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小西  砂千夫さんのレビュー一覧

投稿者:小西  砂千夫

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日本の産業政策は何か,政策の内容,経済理論との整合性を整理し,経済発展に応じた政策メニューを提示する

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 通商産業省は,古くは城山三郎の『官僚たちの夏』にあるように,自らの存在意義を追い求め問い続けるという宿命を負っている。産業は本来,企業が市場経済の枠組みで自由に活動した結果,形成されるものである。政策が必要なのは枠組みの形成であって,活動を誘導したり規制することでは本来ない。確かにそうなのだが,日本経済の現状に鑑みれば,少なくとも個別のこの政策は必要であると通産省は言い続けてきた。したがって,その政策の中身も時代とともに変えていかざるをえない。そこで産業政策とは何かをめぐって,学界でも数多くの論考が展開されてきた。
 本書もその1つである。「産業政策の神髄は,基本線としてのソフト/限時性とシステムとしての柔軟性(コンセンサス方式:審議会や下剋上)にこそあった」(4ページ),「現実の産業政策では,それら複数ある理論を時として使い分け,あるいは有機的なバランスを取りつつ,そしてまた変わりいく国民の要請にこたえていくという,実践的な姿勢が貫かれる」(10ページ),と著者がいうように,産業政策は,理論経済学が陥りがちな市場経済至上主義への現実からの反論のなかで正当化されるという姿勢がみられる。その反面で官僚の独善に陥る危険も著者は認識しており,経済理論との整合性にも留意すべきであり,客観的な政策評価による批判に耐えうる必要があるとしている。
 また本書のもう1つの目的として,日本の産業政策の経験を,経済の発展段階に応じて一般化することを挙げている。産業政策が経済のさまざまな状況に応じて機動的に展開されるものとすれば,発展段階(そのようなものが定義できるかはまた別問題だが)に応じて一般化すべきという著者の発想もまた自然なものであろう。そこで,(1)市場経済への移行段階,(2)構造調整や対外摩擦の解消が課題となる段階,(3)公害の排除やオイルショック,不況などの経済対策が必要となる状況について,それぞれ産業政策の根拠とその内容,および理論的整合性が分析されている。
 本書は,通産省がそれぞれの時期にどのような論拠で政策を展開したか,その際の政策メニューの一覧,参考となるべき経済理論は何かが俯瞰できるという意味で有益である。本書に指摘されずとも,経済学者は理論が完全であり,産業政策は一切必要でないなどといった誤解を与えるような発言を自戒すべきである。理論と政策はピースミールでしかつながらず,それを埋めるのは当事者の英知でしかないことを改めて自覚したい。
 筆者は,途上国経済における鍵は,政治家と官僚の腐敗防止であると感じている。その点でも,戦後復興期の産業政策について「強大かつ魅力ある権力を,国益のために,また,さしたる涜職を伴うことなく,自ら放棄した自己犠牲的な通産官僚たちがいたことを忘れてはならない」(174ページ)と評していることは,大変参考になった。
(C) ブックレビュー社 2000

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