャリアを徹底分析,転職決断への7つのステップを細かく紹介

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 新入社員の調査で,入社した会社で一生勤めるという人は少数派。失業率の高い21世紀初頭,「売れるキャリアを持っているか」に関心も高い。わが国で,転職が一般化してまだ10年足らず。キャリア分析や転職力養成の分野は相対的に遅れている。本書は,この分野でパイオニア的存在のキャロル・カンチャー博士が執筆,トップクラスの手引きである。
 筆者のいうキャリアクエスターとは,よりよい人生を実現するために,転職というリスクを進んで冒していく意思のある創造的な人で,転職力を身につけている人のこと。本書は,自己分析のできるテストを多数掲載しているのが特徴である。キャリアクエスター度の診断149問,仕事に対する満足度44問,仕事熱中度20問,幸福度16問,燃え尽きテスト20問を行い,自分で自分の結果を採点し分析できる。自己分析の後,転職決断への7つのステップを細かく紹介。これは,転職だけでなく,社内でやりたい部門へ異動する場合も有効な指針になる。
(C) ブックレビュー社 2000-2001

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大前研一氏の“世界”を投影した「21世紀型ビジネスのあり方」が平易にわかる解説書

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 本書は,大前研一氏が代表を務めるCS放送の番組,ビジネスブレークスルーの講師陣の解説と,経営者の勉強会「向研会」で使用した資料を,21世紀型ビジネスのあり方を考えるというテーマで,読みやすくまとめたものである。
 評者も実はかって,ビジネスブレークスルーのビジネスマン向け番組のキャスターを務めたことがある。この番組は,スカイパーフェクトTVの757chで放送。全編ビジネスマンにとって有用な情報を,テーマ別に1時間単位で講師陣が語るもの。CMが少ないので,同じ時間でもけっこうな量になる。夜間や週末勉強したい人には,ライブリーに楽しめる絶好の機会を提供している。
 本書は,その中でも人気の高い講師6人が分野別に持論を紹介している。その1つ,6章の「人のマネジメント」では,この分野のリーディングスカラーである慶応義塾大学教授の高橋俊介氏が『これからは俊敏な組識が生き残りの条件だが,それは組識のフラット化だけでなく,組識の自律性を高め,即断即決にしていくことが大事だ。そのような自律型組識では,自分でビジョンを作り,やるべき仕事を考え出して,それを実施し検証するサイクルを自律的にまわしていけるリーダーが必要』と述べている。
 確かに,下位への権限委譲が決定を早め,部下を育てる最大のポイントと思われるが,それを実行するには部下が自律型でそれに耐えられる者でないと不可能だ。「自律型組識ってどんなものだろう」と読者の中で思った人もいるだろう。そんな人は,講師の解説の後のデータというところを見る。野球とサーカーの絵が書いてあり,違いを説明している。野球は1人ひとりの役割は固定で,重要ポイントは監督が指示を出す。サッカーは役割は一応あるが変動し,個別の判断はプレーヤーが自分で行う。サッカーのようなチーム型組識が自律型の見本になる。こうように,重要なポイントを誰でもわかる形で書かれているのが,本書の最大のセールスポイントだ。
(C) ブックレビュー社 2000-2001

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紙の本部下を伸ばす技術コーチング

2001/04/24 15:17

自分を知り,部下を育成する前提条件を網羅

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 コーチングがブームである。年配の管理職の方は,「部下は育てるものでなく,自ら育つものだ。いちいち育成などしていられるか」というかもしれない。しかし,今日の若年層の現実を見ると,そうはいえなくなっているのがわかる。自然に任せていたら,ストレスが増え,自分の部署の成果もあがらなくなっているのだ。
 東京ガス都市生活研究所の「生活レシピ2001」アンケートによると,人が最もストレスを感じることは仕事,最もストレスを感じる人は上司と同僚である。企業内では,仕事の高密度化が進み,仕事の負荷とある種の孤独が原因で,これまで私たちが経験していない高度のストレス社会を招いている。したがって,上司は,部下のストレスの原因とその解消サポートに尽力するとともに,さらに部下の育成努力が求められているといえる。
 部下のやる気を出させる本書は,そのような環境下で,実にタイムリーな発刊である。執筆者の人材コンサルタント宍戸由希子氏は,MIT(マサチューセッツ工科大学)のマンツ教授と10年にわたる交流を行ない,上司は部下のボスでなく,部下の自己実現を助けるコーチとしての役割を果たすべきという立場から出発している。そして,具体的に部下の自己実現を助けるコーチングについて,丁寧に解説している。
 コーチングを成功させる3つのキーは,上司が自己実現している見本となりそれを見せる,質問で部下の目標や気持ちを確認する,ポジティブなフィードバックを与えるである。部下に与える中身は,仕事に関連する情報を開示する,職務権限を委譲する,必要な教育を受けられる機会を与えるの3点が重要である。その後,個別の部下の個性,能力,成熟度をみて,積極的傾聴,質問,確認を行っていくというのが本書の内容である。こう書くと,理論は簡単に見えるが,実践は本書の事例などを読んで,相当の訓練が必要となろう。今後,コーチングが益々キーになっていくなかで,早く一読しておくことを薦める。
(C) ブックレビュー社 2000-2001

