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入鹿山  剛堂さんのレビュー一覧

投稿者:入鹿山  剛堂

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日経コミュニケーション1999/1/18

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 朝,家を出て,満員電車に揺られ会社に行き,仕事をして,また夜家に戻ってくる——。こうしたごく当たり前の生活が,近い将来大きく変わってしまうかもしれない。本書はその可能性を,携帯電子機器や通信技術,マイクロプロセッサの進歩,アプリケーション・ソフトやサービスなど,様々な背景を基に大胆に予測している。
 つまり,これらの技術やサービスを十二分に生かせるモバイル・ツールが開発されれば,人々は,会社に行って仕事をする必要もなければ,家を持つ必要もなく,「遊牧民」のように,自由に世界中を旅して生活できるようになるというのだ。本書ではこうしたツールを「ノマディック・ツール」と呼んでいる。
 確かに現在,ディジタル携帯電話をはじめとする通信機器や,携帯情報端末(PDA),ノート型パソコンなどが急速に普及し,自宅にいても移動中でも出張先でも,会社にいるのと同じように仕事ができるようになってきた。そのため現代を「SOHO(small office,home office)の時代」とか「モバイル時代」と表現する人は多い。しかし,「家を持たずに遊牧民になる」としたところに本書のユニークさがある。今はやりの「モバイル」という言葉は使われていない。
 本書には,世界の情報通信業界の動きや技術面の解説が詳細に書かれており,現在のモバイル・ブームの動向を見る上でも十分に役立つ。著者の一人である牧本氏は,日立製作所の半導体技術開発に長年従事してきただけあって,SH−3に代表されるRISC型マイクロプロセッサについての記述も詳しい。
 ただ,本書は最初に英国で出版された後の日本語版のためか,主に96年の状況をベースに書かれている。NC(ネットワーク・コンピュータ)や電子商取引,米ジェネラル・マジックのTelescriptなど,多くの人々に衝撃を与えたコンセプトも,今では当時ほどの興奮を持って読むことができないのは少し残念だ。
 最終章で話題は,半導体チップの人工器官を使った人体改造にまで及ぶ。メモリー・チップを脳に埋め込んだり,コンピュータへ人格を移植するなど,70年代に流行したSFの世界が現実味を帯びてきていることを,研究成果や予測を交えて大まじめに語っている。サイバー・パンクのファンなら,最終章から読み始めるのもよいだろう。
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