高嶋健夫さんのレビュー一覧
投稿者:高嶋健夫
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2001/05/06 00:30
楽しく、役に立つ「京都バリアフリー探検」
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このところ、ちょっとした「バリアフリーガイド本」ブームが起きている。本書の他にも、「日経バリアフリーガイドブック2001年版」、「クロワッサン特別編集版 ユニバーサルデザインブック」などが発行された。いずれも、ムック形式でカラーページも多く、楽しくて実用的な編集を目指しているようだ。
特に本書は、「交通編」と銘打っているだけに、車いすでの外出、障害のある人や高齢者の旅行などに役立つ「バリアフリーお出かけ情報」をてんこ盛りに詰め込んでいるのが、最大の売り物となっている。
例えば、電動車いすを使う女性による「京都バリアフリー探検」、聴覚障害のある女優の忍足亜希子(おしだり・あきこ)さんによる東京都心の「バリアフリータウンチェック」、福祉車輌の最新モデルを試乗した浅草、横浜、箱根などへのドライブルポなど、実際に「足を使った」企画が充実している。
そのすべてが、障害者や高齢者、あるいはその介助者の視点から、各観光・プレイスポットのバリアフリー度を点検した内容となっており、読者が出かける際に役立つ貴重な現地情報も多い。
わけても、「京都バリアフリー探検」は、清水寺、平等院はじめ京都の有名な寺社・史跡を数多く紹介。中には「車いすではあきらめるしかない」といった“落第評価情報”も正直に載せており、好感が持てる。
また、「人にやさしい最新福祉車輌ガイド」もコンパクトに分かりやすくまとまっている。ここ数年で急速に商品ラインナップが充実してきた福祉車輌を、「助手席回転シート車」「シートリフトアップ車」などタイプ別に、主要自動車メーカーごとに体系的に取り上げている。これから福祉車輌を購入しようと考えている読者には、よい手がかりとなりそう。
その一方で、この種の「バリアフリーガイド本」によく見られる共通の問題点を、本書でも指摘できる。情報の未整理と詰め込みすぎである。見聞きしたことを何でも載っけている嫌いがあるのだ。バリアフリーを語る時、理念の啓発や社会的背景の解説は無論大事なのだが、この種の「バリアフリー情報」に関しては、もっとドライに、実用性に徹して提供する時代にもはやなっているのではないだろうか。
もう一点、苦言を呈したいのはレイアウトの読みにくさだ。活字の小ささ・薄さ、淡い色遣いによるコントラストの弱さなどが、いかにも「旧態依然とした若者向けムック」の造りなのだ。写真自体も小さいのだが、特に写真のキャプションが細かい。これでは弱視の人(実は筆書もそうなのだが)や高齢者は、読みにくくてしかたがない。
「バリアフリー」のガイドブックであるのだから、もっと「読みやすさ」にも腐心すべき。本書シリーズ続刊での改善を期待したい。
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