サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. 荒井 耕一郎さんのレビュー一覧

荒井 耕一郎さんのレビュー一覧

投稿者:荒井 耕一郎

3 件中 1 件~ 3 件を表示

金融イノベーションにより大きく変貌している現在の金融システムの本質を,その機能に着目し詳細に分析

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書はハーバード・ビジネス・スクールのクレイン教授ほか7人の教授が1995年に出版した「グローバル・フィナンシアル・システム」の翻訳である。
 著者によれば,金融システムの中核を形作る6つの基本的機能とは,(1)取引を行いやすくするため支払の清算と決済を行う方法を提供すること,(2)財をプール化し,さまざまな企業の株式を再配分するためのメカニズムを提供すること,(3)産業や時間,国境を超えて財を移転するための方法を提供すること,(4)リスクを管理するための方法を提供すること,(5)経済のさまざまな部門が個別に行う意思決定の調整に役立つ価格情報を提供すること,(6)取引の一方の当事者が他方のもたない情報をもっている場合や,一方が他方の代理人として行動する場合に生じるインセンティブの問題に対処する方法を提供すること,の6つである。
 著者はさらに金融イノベーションによってこれらの金融機能のパフォーマンスが過去大きく改善してきたと論じている。たとえば,(1)デリバティブ取引が今日の決済量の大半を占める証券取引の清算と決済のプロセスを緩和する代替的な役割を果たしていること,(2)証券化によってミューチュアル・ファンドのような機関が大きく拡大発展し,それによって財のプール化や株式の再配分が行いやすくなったこと,(3)資産担保化や信用補完,デリバティブを用いた金融契約に関する技術の改善などによって,いくつかの伝統的インセンティブ問題を解決することが可能になったこと,また世界中で資本という財の移転の活発化とリスクというグローバルな配分機能の高度化が実現するようになったこと,(4)金融市場の数と多様性が増えることで,金融商品の価格から有益な情報を抽出する機会が一層増えていること,などである。
 著者はまた経済環境が予想外に変化した際に企業が背負うことになるリスク量を計測するため,金融会計に「リスク会計」という新しい専門分野を導入することが必要であること,そのような会計制度なしに効果的に規制を行うことは不可能であると指摘している。
 このような著者の提唱する機能的アプローチは金融システムの分析のみならず,たとえばわが国金融システムの一層の発展を促す制度や機関のあり方を考える上で大いに参考になる。訳者あとがきには,本書のような機能的アプローチが特に現在の日本に望まれているとして,原書の出版後若干時間が経過しているにもかかわらず翻訳を決断したとあるが,同感である。わが国では過去金融仲介機関の役割に議論の重点が置かれ,金融仲介機関がもつ既得権益を調整しながら金融システム改革を進めるというアプローチを長く取ってきたが,そのためわが国金融システムの機能は欧米に比べ大きく後れをとった。
 今後わが国が国際標準に沿った金融システムを導入していくに際して,本書は有益な枠組みを提供するに違いない。本書は大部で専門的な書であるが訳はていねいで読みやすく,随所に設けられている訳者注が内容の理解を大いに助けてくれる。
(C) ブックレビュー社 2000

