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岡井 紀道さんのレビュー一覧

投稿者:岡井 紀道

9 件中 1 件~ 9 件を表示

紙の本カウフマンの証言 ウォール街

2001/05/21 15:16

ナチの手を逃れ,予測の神様と謳われたカウフマンの洞察力。20世紀後半,激動の金融世界が堪能できる

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 経済記者として「カウフマン・レポート」には何度も忙しい思いをさせられた。中でもネクラの予測家が一転して債券相場の大反騰を予測した1982年8月のレポートは衝撃的。このレポートはデータの客観的な分析と理路整然とした論理が圧倒的な説得力を持った。ニューヨーク連銀からソロモン・ブラザースに移り,民間で金利予測を公表した初めての人物であり,以来,一貫して金利動向を分析・予測してきたヘンリー・カウフマンの真骨頂である。
 ドイツの寒村からナチの手を逃れ,ニューヨークで子供時代を過ごし,師に恵まれ,ソロモンに入るまでの回想から書き始めている。最初の2章しかないが,実はそこで人生を貫く通奏低音を吐露。それは反インフレへの徹底した信念と自由な米国への愛国心であり,金融分析に当たっての拠り所も,意見対立からソロモンを辞任する際の倫理観もここから出ている。
 3章から15章までは,未曾有の市場拡大,証券化,グローバル化,新金融商品の爆発,金融機関の競争制限撤廃,金利の大幅変動などウォール街の半世紀を詳述。学者の目ではなく,時にはスキャンダルと失敗にまみれた,この金融史に残る成長と革新の時代を半ば当事者として,しかも客観的に描き出す。カウフマンの分析手法と見方が浮き彫りにされ,得るところが大きい。
 「今日の金融界は悪質な健忘症にかかっている」と,20世紀末の出来事から自らが得た教訓として17項目をあげる。教訓17には「合理的な分析技術は金融行動の行き過ぎを予測できない」とある。最後の2章は21世紀への展望で,「向こう数年以内に金融の陶酔(ユーフォリア)が逆転する。おそらくLTCM破綻以上の大事件が起こる」と,ドクター・ドォーム(不吉な予言者)らしい予測もある。
 「マネーを扱う人たちに本来あるべき固有の緊張感」や「市場の行き過ぎによる危険性と脆弱性」への洞察など,政策立案者,投資家,経営者,そして経済や歴史を学ぶ者にとって必読の書である。
(C) ブックレビュー社 2000-2001

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一人勝ちした資本主義は一人勝ちによる死をもたらす。ではどうするか?資本主義からの脱却と生命復権を説く

