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江頭寛さんのレビュー一覧

投稿者:江頭寛

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本廃墟のなかのロシア

2000/12/01 21:17

日本経済新聞2000/11/19朝刊

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 現代のロシア人に「ロシア人であることはどういうことなのか」との問いに答えられる人は少ない。ソ連崩壊後の混乱を経て民族的アイデンティティーが希薄になっているからである。著者ソルジェニーツィンが本書で示した答えは、たぶんロシア人の多くの共感を呼ぶとともに、我々外国人にとっても改めてロシアという国を見つめ直させる内容を持っている。
 本書ではロシアの混迷を政治、経済、社会、民族、宗教など広範な分野で分析し、それからいかにして脱するかの提言が示されている。まず、九〇年代のロシアの改革の結果生まれた混乱については、無分別の結果というより、官僚や新興財閥などに利益を集中するための考えられた計画だったと指摘する。ソ連時代国外追放された反体制作家らしい歯に衣(きぬ)着せぬ表現はときとして誇張に走るが改革政治の本質をついているようにみえる。
 著者の主要な論点は国家を再生、強化するための「建設的な民族主義」の考察である。「ロシア人のためのロシア」こそ排すべき考え方だが、多民族国家ロシアを守れるのはロシア民族以外にはない。過去の病んだ民族主義を建設的で創造的な民族主義に転換させねばならないと著者は説く。
 この点からロシア民族主義の流れを歴史的に分析しており、ピョートル大帝の欧化政策も現代のロシアにみられる「ユーラシア主義」もロシア的価値観の弱さの現れとして批判の対象である。ロシア人が二十世紀のさまざまな試練の中で失った本来の良き民族性を取りもどすことが、ロシア再生へのカギだとしている。
 著者の唱える民族主義は一般に考えられている民族主義の概念とは性格を異にしている。日本への北方領土返還を拒むロシアの姿勢を「エセ愛国主義の意固地と傲慢」と批判しているのはその一例。ロシアの民族性に対する信頼の深さにはやや疑念もわくが、混迷のロシア社会の中で著者の考えは一つの理想主義の灯台の役割を果たしているようだ。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000

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紙の本北方領土問題と日露関係

2000/10/21 00:17

日本経済新聞2000/5/14朝刊

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ロシアのプーチン新大統領の八月来日が決まったが、日ロ関係は懸案の領土問題の解決、平和条約の締結に見通しがつかない状況に陥っている。このような時期に出版された本書は日ロ関係の歴史を「不毛な北方領土の固定観念」にしがみついて両国和解の機会を逃がし続けたものととらえ、日本側に発想の転換を呼び掛けている点で、新鮮な印象を与える。
 構成は北方領土問題の起源を第一部に、第二、第三部でゴルバチョフ時代、エリツィン時代の日ソ、日ロ交渉の経緯を詳細に分析している。改めて北方領土問題とは第三国の思惑も投影された国家間の権謀術数のドラマであったことがよくわかる。
 たとえば本書の特徴として、ソ連が北方領土を占領するに至る米国とのやりとりが、米国の内部資料を引用してかなり細かく紹介されている。そして冷戦時代の米国の思惑が、日本とソ連の領土問題解決をはばんだ要因の一つだったことが指摘されている。
 しかし分析に力が入れられているのはゴルバチョフ、エリツィン時代の日ソ、日ロ交渉である。冷戦の終結で国際政治の座標軸が変化したのに、北方領土問題は過去からの惰性に支配され、解決の機会を失した、という著者の視点がここで明確になる。
 ゴルバチョフ書記長誕生直後に会談した中曽根首相(当時)はじめ、二国間関係打開に自己の政治的野心と責任をかけて挑んだ政治家たち、そして外交の主導権を維持するために、それをけん制し、利用する日本外務省の思惑と行動が活写されている。外務省に対する著者の批判は時として厳しいが、建設的な視点を忘れてはいない。
 橋本・エリツィンのクラスノヤルスク合意以降の日ロ関係分析にややもの足りなさは残るが、総じて著者の独自の視点は日本の対ロ関係者に多くの示唆を与えているようにみえる。北方領土問題の解決に必要な日本国内の論議もまだ尽くされているとはいえない。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000

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