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平井  岳哉さんのレビュー一覧

投稿者:平井  岳哉

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日経ビジネス2000/5/22

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 本著は、1988年のRJRナビスコへの314億ドルをかけた企業買収で世界的に名をはせた投資専門会社KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)社の創業からの歩みを記録したノンフィクションストーリーである。ビジネススクールで教鞭を執る2人の学者による、社内資料とインタビューを駆使した企業史・ビジネス解説書という性格も有する。
 レバレッジド・バイアウト(LBO=買収先資産を担保にした借金による買収)は、買収資金の大半を外部借り入れに依存。これを手掛けるのは、いわば企業再生のプロ集団だ。
 資金調達や事業売却などの派手な再建手法に目をとらわれがちだが、最も重要なのは、人間の心理を巧みにつかんだ経営手法にある。買収後の経営者には、外部スカウトや内部昇格を含め適任の人物を選任するが、その際相当額の個人資産を出資させ、経営者と所有者を同一化させるスタイルを取る。このため自己の資産と報酬がかかった経営者は、企業価値の指標となる株価を高めるため、埋もれた資源の発掘や無駄な資源の放出などリストラに邁進するのである。最近日本でも見られるようになった、従業員が自社の株式を購入し、自ら経営者となって再建に取り組むMBO(経営陣による企業買収)は、この手法と同一である。
 今日のアメリカ経済の盛況の前史には、70年代における長い低迷があった。この時期、アメリカの大企業では資本と経営の分離の下、経営者は誰からも規制を受けない野放しの状態にあり、これが無責任な経営を引き起こした。経営者の暴走を抑えるために株主の立場を強化し、ストックオプション(自社株購入権)のようなインセンティブを付与しながら首のすげ替えを頻繁に行うといった緊張感を経営者に植え付けたことが今日の活況の一因とも言われている。KKRの開発した手法も、コーポレートガバナンス(企業統治)の考え方に沿い、ビジネスモデルとしてどの業種の企業でも適用できるように仕立て上げた点が先駆者たるゆえんである。
 成功・失敗を含めてKKRの代表的な投資案件の処理を通じて、アメリカ企業社会の強引だが強靱なダイナミクスが浮かび上がる。日本ではKKRの行う「利ざや稼ぎビジネス」の評価は高いものではない。しかし、我が国の大企業の中には、バブル時の経営責任をいまだ明らかにせず、トップの地位に居座り続けている経営者もいる。その多くが株をほとんど持たないサラリーマン経営者であることを考えれば、経済再生のカギもこのビジネスに隠れているのかもしれない。
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