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 資本主義は共産主義に勝利し,グローバリズムを掲げる米国は10年に及ぶ好況をおう歌している。消費を拡大し,貿易を自由化し,競争に勝ち抜く方法を学んでいけば,幸せな社会が到来する——これが,有無を言わさない現代資本主義の主流の考え方であろう。
 だが,20世紀末にかけて資本主義の高度化は一人勝ちの世界であり,グローバリズムは格差を生むだけといった不安が広がり始めている。こうした不安を真っ先に感じとった著者は,1995年に『グローバル経済という怪物』を著し,巨大多国籍企業のビジネス戦略やマネーゲームが社会崩壊や環境破壊など機能不全をもたらす実態をえぐり出し,経済グローバル化を批判した。
 では,グローバル資本主義を脱却し危機を打開するにはどうしたらよいのか。市民社会の結集,真の市民民主主義の実現を掲げ,第三千年期を前にした「新しいストーリー」として展開したのが本書である。
 4部構成で,著者による概要のまま紹介すると,第一部「死のストーリー」では,民主主義,市場,資本主義が登場し,貨幣が生命を凌駕するまでになった過程を振り返り,第二部「生命のストーリー」では,150億年の宇宙進化の旅をたどり,新しい生物学の考察から,今まさに人類は生命の自己組織化能力に基づく選択の時であると主張する。第三部「ポスト大企業世界」では,現代に巣くう経済の病理を排除し,生命中心の社会を創造するための制度と政策のあり方を説く。第四部「生命の回帰」は,地球の生命系とも調和しつつ,著者からみて生まれ変わろうとしている文明の大変革の過程(事例)を描く。
 著者の主張は,たとえば「資本主義はガン細胞である」という比喩に端的に表されている。ガン細胞は体全体への影響などお構いなしに成長し,自分にとっても栄養源である体そのものを破壊してしまう。それと同じように,資本主義は健全な市場を食いつぶし,生活を破壊し,故郷を奪い,民主制度を骨抜きにし,飽くなきカネの追求に走る。だからこそ,生命ある人間の権利と力を取り戻すためには,貨幣中心の制度から脱却し(邦訳のサブタイトル),政治民主主義を復活させ,企業を人格とみる虚構を廃し,国際企業と国際資金フローを規制し,企業優遇を廃止して,経済民主主義を推進せよと説く。
 こうした主張には賛否両論あろう。多くの経済学者は無視するかもしれない。一方で,資本主義の非人間性に目を向ける人は賛同するだろうし,人間社会の予言の書と見る人もいるだろう。だが,著者が言うように「本書は運命論ではなく,生き方の選択を説く本である」とみれば,考えさせられる点は多く,示唆に富む啓蒙の書といえる。
 著者デビット・コーテンは米スタンフォード大経営大学院を卒業後,ハーバード大の経営大学院,国際開発研究所を経て,中米,東南アジアで開発の現場に従事した。現在はワシントン州シアトルの「民衆中心発展フォーラム」代表を務める。本書が独りよがりにならない太い筋を通しているのは,こうした学界と経済の現場,NGOを含めた幅広い視野が支えているからであろう。
(C) ブッククレビュー社 2000

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紙の本IT革命か、ITバブルか

2000/10/30 15:15

好況の米国経済はどうなるのか。そうそうたる米経済学者10人の分析と展望を一人当たり20ページ強で記述

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 2000年10月現在,さしもの米国経済も大統領選を前にして息切れをみせた感がある。1991年3月に始まったこの好況は史上最長を記録,その後に来るものは何か。とりわけ日本にとっては,空白の10年に苦しんでいるだけに関心はひとしおである。
 著者の関心事もまさにその点にあり,バブル状況にあった10年前の日本と現在の米国の類似性に着目し,その比較を研究する課程で本書が生まれた。手法は極めてジャーナリスティックで,徹底したインタビューを通じて米国マクロ経済と株式市場をどうみるか,そして日本のバブル処理のためにとるべき政策は何かをあぶり出そうとする。
 この試みはかなりの程度成功している。インタビュー相手はそうそうたる米経済学者である。1908年生まれのガルブレイス教授から始まり,1958年生まれのマンキュー教授まで10人の経済学者の目はそれぞれの専門分野を反映し,考え方もさまざま。意図せざる配列であろうが,90歳代から40歳代までほぼ年齢順で,誰をとっても面白い。
 99年から2000年3月の時点で,10人のうち8人までが米国の株価はバブルとみている。しかし,その背後にある米国経済の好況の原因については,論が分かれるところであり,著者は序章の中でITを核とする,いわゆるニューエコノミーについて米経済学者の論評を肯定論,否定論,中間論,中立論に分け,要領よくまとめている。日本の政策に関して8人の学者が財政は短期的な景気対策に限るべきだとしている点は示唆に富む。
 個々のインタビューは米国経済論にとどまらない含蓄があり,各経済学者の略歴,紹介は簡にして要,質問も当を得ている。新聞記者顔負けの突っ込みが小気味良い。銀行,証券会社でエコノミスト,ハーバード大学,コロンビア大学で客員研究員を勤める著者ならではの経験が生きているからであろう。
 なお,本書のタイトル「IT革命か,ITバブルか」は時流に媚びたかいささか不適切,内容はタイトル以上の幅と奥行きがある。
(C) ブッククレビュー社 2000

