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薮 健一郎さんのレビュー一覧

投稿者:薮 健一郎

3 件中 1 件~ 3 件を表示

惑星物理学者の目で見た,地球,人間の歴史。農耕牧畜以降の人類の場を人間圏として世界をとらえ直す

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 タイトルの「1万年」とは,人類が狩猟採集の生活から,農耕牧畜の生活に移り,積極的に地球の物質を利用し始めてから,今日迄の年月を指す。著者は専門の惑星科学の立場から,地球の歴史を見ていけば,原始大気とマグマの海に分化して以来,様々な物質圏の分化が起き,物質圏のひとつである生物圏の中から,1万年前に人間圏が分化してできたというシナリオを披露する。
 従来歴史といえば,人の営みあってのものだったが,著者は「人間圏」の発想に見られるように,歴史を宇宙の始まりから連綿と続く時の流れの中でとらえようとする。地球システムの中の人間圏というとらえ方をすれば,人類が将来に向かってあるべき姿もみえてくるだろうという。たとえば,環境問題で良く口にされる「地球にやさしく」という発想自体が的はずれであると著者はいう。地球の物質を自分の都合で大量に人間が利用するのであるから,公害や環境問題といった負のフィードバックが生じるのは当たり前なのが,それでわかるというわけだ。環境問題の解決はリサイクルではなくレンタルでというのが著者の主張だ。
 よく考えると自明のことだが,口々に伝えられるうちに誤解が常識として定着してしまうことがある。環境問題に限らず物質,科学の利用には必ず長所と短所があるのを忘れてはならないということだ。思考が混乱したときには,全体像を再度見直し,とらえ方のアプローチを変えてみるのが大切だろう。
 本書は雑誌「シンラ」に連載されたものをまとめた本だ。エッセーでもあり,自分のガン体験などもあり,読み方によっては日記のようでもある。3部構成の真ん中の第2部「太陽系と地球システム」は惑星科学の解説書としても読める。いずれにしても,比較惑星学という学問分野に対する,著者の誇りと自負を強く感じさせる本だ。
(C) ブッククレビュー社 2000

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21世紀は地球の時代。高熱の地下でも生きていける生物たちが広がる,未知の世界を予想する

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 物理学者,戸田盛和氏が「これからは地球を知る研究が重要」と昨年お会いした際に話しておられた。20世紀後半は宇宙開発が進み,スペーステレスコープやX線観測衛星など,宇宙の果てを見ようという挑戦は進展した。宇宙を光,電磁波で遠くを見ることが,文字通り私たちの宇宙を広げた。ところが私たちが足で立つ,この地面の下は見ることができず,意外と知られていない。この未知の世界を知るのが新たなフロンティアだと戸田氏は言う。
 本書は,正にその世界に焦点を当てた内容だ。地底には広大な生物圏が広がるという著者の主張を論証する。
 地底高熱生物圏と聞くと,まず頭に浮かぶのは1977に海洋潜水艇アルビン号によって発見された,海底の熱水噴出口,ブラックスモーカーの周辺に生息していた奇妙な生物たちのことだ。チューブワームというチューブ状の生物が海中を浮遊している様子やシロウリガイという二枚貝が噴出口近くの岩にくっついている画像は,当時人々を驚かせた。
 それから20年がたち,海底の光が届かない世界に生きる生物は決して珍しいものではないのがわかってきた。本書の著者,トーマス・ゴールドは,それ以外にさらに地下には原始的な細菌が生息し,その規模は地球表面にすむ生物の総量を超えるほどだという。わくわくするような新たな科学の世界がそこにはある。
 最近ではメタンがシャーベット状になったメタンハイドレードが海底に沢山あるのがわかり,エネルギー面からも注目されている。さらに深海掘削計画(OD21)が日本でも始まり,地下は科学的にも注目を浴びる分野になってきた。本書は今後進展の期待できる分野の先駆け的参考書として読んでもおもしろいのでなないだろうか。また,定説とは異なる説を唱える自由な発想の仕方を知るにも良い本だと思う。
(C) ブッククレビュー社 2000

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紙の本サイエンス・ウォーズ

2000/11/01 12:15

物理学者と科学論者の論争が,科学の世界の価値観を揺るがす

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 歴史は偶然。クレオパトラの鼻が低ければ歴史は変わっていたかもしれないという例と同じことが,サイエンス・ウォーズでは起こった。アラン・ソーカルという米国の物理学者が,「ソーシアル・テクスト」という科学論者を中心とする文系の雑誌に偽論文を投稿し,それがでたらめだと後でばらすという行動に出た。これが科学者と科学論者(社会学や哲学の立場から科学を論じる学者)の論争の火蓋を切った。1996年春のことだ。
 ソーカルがこのような行動に出なければ,またソーシアル・テクストがこの論文を受け付けなければ,そして,ソーカルが偽論文だとばらさなければこのような騒ぎにはならなかったかもしれない。とにかく,これを機に「サイエンス・ウォーズ」という言葉は,ここ3〜4年科学界を賑わせてきた。日本の著名な生物学者がこの言葉を「科学戦争」とすべきだと主張していたほどだから,日本でも多くの科学者が気にかけていたのではないだろうか。
 ただし,このような騒ぎになったのにはそれなりの背景がある。米国の科学者には,科学論者が科学批判を長年続けているのをおもしろくないと思っている向きもあるようだ。また,科学論者のポストが大学で増え,物理系の科学者のポストが圧迫されていると感じている学者もいるようだ。本書はこうした背景を含めて,一体サイエンス・ウォーズとは何だったのかを解き明かそうとしている。
 ソーシアル・テクストはいわゆるポストモダンの雰囲気が漂う雑誌らしい。1980年代に非線形のカオスやフラクタルが世に出始めた時に,日常的な現象を解き明かす手法として社会科学にも非線形の科学はよく転用された。そうした動きの一部が行き過ぎだと科学者側は主張する。
 本書は科学者と科学論者の対立を単に描くのではなく,今,科学の状況はどうなっているのかをじっくり考え直す機会も与えてくれる。
(C) ブッククレビュー社 2000

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