東京書籍編集部さんのレビュー一覧
投稿者:東京書籍編集部
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バルト海の復讐
2001/09/03 23:11
田中芳樹先生とのドイツ
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今回の弊社刊『バルト海の復讐』の取材に、一緒に冬の北ドイツに行った。先生にとっても、ひさびさの書下ろし単行本ということもあり、なみなみならぬ力の入れようである。
田中先生はあまり体調はすぐれないようだったのに、とにかく歩く。それもほとんど私が小走りにならなくてはいけないほどのスピードで。取材中、おそらく山手線一回りくらい歩いたと思う。それも観光地はいっさいなし。
一度、どんなガイドブックにもない巨像をハンブルクの霧の彼方に見つけ、非常に関心を覚えたらしく、その「ビスマルク像」の周囲で半日過ごした。そこはハンブルク市民もめったに訪れない打ちすてられたような公園であった。私たちが止めなければ、本気でその像の上に登ってしまったと思う。ちなみに像は何十メートルもある巨大なもの。
小説の冒頭に出てくるブローテン断崖にはタクシーで行ったが、日本でいえば竜飛岬みたいなところで、そこへ冬のさなかに行くアジア人を、運転手は怪訝な面持ちで眺めていた。断崖の上にはカフェーがあり、嵐のような天候の中、客はもちろん私たちだけ。皆ひたすら寂寞とした気分で苦いコーヒーを飲んでいた。そんななかで今回の
作品のあの書き出しを先生は考えていたのだかと思うと、感慨胸に迫る。
今回の作品『バルト海の復讐』は、依頼してから完成まで10年近くかかった。タイトルはウェルズ著『アドリア海の復讐』からインスパイアされたという。作品の出来は、間違いなく氏の最高傑作といっていいと思う。私は本の帯に「冒険活劇小説の巨匠」と入れたかったが、本人は「巨匠」を可とぜず、「旗手」となった。しかし氏を
おいて、いったい誰を「巨匠」と呼べようか。読者諸氏の支持を期待したい。
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