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一世代前の経済解説書ながら歴史を超えて今に通じる本質をつく。押しつけのない冗長さの中にバランスを学ぶ

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 経済あるいは経済学を,日常生活に照らしてやさしく解説しようという試みは,経済学者にとってチャレンジングな課題である。50年前にこの課題に挑戦したのが本書であり,日本の読者にとっての最近の類書は,さしずめ「経済ってそういうことだったのか会議」(佐藤雅彦・竹中平蔵著,日本経済新聞社刊,2000年)であろう。
 たまたま,全く同じタイトルの章があるので比べてみよう。いずれもお金の3つの働き(使い方)として,交換の媒体(手段),価値の尺度,そして計算の単位(竹中本では,価値を貯める手段)を挙げる。この後,竹中本では「お金とは信用である」と論を進めるが,本書では価値の変動,つまり物価指数の動きからインフレ,デフレへと進む。こうした経済の原点の部分では古今東西,ほとんど変わりはなく,どちらも平易でわかりやすい。
 本書の良いところは,経済学の成果を押しつけるのではなく,経済の仕組みの部品が人間であり,その人間の活動から経済的な側面だけを区別するのは困難で,しかも常に変動するから,経済を理解するのはいかに難しいかを説いている点である。個々の説明でも一方に偏らず,バランスをとった見方を教える。知的なおばあさんが孫に語ると言った趣で,結論を急がないていねいな説明で,歯がゆいながらも納得させられる点は多い。
 章立ては「市場経済と計画経済」から産業,立地,輸出と輸入,所得,雇用,福祉国家,貧困の意味,「対立する価値観」と全13章におよぶ。経済学的なものの考え方はオーソドックスだが,初版が1950年で,翻訳のもとになった第3版が1972年という“古典”でもあり,引用する事例や数字が20世紀前半までの英国ないし欧州のもので,古さは否めない。戦前から第二次大戦,戦後の雰囲気は貴重だが,変動相場制時代のわれわれにとって違和感を覚える記述も多々ある。
 残念ながら訳者は,本書の位置づけについて触れていない。著者についてもロンドン大学名誉教授で英国政府の委員会などで活躍し,主に労働関係の論文を残しているといった程度である。インターネットでの検索によると,著者ガートルード・ウィリアムズ女史は1897年生まれ,1923年に「産業問題の社会的側面」を著し,1960年代まで主に熟練労働,女性と労働,福祉社会論などを手がけている。
(C) ブッククレビュー社 2000

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客観的,網羅的に業界を知る格好のガイドブック。コンサルティング・ファームのことが良く分かる

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 60年代にコンサルティング業なるものが上陸してきた当時は,アメリカかぶれの,やたら横文字や概念をかざす連中といったイメージが強かった。それから30年以上を経て,この業務も日本企業の間に根づき,いまや人気業種のひとつになっている。それだけ企業が抱える課題が増え,多様化し,変化のスピードが速く,自社だけの知的資源では対応できなくなっているからであろう。
 コンサルティングとは,「企業が抱える経営課題に対して,何が問題かを探り,どう解決していくかを提案し,その実行を支援する仕事」である。したがって,ターゲットは経営戦略から人事・賃金・福利厚生,経理,システム,新規事業の立ち上げなど,多岐にわたり,しかも時代とともに変わってゆく。
 本書は前半の3章を,日本における歴史,仕事の内容,コンサルタントに必要な能力・資質など,コンサルティング業の説明にあてている。コンサルティングのプロセス,料金,活用の仕方などは,当事者の立場ながら客観的に書いており,参考になる。また,コンサルタントに求められる資質にもページを割き,ファーム側の採用戦略・教育,報酬にまで言及している。
 後半は経営コンサルティング・ファームを5つにグループ分けし,主要な約40社について得意とする分野を紹介している。それはシンクタンク系(国内系),国内独立系,戦略系(外資系),人事系(外資系),会計事務所・情報システム系(外資系)であり,ファームごとの紹介もわかりやすい。
 次に知りたいのは,具体的な事例に則して,どこに問題を発見し,どういう解決策を提示し,どれだけの成果をあげたかであろう。残念ながら,そこまで踏み込んではいないし,そもそもコンサルティング業務は守秘義務を伴う契約のもとに行われるわけで,なかなか表には出てこない。だが,経営課題を解決したいと思う企業にとって,本書はコンサルティングに関する知識ないしガイドブックとして活用できよう。
(C) ブックレビュー社 2000

