西村吉雄さんのレビュー一覧
投稿者:西村吉雄
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エンジェルファイナンス リスクマネー投資によるジャパニーズドリームの実現
2002/06/19 18:16
日経マイクロデバイス2002/04/01
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エンジェルとは,本書では起業家に投資する個人投資家である。起業の初期に小規模な投資をすることが多い。これに対し,ベンチャ・キャピタルは,ある程度の基盤を確立した企業に,もう少し大きな金額を投資する。「起業家と個人投資家(エンジェル)の効果的な連携こそ,ベンチャの育成と支援に最も本質的で重要」という観点に立って書かれている。
起業初期は個人から資金調達
著者の一人であるBenjamin氏はエンジェルと起業家を結ぶネットワークとデータベースを自ら構築した。多数の実例とデータベースを駆使した多角的できめ細かな考察と分析をしている。これらが直接日本で有効か否かは難しいが,日本の産業再生に必要な知識と示唆を与えることは間違いない。日本にはエンジェルが存在しないに等しく,その創出が必須だからである。
技術革新のエンジンは,もはや大企業の中央研究所ではなく,ベンチャと産学連携の二つになった。このような認識が世界共通になっている1)。ところが,日本はバブルの影響もあり,この認識を持つのに20年も遅れた。その日本で,ようやくベンチャの起業が盛んになってきた。例えば半導体分野で,日本半導体ベンチャー協会という組織ができている。
エンジェルはインキュベータ
米国産業の活性化にベンチャが寄与していることは,よく知られている。そこでは個人投資家の役割が大きい。「起業家は,初期段階に,ベンチャ・キャピタリストではなく個人投資家から資金調達する方がうまくいく」。本書はこれを一つの「公理」とする。なぜならば「ベンチャ・キャピタリストはポートフォリオ・マネージャであり,金を作ることには興味を持つが,会社を作ることには,いま一つ興味を示さない」からである。起業家と個人投資家を結び付ける投資仲介業者が,米国には存在する。本書は,この3者に役立つことを目指して書かれている。
日本では,起業家に対してエンジェルとして機能する個人投資家層が薄い。富裕層が薄いかどうかは一概にはいえないが,まず不動産に投資が回ってしまうためである。この不動産本位制の崩壊こそ,不良資産の素であり,デフレーションの根本である。制度の整備などが進めば,投資を不動産から起業家に向かせることは可能だろう。
このために日本で特に必要なのは,大学の知的活動と起業家を結び付ける仕組みと,大企業からのスピンアウトを盛んにする仕組みである。これらに,大企業に休眠する知的財産を活性化させる仕組みを加えた三つが,広義のインキュベーションである。インキュベーションを指向する組織や活動が日本で増えてきた。インキュベーション機能とエンジェル機能には重なるところが多い。このため,本書は日本でも役立つ。
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