谷口義明さんのレビュー一覧
投稿者:谷口義明
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生れたての銀河を探して ある天文学者の挑戦
2002/01/16 23:25
天からやってくる文(ふみ)に学ぶ(著者コメント)
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「天文学者って、いったい何をやっているんだろう?」
多くの方々はこのような疑問をお持ちではないでしょうか。考えてみれば、そもそも「天文学って何だろう?」という疑問もあるように思えます。
私は天文学の研究を20年以上もやってきていますが、最近では天文学を
「天からやってくる文(ふみ)に学ぶ」
というふうに理解するようになりました。つまり、天体からやってくるいろいろな情報(電磁波など)を解読し、その天体の性質を理解する学問が天文学である、ということです。
私は、とりあえず研究する対象天体として“銀河”を選びました。100億から1000億個もの星ぼしを従え、宇宙を漂う銀河。
「これらの銀河はどのようにして生れたのか?」
「そして、100億年以上もの歳月をかけて銀河はどのように育ってきたのか?」
こんな途方もないテーマを選んで、少しずつ研究を進めてきたことになります。
まだまだ多くのことを調べていかなければなりませんし、私が学んでわかってきたことも十分とは言えません。
しかし、天文学をやっているプロとしては、今までわかってきたことを皆さんに平易な言葉でお伝えすることは、義務の一つであると思っています。もちろん、銀河や宇宙に関心をお持ちの皆さんのためです。
本書を書いた動機は、生れたての銀河を探す研究を軸にして、銀河の世界をみなさんにご紹介したかったことにあります。
ただ、堅苦しい解説書にしてはいけない、ということをまず考えました。そして、天文学者がどのように仕事を進めているのかを皆さんに知っていただくことも重要だと思いました。研究を進めているのは、所詮人間だからです。
このようなことを考えているうちに、裳華房 編集部の國分利幸さんに
「いっそのこと、先生の物語という感じで書いてみたらいかがですか?」
というご意見をいただきました。
たしかにサイエンスの解説書で、そういう本はあまり見かけません。
「人間が出てくると身近な感じがして、肩肘はらずに読めるような解説書になるかもしれない」
そう思って書いたのが、この『生れたての銀河を探して』ということになります。
第1章では、スターバースト銀河(爆発的に星を生成する銀河)をテーマに研究を始めた私が、観測→シミュレーション→理論的考察と探究を進めてきた歩みを具体的に述べ、スターバーストから「生れたての銀河」の研究に至る道筋を紹介しました。
第2章では、深宇宙探査(ディープサーベイ)の“素人”である私たちが、欧州宇宙機関(ESA)の打ち上げた赤外線天文衛星ISOを使って、「生れたての銀河」を探してゆく様子をドラマ風に綴ってみました。
第3章では、ハッブル宇宙望遠鏡やケック望遠鏡、また遠赤外線やサブミリ波などによる「生れたての銀河」の探査について、少し詳しく解説しました。
若輩の身を省みず、ということで恐縮しているのが本当のところです。皆さんに銀河の世界、天文学の楽しさを感じ取っていただければ幸いです。
【目次】
1章 憧れの銀河
2章 生れたての銀河への道
3章 銀河の誕生と進化
あとがき/銀河と宇宙を知るための参考書/本書に登場する施設・機関などのwebサイト/人名索引/天体・天域名索引/事項索引
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