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紙の本金融イノベーター群像

2000/07/22 06:17

金融やネット・ビジネスに革新をおこす担い手を通じて,アメリカ経済のダイナミズムを描き,併せて団塊世代

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 金融革新やネット・ビジネスは,米国経済に長期の好況をもたらし,新しいアメリカ・モデルを生み出した。当然,そこには企業家精神旺盛なイノベーターがいる。本書は,「勝利者の実像を分析し,その良いものは取り入れて,弱点を研究する」視点を縦糸に,そして彼らがいずれも中年だったことを踏まえ,「倒れても立ち上がり,余裕を持って次の一撃に立ち向かう」団塊世代へのエールを横糸にして,金融イノベーションの実像を描きだす。
 ここに登場するのは,実に魅力ある人々である。LBO(Leveraged Buyout:買収先資産を担保にした借金による買収)を生み出した従兄弟同士のクラビスとロバーツは,爆発的なM&A(Merger and Acquisition)ブームを巻き起こし,ミルケンが考え出したジャンク債とともに一時代を画した。そのミルケンはインサイダー取引で獄に下り,仮釈放後ガンを克服し,教育や公共研究へと転身して再生を果たす。中古車セールスから身を起こし,消費者金融の雄となったコスは,利益計上のミスでつまずく。金融仲介業務や革新の背景,その仕組みをプロの目で的確に解説しつつ,人物像を描いていく手法は,小説仕立てといってもいいくらいだ。
 インターネット時代に入っても,金融サービスの革新は続く。インターネットと金融がどう結びつくかを簡潔に展望した後,インターネット・モーゲージの専門会社E-LOAN社,金融データで席巻するBloomberg社,電子商取引の草分けとなったAmazon’s.Com社のベゾス,そしてベンチャーを支える数々のキャピタリスト,とりわけ起業家エンジニアから身を起こし,ネットビジネスの仕掛け人となったドーアへと,イノベ-ターとは何であるかを浮き彫りにする。
 著者は長銀の元シカゴ支店長。長銀破綻への思いが縦糸,横糸の裏側に流れており,最後の2章は日本の金融界再生への示唆で結ぶ。米国の金融イノベーター群像の特徴から引き出した教訓を提示し,「われわれもなり得るか」と問いかける。多くの人物像を踏まえているだけに迫力があり,書名から連想する以上に面白い好著である。
(C) ブックレビュー社 2000

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紙の本「デノミ」の政治経済学

2000/07/22 06:17

100円を新1円に,エコノミスト政治家が主張するデノミの意味とメリットを論じる

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 「2000年正月に実施を決断しよう」という呼びかけは無に終わったが,デノミ論議が終わったわけではない。著名なエコノミストであり,政治の場に身をおく著者にしてみれば切歯扼腕(やくわん)の思いをしていることだろう。
 デノミとは本来,通貨の呼称単位のことだが,日本ではなぜか「呼称単位の変更」と解されている。これを日本人の造語だと教えてくれる著者の主張は,100円を新1円,1円を新1銭とする100分の1デノミである。いま,1ドル=100円であれば,1ドル=1新円で,1円=0.001ドルより1新円=1ドルの方が格好いい。
 もちろん,デノミは格好の問題ではない。第二次大戦のインフレがもたらした負の遺産を精算して,21世紀の世界に貢献していこうという目的がこめられている。まずは,デノミの意味を先行例から説き,民間主導の安定成長期に入る21世紀初頭こそ,実施の条件がそろうと予測し,様々なメリットをあげてゆく。
 これまでのデノミ論がなぜ実現しなかったのか。それは書名にある通り,まさに政治経済学の問題であり,決断が政治的であるからだ。一般書としてややや堅苦しいが,やがて来る時に備えて読んでおいてもいい所論である。
(C) ブックレビュー社 2000