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本21世紀型金融危機とIMF

2000/07/10 09:16

アジア通貨危機以降,IMFの処方箋をめぐって奔出した国際金融秩序の再構築にかかわる議論を平易に解説

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 1997年7月に起こったアジア通貨危機は,東アジアの奇跡とまで高く評価されていた諸国を激動させ,経済・金融をグローバル化の渦中へ追い込んだ。本書は,こうした新しい国際通貨・金融危機とその再構築について,終章を含め9章に分けて分析・解説している。
 第1章と第2章では,現在までのIMFの歴史が簡潔に記載され,IMFの役割が国際流動性危機の際の資金供給者,経済構造改革者に徐々に変貌していった経緯が解説される。第3章では,東アジア諸国が国内金融システムのぜい弱さを残したまま,資本・為替の自由化を進め次第にホット・マネー中心のグローバル経済に巻き込まれていった状況が分析される。
 第4章から第6章では,タイ,韓国,インドネシアで97年に通貨危機が発生し,周辺国に危機が伝染していく過程で引き起こされたさまざまな問題が分析されるとともに,IMFが上記3カ国に対し処方した経済改革プログラムの内容,基本コンセプトの妥当性,それらがもたらした効果の妥当性が考察される。
 IMFの処方箋については,(1)ホット・マネー中心のグローバル経済を念頭においた内容ではなかったため,資金拠出が遅れ気味であった,(2)支援対象国からの資本流出防止と為替レート安定を最優先事項とし緊縮財政政策,高金利政策を維持するという過去の事例に基づいた画一的な内容のもので,支援対象国の個別の事情が十分に勘案された内容ではなかった,(3)緊縮財政政策,高金利政策の実施とともに金融セクターの改革を性急に進めた結果,金融機関の貸し渋りが起きて企業収益がいっそう悪化し,かえって金融機関の不良債権処理が遅れた——等々の理由から通貨危機の初期消火に失敗し,対象国の経済にかえって混乱をもたらした,と指摘されている。
 第7章から終章では,21世紀型通貨危機に対して日本を含む東アジア諸国がとった対策,外国為替制度をめぐる議論が比較検討された後,今後起こり得る通貨危機に対応するために必要なアクションが提言されている。
 以上のように本書は,アジア通貨危機以降奔出した国際金融秩序の再構築に関する百家争鳴のごとき議論を理解する上で貴重な書ということができる。しかし,本書が発行された99年7月以降,国際金融界はIMF改革推進,地域的金融協力の枠組み創設に向け大きく議論が動いている。評者は,本書の終章を増補した改訂版をぜひ出して頂きたいと切に願うものである。そうすれば本書の価値がさらに高まるのではないだろうか。
                   

(C) ブックレビュー社 2000

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

大蔵省国際金融局長,財務官時代に「ミスター円」と呼ばれた榊原英資氏の国際金融に関する優れた講演集

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書には,著者が大蔵省時代に行った9つの講演が収録されており,その時々の国際金融上の重要な問題が語られている。著者が国際金融局長,財務官の要職にあった期間は,1997年7月のアジア通貨危機のように情報通信革命のなかでいっそうグローバル化した金融市場が,金融危機を頻繁に引き起こすようになった時期に当たる。これら金融危機の深化,伝染を未然に防ぐべく各国の通貨マフィアと対策を練り東西奔走した生々しい経験談や,米国財務省サマーズ財務副長官(当時)やヘッジファンドの雄であるジョージ・ソロスなどとの忌憚のない意見交換が本書の随所に散りばめられ,なかには当事者しか語れないような交渉の生々しい経緯,エピソードがかなり詳細に記述されている個所もある。このため,日ごろ新聞報道や経済解説書でこれらの金融危機を理解することの多い読者や学術研究者にとって,本書は国際金融に関する歴史的資料として大変価値がある内容となっている。
 しかし,本書の特徴は,今世紀末が数十年あるいは100年単位の大きな転換点に当たっていると言う著者が,目まぐるしく動く国際金融上の諸事象を,歴史の「構造」と「循環」というパースペクティブの中でわれわれに示している優れた分析にある。例えば,著者はアジア通貨危機が起こる1年も前の96年8月に,金融・通信のグローバル化がアジアでも進んだ結果,アジアでも将来金融・商業バブルが引き起こされる可能性が十分にあること,アジアで富と所得の不平等が顕著になってきていることをすでに指摘していた。けだし慧眼というべきであろう。
 著者はまた本書で,国際金融システムの新たな枠組みを提案する場として公式フォーラムの常設,市場と国際金融機関の連携強化,民間金融機関の参加を提案している。アジア地域で指導力が望まれる日本においても,官民の理論家および民間の実務家が来世紀に向けこれらの課題に対し積極的に取り組むことが切に望まれる。
(C) ブックレビュー社 2000

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

3 件中 1 件~ 3 件を表示