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紙の本はやめに備える定年

2001/03/30 15:16

誰もが「老後をカネに困らず過ごしたい」と思う。「定年前を如何にするか」の全貌がわかる好著

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 団塊の世代が50歳代前半を迎えた2000年,“定年本”が増えている。今後,各論が加わってさらに増加するだろう。他方,消費が伸びないのは,老後の不安が一因とよくいわれる。生活費に一体いくらかかるかわからないから,とにかく貯蓄に走る。消費に回るお金など,出てくるはずがない。その結果,死んだ後にお金の山があったなどという笑えない話も出てくる。
 まず,老後の資金の全体像をつかみ,自身の資金計画を作ることが第一歩である。筆者によると,65歳まで働いて,その時点で必要な積み立ては980万円という。これなら,誰でも可能な線,というより多くのサラリーマンは退職金があるので,クリアしているのではないだろうか。
 月額28万円が生活費の平均だそうだが,自身の老後のマネープランを描いてみることも必要だ。本書はその作り方と様式を提供している。また,定年後仕事をすることも提案。生涯現役。これ以上の備えはありえないのかもしれない。
(C) ブックレビュー社 2000-2001

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紙の本サラリーマン税制に異議あり!

2001/02/23 00:16

サラリーマンは税制を知らないで,とられている。税金のことに目覚めさせる本

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 クロヨン,この言葉をご存知だろうか。黒四ダムでも正解かもしれないが,ここでの答えは違う。税金を取る上で,サラリーマンの所得の9割は税務署に補足されているのに,事業所得者は6割,農業所得者は4割といわれることを表す。あなたの周りでも,中小企業のオーナーで会社の資産として外車を購入し,私用に使っている人がいるだろう。税務署だって,限られた要員で国民の所得を完全につかまえるのは不可能だ。でも,サラリーマンだけは,ばっちり所得を押さえられている。その理由は,源泉徴収により,会社で(代行して)先に税金をとられているからである。あたりまえ? そんなことはない。それが本書の執筆動機であり,本書は緻密な調査で私たちの税金の問題点を体系的に解説してくれる。
 サラリーマンの税金は,給与所得から所得控除を引いて,課税対象の所得を出す。控除率は平均で給与収入の30%である(これが必要経費分になる)。そのあと,税額から引かれる税額控除があり,税金が決まる。所得控除や税額控除も,ほとんど源泉徴収と年末調整で行われ,それで終わりだ。年収2000万以下のサラリーマンは,雑損,医療費,寄付金,住宅借入金がある時だけ,確定申告ができる。
 本来,1人1人の支出は異なる。だから,別々に必要経費を出して,税金の申告をするほうが個人への税金は正しく算出されるはずだ。しかし,これでは大変なので,平均像を決める一律方式で税金を効率的に決めるのが,日本の方式である。海外はどうか。フランスには源泉徴収がない。アメリカ,イタリア,カナダも源泉徴収はあるが,そのあとは全員が確定申告をする。
 グローバル時代で,国境がなくなりつつあるとよくいわれる。その中で,国家の源は徴税権にある。だから,国民は税金を自ら払う中で,その政権のよしあしを判断する。そこに意識が行かないと,政治への無関心も増長するだろう。とすると,筆者がいうように今の税制は「日本人の独立心や創造性,なにより個人としての自由と尊厳を根こそぎ奪い尽くしている」ということになりかねない。
(C) ブッククレビュー社 2000

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企業活動を通じて社会の発展と国民生活の向上がはかられる関係を視点に,社会と企業を分析している