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最近の理論をカギに,古今東西の経済事象を解明していく,わかりやすい経済学への誘い

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" 咋今,経済学の評判は芳しくない。現実の経済が複雑かつ目まぐるしく激動し,確たる政策を提示できないためだが,本書を読み進めていくうちに,「経済理論も捨てたものではないな」という気がしてくる。370頁余りに,古今東西の経済事象や事件と,その謎を解く理論を満載して飽きさせない。
 見出しだけを追っていくと,普通の経済学教科書ともみえるが,さにあらず。プロローグの幕末,ロシアのプチャーチン提督との日露通商交渉から,終章の迫り来る高齢化と年金問題まで,扱うテーマは幅広く,それに最も適した現実の事件やエピソードを選び出し,分析には最新の経済学論文(著者によると,約70本)を使う。そして全編を一貫したストーリー仕立てにしようという“野心”とがからみ合い,名講義を聞いているような雰囲気をかもし出す。
 著者が慶応大学で「世界の経済」を経済学部1年生に教えている関係からか,一般の入門書とは違って,国際取引の5つの動機を第1部とする。だが,財の取引である貿易で交換の概念,資本取引でリスクの概念と,経済学の基本概念を植えつけていき,裁定,投機,オプション取引へと進む。エピローグでは,英国の名門ベアリングス銀行を破産させたニック・リーソンと緊急救済に至ったLTCM事件を対比させ,デリバティブの何たるかを説明する。
 第2部は,経済組織における「ねずみ講」的な仕組み。何ともユニークなタイトルだが,1997年に起こったアルバニアのねずみ講事件から始め,バブルの理論を説明,貨幣信用,銀行制度,社会保険制度など,経済組織は基本的にねずみ講的性格を持っていると解く。その有用性と危険性を理論的に明らかにしていき,主要国政府が設立した史上最大のねずみ講は「賦課方式の公的年金」と喝破,その行方を論じる。
 「レモン(中古車)市場」「ペソ問題」「美人コンテストとバンド・ワゴン効果」「群衆行動」「ポンジーのゲーム」といった経済学理論や引用を,ゴチックで覚えやすく表記し,希代の天才か,はたまた詐欺師かといわれたジョン・ロウの「ミシシッピー会社」エピソードなども実に効果的に配置し,内容はわかりやすい。
 “経済という偉大なドラマ”を,思考の結果としてではなく,理論をカギとして思考の過程をみせることによって,副題にいう「経済学のおもしろさを学ぶ」意図は成功している。書名にはやや惑わされるが,学生だけでなく一般社会人にとっても,経済を知るうえで有益な教科書となっている。"
(C) ブックレビュー社 2000

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米国経済は多様で,大きく変動する。その基礎知識を学ぶ教科書

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 アメリカはいま,未曾有の好景気を謳歌している。その裏では所得格差が拡大しており,総体としてのアメリカ経済を把握するのは容易ではない。
 アメリカ経済のさまざまな側面や歴史を踏まえておきたい読者にとって,本書は一応の常識を提供する教科書である。現在の好景気に匹敵する「黄金の60年代」から現代アメリカ経済をとらえ,この時期をケネディ時代の膨張,ニクソン時代の収縮,レーガン以降の保守化と3つに区分する。
 所得分配を豊かさと貧しさ,産業を栄光と衰退,環境問題を破壊と保護と,それぞれ両面からバランスよく叙述している。対外関係では機軸通貨ドルを抱える故の激動と主要地域との関係に目配りし,特に数々の貿易摩擦を繰り返しつつも交渉を通じて相互依存を高めてきた日米関係を概観する。
 経済関連年表こそ99年までフォローしているが,統計と記述は96年までである。IT化を軸とした現在の繁栄をどうみるか,「その後」がないだけに増補版としては物足りない。
(C) ブックレビュー社 2000

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