日高敏隆さんのレビュー一覧
投稿者:日高敏隆
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2001/11/30 16:14
“監修のことば”より
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さまざまな問題が世界のあちこちで次々と起こるこの“不透明な”現代。今われわれに必要なのは確固としたヒューマン・エソロジーなのではないだろうか?
人間誰しも争いを求めているとは思えないが、集団内、集団間、国家間を問わず、対立や抗争はえてして起こるのが常である。なぜか?
子どもをどう育てるべきか、どう育てたらよいかの議論は尽きないが、実際には親や大人の思ったようにはいかない。なぜか?
世の中は一方では国際性を求め、他方では集団のアイデンティティーを望む。どう考えたらよいのか?
問題はいくらでもあり、そのいずれに対しても、従来から信じられていたような概念をもって臨んだのではかえって誤解や混乱を招くだけである。もっと根本的な認識が不可欠であるとしか考えられない。
新しい学問であるヒューマン・エソロジーは、これまでの理系・文系の学問分野を一歩超えた立場でこの問題にアプローチしようとしている。
現代ヒューマン・エソロジーの第一人者である著者アイブル=アイベスフェルトは、民族や文化を超えて人間に共通に遺伝的に組み込まれた友好的行動パターンという、いうなれば古典的エソロジー(動物行動学)の概念から出発した。その研究は『愛と憎しみ』(1970)などのような当時の問題作として刊行された。
しかしその後、アイブル=アイベスフェルトの視点はそこから離陸し、心理学、社会学、言語学、経済学、文化人類学、都市問題、文化論、文明論へとどんどん広がっていき、さらに人間独自のものと思える葬い、慰め、芸術、詩、真・善・美に至る問題までも視野に入れて、人間をまったく新しい立場から緻密な観察と記録、比較、定量化、モデル化という手法に立って論じる定量的科学としてのヒューマン・エソロジーを構築していった。その集大成がこの『ヒューマン・エソロジー』の大著である。
(後略)
2001年夏
日高敏隆
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