大江 巌さんのレビュー一覧
投稿者:大江 巌
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紙の本呑流建築雑話
2001/01/31 18:15
建築に広い視野で鋭く斬り込んだエッセイ的評論集。建築不在の現状打開へ多くのヒントが隠されている
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建築不在,建築と建築家の存在感の希薄さをはね返せないまま21世紀を迎えた。そんな状況に対する建築界の悲鳴ともつかない叫びが本書から伝わってくる。著者は,郵政省(現総務省)の建築畑を長く歩んだ官庁建築家。呑(のん)のペンネームで日刊の建設専門紙の建設評論で健筆を振るった人だ。その評論を一冊にまとめたのが本書。
本の標題からして建築エッセイ集の色彩が強いが,建築を主として社会との関わりで鋭く斬る辛辣で明快な語り口はわかりやすく,自ずと文化批評にもなっている。今後,建築の職能を志す学生に特に読んでほしい。
本書の構成は,97の評論を類似のテーマ別に12のカテゴリー(章)分けした上で,それぞれに現時点での総括的考察を加える仕掛け。テーマは建築職能,文化,行政,環境など実に広範囲に及ぶ。ものづくりとしての建築の今日の閉塞感を打ち破るのは,著者が指摘する如く「ものづくりの知恵」なのだろうか。厳しい論調の中にも,それへの期待感をにじませている。
(C) ブッククレビュー社 2000
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