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 400ページを超える大著で,筆者は社会学の立場から,企業の社会関係,社会的役割をとらえなおしている。私も社会学出身で経営学を学んだ者として,経営社会学を経営学部で教えてきた体験を持つ。したがって,本書の問おうとしている点や,詳細に事象を分析している点は,注目に値する。
 本書は言う。不祥事や経営破たんを起こした企業は,経営力の弱さのほか,組識としての市民性が欠如していた。マイカンパニーの経済的成長にこだわり,企業固有の存在意義や精神性豊かな市民社会を築くことへの寄与といった長期視点がなかった。一方,企業が理念やビジョンをかかげ,社会的に意味ある事業を展開し,組織内に気概が満ちてくると,社員も躍動すると述べている。
 厳しい批判はそれとして,最後の提言は,現実に企業を調査している立場からはかなり取り組まれている。むしろ,ドイツ企業の監査役,米国企業の社外取締役による内部経営チェックのような仕組みを持っていないのが問題と見られる。
(C) ブッククレビュー社 2000

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スーパーミドルの自己変革の方法がここにある

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 今のミドルが会社に入ったとき,社長は「この会社と一体となって,定年まで働くことを望んでいます」といったはずである。ところが,今では会社の本音は,ミドルはできれば早く去ってほしいというものだ。新人にも,社長が「会社にいるかどうかは皆さんの自由だが,どこでも売れる人材になってほしい」(大手証券)といっている。
 この変化は,周囲の環境から考えて仕方ない,とミドルだってわかっている。だけど,具体的にどうしたら,会社依存を減らし,自立できるかがわからないのである。
 本書は,関西生産性本部の異業種交流企業家塾をベースとして,この問題に真っ向うからいどみ,32人にのぼる学者やサラリーマンが,ミドルの視点から重要ポイントをそれぞれにあげている。その1人である原田保氏は,専門知識を高め,徐々に外部に軸足を移しネットワークを拡大し,複数の仕事を確保し,会社とも友好的な関係を築いていくのがいいと,実践的ノウハウを紹介している。他の人の提言も,ひとつひとつかみ締めて読んでほしい内容のものばかりだ。がんばれ,ミドル!
(C) ブッククレビュー社 2000

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この本には,部下のやる気を引き出す具体的方策があり,明日から実践できる魅力がある

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「上司が鬼とならねば,部下は動かず」という本が30万部を突破して,この種の本では異例のヒットになっている。今,企業の中では,言葉だけでない実力主義がいよいよ広まり,人事考課で年収数百万円の差がつくようになっている。そうなってくると,上司と部下も仲良しクラブ的関係が終わり,真剣勝負にならざるをえない。とくに,面談が重要性を高めている。ある外資系の部長は,部下との面談の前は1日やりとりの準備をし,戦略を練るという。
 本書は,これらの上司部下関係の変化を背景として,上司の立場から部下指導のポイントを鋭く指摘し,テクニックをあげている。ここでは,1つだけとりあげる。
 「アクティブリスニング」とは,相手のいうことを能動的に聞き,やる気につなげていく方法である。まず,「・・なんだね」など,相手の言うことをくりかえすーこれにより相手がいいたいことの本質をより正確に理解する。次に,「そうか,・・したいんだね」など,相手のいいたかったことの本質をまとめてあげる−相手にわかってくれたんだと思われる。第三に,「そんなに・・だったのか」など,相手の気持ち,感情を汲み取り,別の言葉で置き換える−自分の気持ちもわかってくれたんだと思われる。アクティブリスニングはこれら三つのステップで形成され,部下が問題解決に向かうのを支援できる。
 本書の指摘する方法は,そのほかに,部下がみずから動き出す「伝え型」,「問題解決」の方法,組織の価値観を指導する方法,勇気と行動で魅力的リーダーシップを発揮するノウハウがあげられている。
 職場の人間関係をマネジメントする能力が,今問われている。米国では,1人のジェネラルマネジャーが多数の専門的人材をたばね,創造開発の成果を競い合っている。ここでは,部下とのやりとりとそれによる意識のあり方がビジネスの成否に決定的な影響をもたらす。そういう時代だから,人の上に立つ,立とうとする人は,本書のような心理学を身につけることが重要になっている。
(C) ブッククレビュー社 2000

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ばらばらに見える顧客の動向が,101のコンセプトで見えてくる。そうだったのかと,楽しみながら学べる書

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 著者の谷口正和さんは,1998年に日経知のノウハウシリーズ全20冊が出版されたとき,そのうちの1冊「遊び力をつける」を書かれた。私が「人間関係力をつける」を書いた関係で,出版記念セミナーでご一緒したことがある。
 その時,谷口さんの著書を読み講演を聞いたが,実にはぎれがよく,市場の構造を鋭くかつ誰にもわかりやすく分析するので,感激したのを覚えている。マーケットの流れをつかんでいる数少ない分析者の一人であることは,衆目の認めるところである。
 本書では,生活者の現象を観測し,101のマーケットを読むコンセプトをあげている。ここで,2つとりあげてみる。
 「レッスンマーケティング」−−今や生活は興味の固まりになり,顧客は楽しく学ぶ学校の生徒になった。学びや自己成長を離れた消費はないという。確かに,周りを見ると,なにか始めようとしたら,すぐどこかで学ぼうとする傾向がある。ワイン教室,パソコン教室から,無数の入門本。たとえば,筆者の通った社会人夜間大学院は,近年入学者が急増している新市場といえる。
 「パーソナルシーイング」−−個人が個人に大きな興味を持ち,最もおもしろい見物は人で,カリスマ・リーダーの時代に入ったという。料理の達人,カリスマ美容師,カリスマ店員。筆者のいるビジネス書の分野でも,昔の企業ものよりも,人に焦点を当てた『プレジデント』などの記事が人気が出ている。
 本書の指摘するコンセプトには,それぞれ目の前で起きているが,私たちは明確に市場としてとらえていないことも多く入っている。著者は顧客の動向を見つめ,ライフデザイン・マーケティングで見た場合に,はっきり底流がわかるという。市場変化の軌跡を,それにかかわる現象の取材を通じて実証的に明らかにしているのが本書の特徴である。
 勝ち組み,負け組みで二分される経済で,事業コンセプトとビジネスモデルは決定的に重要である。それがビジネスの成否に決定的な影響をもたらす。そういう時代だから,ビジネスにかかわるものは,本書を一読することが必要だ。実際一気に読めるように書かれているのも,マーケティングのプロのゆえであろう。
(C) ブッククレビュー社 2000

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オーナーの試みが企業のブランド価値を高めた代表的事例。それを支えた社員も,楽しんで仕事をしている

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 近年,銀行,デパート,薬品会社などでオーナーやもどきのトップが,ワンマン政権を築き,経営危機や不祥事を起こし,企業ブランドを破壊する例が多発している。わが国企業は,ドイツのような監査役による,あるいは米国のような社外取締役による経営をチェックする仕組みをもっていない。かって,その役割を,疑似的に主管官庁やメインバンクが果たしてきたが,規制緩和や資金の直接調達の拡大で,その方式は崩壊した。
 今,新たなコーポレート・ガバナンスを確立し,長期的な経営の発展を確保することが緊急に求められる。それと同時に,いや依然としてそれ以上に,いかなるトップを有するかが,決定的に大事になる。サントリーの佐治敬三は,決断力あるオーナーのいい面を見せて,企業ブランド価値を高めてきた。
 本書の著者である片山修氏は,佐治の行なってきた文化活動の軌跡を,それにかかわった社員や関係者への取材を通じて,明らかにしている。この手の本では,よく経営者のことだけを取り上げることが多いが,文化事業の第一線で働く社員(同社は,自前主義をとっており,外注をしない)が,辞令にとまどいつつも,楽しみながら仕事をしている姿を描いていることが,読み手に共感をもたらす。
 佐治は,会社の成長の柱を,ビール事業や,清涼飲料水への進出などで拡大し,実績を上げつつ,一方で1961年のサントリー美術館設立以降,音楽財団,文化財団,サントリーホール,サントリーミュージアムなど文化事業に一貫して力を入れてきた。その意思決定の基準は,おもしろいかおもしろくないかであり,「おもろいやないか。やってみなはれ」だという。もちろん,数億円の赤字でも,それが企業の許容範囲であるかどうかは,常に考えられていた。
 この辺は,サラリーマン経営者にはできにくい,オーナーならではの判断である。今日まで,洋酒では同社の地位はゆるぐことなきガリバー的トップを続けている。それに大きく営業しているのが,企業ブランド価値である。そもそも,お酒は,成分などを分析して,どれを買うか決める商品ではない。イメージが決定的な影響をもたらす。そういう事業特性だからこそ,企業文化を重視する必要が有り,佐治の試みは,多いにペイしているのである。
 私の仕事の分野では,サントリー不易流行研究所がある。責任者の佐藤部長とは,もう何年ものおつきあいになる。同所は,特に学者などの間で評判の高い関西における文化研究の拠点となっている。それも,上の佐治の活動が背景にあり,可能なことだと実感する。
(C) ブックレビュー社 2000

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